2011/08/31

レスピーギ「ローマの祭」サクソフォンオーケストラ版 on YouTube

ぐうの音も出ないとはこのこと…

松尾葉子指揮洗足学園音楽大学サクソフォン・オーケストラの演奏で、オットリーノ・レスピーギ「ローマの祭」全曲版。サクソフォン・オーケストラにはいろいろな批判もあるのだが、ここまで徹底してやられてしまうと、もう何も言い返せなくなってしまう。まあ、観てみてくださいな。素晴らしい。


個人的には、「主顕祭」の最後がトスカニーニ風1/2テンポになっている所がツボだった。スコアがそうなっているのか、それとも松尾葉子氏の趣味なのか。

2008年の演奏とのことで、眺めていると知った顔がちょこちょこ映る。そんなところも面白い。

管打楽器コンクール2011特別演奏会の結果

協会投稿用の記事準備のため、特別演奏会には伺えなかったが…。

某所からの情報によると、サクソフォンの上野耕平氏、管打楽器コンクールの特別演奏会で大賞獲得だそうな。素晴らしいことだ。

2011/08/30

「文化論特講I」のノート

過去のブログ記事を漁っていたら、大学時代に受けた「文化論特講I」という講義のノートを公開している記事を見つけた。

私の大学には音楽に関する講義は一切無かった(と言っても過言ではない)のだが、何がきっかけであったのか、講師に現代音楽評論の大家、白石美雪氏(!!)を迎えて、日本文化と音楽を絡めた集中講義が開かれたのだ。履修申請もせずに潜り込んで、4日間にわたる講義を楽しんだ覚えがある。初日が現代音楽の外観、2日目が「Music Tomorrow 2007」鑑賞(マントヴァーニの「タイム・ストレッチ」にえらく感動した)、3日目と4日目が日本の現代音楽の歴史、という内容だった。

日本の現代音楽の歴史というと、日本戦後音楽史(上)日本戦後音楽史(下)に集約されるのだが、この二冊の内容を踏襲しつつも、講義自体は現代音楽の歴史を浅く広く扱い、聴き手となる私たちにとっても、実にわかりやすい内容だったことを覚えている。その時とったノートをWordファイルで保存していた。30分くらいで現代音楽の定義と日本の戦後の音楽について知るにはそこそこ良い内容だと思う。下記にリンクを示しておく。

http://www.geocities.jp/kuri_saxo/notes/lectures/

ちなみに、ノートの一部に12音技法の譜例を書いてあるのだが、サクソフォンでは有名な「あの曲」の旋律を引用している。わかる人はいるかなあ(笑)。

2011/08/29

Kenneth Tse plays ブラジル風バッハ第5番 on YouTube

そういえば、最近サクソフォン動画の紹介がご無沙汰となっているなあ。探せば探すほどに面白い動画って沢山あるのだが、他にも書きたいことがあってなかなか全部はご紹介しきれない…という状況。ということで、久々にケネス・チェ Kenneth Tse氏の演奏からひとつご紹介。氏の動画は、いくつかYouTubeにアップロードさているのだが、確か一番最初に観たのがこれ。



もしかしたら以前紹介したことがあるかもしれない。共演はZagrebački Kvartet(おそらくZagreb Saxophone Quartetのこと)。なんとも美しい音色、絶妙なヴィブラートが印象的であり、抜群の存在感を示している。演奏しているのは「ブラジル風バッハ第5番」の"アリア"である。

そして最近、同曲をZzyzx Quartetと演奏している動画を見つけた。こちらは、Stephan Pageを始めとする若い奏者との共演となるが、これまた実に美しい音楽を展開している。

"アンコン"レパートリー

いわゆる"アンコン"における、四重奏レパートリーの確立の経緯が気になっている。

フランス産の、大曲と呼ばれる作品については、これは明らか。デザンクロ、ピエルネ、リヴィエなどは、1970年代に発売されたデファイエ四重奏団のLPがきっかけになっているのだろう。彼らのLPが日本に及ぼした影響は、実に計り知れないものがある。

デファイエ四重奏団がきっかけとなり、キャトル・ロゾー、東京サクソフォンアンサンブル、アルモ四重奏団、トルヴェールなどが次々と録音をリリースし、徐々にアマチュアの方面に拡がっていったということだ。現在だと、アマチュアサックス吹きにとってのバイブルって、トルヴェール、アルディ、雲井雅人SQ、もしくはクローバー辺りなのかなあ。いろいろと集めていると、どうもその辺の感覚が鈍ってしまうのだ。

不思議に思っているのは、比較的よく演奏されるショルティーノ「異教徒の踊り」やクレリス「アンダンテとスケルツェット」等の作品。あまりフランスの団体のLPに収録されていたという話は聞いたことがなく、まるで突然変異のように産まれた(演奏された)イメージがある。

曲ごとのアンコン初演記録なんて調べてみると、結構おもしろいかもしれない。

2011/08/25

管打楽器コンクール2011サクソフォン部門の結果

日本音楽教育文化振興会の公式サイトから参照可能です。

http://www.jmecps.or.jp/

何人かお知り合いも出ている。二次予選は明日とのことだが、健闘を祈りたい。

----------

(追記)
本選出場者が決定した。
角口圭都、丸場慶人、小澤瑠衣、上野耕平、蓼沼雅紀(敬称略)。

----------

(追記)
本選順位が決定した。
一位:上野耕平
二位:小澤瑠衣
三位:角口圭都
入選:丸場慶人、蓼沼雅紀

2011/08/24

Hollywood Saxophone Quartet "French Impressions"

2011年の、管打楽器コンクールサクソフォン部門・一次予選の結果が出たようだ。明日には通過者全員の名前がわかることでしょう。

----------

以前紹介したHollywood Saxophone Quartetのフランス作品集LP。フランセ、ドビュッシー、クレリス、ボザなど、現代ではおなじみとなった珠玉の作品たちを丁寧に演奏している。アメリカのサクソフォンは、シガード・ラッシャー周辺、そして現代については守備範囲だが、その間はすっぽりと抜けている。島根県のF様に話を聞き、録音を頂戴しなければ、おそらく一生聴く機会のなかったであろう録音である。改めて、感謝申し上げる次第。

Jean Francaix - Petit Quatuor
Claude Debussy - La fille aux cheveux de lin
Gabriel Pierne - Chanson de la Grandmaman
Paul Pierne Trois conversations
Claude Debussy - La plus que lente
Robert Clerisse - Introduction et Scherzo
Gabriel Pierne - La veillee de l'ange gardien
Eugene Bozza - Andante et Scherzo
Claude Debussy - Beau soir

なんと言ったら良いのか、とにかく聴いていて落ち着く。正座して襟元正して聴く演奏ではなく、かといってBGMとして聴くわけでもなく、3時のおやつ時にマドレーヌと紅茶を頂きながら聴きたい演奏である。なんだそりゃ。隙だらけのようでありながら、技術的には完璧。音程も(さすが映画音楽専門のスタジオ・ミュージシャンだけあって)安定しているし、音色は暖かく聴いていて包まれるような印象。もし現代でこんな演奏を聴いたら、ゾクゾクしてしまうだろうなあ。

フランセは、なぜか「滑稽なセレナーデ」「カンティレナ」「冷やかし」というひっくり返った順番。解説では特にそのことについては触れられておらず、一種のアメリカン・ジョークだったりして。聴きなれたくれリス「序奏とスケルツォ」や、ボザ「アンダンテとスケルツォ」などが、実に新鮮だ。フランス流ではない、新たな世界をHSQ自ら開拓したような解釈。

このテンションのまま、もう少し硬派なデザンクロやシュミットなど、ぜひ聴いてみたかったなあ。

2011/08/23

シュニトケ×フルジャノフスキー「グラス・ハーモニカ」 on YouTube & CD

アンドレイ・フルジャノフスキー Andrei Khrjanovskyが監督し、アルフレット・シュニトケ Alfred Garyevich Schnittkeが音楽をつけたアニメーション"The Glass Harmonica"をYouTubeで発見したので、ブログに貼りつけておく。全く知らなかったのだが、アニメーション自体はそれなりに有名なようで、ロシアアニメを代表する傑作として人気が高いようだ。

この陰鬱な雰囲気、グロテスクな絵柄に拒否反応を示す方も多いようだが、反体制(のみならず、ここでは反資本主義の姿勢も垣間見える)を様々なスナップショットで存分に表現できてしまうあたりは、さすがアニメーションの優位性である。実映像であれば、こうはいかない。邦題は「魔法のグラス・ハーモニカ」というらしい。

ちなみに、サクソフォン的興味からしても面白い。昨日の演奏会レポートにも書いたが、アルト、テナー、バリトンサクソフォンが編成に含まれており、特に化け物が町に蔓延る部分で大活躍する。この映像に付けられたオーケストラの中では、誰が吹いているのかなあといろいろ想像を巡らせてしまう。

前半:


後半:


また、この作品を音で収録したCDが存在する。「Alfred Schnittke Film Music Vol.II(Capriccio C71061)」というCDで、フランク・シュトローベル指揮ベルリン放送交響楽団の演奏によるもの。上記ムービーではさすがに表現しきれない、響きの隅々までもがよく聴こえて興味深い(例えば生演奏だとほとんど聴こえなくなってしまうテルミンも、オン・マイクでしっかりと捉えられている)。中間部の乱痴気騒ぎのリズム処理もなかなか見事だし、グラス・ハーモニカが旋律を奏でる部分の響きはますます透明で美しい。ちなみに、映像付随音楽とは構成が大きく違う(ように聴こえる)。

Amazon.co.jpでは、CDの取り扱いがあるほか(→Schnittke: Film Music Vol.2)、MP3販売(Schnittke: Film Music Vol.2)も行われているようだ。

2011/08/22

サントリー芸術財団サマーフェスティバル2011"映像と音楽"管弦楽

【サントリー芸術財団サマーフェスティバル2011"映像と音楽"管弦楽】
出演:秋山和慶指揮 東京交響楽団
日時:2011年8月22日(月曜)19:00
会場:サントリーホール・大ホール
プログラム:
アルノルト・シェーンベルク - 映画の一場面への伴奏音楽
アンドレイ・フルジャノフスキー×アルフレート・シュニトケ - グラス・ハーモニカ(映像・世界初公開上映/音楽・日本初演)
ビル・ヴィオラ×エドガー・ヴァレーズ - 砂漠(映像・日本初公開)

凄いものを観て&聴いてしまった。フルジャノフスキー×シュニトケの「グラス・ハーモニカ」。フルジャノフスキー氏を日本に迎えての、貴重な機会。

公開演奏・上映は 世界初なのだそうだ。1968年、ソ連軍がまさにプラハに侵攻したその日に公開されようとしていた同作品が、40幾年を経てついに演奏された。しかもこの日本という地、不安ばかりが募るこの時代に…。ある種の象徴的な出来事だと思えるほど。

明らかに反体制と捉えられるメッセージが映像の端々から感じられ、改訂を経てもなお、当局から上映許可が下りなかったのは納得。今日の演奏後にフルジャノフスキー氏に贈られた拍手は、もちろんフィルムや音感それ自体の素晴らしさもあろうが、暗い旧体制の時代においてもなお、精力的に創作活動を続けたフルジャノフスキー氏本人(そしてもちろん今は亡きシュニトケに対しても…)への賛辞もあったことだろう。

演奏前には、コーディネーターの岡部真一郎氏からフルジャノフスキー氏へのインタビューが行われ、シュニトケとの交流や、作品の成立について貴重な話を聞くことができた。現代音楽…いや、これはもう古典にリストされるのか!?…の演奏会でのこういった試みは、もちろん大いに歓迎すべきもの。舞台上には、サクソフォン3本(アルト:塩安真衣子氏、テナー:安井寛絵氏、バリトン:大石将紀氏)やらテルミンやらを含む巨大編成のオーケストラがスタンバイ。いったいどんな演奏が、どんな映像が展開されるのか、わくわくしていた。

ストーリーは、"グラス・ハーモニカ"という架空の楽器(この楽器の音色に感化され、人々は美しい行いをしようとする)を取り巻く人々とその人々を誘惑しようとする悪魔の物語。グラス・ハーモニカの発明者はある町を訪れ、人々にその音色を聴かせるが、それを心良く思わない悪魔は発明者を捕らえ、楽器を破壊する。ある青年はグラス・ハーモニカの演奏に感化されてその秘密を守ろうとするが、金銭と引き換えの密告によりやはり町を追放される。悪魔は金銭を使って町の人々を誘惑し、街の象徴である(文明の象徴のようにも思える)時計台を破壊させる。人々は欲求の赴くままに行動するうちに醜い化け物の姿となってしまい、いつしか町は荒廃する。そこに、追放された青年がグラス・ハーモニカを復刻して再び現れ、その音色により町は浄化され、人々は元の姿に戻る。その音色に感化され人々は空を舞うが、そこに再び悪魔が現れ、復刻された楽器を破壊する。しかし最後は人々はグラス・ハーモニカの助けなしに、自らの力で時計台を修復し、悪魔を追い出す。修復された時計台が奏でるメロディは、グラス・ハーモニカが奏でていたあのメロディだった。

フィルムの最初には、「このフィルムに登場する人物は架空のキャラクターではあるが、現代社会の人間が持つ果てしない欲望、権力による統制、誰しもが心に抱く孤独、残虐さを描いている」という注意書きが。グラス・ハーモニカが登場した瞬間の旋律は、BACHの旋律にも似た音形。その美しさはまるで初めて体験するかのようだった。

前半のどうしようもない社会の荒廃っぷり(密告者が賄賂を受け取るところ、そして金に埋もれるところなど、なかなか鮮烈である)、そして、再びグラス・ハーモニカが現れるところなど、不協和音を実に効果的に使いつつも(大音量による倍音効果を、その構造を解析した上で"地"で表現するスコア)まるで天上の音楽のような美しさであり、震えた。というか、泣いた。

秋山和慶指揮の東京交響楽団も、すばらしい演奏を展開した。シェーンベルクがいまいち低調な演奏であったのに対して、ちょっと気合いの入り方が違ったと思う。サクソフォンは"化け物"が登場する前後で効果的に使用されており、その存在感を発揮していた。というか、ジャン=マリー・ロンデックスの「A Comprehensive Guide to the Saxophone Repertoire」にすら掲載されていないとは、どういうことだろうか。しかし、この作品にサクソフォンが使われていることを、誇りにすら感じる。

超特殊な三管編成(pocc, 2fl, 2ob, Es-cl, Asax, Tsax, Bsax, 2fg, cfg, 4hrn, 3trp, 3trb, tub, timp, tri, ratchet, woodblock, bongo, snare-dr, bass-dr, cym, sus-cym, tam-tam, glock, tubular-bell, xyl, vib, mar, theremin, keyI&II, elec-acc, elec-gt, 2hrp, cel, pf, strings, electronics)は、この映像にふさわしいものであり、瞬間瞬間のスナップショットごとにその装いを変えるフィルムに、音として付随するためになくてはならないフォーメーションだったと思う。

ああ、まだ書き足りないが、これ以上言葉を並べても今日の演奏・映像の素晴らしさを書き表すことができない。言葉の無力さを感じる…。

----------

(以下、こぼれ話)

チケット関しては安井寛絵さんにお世話になった。この場を借りて改めて感謝申し上げる。

前の日に、管打の予選を観に行くかこっちにするか大いに迷ったが、結果的に良い選択をしたと思った。

サントリーホールが久しぶり過ぎて、六本木と六本木一丁目を勘違いしていた。六本木から六本木一丁目まですごい勢いで走った。

コンテンポラリー・ミュージックス・トウキョウの細越一平さんが来てた。座席がずいぶん近かった。

「グラス・ハーモニカ」知らない人は観てください。ホールの生演奏×大画面映像には劣るけど、それでも感動するはず。

シェーンベルクでのクラリネットが良い仕事をしているなあと思ったら、あれは十亀正司氏ではないですか!

指揮台近くにプロジェクター映像をモニタする液晶画面が置いてあり、スコアとともに指揮者の視界に入るようになっていた。

ヴァレーズの「砂漠」がトリとして演奏されたが、ビル・ヴィオラのインタビュー中に話されたエピソードが印象的だった…芸術は、人と人をつなぐタイムマシンである、などと思った。

あまりに感動しすぎてブログ書けるか心配になったのは、これまでも何度かあるが、そんな感覚を久々に味わえて良かった。というか、それこそライヴの醍醐味でしょ。

2011/08/21

Hollywood Saxophone Quartet

時々LPの復刻やそのほか貴重な録音を頂いている島根県のF様より、ハリウッド・サクソフォン四重奏団 Hollywood Saxophone Quartetという団体のLPの復刻CD-Rをお送りいただいた。あまり日本では知られていない団体であると思うのだが、アメリカのクラシック・サクソフォン黎明期を支えた団体のひとつである。特に1950年代から1970年代にかけ、ロサンゼルスを中心として精力的に活動し、リサイタルやレコーディングを行った。また、クラシックのみならずジャズにも取り組んでいたようだ。

Russell Cheever (1911-1987) soprano saxophone
Jack Dumont (1918-1985) alto saxophone
Morris Crawford (1921-1975) tenor saxophone
William Ulyate (1921-1970), baritone saxophone

ハリウッド、と名がつくだけあって、メンバーの多くが20th Century Foxのスタジオ・オーケストラ演奏者として働いていた。William Ulyateの名前はよく知っている方も多いだろう。インゴルフ・ダールの「サクソフォン協奏曲」改訂のきっかけとなった人物である。その辺りのエピソードは、こちらの記事に書いた。また、ロバート・クラフト指揮のアントン・ヴェーベルン作品集に、バスクラリネット奏者&テナーサクソフォン奏者(四重奏曲作品22)としてクレジットされている。

四重奏のサウンドについて説明したい。そもそもF様からこの録音を送っていただいたきっかけは、宮島基榮氏が過去にバンドジャーナルに寄せたサクソフォン四重奏録音のレビュー記事なのである。ミュールSQ、デファイエSQ、キャトル・ロゾー等、様々なLPについて、独特の語り口で紹介されているのだが、その中でも絶賛されているのが、ハリウッド・サクソフォン四重奏団なのである。ちょっとそのレビューの一部を抜き出してみよう。

 このレコードはすばらしいの一言につきる。これぞまさにプロの演奏です。奏者全員がリラックスして吹いているので、聴いていて心が休まります。
 なぜかといえば、気負いがないからです。日本人はなぜか髪の毛ふり乱して気負って演奏しなければ感じない人種のようです。下手でも熱演すれば感動するものです。それは、その音楽にではなく行動に感動するのです。一口にいえば、うまいかヘタかわからない人が多いということです。(…中略…)
 プロである以上うまいのは当り前であり、人気とはその土に立ってのことなのです。日本でも演歌の歌手はそれが当てはまります。なぜなら、演歌は日本人なら誰でもうまいヘタがわかるからなのです。
 話がそれたが、このグループはハリウッドのモーション・ピクチュアのスタジオ・プレイヤーであり、ジャケットの解説によれば、モーツァルト、シュトックハウゼン、そしてジャズまですべての音楽のジャンルの演奏をすると書いてあります。
 私のような終戦時代に青春を過したものにとってはなつかしいアメリカの名画のバック・グラウンド音楽の甘くやさしいサックスの音なのです。

という具合。うーむ…。

その宮島氏の言葉を裏付けるような、暖かいサウンドが魅力的な2枚のLPをお送りいただいた。後日レビューしたい。

2011/08/20

みんなの吹奏楽団 第5回演奏会

お知り合いのサックス吹き、あかいけさん、ねえさん、Fさん、K1さんが出演する"みん吹"演奏会に伺った。鎌倉芸術館は初めてだったが、自宅からは意外と近く、一時間ちょっとで到着した。都心ではなかなか無いであろう、広い空間を贅沢に使った構造が印象的なホール。

【みんなの吹奏楽団第5回演奏会】
出演:みんなの吹奏楽団メンバー、芹田尚(指揮)、高橋民夫(司会)
日時:2011年8月20日 17:30開演
会場:鎌倉芸術館・大ホール
プログラム:
~第1部~
R.ブレッカー/天野正道 - Some Skunk Funk
J.C.カルデロン/森田一浩 - ファンダンゴ
L.アンダーソン - クラリネット・キャンディ
P.スパーク - 祝典のための音楽
黒人霊歌/角田健一 - 聖者の行進
~第2部~
アンサンブルステージ
~第3部~
伊東たけし/天野正道 - クレイジー・ビーチ
J.ヒギンズ編 - ディズニー・アット・ザ・ムービー
真島俊夫 - ウェルカム
K.バデルト - 交響組曲「パイレーツ・オブ・カリビアン」
宮川泰/宮川彬良 - 組曲「宇宙戦艦ヤマト」
~アンコール~
P.スパーク - 陽はまた昇る
L.プリマ - シング・シング・シング

一曲目からブレッカー・ブラザーズの名曲「some skunk funk」が炸裂。残響長めのホールの響きは、なかなか手中に納めるのが大変そうだったが、白熱した演奏だ。というか、この曲が吹奏楽アレンジされているとは知らなかった(ニューサウンズ?)。ソロを吹いているプレイヤーは、明らかにジャズか何かのバックグラウンドがあるようで、そういった意味での聴きごたえもあった。かと思えば続く「ファンダンゴ」ではとてもリラックスした響きが聴こえてきたり。

そもそも、メンバーは皆、NHKの"みんなの吹奏楽"のオーディションをくぐり抜けているのだった。基本的な技術はクリアされていて、あとはお互いの信頼関係で音楽が立ち上がってきている感じ。また、指揮者の手腕もあるだろう。ともすればベクトルがばらばらになりかねないバンドを、上手くまとめていた。会場の雰囲気は、司会の高橋民夫氏がうまく作り上げていた。アマチュアの司会が行う演奏会って嫌いなのだけど、さすがプロフェッショナルは違う。司会の力って大きいなあ。

とはいえ、緻密な合わせが求められるフィリップ・スパーク「祝典のための音楽」は、さすがに細かい部分のアンサンブルの弱さがあったかなー(かなり好きな曲なので…)。第一部のアンコール(そう、なぜか第一部にアンコールが)は、ツノケン・アレンジの「聖者の行進」をノリノリで。気が付けば、なんと一時間経過。想定以上の長さに、第二部はほとんどグロッキー状態で集中して聴けなかった…(しかも第二部も長かった)。やはり演奏会なら二時間、長くても二時間半に収まってほしいなー。

第三部からは気分が復活。最初に演奏されたのは、スクウェアの「クレイジー・ビーチ」と、ディズニーのメドレー。これまた爽やかに、かつリラックスして聴けて楽しかった。特にディズニーは、どうしたってバンドの奏者の共感度は高くなるなあ(笑)。メロディの歌い方ひとつとっても、他の曲と明らかに一歩抜きん出ていた。

そして、続いて中学生との共演。どういった経緯でこのコラボレーションが実現したかはよくわからないが、たぶん中学生にとっては良い経験になったのではないだろうか。自分のことを思い出せば、確かに中学生から見たら楽器を吹く大人って「スゴい!!」て思えちゃうもんな。

「ウェルカム」は、これは「オーメンズ・オブ・ラブ」へのオマージュ曲かな?リズムが似すぎていて面白かった。続く二曲は、やはり今日のベスト演奏。「パイレーツ・オブ・カリビアン」のエネルギッシュな演奏は、ホールをしっかりと満たす響き。「ヤマト」などは、アニメで(リアルタイムではないけれど)観た場面場面が想像できて思わず震えた。沖田艦長ー!解説を見れば、編曲が宮川彬良氏ではないか。そりゃアレンジも凄いわけだ。

アンコールは、フィリップ・スパークの「陽はまた昇る」と、おなじみだという「シング・シング・シング」。最後の乱痴気騒ぎは、これは"みんなの吹奏楽団"ならではのものだろうなあ。聴き手も楽しく、演奏者も楽しい、そんな演奏会だった。

ノースウェスタン大学が教授を公募

Northwestern University Henry and Leigh Bienen School of Musicが、2012年9月からのサクソフォン科のProfessorとAssistant Professorを募集している。Northwestern University Bienen School of Musicのサクソフォン科教授と言えば、かの有名なフレデリック・ヘムケ Frederick Hemke氏が1962年より教授職を務めていたはずだが、ついに交代するということだろうか。

http://www.music.northwestern.edu/for-faculty/open-positions/open-position-in-saxophone.html

いったい誰になるのか、興味津々である。他の大学からステップアップを目指して移籍、ということもあるのだろうか。それにしても、Qualifications:Requiredの最後の一文が面白い。

ability to attract and recruit outstanding undergraduate and graduate students

だということだ。まあ、確かに言われてみればPreferredに書かれている、Proven record of successful teaching in a School or Conservatory of Music within a university; doctoral degree.などよりも重要なことなのかもしれないな。

2011/08/19

【演奏会情報】管打楽器コンクール歴代受賞者によるコンサート

どうやら、今回の管打楽器コンクール本選のプレコンサートとして行われるそうだ。本選コンクールの集客を狙うならばもってこいの企画…しかも入場無料だなんて!主催が公益財団法人日本音楽教育文化振興会=コンクールの主催と同じだということは、同財団からの依頼→日本サクソフォーン協会の全面バックアップ、という流れだろう。今回に限らず、ぜひ続けていただきたいものだ。[聴き逃すな!!]とのコピーに、協会の気合いを感じる。

前田ホール、そしてこの豪華布陣ということで、なんとなくサクスケルツェットを思い出したのだが、今回は管打の年代より若い方しかいないのだよなー(当たり前か)。聴きモノはやはり須川氏のイベールだろう。バックはおそらくサクソフォンアンサンブルになるだろうが、誰がどのパートを担当するのかも気になる…。

当然のことながら、このコンサートに続いて管打楽器コンクールの本選があるのだが、出場者は演奏しづらいだろうなあ(笑)

【日本管打楽器コンクール歴代受賞者によるサクソフォーンアンサンブルコンサート】
出演:須川展也、池上政人、新井靖志、遠藤朱美、松雪明、大多和雅洋、大森義基、大城正司、二宮和弘、松原孝政、田村真寛、林田祐和、山田忠臣、塩安真衣子、松井宏幸、田中拓也、加藤里志
日時:2011年8月27日 13:00開演
会場:洗足学園音楽大学 前田ホール
料金:入場無料
プログラム:
M.ラヴェル - マ・メール・ロワ
M.ラヴェル - クープランの墓
P.ヒンデミット - コンツェルトシュトゥック
J.イベール - コンチェルティーノ・ダ・カメラ(独奏:須川展也)
D.ミヨー - スカラムーシュ
D.カバレフスキー - 道化師
問い合わせ:090-4462-7890(日本サクソフォーン協会フェスティバル係)

2011/08/18

投稿テスト

Google blogger投稿サイトが不調。携帯から投稿可能かどうかテスト。

----------

(追記)
コメント欄に情報を頂いたのだが、ダッシュボードで言語設定を英語にするとOKだとのこと。情報ありがとうございます。

----------

(さらに追記)
現在では日本語環境でも復帰しているようだ。

2011/08/16

Museum of Me

ちょっと前に話題になったFacebookネタ。

Intelがプロモーション用に作成した、「Museum of Me」というサイトが凄すぎる。Facebookのアカウントをお持ちの方はぜひ試しを。あ、写真や動画や、Facebookを活用している方ほど面白いはず。

http://www.intel.com/museumofme/r/index.htm

【ライヴ情報】Arno Bornkampオンラインコンサート

Adolphesax.comが、またまた面白そうな企画を準備している。なんと、あのアルノ・ボーンカンプのオンラインコンサートだそうだ。現地時刻の8/17 22:00pm - 8/18 1:00am…ということは、スペインと日本の時差を考えれば日本時間の8/18 6:00amからのはずだが、今ってスペインはサマータイム期間中だよな。すると、日本時間の8/18 5:00amから?

コンサートのサブタイトルは、"The Lost Manuscripts"。これってやはり、作曲家の手稿を基にした演奏になるということなのだろうか。

【Arno Bornkamp ON-LINE CONCERT "The Lost Manuscripts"】
出演:Arno Bornkamp
日時:2011年8月17日 22:00 (スペイン時間)
会場:http://www.adolphesax.com/
料金:もちろん無料
プログラム:
H.Villa-Lobos - Fantasia
H.Schulhoff - Hot Sonata
F.Schmitt - Legende
J.Demersseman - Fantasia

2011/08/15

"第24回サクソフォーン発表​会"を聴いた

先週木曜日のことだが、川口リリアまで「第24回サクソフォーン発表会」を聴きに伺った。会の成り立ちについては、去年あたりの記事をお読みいただければ。仕事がおしまくって、会社を出たのが19:00過ぎ!最近こんなんばっかだが仕方あるまい。川口は意外と遠くて、会場に到着したのが20:15くらいだった。

到着すると「Bigmuff」が。あれ?ゲスト演奏始まっちゃった?そもそもトルヴェールQがゲストだっけ?と思ったら、浜松サクソフォンクラブのみなさんでした。演奏終了を待って会場入りするも、なんと浜松サクソフォンの方々が発表会のトリだった。そのまま休憩に入り、結局ゲストステージからしか聴けなかった…。残念。

YaS-375は、加藤昌則「オリエンタル」とモリコーネ「ニュー・シネマ・パラダイス」。「オリエンタル」は、前半の、ピアノパートさえも手綱で抑えたような堅実な演奏から、後半の疾走感への変化が見事。須川展也氏&小柳美奈子氏のデュオは、ピアソラ「オブリヴィオン」とイベール「コンチェルティーノ」だった。まさか須川氏のイベールがライヴで聴けるとは思わなかった。そういえば、8/27のコンサートでも須川さんイベール吹くんだよなあ。さすがの演奏。

ずうずうしくも打ち上げにもお邪魔させていただいた。良くお会いする方、去年以来の方、初めてお会いする方など、いろいろな方と話せて楽しかった。終電を逃したのは痛かったが…。

2011/08/13

上野耕路アンサンブル"Polystyle"

先週末に上野耕路氏のライヴを観に行ってノックアウトされてしまったのだが、その勢いで上野耕路氏のCDを買ってしまった。これがまたなかなか良い感じで…なぜ今まで入手しなかったのかと悔んだほど。昨日の帰省途上で、3回ほどループして聴いてしまった。

上野耕路アンサンブルという団体…上野耕路を中心とした、総勢16名からなる室内アンサンブルである。そのクレジットを見ると、上野耕路(pf.)、赤木りえ(fl.)、佐々木理絵(fl)、秋山かえで(cl.)、遠藤朱実(asax.)、石田裕美(tsax.)、矢島恵理子(bsax.)、田澤麻美(tp.)、古田儀左エ門(hr.)、増井朗人(tb.)、国木伸光(tub.)、東佳樹(mrb.)、石崎陽子(mrb.)、松永孝義(bs.)、鶴谷智生(dr.)、秋山久美子(vo.)…という感じで、これはまるで小編成の吹奏楽ではないか!純粋なクラシック・サクソフォン的興味としても、遠藤朱実氏や石田裕美氏が参加しており、注目盤と言えるだろう。バリトンサックスの矢島恵理子氏という名前は、クラシック方面ではあまりなじみがないが、どちらかというとジャズの方面を中心に活躍している奏者。

下記情報は、N2のサイトからコピペ。作品はもちろん、全て上野耕路氏作曲によるもの。
「Polystyle(VAP VPCC-81480)」
1.1979 5:52
2.Gyration 4:59
3.This Planet Is Earth! 6:24
4.Litost 6:24
5.Perpetuum Mobile 3:21
6.Rosa 4:42
7.Sledding 9:04
8.Histoire 5:55
9.Euforbia 6:59
10.Beguine Magnetica 2:05
11.Tropici Di Vetro2:55
12.La Maledizione del Faraone 5:36
13.Pieces of Dream 5:10

上野耕路氏流の"大衆音楽"が、まとまった形で眼前迫ってくるのは感激である。最初の「1979」というトラックから、上野節全開。演奏はなんともユルく隙だらけ(しかし技術的には超高度)、心が揺さぶられ・リズムに突き動かされるような響き。まぎれもなく、他にはありえないここだけの上野耕路氏の音楽だ。ちょっと言葉で書くのは難しいので、ぜひAmazonあたりで各曲の最初の30秒を試聴してもらって(→「上野耕路アンサンブル:Polystyle」)、ビビビときたら購入して頂きたい。

各ミュージシャンはそれぞれ非常に良い仕事をしている。とにかく音数が多いスコアだが、耳をすましてみると各奏者のセンス溢れる音がちりばめられているのが判る。先日のライヴにも出演していたトランペットの田澤麻美氏は、多彩な音色でバンド全体のサウンドをリードするし、フルートのお2人のサウンドの彩は、上野耕路氏の音楽になくてはならないものだ(と思う)。後半はヴォーカル入りの曲だが、秋山久美子氏の歌声の伸び、完璧な音程感覚は鳥肌モノ。外国語曲がちょっと舌足らずなのも、これはこれでアリなような。上野耕路氏の美しく・時にカッ飛ぶピアノについては言わずもがな。

そして、サックス隊も大活躍!まずバリトンサックスの矢島恵理子氏(先日のライヴにも出演)は、そのエッジの効いた音で抜群の存在感を示しており、曲に独特のビート感を与えている。遠藤朱実氏は、言い表すことのできない美音…妖艶な雰囲気担当なのかな?と思っていると、「Histoire」では石田裕美氏とともに怒涛の高速フレーズのソロも担当しており驚かされる(アルモSQでの立ち位置を思い出した)。この曲はクラシック・サクソフォン的には一番の聴きどころだろう。早いビートでも落ち着いた感じの遠藤氏と、妙にスリリングな(ミスも一か所。笑)石田氏のテナーサックスの掛け合いが面白い。

一番のオススメは「Euforbia」かな。7分と長めの曲のなかに、インスト・ピアノ・ヴォーカルの魅力が詰まっている。メロディも和声も美しい。その美しいメロディの裏で、サクソフォンを中心とした、管楽器が縦横無尽に駆け回るのも◎。全体的に録音はローパスフィルタを通したようなジャズバンドの古めかしい録音を聴くような雰囲気だが、それが合っているのかもしれないな。

セルフカヴァー曲多数。「Beguine Magnetica」は、ゲルニカ「新世紀への運河」のファーストトラック「磁力ビギン」である。「Gyration」(トマジの「協奏曲」をさらっている方からするとジラシォンと発音したくなるが、ジャイレーションと読みます)は、「電離層からの眼指し」からの「地球ゴマ」。「Tropici Di Vetro」「Pieces of Dream」は同じく、それぞれ「百華の宴」「夢の端々」。「太田蛍一の人外大魔境」からは「La Maledizione del Faraone」こと「ファラオの呪い」が収録。カヴァーとはいえ、全く違うアレンジがなされており、一聴しただけではわからない曲も。

ちなみに、ライナーの解説が面白い。英語と日本語で書かれているのだが、書いてあることが(内容はだいたい合っているのだが)全然違うのだ(笑)。これはぜひ読んでいただきたいところ。CDはAmazonから入手可能(→「上野耕路アンサンブル:Polystyle」)。

2011/08/12

帰省中

来週一週間、会社は夏休み。

…というわけで、さっそく帰省しました。長野は涼しい!!楽器練習したり、協会投稿用記事書いたり、ゆっくり過ごす予定。

2011/08/10

ロンデックスのロシアツアー(続きの続き)

以前書いた記事続きの続き。

----------

1978年に、モスクワ音楽院教授、レヴ・ミハイロフ Lev Mikhailovはこのロンデックスのロシアツアーのことを、次のように回想している。

1970年より以前、ソ連では、サクソフォンは教育されるべき楽器としてみなされていませんでした。ジャズ・サクソフォン奏者のほとんどは、独学のクラリネット・プレイヤーでしたし、もしサクソフォンがオーケストラに必要となれば、クラリネット奏者が持ち替えで吹くか、ジャズ・サクソフォン奏者が呼ばれるという有様でした。室内楽の楽器としてのサクソフォンなど、知られていなかったのです。
ジャン=マリー・ロンデックスのロシアツアーは、まさにサクソフォンの"再発見"と呼ぶべき重要な出来事でした。ドミトリー・カバレフスキーの尽力により、ロンデックスはオーケストラとの共演、リサイタルを行ったのですが、彼の演奏はソ連国内のプロフェッショナル奏者、アマチュア、音楽愛好家全てに大変な印象を与えました。デニゾフは、ロンデックスのリクエストにより「ソナタ」を作曲しましたが、1972年に私は同曲をソ連国内で演奏しました。
ソ連国内のサクソフォン教育事情は、少しずつ良くなっています。ロンデックスのツアー後、サクソフォンの専門教育の学科は、グネーシン音楽学校とモスクワ音楽院に設立されました。現在では、レニングラード、ノヴォシビルスク、アルマアタにも設立されています。

ロンデックスは、1978年にイゴール・カタエフから手紙を受け取った。そこには、「あなたのコンサートのおかげで、現在、我々の音楽院にはサクソフォンの学科があるのです」と書かれていた。

雑誌"Études Soviétique"は、次のように書いている。
フランスの音楽家のおかげで、現在ソ連内のサクソフォン演奏の質は劇的に向上している。サクソフォン奏者、ジャン=マリー・ロンデックスは1973年にロシアツアーを行ったが、そこで彼はサクソフォンを学ぶ学生や、音楽院等の教育機関で教えるサクソフォンの講師とミーティングを行った。

ロシアの偉大なサクソフォン教育家のひとり、マルガリータ・シャポシュニコワ氏は、ジャン=マリー・ロンデックスのロシアサクソフォン界への貢献について、次のように書いている。

ロンデックス氏のソ連訪問は、私の人生にとってのターニングポイントとなりました…彼は、私にサクソフォンの魅力を"再発見"させてくれたのです。ロンデックス氏と出会う前まで、私はクラリネットとサクソフォンを吹いていましたが、こののち、私の中から迷いが消えました。彼がフランスに戻ってからも、私たちは文通を続けました。その中で、彼はたくさんのスコア・書籍を送ってくれました。ロンデックス氏の、ソヴィエト国内のサクソフォン界への貢献は、計り知れません。

----------

以上。

2011/08/09

演奏のご案内:museum concert@埼玉県立近代美術館

こちらのブログで演奏の案内を取り上げたこともあるが、埼玉県立近代美術館のミュージアム・コンサートでは、時折サクソフォンがフィーチャーされる。コーディネイターの恩地元子さんはサクソフォン奏者ではないのだが、一般的なサクソフォン畑からしたら考えもつかない、オジリナルな視点からの構成…タップ・ダンス・ユニットとの共演…に驚いた。

#タップ・ダンスとサクソフォンと聴いて、Riverdanceの"Trading Taps"を思い出してしまった…。サクソフォン奏者、Kenneth Edge氏とタップの共演。

クラシカル・ジャズ・現代音楽まで縦横無尽に活躍する、江川良子さん、という人選…この催しにとてもマッチしているように思える。

以下、詳細&チラシ。8/14かー。実家に帰っているんだよなあ(>_<)残念。 【埼玉県立近代美術館ミュージアム・コンサート~リズムの恵み、うたの恩寵~】 企画展「彫刻家エル・アナツイのアフリカ」記念コンサート 出演:Soundout(PORI, SARO, 洞至/タップ・ダンス・ユニット)&江川良子(サクソフォン) 日時:2011年8月14日(日)14:00~&16:00~(それぞれ30分程度) 会場:埼玉県立近代美術館・エントランスホール(1階) 料金:無料(立ち見でのご鑑賞になります) 内容:アフリカ・ル―ツのタップ・ダンスとサクソフォンの競演 問い合わせ:048-824-0111 美術館HP:http://www.momas.jp/


2011/08/08

ロンデックスのロシアツアー(続き)

以前書いた記事の続き。

モスクワでのリサイタルと協奏曲ソリストとしての客演は、非常に好意的に受け止められた。マスコミの批評は、次のようなものである:

フランスのサクソフォン奏者、ジャン=マリー・ロンデックス氏の、モスクワのMaison des Savantsでのリサイタル。リサイタルの演奏曲目は、パウル・ヒンデミット、シャルル・ケックラン、Andre Ameller、ポール・クレストン、アンリ・ソーゲ、Pierre=Philippe Bauzin、ダリウス・ミヨーであった。また、ロンデックス氏はキリル・コンドラシン指揮モスクワ・フィルハーモニー交響楽団と、ドビュッシー「ラプソディ」、イベール「室内小協奏曲」を演奏した。
ジャン=マリー・ロンデックス氏は、非常にオリジナルな奏者であり、まれな才能が感じられ、演奏は魅力に溢れている。なにか特別に注意をひくようなことをやるわけではなく、彼が持つ深い芸術的センスでもって、真摯に音楽に向き合い、作品の特性を描き出すのだ。
ロンデックス氏の演奏は、緩徐楽章では印象的である。実に自然で、論理的で、磨き抜かれたフレージングセンスが光る。彼の歌い回しは、その美しいサウンド、そして表現の多様性によって、他の演奏家とは明らかに区別されるものである。ドビュッシー「ラプソディ」での、感傷的かつ官能的な音色は、今でも脳裏にはっきりと残っている。また、Bauzin作品のアダージョ楽章での、実にエモーショナルな感覚を思い出す。クレストン「ソナタ」の第2楽章でも、全楽章にわたっての透明なリリシズムへの誘惑が感じられ、そしてメロディ・音色の美しさは驚異的であった。
ロンデックス氏は、もちろん急速楽章の演奏も素晴らしかった。特に、彼の芸術性はヒンデミットやクレストン、イベールの終楽章で際立っていた。また、ミヨーの終楽章の演奏は、特筆すべきものであった。
アンコールは、バッハの「無伴奏チェロ組曲」を数曲演奏していたが、彼の芸術性の底しれぬ深さを感じさせた。彼の手に掛かれば、このドイツの昔の作品が生き生きと美しくよみがえる。
今回のプログラムは、彼の演奏家としての個性と、彼の独創性を十分に引き出すものであった。今回の作品のうち幾つかは、ロンデックス氏自身の献呈されている。

----------

意訳しすぎかな(笑)まあいいだろう。続き(ミハイロフやシャポシュニコワの言葉)は、また今度。

2011/08/07

上野耕路ライヴ@渋谷Last Waltz

埼玉県大会を聴いた後、併設された図書館で協会誌投稿記事用の資料探索をして、その後渋谷へ移動。上野耕路氏のライヴを聴いてきた。

…とりあえず、ひとこと。もの凄くかっこ良かった!

【Koji Ueno Piano Works+】
出演:上野耕路(pf)、佐々木理絵(fl)、田澤麻美(tp)、矢島恵理子(bsax)、中島オバヲ(perc)、杉野寿之(dr)、谷嶋ちから(bs)、Special:久保田慎吾(vo)
日時:2011年8月7日(日曜)19:00~
会場:渋谷Last Waltz

前半は、上野氏のピアノ・ソロ。新曲?と思われる小品を、非常に繊細なタッチで紡いでゆく。神経質ともとれるほどの演奏と比較して、出てくる音楽は上野耕路氏の音楽そのものだ。強烈なハーモニーのち実にリズミック、時々グロテスク、そして美しく、何よりクール。最初の3曲だけでノックアウトされてしまった。

続く曲は、怒涛のパロディ音楽。「星条旗よ永遠なれ」やら「威風堂々」やらをパラフレーズしたかと思ったら、ガーシュウィンが出現し、お次はニーノ・ロータの「8 1/2」に突入するという…。まるで即興のように音を組み上げていくその様子は、まさに作曲家のピアニズムそのものだ。そして、そこで終わると思ったら、ゲルニカのメロディをたっぷりと引用するパートへ。「夢の山獄地帯」など、おなじみの音楽を楽しんだ。

5曲目は、組曲だったのだろうか?15分~20分はあろうかという長大な音楽で、各パートで関連性のあるメロディが各所に出てきた。ここまで上野氏出ずっぱり、弾きまくり。凄い…。今回はほとんど新曲だったということで、曲名がまったくわからないのが残念だ。

後半は、まずはピアノとフルートのデュオを2曲。続いて、ピアノ、ドラムス、パーカッション+三管(フルート、トランペット、バリトンサックス)編成で妙なリズムのノリの曲。このへんから、なんとなく上野耕路 and His Orchestraのサウンドを思い出して、震えた。よりポップス色が出るものの、ハーモニーもリズムもグロテスク。上野氏の音楽は、一聴するとまさにそれは上野耕路の音楽だとわかる個性に溢れている。さらにベースが加わって、またまた不思議な…この曲からはとっさに"無国籍"というキーワードが浮かんだが、どんなコンセプトで作られたのかはわからない。

この編成のままさらに何曲か続き、最後までハイ・テンションで堪能した。アンコールには、「のぼうの城」のピアノソロ(まさかここで聴けるとは!)と、全員登場・乱痴気騒ぎのヴォーカル入りブギ。各奏者のアドリブまで楽しんで、大盛り上がりのまま終演となった。楽しかったーー!

ところで、ベースはなんと8 1/2にも参加していた谷嶋ちから氏(!)。驚き。さらにアンコールでは久保田慎吾氏が登場。8 1/2のメンバーのうち、3/5が集結したわけで、8 1/2 x 3/5で51/10…だったのか?

第52回埼玉県吹奏楽コンクール・大学の部

今年は文教大学が"3出"でお休みの年。大学の部の埼玉県大会は、埼玉大学、駿河台大学、城西大学の3校で争われることとなった。出場者として or 観客として、問わず、吹奏楽コンクールの会場に足を踏み入れるのはかなり久しぶり(いつだったか盛岡で開かれた某大会に某団体で出場して以来)だが、すぐさまあのコンクール独特の感覚が戻ってきた。そりゃまあ中学からやっているわけだもの、頭で忘れていたと思っても、体のほうが覚えているというものだ。

審査員は、ユーフォニアムの三浦徹氏(!)を筆頭に、サクソフォンの中村均一氏(!)、十亀正司氏(!)など超豪華な布陣。大学の部の三団体を聴いた。ちなみに、プログラム冊子は買わなかったので、曲名をメモしながら聴いた。

■埼玉大学
課題曲:渡口公康「南風のマーチ」
自由曲:プロコフィエフ「ロミオとジュリエット」より

3団体中一番大きな編成。無菌室で培養されたような課題曲の安定度に驚き。コンクールって、やはりこのくらいの完成度が求められるんだなあ。自由曲は、課題曲に比べるとちょっと地に足がついていないような感じがしたが(純粋クラシックは難しい)、上手く見せ場を作って物語を紡いでいた。まだまだ完成度が上がっていくのだろう。

■駿河台大学
課題曲:新実徳英「シャコンヌS」
自由曲:真島俊夫「3つのジャポニスム」

課題曲が良い曲すぎてびっくりした!…帰ってきて調べてみたら、なんと新実徳英の筆によるものじゃないか。そりゃ良い曲なわけだ。(演奏はちょっと聴くのが辛かったが…)。自由曲は、締太鼓(?)まで持ち込んで、熱演。なんだか、吹奏楽コンクールに課題曲がある理由が分かったような気がする。

■城西大学
課題曲:渡口公康「南風のマーチ」
自由曲:福島弘和「交響的詩曲"走れメロス"」

人数は駿河台大学と同程度ながら、ちょっと違った感じ。埼玉大学と同じ課題曲だったが、打楽器の影響範囲はこんなにも大きく、音色が変わればこうも印象が違うものかと驚いた。福島弘和氏の作品はなかなか素敵な作品、巷に蔓延する安易な作品とは大違いだ。こちらも自由曲は熱演だった。

以上。結果はどうだったんだろうか?

ロンデックスのロシアツアー

James C. Umble著「Jean-Marie Londeix: Master of the Modern Saxophone」から、ロンデックス氏が1970年に行ったロシアツアーに関する部分を抜き出して訳してみた。この本は、著者の書き言葉とロンデックス氏の日記とが交互に書面に登場する形態を取っており、引用フォント部分はロンデックス氏の日記である。

----------

ロンデックスは1970年にロシアツアーを行ったが、きっかけは1968年にさかのぼる。当時ロンデックスはディジョン音楽院の教授だったが、ちょうどその頃ディジョンInternational Society of Music Educators (ISME)が開かれたのである。

1968年7月
8日間に及ぶISME国際会議が昨日始まった。44ヶ国から3000人以上の参加者がこの小さな街に集まる大規模な催しで、問題も多いが、Ameller(ロンデックス氏の友人の作曲家)は根気よく問題を解決した。今日は、Jean-Jacques Painchaudの伴奏で2度演奏した。午前中には、Salle d'Etatsで開かれた開会式でヒンデミット「ソナタ」を演奏し、夜には劇場でミヨー「スカラムーシュ」とクレストン「ソナタ」を演奏した。
私はロシアから来ていたドミトリー・カバレフスキーという人物に、なぜロシアではサクソフォンがそれほど人気を得ていないのかを尋ねる機会があった。
すると彼は、「誰もサクソフォンのために曲を書いていないからだ」と答えたのだ!
私はすかさず「それは間違っているよ、明日それを証明してあげよう」と返し、今日の午後、"サクソフォン音楽の125年"を彼に見せたのだ。
カバレフスキーは実に驚いた様子でページをめくり、そしてこう言った。「ロシアに来て、ぜひ演奏してくれ」

カバレフスキーがオーガナイズを行い、ロンデックスは1970年にロシアツアーを行った。ロンデックスはキリル・コンドラシン指揮モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団とイベール「コンチェルティーノ」とドビュッシー「ラプソディ」の演奏を行い、その他リサイタルを2回開いた。いくつかの演奏はラジオ・テレビで放送された。また、彼は公開レクチャーを行い、ロシアの音楽院にサクソフォンの教育者を採用することの重要性や、サクソフォンの未来のための新しいレパートリーの必要性を訴えた。

1970年3月14日
キリル・コンドラシン指揮の素晴らしい管弦楽団と、チャイコフスキーホールでの最初のコンサート。素晴らしく成功した。アンコールは2曲。コンサートの模様は、テレビで録画放映された。

1970年3月15日
二度目のコンサート。昨日と同じくらい、ホールの観客席はいっぱいで、またまた成功。その後グネーシン音楽学校に招かれて暖かい歓迎を受ける。マルガリータ・シャポシュニコワに会った。クラリネット奏者だが、サクソフォンも吹くそうだ。グラズノフの「協奏曲」を吹いた。
私たちは、サクソフォンの専門家の必要性…言い換えれば、サクソフォン教育についての厳格な指導方針の必要性、について話した。また、オリジナル作品の作曲の必要性についても話し合った。

1970年3月17日
満員のホールで、ソロ・リサイタル。大変な成功…なんとアンコールを6曲も吹かなければならなかった!最後は、楽器なしでステージに出てきて、もう終わりだよと示さなければならなかったほど。
土曜のコンサートをオーガナイズしてくれたカバレフスキーは非常に興奮し、私のために作品を書いてくれると言ってくれた。

ロシアツアーに同行したロンデックスの妻、ジャニーヌは、次のように回想している:

夫はモスクワでの大成功をとても嬉しく思っていました。かの有名な指揮者、キリル・コンドラシンと演奏し、観客も大興奮だったのですから。コンサートホールは帝政ロシア時代のものですが、建築物として非常に良くメンテナンスされていました。フレスコ画、ガラスのシャンデリア、美しい部屋…。人々の服装は貧しいものでしたが、彼らの興奮と熱狂の渦は凄いものでした。この暖かい反応に触れ、夫の演奏で、きっと彼らがサクソフォンを好きになってくれたのだと確信しました。夫ジャン=マリー・ロンデックスと、モスクワの教授、レヴ・ミハイロフとの間で文通が始まったのも、この時からです。ミハイロフは、1974年にボルドーで開かれた世界サクソフォン・コングレスに参加してくれました。

----------

続きはまた今度。ちなみに、ミハイロフは1974年のコングレスでグラズノフの「協奏曲」とデニゾフの「ソナタ」を吹いている。

2011/08/05

もうすぐ開始!Sax 4th Avenueストリーミング

昨日の演奏会は伺えず残念…。

----------

他のことを書こうと思っていたのだが、Facebookを見ていたらこんな速報が書いてあったのでお知らせ。

Pete Fordさん(サクソフォン四重奏版「タルカス」のアレンジャー)のより。たびたびこのブログでも話題に上がるサクソフォン四重奏団、Sax 4th Avenueのストリーミング放送が、もうすぐ始まるそうだ(日本時間23:00から)。演奏曲目は下記の通り。

George Gershwin - Prelude I (arr. Bill Grossman)
Elliot Del Borgo: Movements II and I of the Quartet for Saxophones
Pete Ford: The Refinery
Friedrich Gulda: Fugue (arr. by Pete Ford)
Frame: King Crimson's Frame (arr. Shannon Ford)

アクセスは下記ページから。これは聴かなくては!
http://www.wgte.org

2011/08/04

「ローマの権力とキリスト教徒の心」スタディ・スコア

3つ好きな吹奏楽曲を挙げろと言われれば、「ディオニソスの祭り」、「メトロポリス」、そして「ローマの権力とキリスト教徒の心」である…ということは以前書いたが、そのひとつP.A.グレインジャーローマの権力とキリスト教徒の心」のスタディ・スコアを買ってみた。演奏する予定がある、等ではなく、単純に興味と価格の安さ(1000円くらい)から購入に至った。

同曲の版元はMills Musicだが、このスタディ・スコアはEdwin F. Kalmusというところから出版されている。オフセットではなく、おそらく電子写真での印刷。いかにもアメリカンな大味な印刷クオリティには驚かされたが、読んで楽しむぶんには問題ないレベル。

スタディ・スコアなので、フル・スコアのように各楽器一段ずつ割かれているわけではなく、パートごとのコンデンス・スコア風を想像していただければ良いだろう。フル・スコアでなくても、さすがの情報量。音を聴いているだけではわからなかった、新しい発見がたくさんあって面白い。

例えば編成。最小編成として、吹奏楽とピアノ("Piano may be used as substitute for Organ"と書いてある)でも演奏できるようだ。最大編成は、吹奏楽+パイプオルガン+追加のパーカッション(マレット系)、チェレスタ、DULCITONE、ピアノ(The more pianos the betterって書いてある笑)、ハープ(The more harps the betterって書いてある笑)、そして弦楽合奏である。実現すれば、なんとも巨大な音の洪水が想像できる。

オルガンのヴィブラートに関しては、次のような指定が書いてあった。Throughout the piece plenty of vibrato should be used on the organ, producing somewhat "theatrical" sonorities and conveying a feverish emotionality. A "churchy" impression is not intended. なんとなくグレインジャーらしいというか、何というか。確かにどの録音を聴いても、オルガンの響きにはやや違和感を感じていたのだが、このような指示が書いてあるのだな。

続いてページをめくっていけば、その情報量に驚かされる。ダイナミクス、旋律の運び、拍子…ところどころ英語で書かれた指示が痛快でもある。音を聴きながら眺めているだけで、まるまる3日くらいは楽しめそうだ。

2011/08/03

SUNTHESIS!!

10年間探していたCDが手に入った!!Ensemble international de saxophones Bordeauxの、「SUNTHESIS(Quantum)」である。嬉しすぎて興奮ぎみ…近日中にレビュー予定。

2011/08/02

岩代太郎「世界の一番遠い土地へ」

ロンデックスコンクールでの記事投下数が尾を引いて、だいぶ紹介できていない話題が蓄積しているのだが、順番にさばいていこうと思う。

岩代太郎「世界で一番遠い土地へ To The Farthest Land Of The World」。このCDを、Thunderさんからお借りすることができた(ありがとうございます!)。雲井氏のプロフィールを見ると必ず載っているこの曲だが、音として聴くのは初めてだ。

ユネスコ、朝日新聞、テレビ朝日の三団体同時バックアップで開催された"シルクロード管弦楽作曲コンクール(審査委員長:團伊玖磨)"の最優秀作品となるわけだが、CDが出版早々入手困難となるのはテレビ局の企画モノ、のある種運命であろうか…。いま再発売したら、サクソフォン方面にはかなり受けそうだが。詳しい解説・データは、Thunderさんのブログ記事にお譲りするとして、聴きながら考えたことをちょっとだけ。

昨年暮れにサクソフォーン・フェスティバルで演奏された、岩代太郎「Colors」を聴いた方ならば、「あの曲の印象に近い」と言ってしまえばわかってもらえるだろう。煌めくような管弦楽の響きに、断片的に絡み合うソプラノサクソフォン。同じサクソフォン協奏曲でも、ダールやイベールは精密に作りこまれた時計のようなイメージがあるし、トマジ「協奏曲」は大地を思わせるスケールの大きさがあるし、トマジ「バラード」は道化のダンス、グラズノフは…何だろ(笑)という感じだが、今まで聴いたことのある協奏曲とは明らかに違う。

実に有機的で、16分半の中に織り込まれた大小様々な"うねり"は、まるで光り輝く大きな生物が呼吸しているのを眺めるかのようなのだ。岩代太郎作品以外に、サクソフォンであまりこういうタイプの作品は聴いたことがない。光を振り撒いたまま、最後は波が引くように終わってしまう。何度か聴き返してみても、形式を捉えることができないし、テーマがどれなのかもわからないし、拍がどこにあるのかもよく分からないし…なんとも不思議な感覚。

こういう曲では、雲井氏のサクソフォンの美しさがいっそうに際立つ。「サクソフォン協奏曲」ということだが、オンマイクで録音されておらず、オーケストラの大音量とぶつかる鮮烈な雲井氏のサックス!という趣。曲の美しさと演奏の、響きの美しさに身をゆだねていると、あっという間に時間が過ぎていってしまった。

ところで、"シルクロード管弦楽作曲コンクール"についてインターネット上にあまり情報がないなあ(まあ、1990年頃の話なのだから無理も無いか)と思っていたのだが、ネット上をふらふらしていたら審査委員長だった團伊玖磨氏に関するこんなエピソードが。おやまあ(^^;

2011/08/01

上野耕路「サクソフォン四重奏曲」

上野耕路 Koji Uenoの「サクソフォン四重奏曲 Quartetto per sassofoni」について。「N.R.の肖像」をきっかけにして触れるようになった上野耕路氏の音世界だが、同曲以外にも、サクソフォンを含む魅力的な作品が多い。どちらかというと"ニューウェイヴ"の第一線を突っ走っていたアーティストの一人としてその名前が上がることの多い上野氏だが、私はそれと同時にクラシカル作品の作曲家としての上野氏も、もっと認知されてほしいなと思っている(クラシカル方面での認知度の低さは、出版されている楽譜が少ないことが原因かなあと思っている)。

「サクソフォン四重奏曲」は、1995年の作品。まずは上野氏の室内楽作品集「Chamber Music 上野耕路(シナジー幾何学 SYDA-007)」の曲目解説を引用する。

アルモ・サクソフォン・カルテットからの委嘱で書かれた。躊躇なく調性が用いられ、トッカータ、フーガ、アリアなど、古典的で明快な形式感を持ちながら、クラシカルな領域を越えて楽しむことのできる作品である。

I. トッカータ/アリア/フーガ Toccata/Aria/Fuga
 急速な上行音階と下降音階がからみあうなかにスライド音型を織り込んだトッカータに続いて、ゆっくりしたスタティックなアリアとなる。上下の音域に楽器を散らした音型のからみあいが面白い効果を生む。最後にジャズ風のスタイルをもつフーガ。

II. アレグロ/プレスト/アレグロ/プレスト/アンダンテ/アレグロ Allegro/Presto/Allegro/Presto/Andante/Allegro/
 全体に縁日的、快楽的ともいえる雰囲気を持ち、滑るように軽快に進行する。途中、第1楽章のトッカータのように急速に上下の音階が交錯するが、調子はずっと軽い。カデンツでいったん終わりかけながら、ふたたび最初のテーマが戻ってくる。

「N.R.の肖像」がニーノ・ロータ作品のコラージュであったのに対して、本「サクソフォン四重奏曲」の構成要素は上野耕路氏のオリジナルである。第1楽章冒頭~中間部にかけてのトッカータ→アリアの流れは、実にアカデミックな響きであり、初めて聴いたとき「上野氏がこんな曲を書いていたのか!」と衝撃を受けたものだ。しかし最終部で雰囲気は一転、フーガはまさに、映画音楽か何かと錯覚するような雰囲気に満ちている。

第2楽章は、解説の通り全体を通して軽めの雰囲気。しかし、サクソフォン4本での緻密なアンサンブルが要求され、ところどころもの凄いパワーで迫ってくる。たまに聴こえてくる、いかにも往年の映画音楽?といった感じのメロディは、実に甘い味がする。この雑多な感じは「N.R.の肖像」でも感じたが、面白さはそれ以上かもしれない。あ、もちろん「N.R.の肖像」は、映画音楽を知っていれば10倍楽しめる、というのはあるけれど。

いつかやってみたいなあと思っている作品だ。

2000記事達成

なんと、この記事がブログの2000記事目となる。そろそろかな…とぼんやり思っていたのだが、まさかこんなに早く訪れるとは思っていなかった。1000記事を迎えたときは、ブログを続けている上でのこれまで&これからの両方に意識が向いたものだった。2000記事については、特に大きい気持ちの上での達成感は大きく感じない。それだけ習慣化しているということで、個人的には良い傾向だと感じる。

一日のアクセス数は、およそ一年前に飽和している。ある程度まで幅が広がると、その先は継続することに意味が出てくるものだと思っている。広がり続けるクラシック・サクソフォンの世界を様々な方面から見据えた上で、面白いと感じる話題をピックアップして発信し続けよう。決して裾野を拡げる方向には走らず、クラシック・サクソフォンのディープな話題へ焦点を合わせ、これからも無理のないペース(1日1記事)で更新を続けていきたい。

----------

追記:2000投稿を記念して(?)Facebookとの連携始めました。