2008/06/29

演奏会のご案内

東京在住のお二人(MJさん、ゆうぽんさん)、そしてつくば在住の二人(N、kuri)で、四重奏の演奏会を行います。啼鵬さんが編曲した「ブエノスアイレスの四季」を中心に、四重奏、デュオなどを演奏いたします。場所は、中央線沿いの荻窪(新宿の近く)!ぜひお越しください。

【Ensemble TX サクソフォン・コンサート】
日時:2008年8月9日(土) 14:00開演
会場:音楽専用空間クレモニア ホール
(交通:JR中央線または東京メトロ丸ノ内線荻窪駅より徒歩3分)
(地図:http://philstone.at.infoseek.co.jp/mapnew1.html)
料金:入場無料
プログラム:
R.クレリス - かくれんぼ
M.トーク - July
A.ピアソラ/啼鵬 - ブエノスアイレスの四季

後援:
日本サクソフォーン協会
お問い合わせ:
http://ensembletx.exblog.jp/
ensembletx@excite.co.jp

松雪明先生の門下のサクソフォン発表会

出演したわけではなくて。

昨日、Tsukuba Saxophone QuartetのソプラノのN(ちさ)が出演する、とのことで、セルマー・ジャパンまで聴きに行ってきたのだ。アンナホールは久しぶりだった…もしかして、昨年のラランさん×原さん×大石さんのジョイントコンサート以来だ。アンナホールでは今後も、ラランさんのCD発売記念演奏会、冨岡祐子さんの帰国記念演奏会、原さんのレクチャーリサイタルなどの開催が予定されているようだ。

さて、プログラムはこんな感じ。さすがに管打楽器コンクールの年だけあって、サクソフォンを学ばれている方は全員、課題曲を吹いていたようだ。バッハが多いですね(たしか二次の課題曲)。一次課題曲のリュエフがなかったのが不思議。アマチュアで演奏されている方は全部で3人、ということだったのかな?

J.S.バッハ - 無伴奏チェロ組曲第一番より1, 2, 3, 6
P.ランティエ - シシリエンヌ
H.クローゼ - デュエット
J.S.バッハ - 無伴奏チェロ組曲第一番より1, 2, 3, 6
C.サン=サーンス - オーボエ・ソナタより1, 2
P.モーリス - プロヴァンスの風景より4, 5
J.S.バッハ - 無伴奏チェロ組曲第一番より1, 2, 3, 6
I.ゴトコフスキー - 悲愴的変奏曲より3, 6
H.トマジ - バラード
J.S.バッハ - 無伴奏チェロ組曲第一番より1, 2, 3, 6

面白かったなー。興味深く聴いたのは、やはりバッハ。ここまで違いが明確に出ますか、という感じで、素人目にもこちらの方よりこちらの方が上手い、というのが一瞬で判ってしまう。つくづく、過酷な課題なのだなと思う。と、終演後に知人とそんな話になった。

前回のアドルフ・サックス国際コンクールで、一次課題曲として演奏された「Ge(r)ms」という作品を思い出した。あの曲も、一瞬で振り分けがされてしまうタイプの曲だったっけ。特殊奏法やフラジオをかなりに含むものだったが。

あと、やっぱりロンデックス編のこの楽譜、変だ。最初の音がGではなくてAsから始まるというのも気持ち悪い。でも、Gからはじめると#が4つもついてしまうし、最低音に対応できないし。そして、第6楽章のアクセントの不自然なこと!だから、要項にはアーティキュレーションは参考程度に、という話が載っていたのかな。どうやって吹くのが最適解なのだろうか。

アマチュアの方も、すごく上手かった。専門で学ばれている方と一緒のプログラムの流れのなかで吹いたところで、違和感が無い。これは、専門で学ばれている方が云々ということではなくて、アマチュアの方がすごく頑張っているということだろう。ちなみに、Nはサン=サーンスを吹いておりました。お疲れ様でした。

Leduc楽譜の価格

ミュンシュ指揮ボストン交響楽団の、ミヨー「世界の創造」なんてCDが800円で売っていたので、「もしかしてサックスはミュールか!」なんて喜び勇んで買ってきたのだが、良く見たら録音年が1961年。ぐはっ、ミュールのわけがない…。オーケストラも、全体的にいかにも往年の、という感じの音程感や音色で、いまいちでした。サックスは、低音域がややラッシャー・ライクなのだが、完全には断定できない。やっぱお気に入りはバーンスタイン盤だな…(´ω`)

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さて、楽譜の価格に関して「へえっ」ていう感じのことを知ったので、書き留めておく。今日、セルマー・ジャパンに伺ったときに、店員さんと楽譜の値段の話になった。「最近はユーロ高で…」「それでも据え置きで…」などという他愛の無い話をしていたのだが、そういえば楽譜の値段ってどうやって決めているんだろうと思い、尋ねてみたのだ。私はてっきり、仕入れ時に、フランスのユーロ売値をそのまま日本円に置き換えているのだと思っていたのだが…。

特にAlphonse Leducの楽譜に関して、表紙の「Réf. : 」という項目を参照してみていただきたい。アルファベット二桁の記号が書かれていると思うのだが、この記号こそが値段を決める指標になっているのだそうだ。つまり、AAから始まって、AB → AC → AD →…→ AZ → BA → BB → BC → BD →…という風に、楽譜の価値が上がっていくのだとのこと。

お店の楽譜や、手元の楽譜をいくつか調べてみたところ、こんな感じだった。

Christian Lauba「Neuf Études Cahier1」→AU
Jacques Ibert「Concertino da camera」→BH
Jean-Marie Londeix「Hello! Mr.Sax」→BP
Edison Denisov「Sonate」→BR
Jindrich Feld「Quatuor」→CD

これらのアルファベットを元に、ある時点での価格を設定し、為替相場の変動により価格改定を行っていく、ということだそうだ。価格が据え置かれているものに関しては、新たに出版された楽譜と比較して、日本での売値が逆転しているものもあるようだ。

あ、すいません。小文字もあったかもしれない(小文字のほうが小さい)。とにもかくにも、アルファベットの昇順なのだそうだ。

いやー、知らなかったなー。え、もしかして常識?

2008/06/27

微分音にうなされる

どうもー。kuri@研究室でお昼ごはん中です。

最近、とある四重奏の曲をさらっていたら、微分音を出す必要が出てきてしまいまして。しょうがないのでダニエル・ケンジー氏の「Les sons multiples aux saxophones」を買ってきたんですよ。まあ他にも、とあるプロジェクトで重音について詳細に調べる必要があったので、ちょうど良かったんですが。

そしたらなんと、重音に含まれている微分音は載っているけど、単音の運指が載っていない!なんとなんと!これは困った。

しょうがないので、開き直ってロンデックス氏の「Hello! Mr.Sax」を探すことにします。けっこう高かったような気がするんだけどなあ。あー、「サクソフォーンの学習方法」もほしいですね。上田啓二さんが日本語に訳しているやつ。最近サクソフォン関連書籍の増えっぷりが激しいので、またブログ上でぼちぼち紹介していきたいと思います。

(書きながら気づいたのですが、文体がdosaさんっぽくなりました)

ではまたー。

2008/06/25

Letters from Glazunov(グラズノフ「協奏曲」)

André Sobchenkoというロシア出身のサクソフォン奏者がSaxophone Journal上で書いた、Letters from Glazunovという記事がある。これは、グラズノフの書簡をもとに、彼が作曲したサクソフォンのための二作品…「サクソフォン四重奏曲作品109」と「サクソフォン協奏曲」…の作曲経緯を紐解いてゆく、というものである。あの雲井雅人氏も「素晴らしい。読まねばならぬと思う」と評すほどの興味深い内容だ。

以前、「サクソフォン四重奏曲作品109」に関する部分については翻訳したのだが(→2007年2月17日の記事)、「サクソフォン協奏曲」の部分については、ずっと懸案事項であった。ここ最近、暇を見つけては翻訳作業を進めていたのだが、ようやく終わったので、ご覧いただきたい。

転載許可をとっていないため、まずかったら消します。というか、André Sobchenkoの連絡先が分からないんですわ。困った…。あと、翻訳ミスがあったらご指摘くださいm(_ _)m

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シュタインベルクへ
1933年12月26日
今日は休み休み、35分ほど作曲をやったよ。

このころから、時系列的な手紙のやり取りを追うことができなくなる。以下の情報は、シュタインベルクによる失われた手紙のスケッチである。二重引用符付きのテキストは、グラズノフ自身の言葉である。

1934年、グラズノフは再び病に侵される。今度は、インフルエンザと気管支炎にかかってしまったのだ。3月には、彼はサクソフォン協奏曲の作曲を開始する。"ドイツのサクソフォン奏者であるシガード・ラッシャーのリクエスト…というよりもむしろ、サクソフォンでこんなことができるのか!というインスピレーションによって"…グラズノフはそのインスピレーションを受けたときの様子について、3月17日の手紙で述べている。作曲は大変早く進み、4月4日には協奏曲が完成したと、やはり手紙の中で述べている。

シュタインベルクへ
1934年6月4日
「サクソフォン協奏曲」の作曲を終えた。スコアとピアノの両方の準備ができたよ。そのうち、フランス人のミュールと、ドイツ人のサクソフォン奏者であるラッシャーの演奏を聴くことができるはずだ。この作品は、Es-durで書かれており、いくつかのセクションに分かれてはいるが間断なく演奏される。最初の提示部は、4/4のアレグロ・モデラート、Es-durから始まるが、最後にはg-mollで終わるんだ。その次にCes-dur(H-dur)で3/4のアンダンテが歌われて、展開部が続く。そして、束の間のカデンツァ。終結部は、c-moll、8/12のフーガ形式で開始する。フーガでは、それまで使ったテーマがすべて現れて、Es-durのコーダを導いていく。全体は、かなり濃密になってしまった…演奏時間は18分以内といったところだろう。伴奏は、div.部分を多く含んだ弦楽のスコアとした。ところで、曲中いくつかの場所で私は弦楽パートに管楽器の代役をしてもらうな書き方をしたんだ。それはこういった方法だよ:ある弦楽パートをオクターヴのユニゾンにして、上のパートを2艇のチェロとユニゾンにするんだ。この方法に関しては少し不安があったのだが、Yuli Konusの兄弟のMetner、それからチェレプニンにスコアを見てもらったところ、ポジティブな返事をもらったよ。それから、フォルテの場所では、ダブル・ノートをたくさん使った。ダブル・ノートに関しては、少し心配だったので、Yuli Konusに尋ねてみるつもりだ。彼とは以前、私の「ヴァイオリン協奏曲」で一緒に仕事をしたことがあるのだが、こういった区別に関するエキスパートで、あのチャイコフスキーに対してもアーティキュレーションの要求をしたことがあるそうだ。

シュタインベルクへ
1934年7月13日
「サクソフォン協奏曲」のスコアとピアノパートの準備が、すべて完了した。それと一緒に、私はこの作品を聴く機会を心待ちにしているんだ。なぜなら、私は今年のコンサート・シーズンには「Poeme Epique(Symphonic Poem)」の演奏をお願いしてしまったからだ。

シュタインベルクへ
1934年11月21日
「サクソフォン協奏曲」は、今シーズン、イングランドとスカンジナビアでの演奏会で取り上げられるはずだ。素晴らしいテクニックを持ったドイツ人のサクソフォン奏者で、シガード・ラッシャーという人物がいるのだが、彼が独奏を務めるようだ。パリでは、ギャルド・レピュブリケーヌの主席サクソフォン奏者でマルセル・ミュールという人物が、私の協奏曲を演奏したがっているよ。

シュタインベルクへ
1934年12月5日
「サクソフォン協奏曲」が、ついに初演された!スウェーデンの2つの大きな都市で、シガード・ラッシャーが吹いてくれたんだそうだ。来年、ついにパリで聴くことができそうだ。

1936年の3月21日、グラズノフは亡くなった。残念なことに、グラズノフ自身が果たして協奏曲を聴くことができたかどうなのか、ということを指し示す情報はない。ところで、グラズノフの「サクソフォン協奏曲」やそのほかの作品は、常に彼自身の「エゴ」を覆い隠すことで、完璧さを達成している。彼は、常に自分自身のアイデアや音楽的な構想を、音楽仲間や実際の演奏家に対して相談していたのだ。例えば、A.Y.Shtrimerに対する手紙の中では、こう書いている。

"親愛なるAlexander Yakovlevich、
「チェロ協奏曲」の最終更新版を送ります。ピアノスコアがいつ製版業者から出来上がってくるか、ちょっと分かりません。今日、パブロ・カザルスがパリに来るので、彼に会うつもりです。カザルスは私に、アーティキュレーション上の問題について手紙を送ってきており、いくつかちょっとした変更を私に教えてくれるようです。もしそれが良い示唆であるならば、とてもうれしいことです。おまけに、彼はすでに私の「チェロ協奏曲」を暗譜しているとのことです。"

その他、「サクソフォンと弦楽オーケストラのための協奏曲」に関しては、いくつか書くべき事実があります。ソヴィエト連邦時代、この曲はオーケストラのスタンダードなレパートリーではありませんでした。ソ連時代のもっとも有名なオーケストラである、E.スヴェトラーノフ指揮USSR交響楽団は、ロシアとソヴィエトの音楽を網羅して録音する、という企画を立ち上げていましたが、残念なことにグラズノフの「サクソフォン協奏曲」は省略されてしまいました。1936年、フランスの出版社Alphonse Leducは、ピアノ・リダクション版の楽譜に、不可解な追記を行いました。Leducは、A.Petiotの名前をセカンド・コンポーザーとしてグラズノフの隣に並べて書いたのです。しかし興味深いことに、グラズノフの書簡を辿る限りは、誰かと一緒に作業した、などということは一言も書かれていません!

グラズノフの死から36年後、1972年10月14日のことです。ソヴィエトの見識者たちは、グラズノフを、ロシアを代表する作曲家として公式にアナウンスしました。グラズノフの遺灰が、祖国に返還されることとなったのです。その遺灰は、レニングラードのAlexander Nevsky Lavraにある、偉大な芸術家たちが埋葬されている共同墓地へと運ばれ、再び埋葬されました。1970年代なかば、ソヴィエト連邦文化省はサクソフォンのための高等クラス設立を決定しました。そのクラスはモスクワのグネーシン音楽学校に開かれ、これが、ロシアで初めてサクソフォンの専門家を養成するための場となりました。この決定が下されるに至った支配的な理由の一つとして、ロシアの作曲家により書かれた音楽を永続させ、再評価するという目的があったことは言うまでもありません。

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以上。やはり、きちんと日本語に翻訳して読んでみると面白いですなあ。「協奏曲」に関する書簡の内容はもちろん、付加情報としてセルゲイ・コレゾフ Sergey Kolesovの母校である、グネーシン音楽学校のサクソフォン・クラスがいつ設立されたかなんて内容まで(ほとんど知られていないのではないか?)。

ところで、ロンデックスの評伝のなかでA.Petiotについての該当部分を翻訳してブログ上に載せた、数日前の記事なのだが、コメント欄でいろいろ議論がされている(DONAXさん、Thunderさん、コメントありがとうございます)。記事と一緒に、そちらも併せて参照していただきたい。

2008/06/24

Recitation Book on YouTube

ノースウェスタン大学(雲井雅人さんと佐藤渉さんの出身校)の学生で結成された、アメジスト四重奏団 Amethyst Quartetの演奏がYouTube上にアップロードされていた。しかも、なんと演奏曲目がディヴィッド・マスランカ David Maslankaの「レシテーション・ブック Recitation Book」とジェルジ・リゲティ György Ligetiの「6つのバガテル」!こいつぁ、驚きだ。

とりあえず、「レシテーション・ブック」だけ貼っておく。リゲティのほうは、辿ってみていただきたい。技術的にはかなりしっかりしたものだが、後はこれで雰囲気さえ良ければいいのに。雲Qさんの演奏と比べてしまうと、ちょっと貫禄に差がありすぎるかなあ、なんて。しかし彼らは、きっと雲Qさんのアメリカツアーを聴いて感銘を受け、取り組むことにしたのだろうなあ。もしノースウェスタンで聴いたということならば、彼らは世界初演の演奏を聴いたということになる。

ところで、アルトを吹いているSean Hurlburtはどこかで名前を見たことがあるなあと思ったら、ダールの協奏曲の動画で演奏している、ということでこちらの記事で紹介したことがあったのだった。

・第1楽章


・第2楽章


・第3楽章


・第4楽章


・第5楽章:技術的な安定度が高い(最後のトリルで循環呼吸を使ったり)のだが、中間部がなーんだか日常的な響きなんだよなあ。


「レシテーション・ブック」、少なくとも「マウンテン・ロード」よりは良い意味で奏者を選ばない曲なのかな、と思う。ぜひ、広く演奏されるようになってほしいものだ。

2008/06/23

書き直し中

合奏してみるとなかなか思ったような音が出ず、ラージ用の「セント・ポール組曲」の楽譜を書き直し中。作業内容は、主にフラジオ音域の削減。やっぱり、実際音を出してみないとわからないところだらけだ。

SSAATTBBの8重奏。ちなみに、Intermezzoは四重奏で終わって、Finaleは四重奏で始まる…というアイデアで書いてみた。下に載せたのは、Jigの楽譜。

以下、自分用のメモ。

・旋律の輪郭は自然な形で・跳躍の削減・フラジオ音域の削減(全体の雰囲気より優先)・ベースライン再考

・パート割をどうするか?(自分はどこを吹く?)・IntermezzoのViola-SoloをAlto Saxに移すか?

・アナログメトロを使用した練習・音源を聴く・シャープさらう

2008/06/22

A.Petiotって誰?

洗濯物が乾かない季節。今日は、午後を使って目いっぱい個人練習。懸案だったいくつかの曲に、ようやく進展が見えてきた。

さて、グラズノフの「協奏曲」に関しては、今までもいくつか記事を書いてきた。下に挙げたもの以外にも、もしかしたらあるかも。

作品番号について
自筆譜と出版譜の違いについて
ラッシャーのエッセイ

そうだ、「Letters from Glazunov」の続きを翻訳するという作業も残っているが、今日はA.Petiotについて記された文献の翻訳を載せてみたい。Leducからの出版譜のタイトル下に、グラズノフと共に名を連ねているA.Petiot。彼がいったいどういった人物であるのか…というのは、殆ど知られていないようだ。

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James C. Umble著「Jean-Marie Londeix - Master of the Saxophone」より。ロンデックスがグラズノフの協奏曲についてエッセイを書いている:

…この「サクソフォン協奏曲」について、Gilbert Leducはこう書いている。「私の父はサクソフォン奏者ではありませんでしたが、グラズノフと親交がありました。彼は、この楽器のために作品を書くよう、グラズノフを促したのです。最初の、サクソフォンとピアノの版は、1936年2月10日に、印刷業者に回されました。数週間後、浄書された楽譜が印刷業者から出来上がってきて、私の父はすぐさまそのスコアをグラズノフの元に届けました。…おそらくは、その瞬間こそがグラズノフにとって、最後の幸せなひと時だったのです。なぜなら彼は、3月21日に70歳でこの世を去ったからです。」この証言どおり、グラズノフの死に際して撮影された彼の部屋の写真には、彼の仕事机の上にスコアが慎ましやかに置かれているのを、見て取ることができる。

グラズノフのほかの作品と違い、この「協奏曲」には作品番号が付与されていない。ところで、Alphonse Leducから最初の版が出版されたときに、作曲者の名前の横にAndré Petiotが名を連ねた。これはいったいなぜだ?私も、いまだに疑問に思っている。

この疑問に対して、Gilbert Leducはいくつかの理由を教えてくれた。「ロシア革命後、ソビエト連邦は西側の作曲家に対して版権料を支払わなくなりました。そこでフランスは、その報復として、ソビエト連邦出身の作曲家に対して版権料の支払いを拒みました。グラズノフの友人であったAndré Petiotは、作品に連名をすることで、グラズノフが間接的に支払いを受けられるよう、協力したのです。」また、別の理由として、Gilbert Leducはこんなエピソードを教えてくれた。Petiotはグラズノフと親交があり、衰弱したグラズノフはPetiotに対して手伝いを求めたというのだ。それは、オーケストレーションの作業の最中のことであったという。作業が終わった後、グラズノフの希望で、A.Petiotの名前が楽譜に入れられた。その後、首尾よくSACEMの管轄リストに登録されたということだ。

Gilbert Leducに、これらのエピソードを聞いたのは1980年頃のことである。それから20年以上経つが、驚いたことにいまだにLeducからの出版譜にはA.Petiotの名前がしっかりと刻まれている。そこで、改めてJean Leduc(Gilbert Leducの甥であり、現在のAlphonse Leducの社長)にその理由を尋ねてみた。Jean Leduc曰く「Petiotの名前に関しては、楽譜を変えることができません。国際的な著作権絡みの問題もありますし、それだけでなく著者の権利にも関わってきます。」

ここで、こんな疑問が残る。この「サクソフォン協奏曲」におけるAndré Petiotの役割は、いったい何だったのか?そして、彼が関わった自筆譜は、失われてしまったのか?

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うーん。ますます判らなくなってきた。謎が謎を呼ぶ感じだ。この曲の献呈者であるシガード・ラッシャー Sigurd Rascherが「協奏曲」について語ったエッセイと、あまりに差がありすぎるのだ。

Gilbert Leducの証言「私の父は…グラズノフと親交があり…この楽器のために作品を書くよう、グラズノフを促したのです。」→つまり、Gilbert Leducは、父であるAlphonse Leducによってこの作品が委嘱されたと考えていたのだろうか。

「最初の、サクソフォンとピアノの版は…」→ラッシャーの証言では、最初の版はサクソフォンとオーケストラのためのものだったということだが?Gilbertの証言の流れからすると、ピアノ版をオーケストレーションをしてオーケストラ版を作ったということになっているが…。

そして、Petiotが果たした役割とは…?結局、判らずじまいなのであった。

ラランさんの演奏会チラシ

ジェローム・ララン Jérôme Laranさんの演奏会のチラシをもらった(^^)vクリックすると拡大する。

CafuaでレコーディングしたCDの、発売記念演奏会。楽しみだなあ。そういえば、原さんの演奏会にも、このチラシが挟まっていたな。

2008/06/21

ダッパーさんのライヴCD

今日は朝からフェルド「四重奏曲」の練習、その後東京に出て、Ensemble TXの練習。20時過ぎに帰ってきた。郵便受けを覗いたところ…ダッパーサクセーバーズのきんじさんから、演奏会のライヴCDが届いていたー!

「ブログ引越し記念特別企画(?)」として、ダッパーサクセーバーズさんの昨年の演奏会の録音を、ブログ読者向けに限定プレゼントする、という企画が立ち上がっていたのだ。私は残念ながら外れてしまったのだが、いろいろあって(?)、送ってくださることになったのである。しかも、当初の告知とは違った完全装丁版!間違いとかではないのかなー、と余計な心配をしてしまう。ありがとうございます。

これがそのCD。写真だとわかりづらいが、美しいジャケットに、ディスク表面へのレコードのようなプリント(こういうCD-Rが売っているのかな)。我々の演奏会後のライヴ録音集とは大違いだ。オマケ?としてなんと演奏会のパンフレットも付けてくださったのだが、そちらも非常に洗練されたデザインとレイアウトなのである。

さて、CDの中身だが、こんな感じ。

~幕前演奏~
栗原正己 - ピタゴラスイッチのテーマ
宮川彬良 - ゆうがたクインテット
~第1部~
P.イトゥラルデ - ギリシャ組曲
J.B.サンジュレ - サクソフォン四重奏曲第一番より
A.フラッケンポール編 - ラグタイム組曲より
~第2部~
中尾敦 - おやつはチョコケーキ
本多俊之 - サクソフォン・パラダイスより
渡部哲哉編 - 二つのアメリカ民謡
H.カーマイケル - スターダスト
菅野よう子 - Tank!
~第3部~
葉加瀬太郎 - 情熱大陸
L.バーンスタイン - ウェスト・サイド・ストーリー
A.I.ハチャトゥリアン - 組曲「ガイーヌ」より
~アンコール~
荒井由美 - ルージュの伝言
Secret Garden - ユー・レイズ・ミー・アップ

どれも良いのだが、やはり圧巻は第3部のラージアンサンブルだろう。30人、ということで、どういった響きがするのかドキドキしながら聴き始めてみたのだが(チューニングから聴いているこちらもドキドキ)、驚くほどにすっきりした演奏に舌鼓を打った。これは、凄い。普段、たったの8人でアンサンブルが上手くいかないと苦労している我々は、いったい何なんだ。

初回演奏会の立ち上げから、現在に至るまでの中で培われた貫禄のようなものを感じた。しかし変な緊張感があるわけでなく各人が音楽を楽しみながら、それでいてアンサンブルが精密なのだから…サクソフォンによるラージアンサンブルの、ある種の理想形を垣間見た気がする。最後に響く「ユー・レイズ・ミー・アップ」が、とても感動的で、何回も繰り返し聴いてしまっている。

四重奏や五重奏のほうは、ぜひシリアスな大曲を聴いてみたいな。馴染み深い曲をたくさん配置しているのは、一般のお客さんが多いからなのだろうか。伝統的なフレンチ・レパートリーや、ちょっと片足半分無調に足をつっこんだような曲も聴いてみたかったかも(^^)きっと、凄い演奏になる予感がするのだが。…と思っていたところで、渡部哲哉編の「二つのアメリカ民謡」が、ガツンと来るのだ。おぉ。

と、何だか変な感想になってしまった…(なんだかスミマセン)。「サックス大好き!」という、私たちと同じ気持ちを持ちながら、10年以上前から四国のサクソフォン界を盛り上げてきたアマチュア団体であるダッパーさん。大先輩格の団体として、これからのますますの活躍を祈念したい。

そして改めて、CDの送付ありがとうございました>きんじさん始めとするダッパーの方々

原博巳サクソフォンリサイタル

ただただ、素晴らしかった。私自身が今まで聴いた演奏会の中でも、ベストの一つとなった。

【原博巳サクソフォンリサイタル】
出演:原博巳(sax)、野原みどり(pf)
日時:2008年6月20日(金曜)19:00開演
場所:浜離宮朝日ホール
プログラム:
鈴木純明「スフルスティック」「スラップスティック」
金子仁美「気泡」
西田直嗣「秋のアノフェレス」
~休憩~
C.ケックラン「練習曲より」
P.モーリス「プロヴァンスの風景」
F.デュクリュック「ソナタ嬰ハ調」
~アンコール~
G.ピエルネ「カンツォネッタ」

言葉でこの演奏会の素晴らしさを表すにはどうすれば良いだろう、と思いつつも、何とか感想を書き並べてみよう。

プログラミングからして、まず目指すものがうっすらと透けて見える。プログラムの解説文によれば、プログラム前半の同時代の作曲家たちの作品から、後半のフランス作品を逆照射するという形になっているそうだが、その照射された先に、マルセル・ミュールの存在があることはほぼ間違いないだろう。原さんご自身のブログのいくつかの記事からは、ミュールに対する深い敬意を感じ取ることができるが、リサイタルを開くにあたって、きっとそのミュールのことを意識しながらプログラミングを行ったのだろうことは、容易に想像がつく。だから、私はこのプログラムを見たときに、同時代の作曲家(前半):原博巳=フランスの作曲家(後半):マルセル・ミュール、という図式がとっさに思い浮かんだ。

そんな曲目であるわけで、ご自身もこのリサイタルにはかなり気負って臨んだことと思われる(なんと一年以上前から準備していたということだ)。そして、ピアニストに野原みどりさん、会場に浜離宮朝日ホールという、これ以上ないと思われる共演者と環境を得てのリサイタル!原さんにとっても、おそらく凄い体験だったのだろう…。

ホール全体に浸透するppppでの主題音列の提示から、演奏が始まった。ジェローム・ララン氏と鈴木純明氏のコラボレーションより生まれた、「サクソフォンのための現代奏法エチュード」から「スラップスティック」。この曲へつなげるための無伴奏作品「スフルスティック」である。音響効果は、ブレスノイズ、重音、スラップタンギング、2~3オクターヴの高速な跳躍、フラッター、etc...無伴奏を吹いている原さんはどこまでも自己の中に埋没してゆく、というイメージがあったのだが、良い意味で裏切られることとなった。絶妙なバランスで外と内を区別しながら、サクソフォンの音が並べられていく。

ここで野原みどりさんが登場。金子仁美「気泡」。もともとは須川さんにより初演された作品で、須川展也サクソフォンコレクションとして楽譜が容易に入手可能だ。譜面は何度か見たことがあるが、"演奏至難"という言葉が、これほどまでに当てはまる曲も、なかなか無いのではないか。しかし、その高いハードルを越えたところにある響きは、果てしな美しい響きだった。鳥肌立ちっぱなし。

西田直嗣「秋のアノフェレス」は、サクソフォンのための作品コンクールで、以前原さんが演奏を担当したものなのだそうだ。演奏を聴きながら、曲目解説を思い出してニヤリとしてしまった。解説文をそのまま引用すると…「『あの時あのようにしていたら』、『あの時にさかのぼってやり直したい』などという、我々他日常に抱く公開や、やさぐれた後ろ向きな思考を表しているようにも見える」とのこと。やや演奏時間は長めだが、演奏のゆるぎない安定さと作品構成の明確さがあり、ご普通の無伴奏のクラシック作品として耳に飛び込んでくる。

休憩。ロビーの丸テーブルが凄いことになっていた。Thunderさん、mckenさん、MJさん、maeさん、ねぇ。さん、ドルチェのT内さん、そして私。ちなみに客席では、昨年11月のドゥラングル教授のリサイタル以来となるあかいけさんと一緒に聴いていました。

後半は、良く知られたケックラン、モーリス、デクリュック。こういった誰もが知る曲を一世一代のリサイタルという場で演奏して、個性を発揮できる奏者がどれだけいるだろうか!聴きなれた曲であるはずなのに、出てくる音楽は誰が聴いても原さんらしい演奏。しかも、それが変な自己主張とは無縁のものなのだから、凄い。かなり練りこんでいる…どれもが名演だった。

デクリュックは、私も大好きな曲だが、野原みどりさんの好サポートを得て、ピアノという海の中を魚のように自在に動き回る原さんのサクソフォン。第一楽章での陰鬱な表情は、起承転結を経て第4楽章で一気に開放される。最後の輝かしい伸ばしの音は、ホールを照らし出す光のようだ。うーん、泣きました。大きな拍手。日本のサクソフォン界にしっかりと刻まれるべき、マイルストーン的な演奏会になった。アンコールに、ピエルネ「カンツォネッタ」。

いろいろ書いたけれど、まとめると「とにかく素晴らしかった」ということです。それに尽きるかな。これからの原さんの活動が、ますます楽しみになった!5年後、10年後に、こんどはいったい何をしてくれるのだろう。

帰り際には、MJさん、そして初対面となる豊島四号さんと、演奏会を反芻しつつかるーく飲み。楽しかったです、どうもありがとうございました~。

2008/06/19

Franck Bedrossianの作品集

スペクトル楽派、というものが何であるかを一言で説明するならば、"音"をフーリエ変換して得られるスペクトルを素材として音列を構成したり、逆にスペクトルから音を生成したり…そういった、音響学的見地からの作曲を行った楽派のこと。ジェラール・グリゼイ Gérard Grisey、トリスタン・ミュライユ Tristan Murailといったの作曲家たちが、このスペクトル音楽と言われるジャンルを、強力に推し進めていたという経緯がある。

なんじゃそりゃ、と思うかもしれないが、実際出てくる音も「なんじゃそりゃ」という感じ。つまり、かなり理論的に作曲されているはずなのだが、音にしてしまえば、クラスターはクラスターなわけで、使われている技法などは言われなければ判らない。昨年も「Music Tomorrow 2007」で金子仁美「Nの二乗」を聴いたが、使用されている技法などはサッパリであったのだ。

だが、このスペクトル音楽というやつ、他の曲と聴き比べたときの「ひんやりとして鋭利な感じ」が、ちょっと好きだ。どんな不協和な響きが出てきても、私の耳には常に洗練されているように聴こえるのが面白い。

前置きが長くなった。Franck Bedrossianの作品集、「Charleston(Sismal Records SR003)」。ジェローム・ララン Jérôme Laran氏からご案内いただいたので、海外の通販サイトであるClic Musique !から買ってみた。昔は海外のサイトに注文を出すのにも、いちいち身構えていたが、最近は気軽にできるようになったなあ(ちょっと進歩)。

フランク・ベドロシアン Franck Bedrossianは、CNSMDPでグリゼイに学んだ作曲家。グリゼイの弟子であるフィリップ・ルルーとも親交があったと記されているから、どうやらスペクトル楽派の流れに属する作曲家だと考えて間違いがなさそうだ。写真を見る限り、まだかなり若い。30~40歳くらいじゃないかな?収録されているのは、以下の5作品である。

"Charleston" pour 15 musiciens
"L'usage de la parole" pour clarinette, violoncelle et piano
"Digital" pour contrabasse et électronique
"La solitude du coureur de fond" pour saxophone alto
"Transmission" pour basson et électronique

一曲目から「いかにも」という感じのクラスターが耳をつく。楽譜の内部で、どういった理論のもとに、どういった音の重なりが構築されているのか、ということは判らないが、テンションと響きに身を委ねていると、聴き手は徐々にその音響世界へとトリップしてゆく。続く「L'usage de la parole」も、クラリネット、チェロ、ピアノという編成からは想像もできないかなりのテンション。この2曲を並んだのは、偶然ではないだろう。

「Digital」は、エレクトロニクスとコントラバスの作品。ダイナミクスレンジの広い音響…コントラバスにも、極限的なテクニックを要していることがわかる。ラランさん独奏の「La solitude du coureur de fond」。唯一の独奏作品だが、編成の大きい作品が続いたせいか、不思議と耳を傾けたくなる。冒頭のゆったりしたテンションが、クライマックスに向けて特殊奏法を交えながら盛り上がっていく様は、見事!

しかし、サクソフォン独奏のあとに、「Transmission」は、かなりビビります(笑)。個人的には「Digital」よりもずっと好みだなー。サクソフォンにもこういう曲ないかなあ。

なかなか日本では流通しづらいCDだろうが、(コンテンポラリーに対するアレルギーが無い向きには)見つけたらぜひ手にとっていただきたい。

明日は原さんのリサイタル

うおー、なんだかこっちまでドキドキしてきた(←なぜ笑)。なんせ、私的には今年一番の注目演奏会!凄く楽しみだー。

ハバネラ以来、久々に「関係者全員集合」って感じになりそう。

2008/06/18

ラージ初合わせ

Tsukuba Saxophone Quartet - SAXOPHONE CONCERT Vol.2】に向けてのラージ初合わせ。グラズノフ/柏原卓之編の「協奏曲」と、ホルスト/TSQ編の「セント・ポール組曲」。

グラズノフの、たくとんさんによるアレンジ、凄い。たった8本のサクソフォンなのに、ここまであの弦楽の雰囲気を再現してしまうのか。入手までにはいろいろゴタゴタがあったのだが、ここまで楽譜が凄いと、すべて吹き飛んでしまう。現在はレンタル譜という形式だが、そのうちに某所から出版の予定もあるそうだ。松雪明先生との合わせも楽しみ。

ホルストも一緒に音を出してみた。こちらのアレンジはほとんど私がやったのだが(5日間で1, 3, 4楽章を書いた)、たくとんさんのアレンジと比べてはいけませんな。天と地ほどの差があるとはこのことだ(苦笑)。もうちょっと和音の構成を組み替えないとなー。

9/28、かなり気合い入ってます。ぜひお越しくださいませ~。→Tsukuba Saxophone Quartet

それから、長野ツアーもやること決定!わー、パチパチ。練習に重点を置きつつ、少なくとも諏訪辺りでの一回の本番ということになりそうだ。

Firefox 3のリリース日

おお、今日はFirefox最新バージョンのリリース日だ。何時からダウンロードできるのかなー。24時間にもっとも多く「ダウンロードされたソフトウェア」というのを目指しているらしい。よし、本ブログも応援の意味を込めて、フォクすけのバナーを貼っておこう。

Download Day

Firefox、個人的いちおしブラウザ。実はバージョン3に関しては、先駆けてRC版から使用していたのだが、HTMLのレンダリングが速くなったり、Java Scriptの実行が軽くなったり、インタフェースが改善されたりと、なかなか良い。SleipnirやDonutって、レンダリングエンジンはIEのものなので、どうも速度的に不満があるのだよなあ。Operaは軽いのだけれど、崩れるページが多すぎてちょっと敬遠。

バージョン3のリリースを機会に、皆さん乗り換えてみてはいかがでしょう?

(追記)

午前2時からのリリースだったようだ。朝一で、さっそくインストールしました(^^)

2008/06/16

バランス

フランスの伝統的なレパートリーに縛られて、コンテンポラリーを毛嫌いするのも、ちょっとねえ。しかし現代音楽ばかりやって、本物のクラシックの表現に触れることがないのも、クラシックの楽器に取り組む者としてはどうなんだ…。

商業的な需要にばかり流されてしまうのも、いかがなものか。かといって、"ダレモシラナイ・オン・パレード"ばかりだと、当り前のように客足が遠のく。

現代フランス流の音色が広まってきているなあ。いやいや、日本には日本ならではの前時代のフランスの薫りを残した和声感を押し出した音色があるでしょう。と言いつつも、うまく切り替えながら使うことができれば、さらに表現が広がるということだろう。

弦楽器の表現。鍵盤楽器の表現。管楽器の表現。打楽器の表現。

要は、バランスが大事なのだよな、ということ。幸い、私が存じている(アマチュア・プロ問わず)サックス吹きの方々を思い浮かべてみると、クラシック・サックスに対してバランスの良い感覚を持つ奏者が多くいるなあ、と思う。そういった音楽家の演奏会にこそ積極的に足を運んでいきたいし、何より応援したくなるというものだ。

大室勇一氏の逝去と川崎のコングレス開催~これを、日本のサクソフォン界の第1期から第2期への移行と考えるならば、現在の日本のサクソフォン界は第2期から第3期への移行期と捉えられよう。その過渡期である"いま"という時代に何をするかが、今後のサクソフォン界の方向性を決定づけていくことに、ほぼ間違いはない。

この時代を背負っていくサクソフォン奏者に、なんと頼りがいのある方々の多いことか。そしてもちろん、プロフェッショナルの方に任せきりではなくて、私たちアマチュアにもできることがあるはずだ!

2008/06/15

Eugene Bozza「Aria」

ウジェーヌ・ボザ Eugene Bozza(1905 - 1991)は、パリ・コンセルヴァトワールに学んだ作曲家、指揮者。サクソフォンのために「11のエチュード」「アンダンテとスケルツォ」「コンチェルティーノ」「イタリア綺想曲」などを手がけ、現在でもボザの作品が演奏される機会は多い。指揮者としてはオペラ・コミークなどで活躍し、教育者としてはValenciennes音楽院などで教鞭をとった。

サックスを吹いている人ならば、ほとんど誰もが知っている「アリア Aria」。マルセル・ミュールの委嘱で1936年に書かれた、ほんの数分の小品である。

タイトルの下には但し書きとして「after the Manuel for the Fantasy in F of J.S. Bach」とあるのだが、これはバッハの「Pastorale BWV590」のc-mollの第3楽章"Aria"を素材として使用し、サクソフォンとピアノのために書き下ろしたもの、ということになるようだ。

ちょっと探したら、MIDIファイルを見つけたので、リンクを貼っておく。おお、確かにあのおなじみのメロディだ。
http://www.geocities.jp/pastorel2/midi/bwv590_3.mid

楽譜の管理

自分が所有している楽譜は、スキャンして管理している。所有楽譜全体のうち、およそ30パーセントはすでにスキャナで取り込み、gmailに飛ばして保存してある。思い立ったときに、楽譜スキャン作業を行っている、というところ。

いろいろ利点があるのだが、まずは取り扱いの手軽さにある。例えば四重奏で楽譜が必要になったときなど、(ソロの楽譜は原譜を使用するけれど)さすがに四重奏の楽譜は原譜のパート譜を、メンバーに渡す気にはならないので…。本来ならばコンビニに走ってコピーをとるものだが、曲ごとにまとめて保管しておくことで、プリンタから一気に出力できる。400dpi・モノクロで保管しておけば、細かい楽譜でも視認性はほぼ完璧。五線がガタつくことがあるけれど、まったく許容範囲だ。

モノクロ(2値)で保管した楽譜をzipで圧縮すると、かなりサイズが縮むのも魅力的。例えば、いま現在取り組んでいるフェルドの四重奏曲、全部でおよそ100ページで、圧縮しなければ200Mbytesだが、圧縮すればたったの15Mbytesなのだ。このへんは、Lempel-Zivのアルゴリズムの恩恵だ。この処理方式では、元データのドットの繰り返しが多いほどに圧縮効率が上がるのだが(辞書式)、楽譜なんてほとんどが白地で、データ的にはずっと00000000...の繰り返し。そんなものを圧縮しているため、10倍以上の効率が得られているということになる。

gmailアカウントは20Mbytesの添付ファイルまで対応しているため、たいていの作品は一つのメールに一つの添付ファイル、という形式で保管でき、とてもすっきりする。取り出しの際には、gmailの強力な検索機能で一発サーチ。らくらく。gmailに飛ばしさえしておけば、半永久的に保管されるのも嬉しい。

最近では、LCDの譜面台なんてのが出てきたり、楽譜のオンライン販売も増えてきたりと、もしかしたらそろそろ紙の媒体から完全に離れる時代が、迫っているのかもしれない。と、言いつつ、一度スキャンしてしまった楽譜を捨てようと思うか…といわれれば、そうでもないのだが(^^;

そんなわけで、スキャナを持っている皆様、こんな楽譜の管理方法はいかがでしょうか?一度試すとクセになりますよ(?)。

2008/06/12

Tristezas de un Doble A

無人島に持っていく80分のCD-Rを編集するとしたら、間違いなく入れるであろう音楽。そして、自分が死ぬ前日に必ず聴きたい音楽。アストル・ピアソラ Astor Piazzollaの「AA印の悲しみ Tristezas de un Doble A」の、1986年11月のライヴ録音。

これを超えるタンゴは、おそらく先にも後にも存在しない。いやそれどころか、タンゴだけではなく、クラシック、ジャズ、即興などの音楽ジャンル全てが、この20分間に集約され、昇華されていると言っても過言ではない。

長い長いピアソラのバンドネオンの即興。どこまでも引き伸ばされるフレーズは、胸をかきむしるような思いに満ち溢れている、そのバンドネオンがひとたび収束すると、引き続いて、絶妙なロウ・テンポで現れるコンソーレのベースとシーグレルのピアノ。ここでは、ピアノとバンドネオンが呼応しながら絶妙な即興を繰り広げる。モントリオール盤に比べて自由闊達に這い回るベースも、神秘的な雰囲気をかもし出す。およそ10分過ぎたところで、ようやくプレリュードとなるが、ここでのテンポも、他の録音に比べると実にゆっくりである。低音で泣き喚くスアレス・パスのヴァイオリンと、バランスを構築するオスカル・ロペス・ルイスのギター。

再び場面は即興へ。やや急速調なコード・プログレッションへと突入し、ピアノもギターもベースも加わっての大インプロヴィゼイション大会。中間部では、まったく別の曲が3つほど挟まれるが、これも即興の中でその場限りで生み出されたメロディなのだろうな。まるでリベルタンゴのようなコード進行が提示されるところまで…。そして最後の、炎のように疾走するプレスト。数回余分にに繰り返されつつも、なんとか速度を落としてフィニッシュ。続く喝采から、いかに聴衆が興奮しているかを感じ取ることができる。

うーむ、凄いなあ。映像媒体としたら、1984年のモントリオールのものが一番だとは思うけれど、録音媒体としてはこの1986年の演奏が最高だ。

2008/06/11

New Century SQ「On Track」

ニュー・センチュリー・サクソフォン四重奏団 New Century Saxophone Quartet(以下NCSQ)は、数あるアメリカのサクソフォン四重奏団の中で、個人的にもっとも「アメリカ的」な団体かな、と思っている。「アメリカ的」ってなんじゃい、という感じだが、彼らのレパートリー・演奏・メンバー構成・活動内容といったものを見るにつれ、ふと思い浮かんだインプレッションだ。誰の目から見ても、あながち間違いではないのではないかな。メンバーは、以下の4人。

Michael Stephenson, s.sax.
Chris Hemingway, a.sax.
Stephen Pollock, t.sax.
Connie Frigo, b.sax.

これまで、いくつもの魅力的なアルバムを解き放ってきたNCSQだが、バリトン・サクソフォンにコニー・フリゴ Connie Frigo女史を迎えて以来、初めてのアルバムが、この「On Track(Alanna Records ACD6006)」。すでにmckenさんのブログでは紹介されている。Comissions Vol.2というサブタイトルの通り、NCSQによる委嘱作品のみを収録したディスクだ。

Jacob ter Veldhuis - Heartbreakers
Barbara Kolb - Franciscan Chant
David Lang - Revolutionary Etudes
John Fitz Rogers - Prodigal Child
Ben Johnson - O Waly Waly Variations

特徴的なのは、オランダの作曲家であるJacobTVことヤコブ=テル・フェルドハウス Jacob ter Veldhuisの作品「Heartbreakers」が収録されていること。アムステルダム音楽院への留学経験から、フェルドハウス氏と親交の深いフリゴ女史のこと…取り上げるに至った理由はその辺の関係にあるのだろう。もともとはジャズ・ゼクステットとゲット・ブラスターのために書かれ、The Haudini'sによって初演されたものだが、サクソフォン四重奏版はNCSQが委嘱し、初演したということになる。

編成からも想像がつくとおり、「Heartbreakers」のグルーヴ感はもの凄い!なんてったって、ジャズ・トリオ+サックス4本という、カッコイイ響きがしないほうがおかしいという編成だ。こういった曲を演奏されたら、まさにNCSQの独壇場で、きっと作曲家の頭の中に鳴っている音楽と、ダイレクトにリンクする演奏をしてしまっているんだろうな、という気さえする。

他の曲もなかなか面白いのだが、まあその辺はぜひ実際に聴いていただきたい。マイナーレーベルならではの、おちゃらけた(?)写真の数々や、"オマケ"にも事欠かず。流通状況はいまいちだが、Alanna Recordsから直接買うことができる。送料コミで25ドル未満には抑えられるはず。

2008/06/10

Renouncement

ジョン・ハール氏の門下生であるクリスチャン・フォーシャウ Christian Forshaw氏は、その独特の活動によってイギリス国内外から注目を集めている。彼のセカンド・アルバム「Renouncement(IntegraRecords ING1001)」は、サクソフォンと共に合唱が共演したCD。すでに発売して数年経つが、久々に棚の奥から引っ張り出して聴いてみた。

クランポンのプレスティージュを使用した、典型的ハール門下のサウンドなのだが、イギリスのサックスの音にびっくりしなくなってきたのは、耳が慣れてきた証拠だろうなあ。"クラシックのサックス"という先入観を持って聴いたときのインパクトは相当なもので、「???」が頭に並んだ後に中毒になるか、拒絶するかというところなのだが(私はもちろん前者だった)。新鮮な気持ちで聴けなくなったのは、ちょっと寂しくもある(苦笑)。

S.S.Wesley/C.Forshaw - Hereford
J.S.Bach/C.Forshaw - Not So Sad
C.Forshaw - Renouncement
Anonymous/C.Forshaw - Mortal Flesh
J.P.Rameau/C.Forshaw - Suites from Les Boréades
J.Dowland/C.Forshaw - None But Me
G.Carpentar - Songs of Sadness and Piety

さて、アルバムの中身だが、良い意味でのヒーリング・ミュージック~癒しのサクソフォン、という趣である。響きはどれも美しく、睡眠前にでもかけておきたくなるほど。かといって、巷に蔓延するようなオムニバス盤のようなものではなく、このCDに関しては真面目に聴こうとするとふつふつと奥深さが伝わってくるのだ。

ファースト・アルバム「Sanctuary」に収録されていた「Mortal Flesh」が再度収録されているのが面白い。聴き比べてみると、こちらのほうがずっと上手いじゃないか。「Sanctuary」で気になったフォーシャウのフラジオ音域における安定性がかなり良い具合に修正されており、再録のモチベーションが何であったのか、なんとなくわかる気がする(笑)。

そのほかの注目はと言えば、ゲイリー・カーペンター Gary Carpenterの「Songs of Sadness and Piety」かな。カーペンターと言えば「サクソフォン・ソナタ」等で知られる同時代のイギリスの作曲家だが、賛美歌を題材に使いつつも明らかなカーペンターの節回し!パーカッションやオルガンを豪勢に使いながら、時折の現代的なサウンドがたまらない。この曲だけは、サックスもジャズのフィーリングだ。

そういえば、全体のテンションや精緻さの中で、ラモーの作品だけはちょっとズッこけるのだが(--;;なぜこれを取り上げたのだろう。不思議。CDの入手先だが、ありがたい事に手に入りやすくamazonで普通に買えるフォーシャウ氏の公式サイトでも販売している。おっと、新しいアルバムがリリースされているみたいだ。フランス直球勝負か…そのうち買ってみよう。

50000ヒット

ウェブサイトkuri_saxoが、いつのまにか50000アクセスを超えていた。もともとこの日記も、kuri_saxoサイト内のページにHTMLで直接書き付けていたものだったが、便利さに惹かれてブログに移行したのだ。

メインであったはずのウェブサイトの一日あたりのアクセス数は、とっくにブログに追い越されており、更新もごく時々。だが、数年後のことを考えると、いちおうカウンタの桁数を上げておかないとなあ。

演奏会のお知らせ

Tsukuba Saxophone Quartetの演奏会、その2です。そろそろプログラムが確定し、練習が進んでいるものもあります。おそらく一番の目玉は、グラズノフ/柏原卓之編の「サクソフォン協奏曲」。日ごろより大変お世話になっている松雪明先生をお迎えし、一緒に演奏いたします。ぜひお越しください。

※2008年3月の演奏会とは、場所が違いますのでご注意ください!

【Tsukuba Saxophone Quartet - SAXOPHONE CONCERT Vol.2】
出演:Tsukuba Saxophone Quartet
客演:松雪明
日時:2008年9月28日(日曜)19:00~
場所:つくば市カピオホール(TXつくば駅より徒歩7分)
料金:入場無料
プログラム:
G.ピエルネ - 民謡風ロンドの主題による序奏と変奏
J.フェルド - サクソフォン四重奏曲
A.グラズノフ/柏原卓之 - サクソフォン協奏曲(独奏:松雪明)
G.ホルスト - セント・ポール組曲より

問い合わせ:
http://tsukubasaxophone.blog51.fc2.com/
kuri_saxo@yahoo.co.jp


もう一つ。8/15~8/17あたりで長野ツアー or 合宿やっちゃいます。わはは。半ば勢いですが、そちらも楽しみです。

2008/06/09

Ron Weatherburn SQ on YouTube

Ron Weatherburn Saxophone Quartetっていうか、New Zealand Saxophone Quartet?ニュージーランドのサクソフォンて、そういえば、聞いたこともないし、聴いたことないな。しかも、その動画が1968年のものだというのだからさらに驚き。演奏しているのは、フランセの「小四重奏曲」の第1楽章か!

ソプラノのRon Weatherburnは、メタルのマウスピースを使用している。ミュールの影響?うーん、何だかありそうでないサウンドかもしれない。スタイリッシュというか、泥臭いというか。

2008/06/08

トランス物に対する意識

サックスでトランス物をやる機会も増えてきたなー。きりがないが、ブラームス、ヒンデミット、ヒンデミット、フランク、バッハ、シューベルト…いくらでも挙げることができそうだ。一般の人に対して「増えてきたな」と思わせるのにはいろいろ理由もあろうが、例えば日本でのブームを見てみると、雲井さんがシューベルトを取り上げ、平野さんがC.P.E.バッハやヒンデミットを取り上げ…という風に、プロの方がCDで取り上げることで、一部の作品に対するブームが巻き起こっているようだ。

そういえばサックスの創生期にはトランス物しかレパートリーがなかったんだっけ。ミュールたちがギャルド・レピュブリケーヌの中でサクソフォン四重奏団を結成したときも、最初は弦楽四重奏曲のレパートリーを編曲しては、演奏会で取り上げていたと聞く。

まあ、昔と今では「無いものを求めて」というところから、「隣の芝生を見て」というような変化はあるのだろうな。トランス物とは言っても、ミュールの時代と現代とでは、そもそものモチベーションが異なることは、間違いないだろう。1920年代、ミュールは何を思いながら四重奏の楽譜をせっせと書きつけていたのだろうか。と、はるか昔に思いを馳せてみるのである。

2008/06/07

筑波大学吹奏楽団第59回定期演奏会

自分がが在籍していた頃とは、比べ物にならないくらいに上手い。これだけカッチリとアンサンブルが合えば、楽しいだろうなあ。あと、我々のころとの直接のリンクを感じなくなった…これがジェネレーション・ギャップというやつか(笑)。

何はともあれ、関係者の皆様、お疲れ様でした。

2008/06/06

Edmund von Borck's Concerto on YouTube

シガード・ラッシャー Sigurd Rascherは、そのキャリアの最初期…ドイツ在住のころ、Edmund von Borckの「サクソフォン協奏曲」をハノーファーの音楽祭において初演、直後にベルリン・フィルハーモニックと共に再演した。この演奏の成功は、ヨーロッパ中に知れ渡るところとなり、国際的なサクソフォン奏者としてのラッシャーのキャリアが、スタートするきっかけとなった。つまり、ラッシャーとその流派にとっては、ある意味最も重要な作品であるということになる。

昨年、ニューヨーク州立大学フレドニア校で行われたイベント"Rascher Centennial Celebration(ラッシャー生誕100周年記念祭)"では、コンチェルト・コンサートとしてラッシャーにゆかりの深い作品が数多く演奏された。その中で、グラズノフ、イベール、マルタン、ラーションと共に演奏されたのが、このEdmund von Borckの「Konzert für Alt-Saxophon und Orchester」だったのだ。そして、その演奏の模様が、なんとYouTubeにアップされていた。演奏は、サクソフォンがWildy Zumwalt。バックがSteven Jarvi指揮Western New York Chamber Orchestraである。

第1楽章:


第2楽章:


第3楽章:中間部に現れるスラップやフラッターを多用した部分、そして最終部のフラジオが聴きもの。


時代を経るにつれ、ポピュラリティを持ち損ねた理由は何となく分からないでもないが(苦笑…それほどキャッチーな作品とも感じないしね)、しかし1932年当時にこれを耳にした聴衆の反応は、如何ほどのものであっただろうか!当時はまだまだサクソフォン未開の地であった、ドイツだぞ。そこに突如彗星のように現れたサックス吹きが、こんなに目も回るような見事な演奏を披露した…というのを、想像していただきたい。

2008/06/05

やくたたず

ken_i_tp氏に影響されてgeotargetingなんてのをつけてみた(ページの右下「最近のコメント」の下に張り付け)。アクセス解析のパブリック版みたいなもの。Google Analyticsを導入することで以前から分かってはいたけれど、東京都からのアクセス>茨城県からのアクセス、なのですな。なぜだ。

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ネットをちょっと調べていたら、坂田明氏の作った「やくたたず」の歌詞が出てきた。ライヴで聴いていたときには、全く分からなかったのだが、活字として知ることができてありがたい。

http://www.tokuzo.com/2007/01/pickup01.html

やくたたず やみくもりもり やみくもりのちは はれだ♪
やくたたず やみくもりもり やみくもりのちは あめだ♪
いまにみろ みろくぼさつを みろくぼさのばを うたう♪
やくたたず やみくもりもり やみくもりのちは あらし♪
いったん きめたけどどど そおれ、 かばきりん どどすか
だったん そばたべてぇぇ えいや、 それ
やーくーたーたーずーー♪

役立たず 闇雲りもり 闇曇り後は 晴れだ♪
役立たず 闇雲りもり 闇曇り後は 雨だ♪
今に見ろ 弥勒菩薩を 弥勒ボサノバを 唄う♪
役立たず 闇雲りもり 闇曇り後は 嵐♪
一旦 決めたけどどど そおれ、 カバキリン どどすか
韃靼 蕎麦食べてぇぇ えいや、 それ
やーくーたーたーずーー♪

へえ、そんな歌詞だったんだ。"弥勒ボサノバを唄う♪"か。これが言葉遊びになっているだけではなくて、きちんと3/8+2/8+3/8+4/8=12/8の指針になっているのだから、面白いよな。おまけに、一行目と拍子の構成が変わっているところにも注目。"闇曇り後は晴れだ♪"は、2/8+3/8+3/8+4/8と、最初の切り分け方がひっくり返っているのだ。

昨年暮れのフェスティバルで聞いた坂田明さんと平野公崇さんの即興対談と即興演奏、懐かしい。至言かと思ったらただの冗談だったり、その逆だったりと、またそれに振り回される平野さん。場内大爆笑の連続。そして、ひとたび楽器を持たせれば、客席を一気に巻き込んでしまうあのオーラ。今思い返しても、濃密でエキサイティングな時間だった。

坂田明さん「サックスなんてどう吹いても良いんだ…自分が気持ちよければ。向かうところ客なし」

届いた

次のネタの楽譜が届いたー!スコアはないのだがパート譜はこんな感じ(クリックすると拡大)。何の曲だかわかる人はいるかなあ。きっと知っている誰か(mckenさんとか)が反応してくれるはず…(笑)。

P.F.さんありがとう(しかも「リファイナリー」まで送ってくださった)!!とりあえず、Tsukuba Saxophone Quartetとしてのお披露目はもうしばらく先になりそうだが、フェスあたりでTSQで国内初演出来たら楽しいかも。きちんと音を出してみるのが楽しみだ。

2008/06/04

How can I?

昨日書いた記事にやや関係するかもしれないが。私のやりたいことの一つに、限られたレパートリーの演奏が繰り返される日本のサクソフォン界を何とかしたい…ということがある。

調べれば調べるほどにクラシック・サクソフォンの世界はどこまでも広大であり、そこかしこに実に魅力的な作品が落ちていると思うのだが…。現在世界中にサクソフォンの作品はオリジナル/アレンジ併せて20,000を超える作品があるとされているのだ。音楽大学などで、教える側のシラバスとして一般的に想定されている作品の数って…せいぜい200曲くらいかなあ。実はその100倍の作品が背後にあると考えると、ちょっとめまいを覚えてしまうほどだ。

その残りの19,800曲全てが、充実した作品であるという保障はないけれど、数度にわたって演奏会やレコーディングなどで取り上げられた作品にターゲットを絞ることは容易だ。特に、海外で積極的に演奏される作品を、どんどん日本に紹介していきたいという思いは、ここ数年ますます強くなっている。

しかしどうやって、私のようなアマチュアに?昨年末のフェスティバルなどでは、Tsukuba Saxophone Quartetとしてフェルドハウスの作品を日本初演したけれど、我々のようなアマチュアが練習して云々とかするのって、どうしても限りがあるし(リハーサルだけで二ヶ月と半分もかかった)。文書で書くのだと、どうしても伝えるのには限界があるし、CDを一枚や二枚紹介したところで、この記事の文章に反応して買ってくれる方なんているはずもなく。

全曲音源を収録し、楽曲解説に楽譜のサンプルや入手先リンクまでをも付与した、クラシック・サクソフォンの(特に優れた)作品のデータベースを作ることができれば良いのに。著作権や著作隣接権の意味合いからも、おそらくぜったい無理だけれど…。何かブレイクスルーを引き起こせる、良い方法はないものか。例えば著名な国内コンクールの二次課題曲などが、すべて突拍子も無い作品に置き換わる、とか面白いと思うのだが。いちアマチュアなりの限界を感じる今日この頃だ。

2008/06/03

Cancion del soy todo II

サックスのダニエル・ケンジー Daniel Kientzy氏と、サウンドエンジニアのレイナ・ポーテュオンド ReinaPortuondo女史により結成された"META DUO"のCD。José LOYOLAという作曲家の「Cancion del soy todo II」というソプラノサクソフォンとエレクトロニクス、声のための作品を収録したシングルカットのCD(NOVA MUSICA NMCD 5107 C)である。収録されているのはこの一曲のみで、全体の再生時間はおよそ10分。4.5ユーロという価格設定も、もっともか。

旋法に則ったソプラノ・サクソフォンの無伴奏テーマに始まり、各種のエフェクトがかけられるセクションや、d'Eloy Machadoの「El Ambia」という詩の朗読パートなどを経、最終的に冒頭のテーマが再現されて終幕となる。まあ、ちょっと変わっているけれど実に普通に聴きやすくて良い曲、というところだ。こういう曲がシングルカットされているのって、ちょっとばかし考えられないというか。個人レーベルまでも主宰しているダニエル・ケンジー氏の力あってのことだろう。

「興味深い作品は積極的に演奏を行う」…ダニエル・ケンジー氏の影響は、フランスのみならず欧米、それどころかアジアや中南米までにも及んでいる。このサクソフォニストにインスピレーションを受けてまさに生まれようとしている作品が、きっと今この瞬間にもいくつかあるのだろう。ケンジー氏を見ていると、我々アマチュアにもできることがあるのではないか、と思えてしまう(別に初演云々ではなくとも)。…と、最後はやや話が逸れたが。

このCD、日本では流通していないが、Vandorenの楽譜・CD販売サイトである、vandorenscores.comで買える。ゲンダイオンガクを敬遠している方も、ぜひ聴いてみていただきたい。

2008/06/02

今季のパリ音楽院サクソフォン科卒業試験

李早恵さんとミーハ・ロギーナ氏からメールを頂戴し、5/31に開かれた今季のパリ音楽院サクソフォン科卒業試験の結果について教えていただき、さらにプログラムまで送っていただいた。ありがとうございます!

基本情報については、連載の記事に追加したのでぜひご覧頂きたい。

http://kurisaxo.blogspot.com/2008/05/7.html

プログラムの内容がなかなか面白かったので、詳細を書いておこう。サクソフォン科卒業試験(Classe de saxophone - Recital du prix)の日時は2008年5月31日の12:00 - 18:00。試験を受けたのは、Pascal Bonnet, Julien Chatelier, Clément Himbertの3人。まず、最初の一時間で3人が課題曲であるMartin Matalonの「Trame Ia」を20分ずつ演奏する。

12:00~ Pascal Bonnet
12:20~ Julien Chatelier
12:40~ Clément Himbert

そして休憩を挟み、15:00から一時間ごとにリサイタルプログラムを演奏。必ずFrédéric Durieuxの作曲したバリトン・サクソフォン独奏のための「Übersicht」を組み込むことにして、そのほかは自由曲ということになるのだろう。このオリジナル・プログラムの構成が、なかなか面白い。

15:00~ Pascal Bonnet:
Luciano Berio - Sequenza IXb
Elvio Cippolone - Concerto (s.sax. & live electronics)
Frédéric Durieux - Übersicht
César Franck - Sonate Mov.1, 2

Elvio Cippoloneの作品が気になってしょうがないのだが(笑)それ以外は意外とスタンダードな感じ。しかしこれだけの作品が並ぶと、ベリオすらも古典に見えてきてしまう。

16:00~ Julien Chatellier:
Frédéric Durieux - Übersicht
Paul Hindemith - Sonate pour alto
Pierre Boulez - Dialogue de l'ombre double

ヒンデミットのヴィオラ・ソナタがおよそ16分、ブーレーズが18分とすると、「Übersicht」の演奏時間が逆算できる。15分~20分くらいということかな。というか、ええ!ブーレーズ「二重の影の対話」を卒業試験で演奏って…この作品を演奏できるのって、世界を見渡してもせいぜいダヴィッド氏、ララン氏、ロギーナ氏くらいだと思っていたのだが、すでにあちらではスタンダードなレパートリーになりつつあるのだなあ。フランスのサクソフォン界恐るべし。

17:00~ Clément Himbert:
Ryo Dainobu - Trois miniatures Mov.1, 2 (sax & viola & pf.)
Frédéric Durieux - Übersicht
Ryo Dainobu - Trois miniatures Mov.3 (sax & viola & pf.)
Benjamin Britten - Phantasy op.2 (sax & quatuor á cordes)

まず、おそらく日本人であろうRyo Dainobuさんが気になりますね。どんな作品なのだろうか。そして驚いたのは、ベンジャミン・ブリテンの「ファンタジー」!原曲はオーボエと弦楽四重奏のための作品で、私自身もフランソワ・ルルーのCDで何度も聴いたことがあるが、まさかここでこの曲のタイトルを目にすることができるとは。この曲をサクソフォンでやってしまうのか…(やや日本旋法的なテーマも含まれた、素朴で素敵な曲です)。

善は急げ

とうことで、全分解調整のために小田桐工房さんを訪問。新大久保の駅から徒歩5分、かなり近づいているはずなのになぜか場所が分からず、注意深く辺りを探索すると…こんな分かりづらいところに入口が!

先日の「音大生によるサクソフォーン四重奏の夕べ」で初めてご挨拶することができ、訪問は初めて。さっそく状態を見ていただき、私のReference54はしばらく入院と相成りました(苦笑)。まあ、後々きちんと使用していくならば、ここらで出しておかないと。

ちょっと時間があったので、小田桐さんのアルト(Super Action 80)やテナー(Mark VI)を見せていただいたり、仕事場のオーディオシステムで雲井さんやヘムケ氏の録音を聴かせていただいたり(CDのフォーマットって、やはり侮れない!)、音楽談義・業界談義をしたり、たまたま私のポータブルプレーヤーに入っていたミュールのアメリカツアーの録音を聴いたり、小田桐さんの演奏の録音(ヒンデミット「ソナタ」やBCSEの「マウンテン・ロード」)を聴かせていただいたり…お忙しいところありがとうございました。

しばらくかかるとのことだが、今から出来上がりが楽しみだ。

2008/06/01

うー

この曲難しいよー。なんとか第1楽章は形だけさらいきれた。第3楽章と第4楽章と第5楽章は、もっと難しいはず…。

練習する曲が多すぎて、しかもどれも難しくて…サックス演奏人生、最大のピンチ。全部きちんとこなせれば、レベルアップしそうな気がするヾ(°∀°)ノ!!

ところで…楽器(テナー)、全分解調整してもらおうと思います。思えば、かれこれ6年半は使用しているわけで、おまけにコンクールや演奏会等、本番での使用頻度もかなり高い。その間に落としたり凹ませたりとかなりボロボロ(管体がまがっている)。演奏会をいくつか控えている、このタイミングで出すのが良いと思ったのです。