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2025/10/20

Monterey Symphony & Timothy McAllister plays S.Mackey

カリフォルニア・モントレー市を拠点とするMonterey Symphonyに、Timothy McAllister氏が客演、Steven Mackey氏のサクソフォン協奏曲「Anemology」を世界初演した。この週末、幸運にもその演奏会を聴きに行くことができた。

サンノゼからは車で1時間半ほど。州道17号を山越えして州道1号に入り、モスランディングを抜けてモントレーへ。てっきりパシフィック・グローブ側かと思ったのだが、カーメル・バイ・ザ・シーの一角のSunset Centerという会場だった。ここから10分も走ればビッグ・サーに到達するほどの場所である。

もともとは、2022年にマカリスター氏がMonterey Symphonyのコンサートに客演、グラズノフの「サクソフォン協奏曲」を演奏した。その時、Mackey氏の「Turn the Key」が同じコンサートで取り上げられ、その打ち上げの席での盛り上がったことが、新作の委嘱につながったとのこと。作曲者も臨席、演奏会の1時間前からの、レクチャー付きだった。

https://www.montereysymphony.org/events/saxophone-concerto-and-rachmaninoff-symphony-no-2/

作品自体は、現代アメリカ風の、前衛的な響きとネオ・ロマンティックな響きを融合したようなものだった。第1楽章は、非常に複雑な合奏協奏曲風。マカリスター氏のサクソフォンの安定さは抜群で、ともすればとっ散らかりそうな難易度の高いフレーズを、うまく呼び交わしていた。第2楽章から第3楽章は、よりロマンチシズム、リズムが全面に押し出された、快活な内容。第2楽章はソプラノ・サクソフォンで演奏され、オーケストラとの複合効果が見事な盛り上がりを形作り、第3楽章はキーポイントで重音やスラップなども使いながら、少しずつ最終部に向けて盛り上がる様子に興奮させられた。

写真は、Sunset Centerの中の様子。前のサンタクルーズでの演奏会もそうだったが、残響はあまり無い会場。こちらに来てから、3つほど小~中規模の会場で演奏会を聴いているが、どこも残響は少なめ。こうも残響が少ないと、普段の音作りや、録音するときのポリシーも変わってきそうだ。

2025/08/11

Rising (Cabrillo Fest 2025 Final Concert) - Timothy McAllister

自宅で車で40分ほどのところにあるSanta Cruz Civic Auditoriumまで、ティモシー・マカリスター Timothy McAllister氏が客演するコンサートを聴きにいってきた。

Cabrillo Festival(カブリロ現代音楽祭)は、1963年に作曲家ルー・ハリソンらによってカブリロ大学で創設され、以来、現代作品に特化したオーケストラ音楽祭として高い評価を受けている。特に「存命中の作曲家による新作」に焦点を当てている点が特徴。創設者のルー・ハリソンが公にQIAとして生きた人物ということもあり、さらに今年は、サンタクルーズのLGBTQIAプライドの50周年を記念し、特にLGBTQIAに関連したプログラムが多かったようだ(プログラム最後のJake Heggie「Good Morning, Beauty」など)。

2025/8/10 7pm-
Santa Cruz Civic Auditorium
Adolphus Hailstork - Saxophone Concerto (Timothy McAllister, saxophone)
Jennifer Higdon - Cold Mountain Suite
Tyson Gholston Davis - As Juniper Storms
Jake Heggie - Good Morning, Beauty (Gabrielle Beteag, mezzo-sop)

すべて初めて聴く作品、あまり馴染みのない作曲家が並ぶが、T.G.Davis氏の作品を除いて聴きやすい作品ばかりだった。各曲の前には、作曲家が出てきて作品について解説を入れながら進む。アメリカだとおなじみのスタイルなのだろうか。

この中でも「Saxophone Concerto」は、マカリスター氏の好演と相まって、非常に強い印象を観客に与えたように思う。どんな難パッセージにおいても崩れないニュートラルで良く通る美しい、しかしパワーのある音色、作品の遊び心を存分に引き出した色付け、そして最終部に向けての盛り上がり…。技術的に吹ける人は他にも居るかもしれないが、このキャラクターで作品を自分のものとして吹ききってしまう人はマカリスター氏にちょっと想像できない。

Hailstork氏は、健康上の問題により臨席は叶わなかったが、演奏の前、代わりにマカリスター氏がコメントした。マカリスター氏にとっても、特別な作品とのコメントがあり…15歳の時に初めて現代に生きる作曲者として初めて触れた作曲家が、Hailstork氏だったとのことだ(確か、「American Guernica」という作品を演奏した、などとコメントがあった)。

その他の作品もなかなか面白く、Jennifer Higdon氏の、オペラ抜粋である「Cold Mountain Suite」は、ドラマチックな展開に感銘を受けたし、Jake Heggie「Good Morning, Beauty」も…これは詩の内容がもうちょっとリアルタイムで分かればより面白かったと思うのだが(わからない単語や言い回しが多くて…)、Gabrielle Beteagの好演に会場全体が大いに沸いていた。やっぱり歌って凄い。

演奏会後には、会場の外でAfterpartyが開かれ、ケーキや飲み物が振舞われた。写真は、LGBTカラーの虹色にライトアップされたSanta Cruz Civic Auditorium。


2024/01/14

Nagisa Ariza Piano Studio - Student Piano Recital

コンサートに伺ったのは久々だった。ベイエリアで長くピアノ指導に携わる有座なぎさ氏の「NAGISA ARIZA PIANO STUDIO」の生徒による発表会。下は4歳から上は15歳まで、弾く作品の尺もレベルも様々。3時間近くにわたる演奏を興味深く聴いた。

最初の「Solo Piano」ステージは、どの生徒さんも立派な演奏。これは私の印象だが、何となく男の子のほうが飄々と、女の子のほうが緊張して、それぞれ弾いているような傾向があるなあ。場面によってしっかり音色を弾き分けているのは、指導の賜物か、その子の特性か…は分からなかったが。おおっ、と思う瞬間をいくつも発見した。トリを務めたLisa Saitoさんの演奏、特にLiebermann、Chopinは一流で、聴き応えがあった。

ディズニー100周年を記念した連弾のディズニー特集を含む、「Four Hands」ステージ、兄弟姉妹のデュオ、というのは、練習風景などを想像すると理屈抜きに微笑ましいものだ。リラックスして、楽しく聴くことができた。

「Piano Trio」ステージに出演したヴァイオリンのYujin Ariza氏と、チェロのElena Ariza氏…共にジュリアード音楽院で音楽を専攻した経験あり…が、後半のピアノトリオステージに登場し、実に見事な演奏を生徒さん達と繰り広げていた。こうして間近で、デッドな音響環境で聴くと、撥弦楽器と、ピアノ(弦を打鍵する楽器)の、アンサンブルとしての相性の良さが際立つ。ハイドンの「Trio No.39」第3楽章のような作品での最後の煽るようなハイ・テンションな演奏を聴くと、これはサクソフォンでもきっと負けないぞ、と思うが、アントン・アレンスキーやクララ・シューマンの冒頭にあるような繊細なフレージングは、サクソフォンでは実現し難いものだなと、感じ入ったのだった。

写真は、会場のMountain View Center for the Performing Arts。


2023/03/09

第39回サクソフォーンフェスティバル二日目

・音楽大学・専門学校によるラージ
極めて漠然とした個人的な考えであるか、既存の、想像の内にある「サクソフォンのラージアンサンブル」「サクソフォンオーケストラ」の枠組みを逸脱しようとするor逸脱した演奏やレパートリーが、重要なのかなと考える。展示準備等で聴けない演奏もあったのだが、東京藝術大学、東京音楽大学、昭和音楽大学は、そういう試みを感じられ、大変聴き応えがあった。長生淳「地球」は良いですよね、掛け値なしに心動かされる。本堂さんの指揮もとても良かった(響きや目指すところのイメージが、どんなジャンルにおいても明確なのだろう)。

・松浦真沙 新作エチュード
40曲に及ぶ新作エチュードのプレゼンテーション。東京藝術大学や、パリ国立高等音楽院の入試に含まれる、「初見試験」のために制作を開始し、試行錯誤しながら完成させたという。広い形式で書かれ、初見を主目的としつつも、初見用として使い終わったあとはさらにデュエットにも使える内容。「初見」の重要性についての有村さんの考え、エチュードの使い方や心構えについての松浦さんのプレゼン、また、実際にその場で新エチュードを40秒読んで、生徒役の奏者にデモンストレーションしてもらう(見事に吹き切っていた)など、とても面白いレクチャーだった。

・村田淳一&由井平太
コンポーザー・プレイヤーで、かっこいい作品を発表しまくっている村田さんの自作を含むデュオコンサート。お二人とも長野県出身であり、私も同郷。屋外の寒い中、Socolaを訪れた一般向けのアコースティックライヴだったが、反応も良くて(さすが村田さんだ)なかなか盛り上がっていた。最後は思いっきりジャズセッティングで「枯葉」、ふたりともアドリブ効かせまくりで、引き出しの多さには恐れ入る。

・五十嵐健太と東京SOのグラズノフ
とにかくフレーズの持続性が、サクソフォンと思えないような驚異の演奏。バックのオーケストラも抑制された響きで、万全のアンサンブルであった。ウクライナで学び、KievSQにも参加、現在東京音楽大学の学生とのこと。もはや学ぶことなど何も無いのではと思ってしまうほどだが、ここからどのように進化していくのかが楽しみだ。

・プレミアムコンサート
Circle A Saxは、新井さん門下の集まり。単なる同門としての、音色・発音の均一性だとか、音楽性の一致とか、そういう繋がりではなく、もっと深淵な場所…精神的な拠り所を一様にする、という、極めて内面的な統一性を感じる。「フロッシュゲザング」は、ものすごく感動的で美しい。アプローチとしては斬新だがなにか元ネタがあるのかな。ViveSQもとても良かった。活動の目的が明確であり、それを余裕でやってのけるアンサンブル力が伴っており、とても長く活動を続けている…室内楽団としての理想だ。シュバルツの「ラウンドアバウト」は、カール・ジェンキンスの「ボロッコNo.1」に似ていて面白かった。次の定期演奏会ではゴールドシュタインの「ブロウ!」をやるそうだ!

・電子オルガンとサクソフォン
演奏者は竹田歌穂さん、角口圭都さん、大城正司さんと、もう素晴らしくて当たり前なので、作品や電子オルガンのあたりのコメントを。べダールのオルガンとサクソフォンの作品は、とても聴き応えがある内容で、最初のバロック的な音運びから、最後はまるで「ファンテジー」のエコーが聴こえるようなところまで…面白かった。編成の難しさを除けば人気が出そうだ。
トマジの電子オルガンは凄かった。オーケストラを意識したアレンジだったのだが、数百種の中から音色を選び、曲の中で場面ごとにプリセットを切り替える(エクスプレッションペダルの右にあるスイッチで次のプリセットへ進める)というやり方とのこと。そのプリセット数がいったい何百あるのかわからないほどで、準備も恐ろしく大変だと思うのだが、ある箇所では一小節に2回変えたりと、とにかくオルガンのアレンジ兼演奏兼オペレーションに見入って(聴き入って)しまった。
旭井さんの作品は、作曲家の個性とエンターテインメント性が融合した名作であり、未完とのことだが完成が楽しみだ。ハモンドオルガン的な音色との重ね合わせによって、ブラックミュージックに影響を受けたという第1楽章の狙いがより如実に現われていた。

・室内オーケストラとサクソフォン
田中氏、斎藤氏の演奏は、展示片付けで聴けず‥残念。なんとか本堂氏の演奏を聴くことができたのは幸いだった。一度聴いただけでは捉えきれない、難解な作品ではあったが、目指す音楽が極めてクリアであり(指揮の板倉康明氏の手腕によるところも大きいだろう)、それを実現する技術と音楽性が圧倒的であり、徹頭徹尾実に見通しがよく、澄み渡るような聴後感を得られた。ソロを吹く本堂氏は、あまりの存在感に、2倍くらいの大きさに見えたのだった。

全体を通してとても良い雰囲気と盛り上がりで、通して参加し、また展示も担当できてとても楽しかった。関係者の皆様、お疲れ様でした&ありがとうございました。

2023/03/05

第39回ジャパンサクソフォーンフェスティバル一日目

一日目を終えて、とても良い盛り上がり。実行委員長の小山さんはじめとする運営の手腕によるところも大きいのだろう。都心からのアクセス・駅からのアクセスも良く、ホールも丁度よいサイズ。

・愛好家ステージ

ロッソさんさすがだなあとか(東京のアンサンブルでもかなり老舗の部類になってきた、とのMCあり)、響雅音の同門ならではのUnifiedなサウンドとか、國末さんのウェニアンから、「國末さんの美学」を感じ取れたり、とても楽しく聴いた。中でも衝撃的かつ一番面白かったのは、「ふぉれらの音楽を届け隊」という、全員高校生&関東/関西混成&クラシック/ジャズ混成の四重奏団。少し昔を振り返ると、我々アラフォー世代の、例えばインターネットやSNSを活用した情報収集・発信して演奏活動を推進し、演奏レベルを高めていく、というスタイルは、一つ上の世代から見ると「異化」との評を得たこともあった。しかし、今回この演奏やMCを聴いて、20代周辺の方々は、確実に違う次元に移行しているのだなと感じた。思考の方向性に驚かされる…バッハ「イタリア協奏曲」第1楽章と、真島俊夫編の「My Favorite Things」をトータル2時間の合わせで持ってきてしまったという、そもそもそんな考え方、我々の世代は思いつきもしない。それでもそれなりに見事に演奏してしまうのだ。TikTokとかYouTube Shortとか17Liveとか、超双方向型/インスタント型のSNSが生み出した潮流なのだろうか。

・サキソフォックスのコンコンコンサート

サキソフォックスは初めて聴いた・観たのだが、とにかく楽しく、久々に大笑いした。思い返してみるとベタなのだが、そういったネタを見事に構成して、客席を盛り上げる手腕は見事というほかない。とにかくその場の雰囲気や、MCも含めた演出、もちろん演奏も超見事で、実に楽しい時間を過ごしたのだった。サクソフォンの名曲をコラージュした高橋宏樹氏の「サキソフェスタ」は、目まぐるしく登場するサクソフォンの名曲が楽しく、人気が出そう。こうして聴くとシュミット「四重奏曲」のフーガ主題の4音って、存在感あるなあ。

・宮崎真一のサクソフォン博物館

宮崎真一さんのヴィンテージ~最新サクソフォンコレクション10本(それでも所持在庫の1/10以下とのことで場内爆笑)を出動させ、サクソフォンの楽器進化を6期に分けて解説。宮崎さんのヴィンテージ楽器の解説は、YouTubeやPipers誌上にて参照することができるが、このように全体を網羅・体系的に説明を聴ける機会は大変貴重で、わかりやすく、とても理解が深まったのだった。手元のピクトグラムで細かい写真を見られるのも良かった。ConnのC-Melodyの蠱惑的な音色や、セルマーのバランスアクションが登場するまでの工夫が凝らされたギミック(バランスアクションてすごい進化だったのだ)、プレスティージュのシルクのような音色、どれも魅力的だ。

・ヤコブTVショー2

大石将紀さんプレゼンツのJacobTV作品個展。Heavenスタイル/Earthスタイルの作品を交互に並べ、最後Heavenスタイルで終えるところに大石さんのこだわりを感じる。演奏はどれも良かったが、YouTubeに「The Garden of Love」映像をアップしている清水氏の演奏は、この極めて難しい作品にあって、世界トップクラスのライヴ演奏だろう。佐藤さん、加藤さんの「TATATATATA」の、後半にかけての、"窯変"という言葉を思い起こすようなカタルシスは引き込まれた。「Jesus is Coming」のアグレッシブな演奏も良かったが、ややテープバランスが控えめだったような。また、大石さんはほとんどのHeavenスタイルの作品に取り組んでいたが、しなやかな音色が見事に作品やテープとからみ合い、聴いたことのないようなサウンドを生み出していた。

・日本のサクソフォン史:ポスターと映像の常設展示

今回、実行委員長の小山さんからお声がけいただき、制作を担当した。意外にも?常時誰かしらが足を止めてくれ、多くの方の目に触れてとても嬉しかった。ちなみに、一番人気だったと思われるのは、師弟関係の系統図試作版。

会場の小金井宮地楽器ホール。駅前の建物が等しくこのようなモダンなガラス張りデザインに統一されている。


2023/02/06

野平一郎サクソフォン作品個展(ドゥラングル氏来日)

【野平一郎 サクソフォン作品個展 クロード・ドゥラングルを招いて】
日時:2023年2月6日 18:30開場 19:00開演
会場:浜離宮朝日ホール
出演:
クロード・ドゥラングル(サクソフォン)
オディール・ドゥラングル(ピアノ)
湯川亜矢子(メゾソプラノ)
ホセ・ミゲル・フェルナンデス(電子音響)
片桐健順(音響)
大石将紀、江川良子、貝沼拓実、本堂誠(サクソフォン四重奏)
曲目:
野平一郎「アラベスクIII」
野平一郎「サクソフォン四重奏曲」
野平一郎「舵手の書」
野平一郎「ひとりぼっち」
野平一郎「フォリア・コン・ファンタジア」
野平一郎「息の道」

野平一郎氏の、10年プロジェクトの一環として企画された演奏会だという。昨年の同時期に流れたときには残念に思ったが、一年越しでこうして無事開催されたことが嬉しい。

私はといえば、コロナが流行り始めてからリアルの演奏会に伺うのは初めてだった。いや、そもそもこれだけの規模の演奏会には、転職後に仕事場が都心から離れたこともあり、平日には全く伺えてなかった。調べてみたところ、出演・企画したものを除くと、演奏会をしっかり聴くのは2018年のクロアチアの世界サクソフォンコングレス以来だったかもしれない。

ドゥラングル氏の極めてしなやかな音色・音運びは健在で、一部には僅かなミスも見受けられたものの、曲ごとの異なった音世界を表現する力には目を見張る。このように野平氏の作品を連続して聴いて気付かされたことだが、サクソフォンを単音の旋律楽器として捉えるのではなく、サクソフォンの一つ一つの音に「音響」を見出して、それを聴き手に気付かせるように、テーマに基づいて展開・発展させる手腕こそ、"野平氏✕サクソフォン"のオリジナリティといえるのであろう。その作品の佇まいには、ドゥラングル氏の演奏スタイルがぴったりだ。

「アラベスクIII」では意外と控えめなテンションだったが、そういう作品のひとつの側面を引き出したといえば納得。かと思えば独奏曲「フォリア・コン・ファンタジア」での絶妙なコントロール…で通すのかと思いきや、狂騒・狂気(そもそもフォリアは狂気という意味だし、変奏曲は狂気の塊のような音楽だと私的に思う)といったキャラクターをも見事に体現するような、変幻自在さでも魅せた。

共演者も素晴らしい仕事をしており、オディール氏のピアノが、こんなにもダイナミックなものだったかと驚かされたり、湯川氏のメゾ・ソプラノは、これまで聞いたことのある演奏とは少し外した解釈で、テアトル的な雰囲気を面白く聴いた。大石氏を始めとする四重奏メンバーも高次元の仕事をしていて、個人的にはとてもホッとする"日本的な"響きだった。

最後に、メイン曲として演奏された「息の道」…30分を越える大作にして、類稀なる傑作である。これまで2012年7月のイギリス初演と、2012年10月の日本初演を聴いたことがあるが、聴く度に新たな発見がある。完璧にコントロールされた音響、そして、完全なるサクソフォンの演奏を聴くことは、この作品の新たな側面を表出させる。イギリス・セントアンドリュース、Byre Theatreで、熱に浮かされたような会場の空気感の中で聴いた演奏が、私の中でのベースライン。音響の面では荒削りではあったが、特別なものがあった。そこに、静岡音楽館AOIや、本日浜離宮で聴いた演奏が、衛星のように取り巻いて、この作品の個人的印象を形作っている。

帰りがけに撮った朝日新聞の社屋。

2018/02/24

カルッツかわさき×ぱんだのシンフォニー

【カルッツかわさき×ぱんだのシンフォニー】
日時:2018年02月24日(土)開場/13:30 開演/14:00
会場:カルッツかわさき ホール
料金:S席/4,000円 A席/3,000円 U-25/2,000円
プログラム:
前久保諒:Welcome to PANDA!
P.スパーク:オリエント急行(お客様からのリクエスト曲※)
A.リード:アルト・サクソフォンのためのバラード(アルト・サクソフォン ソロ:上野耕平)
V.ネリベル:トリティコ
R.シュトラウス(A.O.デイヴィス編曲):万霊節
J.バーンズ:交響曲第3番「悲劇的」

テレビや録音で観た/聴いたことはあったが、ライヴで聴くのは初めて。しかもこだわり抜いたと思われるこのプログラム。

細かい部分での個々が持つレベルの高さ(たまーに一部アレッとなるが)や、ユニゾンでの密度の高い響き。ネリベル「トリティコ」のエッジの効いた響き、そして緩徐楽章における集中力は、聴き手にも多大な緊張感を強い、非日常の空間を作り出していた。リードの「バラッド」、上野耕平氏のソロは、徹頭徹尾美しい音色、そして、楽譜上は比較的平易な作品から、きちんと泣き所を引き出す"魅せ様"がさすがである。バーンズ「交響曲第3番」では、悲劇〜皮肉〜幻想〜希望、という各楽章のキャラクターの描き分けや終盤に向けての構成、そして随所に現れる渾身のソロが、それぞれ高い次元でまとまっており(指揮者の手腕もあるだろう)、長時間も相まって聴き応えのある内容だった。

今後さらに活動を続けていくことで、それ以上の、バンドとしてのサウンドの個性、という境地に達してゆくのだろう。すでに、奏者単位では、そういった場所に到達している方もおられるし、活動内容としても独自のものを展開していて興味深いが、やはりバンドの音楽としての次のステージを見てみたいものだ。

休憩中に、吹奏楽ってどうやって聴くんだっけ、という疑問がふと頭をかすめる。そんなに多くのコンサートを聴いたことがあるわけではないが、全体の響きに身を任せることもあったし、個々のテクニックを楽しんでいたこともあったし、曲にばかり着目していたこともあった。せっかくだからとぜんぶの要素に注目しようとしたとき、アタフタと気持ちを切り替えなければならず、ちょっと頭が疲れてしまったのだった。

と、何だかいろいろと書いてしまったが、いや上手いっす。技術面も芸術面もレベルが高い。東京芸術大学の同期を中心に…とプロフィールに書くだけのことはある。吹奏楽界の新勢力として、ますますの活躍を期待する次第。今日聴くことができて良かった。

最後、アンコールは「パンダスティック!」と、まさかのグレインジャー「シェイファーズ・ヘイ!」。特にグレインジャーは嬉しかったなあ。ちなみにアンコールは携帯カメラで撮影OKとのアナウンスがあった。時代ですなあ。

それにしてもカルッツかわさきのホール、良いですね。少々客席数は多めで編成は選ぶかもしれないのだが、ハマったときの端正な響きは素晴らしい。変な残響が無いことは、個人的なホールの好みを左右する上での重要な要素の一つだ。

2017/10/18

カルッツ川崎開館記念TKWOコンサート

【東京佼成ウインドオーケストラ 吹奏楽大作戦 in 川崎】
出演:海老原光(cond)、本田雅人(sax)、東京佼成ウインドオーケストラ、一般公募演奏者
日時:2017年10月9日 18:00開演
会場:カルッツ川崎(川崎市スポーツ・文化総合センター)ホール
プログラム:
河辺公一 - 高度な技術への指標
保科洋 - 風紋
酒井格 - たなばた
アルフレッド・リード - アルメニアンダンス・パートI(一般公募演奏者との合同演奏)
ビル・チェイス/岩井直溥 - 黒い炎(サクソフォン:本田雅人)
和泉宏隆/真島俊夫 - 宝島(サクソフォン:本田雅人)
ジェローム・カーン/岩井直溥 - 煙が目にしみる(サクソフォン:本田雅人)
ルイ・プリマ/岩井直溥 - シング・シング・シング(サクソフォン:本田雅人)

妻が一般公募の催しに乗っていることもあり、聴きに伺った。カルッツ川崎オープン記念ということで、祝祭的な雰囲気の中、華々しい演奏が繰り広げられた。東京佼成ウインドオーケストラを聴いたのは久々だったが、やはり上手い。さらに指揮者のキャラクター(とてもわかりやすくかつ面白い指揮をされる方)も相まって、とても楽しく聴くことができた。一般公募者を交えた「アルメニアンダンス」も、とても聴き応えのあるレベルまで仕上がっており、もちろん細かい部分ではいろいろとあったが、圧倒的な推進力の前に、無意味な批評だろう。ちなみに、アルトサクソフォンのソロは一般公募の中学生?高校生?っぽい方だったが、とても上手でびっくり。

後半は、都合により聴くことができず…(>_<)ざんねん。

カルッツ川崎オープン記念にふさわしい催しだったと思う。ぜひ今後も魅力的なイベントを続けていただきたい。

2017/09/23

上野耕路とソシエテ・ノワール第二回公演

【上野耕路とソシエテ・ノワール第二回公演】
出演:
 上野耕路, pf & hammond
 武井誠, 篠笛 & 尺八 & fl
 中村仁樹, 尺八
 真部裕, vn
 多井智紀, vc
 内田義範, bs
 播摩祐子, fender rhodes
 杉野寿之, drs
 松永天馬, vo
 神木優, 司会
日時:2017年9月19日 19:30開演
会場:目黒ブルースアレイ
プログラム(すべて上野耕路作品):
 9 Etudes Japonaise(A, B, C, E, F, I, J, K, Lの全9曲)
 ソシエテ・ノワール
 サマータイム・ゾンビ
 見知らぬ友人
 ピアノマン
 むこうみずな寓話
 アルケイディア
 エヴァ
 グッドレッドロード
 恋するさるとる
 探偵ごっこ
 プロパガンダはもうやめて
 エーテル・ダンス
 ピニャ・コラーダの冒険
 Etude japonaise C(アンコール)
 サマータイム・ゾンビ(アンコール)
 ピニャ・コラーダの冒険(アンコール)

「ソシエテ・ノワール」は、ここ最近上野耕路氏が取り組んでいる音楽ユニット/プロジェクトの名前。第1回目のライヴには伺えず、その後発売されたライヴCDを聴いて魅力を知り、今回のライヴを心待ちにしていた。今回はすべてが新作(上野氏自身珍しいとおっしゃっていた)、和洋折衷の不思議な編成にも関わらず、魅力的な曲ばかりの鮮烈なライヴだった。何度もブログで書いているが、上野耕路氏の作品は、一聴した瞬間に上野耕路氏の作品である、ということがわかるのが凄いと思う。単なる作曲ではなく、ある種のジャンル形成とでも言えるだろうか。グロテスクな響き、しかし途方もなく美しく、時に楽しく、いったいどのような発想でこのような作品を生み出しているのか、頭の中を覗いてみたいくらい(ちょっと太田螢一氏のイラストみたいな発想だな)。

前半は、和楽器をフィーチュアした9曲のエチュード。緩急対照的な曲が続き、速い曲ではカタルシス的な効果を生み出す音運びも。あえて和楽器の通常奏法のみを使ったとのことだが、そういった制約があるからこその面白さもあったと思う。後半は、松永天馬氏(ときどき神木優氏)をヴォーカルに迎えての独特の世界観を湛えた作品のオンパレード。セットリスト/歌詞カードが配布されたのも嬉しく、じっくり堪能することができた。

コンサート自体はテンポよく進んだが、休憩・アンコールも含めて3時間!大満足のライヴとなった。またぜひ伺おう。ビッグバンド編成もまたやってほしいなあ。

2017/05/22

第8回サクソフォン交流会 in 長野

先週土曜は、長野市芸術館で開かれた第8回サクソフォン交流会に、事務局メンバーとして、また、シェラトン・カルテットのメンバーとして参加した。リハーサルから本番、打ち上げと、大きなトラブルもなく、無事に全日程が終了。

遠隔地での開催は、とにかく現地協力団体の方々の働きに依るところが大きい。そのような意味では、第4回のまいまいさん率いるカキツバタさん、第6回のきんじさん率いるダッパーさん、そして今回のUさん率いるMiSTさん、それぞれ、10をお願いして20くらい返ってくる、くらいの働きをしてくださるのだ。タスク量が増え、メールとファイルが飛び交う中、今回もまた、成功へと導いていただいた。本当に感謝、感謝だ。また、関東側の事務局メンバーも、このメンバーで失敗するはずがない、という各自最もノウハウを持つ箇所を担当するような布陣で固めたことも、良かったと思う。

原先生に加え、川島さん、村田さん、という、素晴らしい奏者・作編曲家に参画いただいたことも、大変ありがたかった。プーランクの鮮烈そのもの、という演奏は、それまでの空気を一変させるほどのもの。これは生で、そしてあのホールで聴けて良かった!ガーシュウィンのメドレー「ガーシュウィン・リズミクス」は、バックバンドもかなりの難曲に仕上がったのだが、ソロのお2人の素晴らしさ、村田さんの粘り強い指導と、個人参加者の集中力の高さのおかげで、なんとか演奏まで持っていけたこと、嬉しく思う。また、「信濃の国」のアレンジ、というアイディアも(どこから湧いて出たのか忘れたが)、結果的に村田さんの筆致や原先生の指導で演奏までこぎつけ、打ち上げでメロディを全員が合唱できる程度には印象に残った…という、なんだか可笑しくも面白いことになったのだった。

各アンサンブル団体のレベルの高さ(全員、ココ一番、という気合いの入った曲を持ってくる)も、例年のごとくで、長丁場だったが、飽きることは全くなく、楽しく聴くことができた。個人的な一番のヒットはラフォーレSEだなあ。まさかのラゴ「Ciudades」を、特殊奏法含め鮮やかに聴かせる手腕には恐れ入った。シェラトンは、演奏しながらの高揚感が凄かった(最後は超走った笑)が、ピアノとのアンサンブルでの、内声の音程のとり方はもう少し研究の余地あり(四重奏吹いている感覚ではだめだ…)。とはいえ、楽しく演奏できたのは、編曲の素晴らしさ、ピアノの素晴らしさ、気遣いなく付き合えるメンバーのおかげだ。

単身の長野旅行、ということで、子どもをほったらかし(妻とともに妻方のご実家にあずけるという…)家族には迷惑をかけまくってしまった。そんなことを許して送り出してくれる家族に感謝。家庭あっての趣味だからなあ。

さて、次は第9回。事務局メンバー絶賛募集中(←重要)。

【第8回サクソフォン交流会 in 長野】
日時:2017年5月20日(土) 12:45開場 13:00開演
会場:長野市芸術館・リサイタルホール(→長野市芸術館サイト 長野県長野市長野駅付近)
アドバイザー・指揮:原博巳
ゲスト:川島亜子、村田淳一
内容:
1)アンサンブルステージ
全国から集まったサクソフォンアンサンブルがそれぞれ演奏を披露するステージです。
参加団体:
サクソフォーンアンサンブルの会(東京都)
ザッツ・サクソフォン・フィルハーモニー(埼玉県)
シェラトン・カルテット(東京都)
ダッパーサクセーバーズ(香川県)
浜松サクソフォンクラブ(静岡県)
ちあきひと(東京都)
ラフォーレサクソフォンアンサンブル(東京都)
Business Class Saxophone Ensemble(東京都)
lalala 雷鳥カルテット(長野県)
MiST Saxophone Ensemble(長野県)
Saxofono Rosso(東京都)
Saxophone Laboratory ~さきそーら~ meets mcken(東京都)
2)企画ステージ
長野の愛好家と全国の個人参加者による演奏~原博巳先生とゲスト奏者を迎えて~
独奏:原博巳、川島亜子
F.プーランク - 2本のクラリネットのためのソナタ
G.ガーシュウィン/村田淳一 - ガーシュウィン・リズミクス(指揮:村田淳一)
3)全員合奏ステージ(指揮:原博巳)
和泉宏隆 - オーメンズ・オブ・ラブ
北村季晴/村田淳一 - 長野県歌「信濃の国」


2017/04/16

The Rev Saxophone Quartet@ミューザ川崎

息子が生まれてから少し演奏会通いを控えていたのだが、久々に演奏会へ伺った。昼の部(都合によりバッハ以降のみ)と、夜の部。

技術的に非常に完成されていることはもちろんで、その先に様々な可能性を秘めているカルテットだ。これまで聴いたことのあるカルテットの、どれにも似ていない。なんとも言えない浮遊感というか、現実離れした音世界・空間を楽しんだ。

【ミューザ川崎 ランチタイムコンサート】
出演:The Rev Saxophone Quartet
日時:2017年4月12日 12:10開演
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
プログラム:
R.プラネル - バーレスク
J.B.サンジュレ - 「四重奏曲第一番」より第4楽章
J.S.バッハ - G線上のアリア
J.フランセ - 小四重奏曲
G.ガーシュウィン - 3つの前奏曲
N.カプースチン/宮越悠貴 - 「24の前奏曲」よりXVII(アンコール)

【ミューザ川崎 Night Concert60】
出演:The Rev Saxophone Quartet
日時:2017年4月12日 19:00開演
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
プログラム:
N.カプースチン - 「8つの演奏会用エチュード」よりプレリュード
J.リヴィエ - グラーヴェとプレスト
N.カプースチン/宮越悠貴 - 「24の前奏曲」よりXII, IX, XVII
M.エンゲブレツォン - ベア
M.ラヴェル/旭井翔一 - 「クープランの墓」よりプレリュード、フーガ、メヌエット、トッカータ
R.プラネル - バーレスク(アンコール)

コンサートのレビュー(夕方のコンサート中心)は、5/25のTHE SAX誌に掲載予定。

2017/02/13

High-Jinks Wind Orchestra、再々結成ライヴ

先週末土曜日は、High-Jinks Wind Orchestraのライヴだった。

大学時代に、大学の吹奏楽団メンバーを中心に結成された、ポップス専門のバンド。メンバーの卒業に伴い活動休止状態となっていたのだが、2014年に再結成ライヴを行い、さらに3年経って、今回は再々結成ライヴであった。卒業時と比較して、また、3年前と比較して、結婚・出産・転居などの理由からメンバーは少しずつ変わっており、時の移り変わりを感じる。

選曲は、前半がポップス(いわゆる吹奏楽のポップスとは少し外した選曲)、後半がクールジャパンと銘打ったアニソン特集。正確に言えばサクラ大戦はアニメではなくゲームだが、ほぼアニメのようなものだ。

【High-Jinks Wind Orchestra Live】
日時:2017年2月13日 13:00開演
会場:赤坂B-flat
ゲスト:松尾崇(tp)、松下洋(sax)
前半プログラム:
Winter Games
Do-Re-Mi
亡き王女のためのパヴァーヌ~Funk Ver.~
Land of Make Believe(ソロ:松尾崇)
Dear Mr.Jones
後半プログラム:
"GIRLS und PANZER"より戦車道行進曲
"カウボーイビバップ"よりTank!(ソロ:松下洋)
Rock Me!(ソロ:松下洋)
"魔法少女まどか☆マギカ"よりConnect
"サクラ大戦"より檄!帝國華撃団
"響け!ユーフォニアム"よりTutti!
"マクロスF"より星間飛行(ソロ:松尾崇、松下洋)
アンコール:
ラプソディ・イン・ブルー~Funk Ver.~(ソロ:松尾崇)

…後半、楽曲タイトルにエクスクラメーションマークが多いですね(笑)。それにしても、楽曲の楽しさたるや、格別のものがあった。アニソン、侮りがたし。幾つかの作品に関しては、過去にアニメを観たことがあり、ライヴに向けてもう一度観てみたり。

新曲が多く、曲それぞれが難しく、練習段階から一筋縄ではいかない部分も多かったのだが、ゲスト奏者(お二人には、サウンドをしっかり締めていただいた)や指揮者のパワーもあって、最終的にはなんとかなったかな。突き詰められる部分は数え切れないのだが、それでも、お客様やゲストの方に楽しかったと言ってもらえると、嬉しいものだ。いやはや、楽しかった。

当日は、妻とともにライヴに参加。息子は、丸1日妻のお母様にみていただいていた。練習段階より、家族やメンバーの皆様の協力あってこそ、である。色々な場面で迷惑をかけてしまったが、大変ありがたかった。

2016/11/03

Proxima Centauri - M.B.Charrier & H.Sakaguchi マスタークラス&ミニコンサート

11/5の演奏会は別件で伺えないのだが、本日こちらの演奏会を聴くことができた。今回の来日中、聴くことは叶わないと思っていただけに嬉しく、また期待以上の内容だった!

【Proxima Centauri - Marie Bernadette Charrier & Hiromi Sakaguchi マスタークラス&ミニコンサート】
出演:マリー=ベルナデット・シャリエ(sax)、坂口裕美(pf)
日時:2016年11月5日(土)マスタークラス13:00開演 ミニコンサート15:00開演
会場:洗足学園音楽大学シルバーマウンテン1F
プログラム:
Hans-Joachim Hespos - Ikas
Philippe Hurel - Bacasax
鈴木治行 - 隔世遺伝
François Rossé - Erde-Edo
小櫻秀樹 - 私はボルドーのサックス奏者だ!
François Rossé - Fuku Yama

マスタークラスは、デニゾフ「ソナタ」と増田悦郎「PAIN II(本日のマスタークラスのために準備された新作)」。デニゾフでの受講者は荒木真寛氏(asax)と中村真幸氏(pf)、増田作品での受講者は藏戸里沙氏(sax)と森嶋奏帆氏(pf)。マスタークラスの内容は別記事に譲るが、かなり細かい部分まで突っ込んだ、充実した内容のマスタークラスだった。デニゾフは、楽譜に書いている内容を丁寧に読み解き、その各箇所に適した演奏法を、様々なバックグラウンドにもとづいて指摘・改善させるというもの。増田作品は、作曲者臨席のもと、作品の意図する内容を引き出しながら、適切な表現を行うためのテクニックや表現法を中心にアドバイスする、というものだった。

いずれの受講者もかなりしっかりと準備してあり、最初の通し演奏もかなりレベルが高かったのだが、さらに突っ込んだ指摘が飛んでいた。本日のマスタークラスを聴いて、ボルドー音楽院で学んでみたい、と思った方も多いのではないかな。それだけ、濃くて充実した内容だった。シャリエ氏が模範で吹く短いフレーズも、無限のバリエーションの表現が聴こえてきて、かつ各箇所の楽想にピタリと当てはまるものであった。

ミニコンサートも凄かった。今回は、アルト、テナー、バリトンの3種類を繰っての演奏会。テアトル的な雰囲気を持つ「Ikas」、シェルシ作品か、スペクトル楽派の作品のような雰囲気を持つ「Bacasax」、ここまで2つほど短い作品で、一気に会場の度肝を抜いた。続く鈴木氏の作品では、テナーとピアノが12音的なリフをひたすらに繰り返す(ピアノも凄く良く弾く方で、キャスリーン・グッドソン氏の快刀乱舞っぷりを思い出した)。

ピアノソロで演奏されたロセ作品「Erde-Edo」や「私はボルドーのサックス奏者だ!」は、聴き手の頭がついていかないほどの響きやシーンの変化があり、しかし演奏者は高い集中力で見事に楽曲の持つパワーを表現していた。この2人のために書かれたという「Fuku Yama」での、驚異的なアンサンブルの然り。シャリエ氏、坂口氏の底知れぬ技術力、アンサンブル能力、ソルフェージュ能力を思い知らされたのだった。

いやあ、本当に聴けてよかったなあ!

2016/11/01

第64回全日本吹奏楽コンクール 職場・一般後半の部の感想

昼~夕刻の、"後半の部"の感想。

【第64回全日本吹奏楽コンクール 職場・一般前半の部】
日時:2016/10/30(日曜) 14:00開演
会場:金沢歌劇座

・Pastorale Symphonic Band
課題曲は管楽アンサンブル的な響き。個々の奏者のハッキリした鳴りが印象深い。フルートパートがよく響いている。金管の音の処理が少し雑だったかと。自由曲は、和のテイストを感じるテクニカルな作品。フルートのトップ奏者が大活躍(演奏会だったら終わった瞬間に真っ先に立たされるだろう)。そして何より、瀬尾氏のタクトの、バンドの引っ張り上げが凄まじい。

・J.S.B.吹奏楽団
バンドの全体として響きやフレーズを捉えている印象がある。バンドとしての響きはかなり形作られているが、セクションワークやパートが時折聴こえてこず、やや焦点がぼやけるときがあった。自由曲のリスト作品のアレンジ(田村文生氏による)は初めて聴いたが、とても面白かった。やはり、全体の音作りを大切にしている、という印象を受けるサウンドだった。

・大津シンフォニックバンド
課題曲はそつなく丁寧に、という感じがした。ほとんど隙が見られない。自由曲として取り上げられていた作品、初めて聴いたがとても不思議な音世界を堪能した鉄塊?を打つ金槌、ソロ楽器が大見得を切ったり(各ソロ奏者ブラボーでした)、瞬間瞬間の面白さがありながら、演奏は全体の構成感の構築にも力を入れているように聴こえた。"計画性"という言葉が頭に思い浮かんだ。

・川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団
課題曲は、一見無意味な楽曲の各フレーズ間の連携を引き出すような演奏。全体の構成を持たせることにも成功している。自由曲では、パワーと繊細さの両面を持つバンドだ、ということが良く表現されていたと思う。指揮に対するバンドの反応の良さ、追従性が凄まじい。福本氏の指揮はこれまで様々な場面で何度も拝見しているが、やはり才気があるというか、この方は天才なのだなあと思う。

・鏡野吹奏楽団
私用により席を外していたため聴けず。

・横浜ブラスオルケスター
課題曲のテンポが速い。どうしたんだろう?後半部分との対比はそれなりに付いていたが、原曲の雰囲気を損ないかねないほどのスピードだった。自由曲は凄まじかった。指揮の近藤久敦氏自身の編曲によるマーラー。2台ティンパニ、ハープ、ハンマー、チェレスタ…等のフル装備。ダイナミクスとパワー、場面転換の鮮烈さで一気に聴かせてしまった。とにかく気合いの凝縮っぷりが恐ろしいくらい。

・百萬石ウィンドオーケストラ
課題曲は、きちんと全員で音を重ねているのが良いですね(笑)。少し粗さはあったが、素朴で良い演奏だった。自由曲のグランサムの作品は、吹奏楽のための音のショウピースみたいな感じ。コントラバスはピアノトリオのごとく中央でドラムス?と一緒に弾いているし、ビートが目まぐるしく変化しすぎてついていけないし、音列主体のおどろおどろしい感じで進むと思いきや突然フルートが甘いメロディを奏で始めるし、突然チューバが舞台前方でスタンドプレイしたと思いきや、ユーフォが加わり、さらにバリトンサクソフォンがという、人を喰ったようなソリ部分もあるし…etc。最後のコンバスくるくるはびっくりした。2回転くらいしたかなあ。

・ウィンドアンサンブル ドゥ・ノール
課題曲冒頭から、大きめのサウンドで推移。オブリガートもしっかり鳴らされているが、これを、立体感があると捉えるか、バランスをやや損なっていると捉えるか…。自由曲では、課題曲とはまるで別のバンドのような音が聴こえてきた。この位の人数のバンドのどこから、こんなパワフルな音が出て来るのか、という驚きがあった。

・大曲吹奏楽団
課題曲は、指揮者のアクションがずいぶんパリッとしているが、出て来る音はとても繊細。旋律・対旋律・他のバランス感覚が見事だった。自由曲は、バッハの「シャコンヌ」だったが、個人的に思い入れが強い曲だけに編曲が気になって仕方がなかった、というのが正直なところ(編曲が特段悪いといっているわけではない)。名曲ではあるが、やはりこういった場でのアピール度は少々厳しいのかも。

・NTT西日本中国吹奏楽クラブ
課題曲はIII、メンバーの皆さんきっと好きなんだろうなあ(私もけっこう好きです笑)。自由曲はほっとする演奏だった。おそらく「ガイーヌ」はバンドの能力からすれば、持て余し感があったのかもしれないが、名曲を丁寧に作り込んで、肩の力を抜いて、ストレスフリーな音色や音楽を心がけているような印象を受けた。だから、聴いていてとても心地よい。「剣の舞」等がない意表をついた選曲もなかなか。

・ヤマハ吹奏楽団浜松
須川展也氏の指揮を久々に見た。交代直後の指揮を見たことがあるが、差は歴然というか、とても板についてきたなあというか。サクソフォンの演奏もそうだが、とにかく凄い努力をされて、今の指揮があるのだろう。自由曲は、ダイナミクス重視、パワーで押す系ではあるが、奏者一人ひとりがしっかりしているので、とにかく隙(うっかり割れるとか、音程がぶれるとか、ずれるとか)が全く見当たらない。大編成の楽団が、ここまでピタリと合うのは、聴いていて爽快だ。

・宝塚市吹奏楽団
課題曲から、良く子音が立つサウンド。実際鳴っている音量よりも、大きく聴こえる。後半にかけてもその傾向は続き、聴こえが衰えない。自由曲も同様。大変な作品だが、最終部の大ファンファーレもなんのその、疲れ知らずに聴こえた。奏者一人ひとりの地音が、全体の響きに埋もれず存在感を保っている、というのも特徴的。

・デアクライス・ブラスオルケスター
ちょっと冷静に聴くことができなかったのだが、それを差し引いても素晴らしい演奏だったと思う。特に自由曲への、演奏者の思い入れは強かったのではないだろうか。それを引き出す佐川氏の指揮。第一のクライマックスを迎えたのち、テンポがいったん落ち着いた再現部で、佐川氏によってあそこまでフレーズの持続(聴いているこちらの息ができなくなるほど)を強いられて、それについていくバンドが凄いなと思いながら聴いていた。

第64回全日本吹奏楽コンクール 職場・一般前半の部の感想

午前~昼の、"前半の部"の感想を。

【第64回全日本吹奏楽コンクール 職場・一般前半の部】
日時:2016/10/30(日曜) 9:30開演
会場:金沢歌劇座

・ソノーレ・ウィンドアンサンブル
課題曲では、木管の自由闊達な歌い方(歌わせ方)が印象的。朝イチを感じさせない爽やかなサウンドで、これが全国クラスの演奏かと感じ入る。金管は大人しめに進行すると思いきや、自由曲では一転、パリッとしたサウンド。細かい音符が連続し、さらに奏者単独の技巧(フルート、クラリネット等)を魅せる箇所もあった。高い緊張感を持ったまま、見事に演奏を終えた。

・光ウィンドオーケストラ
課題曲Vを聴くのは初めて。技術的に作り込んだとしても、聞かせどころを作るのがとても難しい印象を受けた。自由曲では、鍵盤系が大活躍し、魅了された。また、数名によるアンサンブル箇所がとても安定している。ホルンを始めとする金管系の仕事がとても丁寧に聴こえた。トランペットのアタックが美しい。

・名取交響吹奏楽団
クラリネットの人数が少ないように思えたが、課題曲では少ないなりに全体の構成でカバーする、という戦略が効いているように思えた。指揮者の作戦勝ちだろう。自由曲は、とにかく作品が面白い。ジョン・コリリアーノのクラリネット協奏曲か、ジョン・マッキーのサクソフォン協奏曲か、てなもんで、ハイハット、シェイカー、ウッドベースにサクソフォンとクラが絡む前半部、おどろおどろしく、濁ったサウンドもフル活用の中間部(コントラファゴットやコントラバスクラが超低音を奏でる)、スピード感のあるシンコペーション風コラールに走句が絡み、最後は大絶叫の最終部(後から調べてみたのだが、どうやら30分近くある作品の一部を取り上げていたようだ)という具合、技術的にも高難易度だが、見事に曲のグルーヴまでも表現しており、演奏が終わった瞬間に大盛り上がりとなった。

・倉敷市民吹奏楽団グリーンハーモニー
打楽器のみひな壇、あとの奏者はステージに平置きという珍しい配置。フレーズそれぞれの内部でそこまで統制を取っている感じを受けない(若干の凹凸が見られる)が、とてもリラックスした響きと雰囲気。なんだか緊張感のある演奏が続いていたせいか、優しい演奏に涙ぐんでしまった。自由曲は、柔らかいサウンドを前面に押し出している感じがする。オーボエはとにかく大変だったと思う。

・浜松交響吹奏楽団
課題曲で、"パートの上手さ"が聴こえる。個々の技量がそこまでクローズアップされるわけではないが、どのパート、どのセクションを取り出しても、納得の上手さ。ホルンとユーフォニアムがひな壇最上段という珍しい配置だったが、おそらく自由曲対策だろう(大活躍だった)。自由曲でも、パートごと、セクションごと、そして全体、という、3階層の美しさやダイナミックレンジを突き詰めているような印象を受ける。主題がとても難しく、若干処理に差があったかな。

・春日市民吹奏楽団
課題曲では、クラリネットを中心に、弱音~中音系の美しさが聴こえてきた。ときに「こんなに伸ばすのか」というほどの、長めのフレーズも特徴的。自由曲でも、クラリネットの美しさがバンド全体のサウンドの豊潤さを牽引しているように思えた。時折、バンド全体の中で、少しタイムラグがあるように思えたのだが、このくらいの大人数だとやむを得ないのかなあ。

・秋田吹奏楽団
課題曲は、少し遅めの設定で、じっくりと聴かせるような演奏だった。自由曲はネリベル!やはり良い作品だ。人数は全体的に若干少なめだが、縦のアンサンブルや、和音の精度でパワーを補っている。ネリベル独特の和声を、これでもかと美しく見せ付けていた。アルトサクソフォンとテナーサクソフォンは、ダイナミクスの処理が難しいフレーズを、よくまとめていたと思う。

・創価学会関西吹奏楽団
課題曲、冒頭のフルート、ピッコロのデュエットから見事な空気感。全体を通して、一見意味のないフレーズ間に、有機的なつながりを見出し、意味を与えていくような演奏だった。とてつもない大編成だが、アンサンブルのようにフレーズ内での統制は完璧。自由曲では、冒頭のファンファーレはこの日一番の貫禄と安定性だった。まるでスペクタクル映画の冒頭のファンファーレのよう。曲全体を通し、規範的そのもの。全体の構成方法、旋律のみならず、後ろで鳴っている和声にも隙がない。

・ブリヂストン吹奏楽団久留米
人気なんですね。演奏開始前、会場から期待の大きな拍手が印象的。課題曲IVはなかなかチグハグな作品だが、まったくそう聞こえない。団体が自らの強みを"わかっている"感がすごかった。中程度の人数ながら、鳴りは一級品。精度ももちろん高い。自由曲はおなじみの「ローマの祭」のスタンダード・カット(チルチェンセス途中までやって、主顕祭)だが、こうして聴くといかにトランペットが大変か、というのがよく分かる。トランペットは皆エース級で、バンダも全員鳴る、トップも相当鳴る。トロンボーンのソロは、今まで聞いた中でもっとも酔っぱらいを的確に表現しているソロ内容だったと思う。きっとあのトロンボーン奏者は酒呑みに違いない(笑)。

・上磯吹奏楽団
特別力を入れて吹いているわけではないのに、とても良く音が飛んでくる。大きい会場で鳴らすセオリーが、自然と身についているのかな(例えば練習会場が広いとか?)。美しく、良く鳴るバンドだった。個々の響きよりも、全体としての一体感や響きに重点を置き、音楽づくりをしているような印象。バンドのカラーがあるなあ。

・藤原大征とゆかいな音楽仲間たち
大人数だが、とてもスッキリした響き。見た目よりも落ち着いた音量。奏者は若い方が中心だが、指揮者の音楽作りだろうか。自由曲も同様に、とてもスッキリまとめてある。指揮者の意向が隅々まで行き渡っているような印象を受けた。

・東京隆生吹奏楽団
課題曲では、人数の多さに比して少し線は細いが、アインザッツの精度などでパワーを上手に補っている。自由曲では、瞬間瞬間の緊張と弛緩の切り替えが実に見事だ。特に、中間部から最終部にかけての、聴衆を座席に縛り付けるかのように緊張を強いる、音楽作り、オーラは見事だった。

・伊奈学園OB吹奏楽団
とにかく明るいサウンド。課題曲の再現部での明るい音は、本日前半の部の中でもピカイチ。最終部のトランペット・ソロがとても安定していて驚いた。自由曲も、やはり明るい音が印象的。瞬間瞬間の作り込みは相当なものだった。

2016/10/30

第64回全日本吹奏楽コンクール 職場・一般前半の部/後半の部

【第64回全日本吹奏楽コンクール 職場・一般前半の部/後半の部】
日時:2016/10/30(日曜) 9:30開演
会場:金沢歌劇座

朝イチから会場入りして、1団体を除き全て聴いてきた。こんな機会(家族が乗る)でもないと、わざわざ赴いてまで聴くことはないだろう。貴重な時間だった。

吹奏楽コンクールの全国大会を聴くのは初めて。熱演の数々…という事前のは伊達ではない。半年~一年に渡って、数十人の大人がたった12分のためにひたすら準備を行うのだ。全国だからといって、手抜きは一切なし。鮮烈な大音量サウンドと、それのみならず指揮者・奏者がこのハレの場にかける気迫を、丸一日にわたって浴び続けた。こちらも負けじと集中して聴き、そしてその思いを受け止めるのだから、クタクタである(笑)。

演奏者の表情は三者三様である。とにかく楽しそうな団体、気合いの入れようが凄い団体、場に飲まれているかのような団体、王者の風格を持つ団体…等、それぞれがそれぞれの思いを胸に抱いて臨んでいるのだなと、部外者ながら感じ入ったのだった。

昔から吹奏楽コンクールについていろいろと思うところはあり、言い出したキリがないのだが、コンクールという場にしか無いもの、この場を目指すからこそ手に入れられるものは、確かにあるのだなと思ったのだった。

結果は以下の通り。各団体ごとの感想をプログラム冊子に少しメモったので、後日まとめようかなと思っている。妻が参加していたデアクライス・ブラスオルケスターは、銀賞。お世話になった関係者の皆様、応援してくださった皆様、ありがとうございました。

前半:
ソノーレ 銀
光ウィンド 銀
名取交響 金
倉敷市吹 銅
浜松交響 金
春日市吹 銀
秋田吹 銅
創価学会関西 金
ブリヂストン久留米 金
上磯吹 銅
藤原大征 銅
東京隆生 銀
伊奈学園OB 金

後半:
Pastorale 銀
J.S.B.吹 銅
大津 金
リベルテ 金
鏡野吹 銅
横浜ブラス 銀
百萬石 銅
ドゥ・ノール
大曲吹 銀
NTT西日本 銀
ヤマハ 金
宝塚市吹 銀
デアクライス 銀

2016/10/23

アレクサンドル・スーヤ&安井寛絵コンサート

フランスでご活躍の、アレクサンドル(アレックス)・スーヤ氏、そして安井・スーヤ・寛絵さんによる演奏会。前半がアレックス氏によるソロ、後半がアレックス氏と寛絵さんの二重奏、という仕立ての演奏会だった。

【アレクサンドル・スーヤ&安井寛絵コンサート】
出演:アレクサンドル・スーヤ、安井寛絵(以上sax)、渡辺麻里(pf)
日時:2016年10月23日(日曜)15:00開演
会場:アクタス ノナカ・アンナホール
プログラム:
B.バルトーク - ルーマニア民俗舞曲
G.エネスコ - カンタービレとプレスト
E.シュルホフ - ホット・ソナタ
P.モーリス - プロヴァンスの風景
J.B.サンジュレ - 協奏的二重奏曲
N.ロータ - 三重奏曲~フルート、ヴァイオリン、ピアノのための~
G.コヌッソン - テクノ・パラード(アンコール)
武満徹 - 小さな空(アンコール)

いつだったかブログにも書いたが、安井寛絵さんは、だいぶ昔(留学開始直後くらい)から注目していた奏者である。…といっても、演奏を聴いたとかではなく、当時ブログを頻繁に更新されていた、ということと、長野出身である、ということが、その理由。気がつけば、様々な経験を積み、コンクールで入賞を重ね、クラシックも現代作品もなんでもござれの、超強力な演奏家となってしまった。アレックス氏と結婚されて、すでにお子さんもおられる忙しい中、変わらず様々な方面で活躍されていることは驚嘆させられる。

アレックス氏も、実に素晴らしい経歴を持つ奏者だが、そういえばしっかりと演奏を聴くのは初めてかも。チャンスはあったはずだが…。CDやYouTubeなどで聴く限り、演奏技術や音楽性にとどまらない部分(プログラミングとか、コンセプトとか)についても相当なこだわりを持っていることが窺え、本日聴くのを楽しみにしていた。

スーヤ氏の独奏ステージは、比較的耳に馴染みやすい作品を取り上げていた。しかし、どの作品の演奏でも、作品のコンセプトを色濃く表現していたのが面白い。例えばバルトークでは曲ごとの極端な音色変化を、シュルホフではポルタメント的な表現を前面に押し出し、モーリスでは民謡的なエッセンスを強調し…といった具合。こうやって文章にしてしまうと何気ないのだが…実際演奏を聴いてみると、クラシック・サクソフォンの表現域を拡大しようと試みるような、そんな心意気を感じたのだった。シュルホフは耳を洗い直されたなあ…すごかった。エネスコは、フラジオ音域を見事にコントロールしながらの演奏、原曲(フルート)の軽やかさ、機動性を失わないどころか、ダイナミックレンジなどにも色を添えた、鮮烈な演奏だった。

後半は、サンジュレから。デュオのレパートリーとしては、演奏されすぎているほど演奏されており、食傷気味ではあるのだが、今日の演奏は凄かった!このような演奏が聴けるのであればもっと聴きたいなと思わせるような…ご夫婦だから息がピッタリ、というそんな次元を超えた、音と音の超高速の会話。丁々発止、という表現がピッタリで、フランス人同士の早口の会話を見ているかのようだった。いやはや、すごかった。ニーノ・ロータの三重奏曲は、Trio Saxianaがたまに取り上げているクラリネット、チェロ、ピアノ…ではなく、フルート、ヴァイオリン、ピアノのための作品(初めて聴いた)。かなり緊張感を要する作品で、ソプラノ2本のハモリによる倍音が凄く、響きが会場に収まりきらないほど。大喝采。

アンコールはコヌッソンの「テクノ・パラード」と、武満徹の「小さな空」。武満徹のほうは、寛絵さんからあるお二方に捧げられた演奏だった。ちょっと言葉にできないような、心へと深い響きが浸透していくような、そんな演奏だった。

打ち上げ等も出たかったのだが、別件もあったため早々に退散。

2016/10/18

Tokyo Rock'n Sax 5th Live ~Boys, Be Alive~

【Tokyo Rock'n Sax 5th Live ~Boys, Be Alive~】
出演:松下洋(satc)、山下友教(sa)、東秀樹(at)、加藤里志(t)、丸場慶人(t)、塩塚純(b)、川地立真(b)、田中拓也(bs)、山本真央樹(drs)
日時:2016年10月17日(月曜)20:00開演
会場:カラオケラウンジKahoo
プログラム:
King Crimson - Red
Deep Purple - Fireball
Led Zeppelin - Black Dog
Led Zeppelin - Heartbreaker
Yardbirds - Stroll On
Rush - YYZ
Queen - Bohemian Rhapsody
Yes - Roundabout
Led Zeppelin - Stairway to Heaven
Deep Purple - Burn
King Crimson - 21 Century Schizoid Man (Encore)

(山Pさん、セットリストありがとうございます!)

毎度楽しみに伺っているTokyo Rock'n Saxライヴ。前回の公式ライヴ(レコ発記念ライヴ)より暗譜となり、ステージングが派手になり、立体感が出て、それに伴ってサウンドが一気に充実してきた。3回目、4回目のライヴでは、予定調和な部分に納まりかける危うさを一瞬感じたこともあったのだが、レコ発ライヴで完全に殻を突き破った。今回のライヴは、その方向性をより極端にした、レコ発ライヴの延長に位置するライヴだったと思う。

各個人が持つ技術的なレベルには相変わらず圧倒される。特にサクソフォン奏者は全員クラシック畑の出身であるから当たり前なのだが、表面に浮き上がってくるサウンドだけではなく、中間層を支える複雑なオブリガードや、低音が担う絶妙なグルーヴ感など、常人が真似出来ない演奏を次々と繰り出していく。輪をかけて強烈なのがドラムス山本氏。技術が高い云々で片付けられない、本場仕込み(保育園の頃からキング・クリムゾンを聴いているというから驚きだ)の見事なプレイで、変人(褒め言葉です)揃いのサクソフォンパートをリードしていく。

また、今日は会場の雰囲気もとても良かった。奏者が楽しい、聴き手も楽しい、奏者が盛り上がって、聴き手も盛り上がって、という、良い循環があったなあ。

ところで…驚いたことに、バスサクソフォンの田中氏が、今回限りでTokyo Rock'n Saxを引退してしまうとのこと。ここ数回のライヴを観ていて、メンバー交代など有り得ない、と感じていただけに、個人的にも残念極まりないと感じた。今後、バスサクソフォンのポジションはどうするのだろう。そんな発表があった後に続けて演奏されたレッド・ツェッペリン「天国への階段」は、特別な感情を持って迫ってきた。ラッシュ「YYZ」の演奏(突然ソプラノでソロを取る田中氏)とともに印象深く、何だか涙ぐんでしまったのだった。

2016/09/19

第4回東名高速Saxophone Quintet

毎年、聴くたびにますますパワーアップの東名高速クインテット、今回も充実すぎる演奏会だった。いつも、期待以上の新しい世界を見せてくれる団体だと思う。

【第4回東名高速Saxophone Quintet~富士盛りライヴ!天地返しの謝肉祭~】
出演:瀧彬友、川内立真、松下洋、上野耕平(以上sax)、黒岩航紀(pf)
日時:2016年9月19日(月・祝)14:30開演
会場:アクタス ノナカ・アンナホール
プログラム:
R.ブートリー - ディヴェルティメント(松下、黒岩)
佐藤雅俊 - 影(川内、黒岩)
F.ボルヌ - カルメン幻想曲(瀧、黒岩)
坂東祐大 - エアリアル・ダンス(上野)
中村真幸 - ミッドナイト・トレイン(上野、松下、黒岩)
J.イベール - 2つの間奏曲(瀧、松下、黒岩)
C.コリア - アルマンド・ルンバ(上野、川内)
F.リスト - ハンガリー狂詩曲第6番(黒岩)
A.ピアソラ - ミケランジェロ'70(瀧、上野、松下、川内)
C.サン=サーンス/前田恵美 - 動物の謝肉祭(上野、瀧、松下、川内、黒岩)

※ネタバレを含むので、行く予定の方はここから下は見ないことをおすすめする次第。感想はずっと下のほうに書いておく。





























※以下、ネタバレ。読みたい方はもっと下…。

























第1部はとにかく個性の展覧会、という感じ。意外にスタンダードな選曲ながら、第3楽章ではぶっ飛んだブートリーを聴かせた松下氏、非常に面白い新作品ジャズの語法に乗せて、自身の内情を存分に吐露した川内氏、楷書体のような、誠実な音色と音楽性、やはりピカイチの圧倒的な説得力で魅せた瀧氏、18分に及ぶ特殊奏法満載の強靭な作品を、驚異的な集中力で聴かせた上野氏…といったところ。やはりこれほどのソリストの集まりだからこそ、演奏会が徹頭徹尾面白いのだな…と再認識した。MCのそれぞれの空気感も、また楽しい。

第2部は、デュオを中心にしたプログラム。中村氏のミッドナイト・トレインは、ポピュラー音楽のような聴きやすさから、印象に残る内容であった。イベールは、まるで原曲のような爽やかな風を感じ、不思議な事に"ホールの狭さを感じさせない響き"を体感したような気がしたのだった。チック・コリアは、元々は松下くんが旭井くんに委嘱し、名古屋では松下&瀧、神奈川では松下&塩塚、という布陣で演奏した作品だが、今回は珍しや、上野氏と川内氏、という布陣!彼らのこだわりの解釈をとても楽しく聴いたのだった。第2部最後はなんと、黒岩氏のソロ。リストの超絶技巧…全力を尽くした表現…を見事に体現する振る舞いで、とても興奮させられたのだった。

第3部、挨拶代わりのピアソラに続き、景品プレゼントじゃんけん大会。そして、「動物の謝肉祭」をり回した「どうぶつの!?謝肉祭」。これがとても面白かった!編曲者がオリジナルで加えた"動物"も登場し(まさか亀がウサギとカメになったり、さらにはゴキブリが登場するとは)、原曲が50%、残りはエンターテイメント性に溢れる素敵な編曲だった。曲が進むに合わせて、ステージ上のスケッチブックにメンバーそれぞれが書いた動物が登場、その絵心すらも楽しんでしまった。

アンコールは、何とかというジャズ・ヴァイオリニストの作品で、松下氏がベース、川内氏がカホンを奏で、瀧氏と上野氏がソプラノを吹き、黒岩氏がピアノを弾くというもの。いやー、面白かった。

終演後は、聴きに来ていた方々と飲み会。こちらもまたいろんなことに話が及び、楽しかったなあ。しかし、串八珍(アクタス後の飲み会と言えばそこだったのに…)がなくなっていたのは驚き。

2016/09/10

第56回東京都吹奏楽コンクールの本選を聴きに

府中の森芸術劇場で開催された第56回東京都吹奏楽コンクールを聴きに伺った。昼間の府中の森芸術劇場に行くのは初めてかも。何となく府中本町から徒歩で向かった、地図の印象よりずっと遠く、日差しが照る中を汗だくになりながら歩く羽目になったのだった。

2団体(デアクライス・ブラスオルケスターと東京隆生吹奏楽団)しか聴けなかったのだが、非常に高い技術・音楽性を持った演奏で、まさに"競り合い"という印象を受けた。地固めがしっかりできており、その上の+10%の部分に指揮者の曲作りやソロの出来栄えが乗って勝敗を決する、ということなのだろう。敢えて言葉で表すならば…「課題曲では大編成ながら端正な音楽作りを心がけ、自由曲では一転、ダイナミックな音作りと高レベルな独奏で聴衆を魅了したデアクライス」「課題曲・自由曲とも、引き締まり良く制御されたアタック/リリースを武器に、カチッとした印象を残し、自由曲では楽曲のパワー面の不利さ(デアクライスの選曲に比して)を見事に補った東京隆生」といったところだろうか。

個人的には、デアクライス≦東京隆生に聴こえたのだが、もはやここまで来れば好みの問題だ。また、会場との相性など、演奏以外の要素が及ぼす影響も(接戦の場においては)大きいことだろう。他の団体は聴けなかったのだが、どのような演奏を繰り広げたのか…うーん、最初から聴けばまた印象も違ったのかもしれないが。

終わってみれば、聴いた2団体が偶然にも職場・一般部門の金賞&代表権を同点で勝ち取り、全国大会へと進むことになった。ところで、妻がデアクライス・ブラスオルケスターに乗っており、彼女としては"初の全国大会出場"となる。ここ最近の毎週末の練習は大変そうだったが、良い結果が出て実にめでたいことだ。全国大会は10月30日、石川県金沢市。少々遠いが、せっかくの機会なので聴きに行こうかなと思っているところ。