2024/04/22

B.Marsalis plays "Hot Sonata"

アンドレイ・ボレイコ指揮ニューヨーク・フィルと、ブランフォード・マルサリス氏の共演による、エルヴィン・シュルホフ「ホット・ソナタ」の録音。

https://archive.org/details/cd_tuur-schulhoff-harbison-lutoslawski-hambre_bengt-hambreus-erkki-sven-tuur-ervin-schul/disc1/

デンヴァーポスト紙上にも、この演奏会のことが書いてあった。

https://www.denverpost.com/2010/07/29/branford-marsalis-hits-classic-note-in-vail/

これ見よがしに出てくるオールド・ジャズの雰囲気が、マルサリス氏の奏でる演奏の雰囲気とマッチしており、この作品の数ある演奏の中でも最高のものの一つだと感じた。

かなりレトロな音色を意識しているようにも思えるが、当時のセッティングが気になるところ。下記、おそらく演奏会に際して収録されたインタビューでは、バリバリのクラシック・セッティング(Vandoren)になっているが…。

Prism Quartetの2000年のライヴ録音

Internet Archive上にて、Prism Quartetの過去の演奏会のライヴ録音は見つけた。2000年6月24日、フィラデルフィアのFree Library of Philadelphia、Montgomery Auditoriumでの演奏とのこと。同月20日にもニューヨークにて同じプログラムで演奏している。

https://www.prismquartet.com/concerts/2000-new-york-philadelphia-recital-series-iii-new-sounds-worldwide/

プログラムは以下の通り。VieruとGriseyの各作品はソロ。イタリア、ルーマニア、アメリカ、フランス、オランダ、ギリシャと、多国籍な作品が並ぶ。ティケリ「Out of Blue」は、このニューヨーク~フィラデルフィアのコンサートシリーズにおいて初演されたとのこと。

F.Donatoni - Rasch
A.Vieru - Doux Polyson
F.Ticheli - Out of Blue
G.Grisey - Anubis et Nout
T.Keuris - Quartet
I.Xenakis - XAX

https://archive.org/details/cd_live-in-hall-recordings-vol-94_franco-donatoni-anatol-vieru-frank-ticheli/disc1/

2024/04/15

ワシントン・ポスト紙上のデファイエ四重奏団記事

ワシントン・ポストの1985年6月25日の記事に、ダニエル・デファイエ四重奏団のアメリカにおける演奏(世界サクソフォン・コングレス開催に伴う)の模様を伝える記事を見つけた(機械翻訳にかけてみた)。

https://www.washingtonpost.com/archive/style/1985/06/26/world-saxophone-congress/1de5ed58-adb7-41a5-904f-0eb57ae2673e/ 

デファイエ四重奏団は、昨夜メリーランド大学で開催された第8回世界サクソフォンコングレスのオープニングコンサートに出演した。ソプラノ・サクソフォン奏者ダニエル・デファイエ率いるフランス人音楽教授のカルテットは、現代の作曲家によるカラフルで特異な3つの作品で、タウズ・シアターの満員の聴衆を喜ばせた。

アルト・サックス奏者のアンリ=ルネ・ポリンは、アレクサンドル・グラズノフの「四重奏曲」(5つの変奏曲が、豪快な冒頭楽章、激的なフィナーレに挟まれている)で、多くのエネルギーとリズミックなドライブを提供した。

今週アメリカで初演された12曲のうちの1曲目、イィンドジフ・フェルドの「四重奏曲」は素晴らしいアンサンブルだった。1982年に作曲されたこの5楽章の作品は、音楽スタイルの並置と音色の探求に成功しており、他のよく練られたアイデアの中でも特に優れている。

この夜の最後の四重奏作品、フローラン・シュミットの「四重奏曲」は、愛らしく官能的な4楽章からなる作品で、演奏家たちが優雅な名人芸を魅せた。


2024/04/12

Moscow Saxophone Quartetの演奏動画

ニキータ・ズィミン氏を筆頭に、ロシアの名手が集結したMoscow Saxophone Quartetの演奏動画。アルトはユーラシア・サクソフォン協会の副会長のタラス・グサロフ氏、テナーはアナスターシャ・コニャエワ氏、バリトンは2023年のディナンコンクール覇者のドミトリ・ピンチュク氏。

現代の美しいサウンドを持つ四重奏団、というだけで片付けられない、強い魅力を持つ団体だ。ミュージックビデオの雰囲気も良い。

とりあえずVKのページはフォローしてみた(内容はインスタグラムと近い)。

2024/04/07

細川俊夫サクソフォン作品集:Light and Darkness

KAIROSレーベルより、大石将紀氏をフィーチャーした、細川俊夫氏のサクソフォン作品集「Light an Darkness」が発売された。演奏者は他に、宮田まゆみ(笙)、イルゼ・イーレンス(ソプラノ)、吉野直子(ハープ)、大宅さおり(ピアノ)、葛西友子(打楽器)。武生国際音楽祭にゆかりの深い奏者による布陣。

私が細川俊夫氏のサクソフォン曲に初めて触れたのはクロード・ドゥラングル氏の演奏による「Vertical Time Study II」であり、その後もヨハネス・エルンスト氏演奏の「サクソフォン協奏曲」、ドゥラングル氏演奏の「3つの愛のうた」などを録音で聴いた。魅惑的な作品が多いが、氏のサクソフォン作品集は初めてだと思われる。

「Vertical Time Study II」など、聴き慣れた曲は、大石氏のしなやかなサクソフォンによって耳を洗い直され、ドゥラングル氏との解釈の差分を面白く聴くことができる。笙とサクソフォンのための「明暗」やハープとサクソフォンのための「弧の歌」など、初めて聴く細川氏の編成の作品では、音色のブレンドや楽器間のインタープレイに、じっと聴いていると「細川氏の独特の節まわし」のようなものが感じられてくるのが面白い。

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以前、「3つの恋のうた」の題材となった短歌について、自分なりに調べて解釈した現代語訳を載せておく。

【暗きより 暗き道にぞ 入りぬべき はるかに照らせ 山の端(は)の月 - 和泉式部】

歩けば歩くほどに、暗い暗い中に迷い込んでしまいそうだ。山の端の月よ、どうか行く先を照らしてくれ。※ここでの「暗き道」とは、「煩悩の道」のことをも言っているそうだ。

【あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの 逢ふこともがな - 和泉式部】

私は間もなく死ぬだろうが、せめてものこの世の最後の思い出に、あなたにもう一度だけ会っておきたい。

【物おもへば 沢の蛍も 我が身より あくがれいづる 魂(たま)かとぞみる - 和泉式部】

恋に悩めば、沢に飛び回るほたるも、私の身体から抜け出していくたましいではないかと思えてしまう。

石渡悠史氏の演奏:浦田健次郎「ソナタ」

最近Facebookにて雲井雅人氏が紹介し、ちょっと話題になっている録音。浦田健次郎氏の「アルトサクソフォンとピアノのためのソナタ」を、石渡悠史氏が演奏した録音。


もの凄い集中力というか、鬼気迫るものがあり、かなり驚かされた。吉岡氏がアップしていたジャケ写真によれば、1980年の録音、つまり、石渡氏が40代の頃の録音ということになる。

作曲者の浦田氏は、もともとトロンボーン専攻だったが、のちに作曲を専門とし、東京藝術大学の作曲家教授をも務めた重鎮。この「アルトサクソフォンとピアノのためのソナタ」は、作曲家集団である「環」から1967年に発表された、浦田氏の作曲家としてのデビュー作品である。1974年にフランス・ブルドーで開かれた第4回世界サクソフォンコングレスでは、佐々木雄二氏により演奏された記録が残っている。


浦田氏の、サクソフォンの作品としては、他に、「サクソフォン四重奏のための3つの小品」がある。

2024/03/30

Quatuor Habanera plays Glass

最近アップロードされた動画で、ハバネラ四重奏団がフィリップ・グラス「サクソフォン四重奏のための協奏曲」をアメリカ海軍バンドとともに演奏している映像。


これは、アメリカのInternational Saxophone Symposiumという海軍バンド主催の年一のイベントでの演奏の様子。同曲の吹奏楽版は初めて聴いた(アレンジャーは不明)。第2楽章や第4楽章など、エッジが効いて斬新な響きだが、例えば第1楽章など、やはりオーケストラ版に感じられる浮遊感が無くなってしまっている。

ハバネラ四重奏団の演奏はさすがで、特に緩徐楽章にて微妙な陰影の遷ろいを音色で表現する様が見事。

2024/03/25

パドワのコンチェルティーノ

ウラジミール・パドワ Vladimir Padwaは、1900年ロシア帝国に生まれ、エストニアとドイツで学んだ後、アメリカで活躍した作曲家。エストニアで音楽キャリアをスタートさせ、ベルリンでは、フェルッチョ・ブゾーニの最後の弟子として学び、1932年頃からアメリカで活動し始めた。1948年には永住権を獲得し、同年ニューヨーク音楽大学の教授に就任している。1981年没。

この「サクソフォン、ピアノ、ギターのためのコンチェルティーノ」の録音では、パドワがピアノを弾き、ヴィンセント・アバトがサクソフォンを担当している。パドワとアバトの繋がりを示す直接的な情報は見つけられなかったが、パドワがニューヨークを活動の中心地に据えていた、ということで、ヴィンセント・アバトと交流があったことに違和感はない。

下記からその録音を聴くことができる。アバト氏のアメリカン・スタイルの力みの無い音色は魅力的だ。ギターはピアノの補助的に使われており、あまり目立つ箇所が無い。

https://archive.org/details/cd_thomson-schmidt-desenclos-tansman-lees-pad_virgil-thomson-gustavo-becerra-schmidt-al/disc1/

写真は、パドワの近影。


オーケストラ版のPCF、バリトン独奏(R.ピーターソン編)

ラッセル・ピーターソン氏の編曲によるアルフレッド・デザンクロ「PCF」の映像。スペインで行われた第11回世界サクソフォンコングレスで初演された編曲。初演の録音を聴いたことはあるが、なかなかオーケストラには酷な内容で、効果的かといわれると必ずしもそうではない。ちなみに、編曲として公式の許可を得ているものかどうかは不明。好事家(物好きな方)向け。

…どころか、なんとバリトンサクソフォンでの演奏。ワシントン大学の学生オーケストラとの共演で、サクソフォンを演奏しているのはKatie Zundel氏という方だが、この方も学生かな?なかなか濃厚で良い音をしているのだが、高音部や急速部では技術的に少々難あり。



2024/03/18

Quatuor LaloyのCDを紹介

…ということで、以前も紹介したのだが、あまり知られていないようなので再掲。Nicolas Arsenijevic氏が参加した商用録音の中で、個人的に最も好きなもの。

Arsenijevic氏がソプラノを務めるQuatuor Laloyという四重奏団で、2008年の結成。最新の状況としてアルトにEva Barthas氏が参加したとの情報もあるが、公式サイトが消滅しており、確証が得られていない。この「Diptyque」というアルバムは2014年の録音で、その際のメンバーは下記の通り。

Nicolas Arsenijevic, saxophone soprano
Guillaume Berceau, saxophone alto
Vincent Dupuy, saxophone ténor
Julien Bire, saxophone baryton
Sébastien Farge, accordéon
Jérôme Souille, batterie

YouTube上のプレイリストから全編を聴くことができる。これは、コロナ流行時のロックダウンの際、様々なコンサートがキャンセルとなる中で、オンライン上で聴衆に楽しんでもらおうとの試みにより公開されたものである。

https://www.youtube.com/watch?v=hWkAI1xMqzw&list=PLImaPFgp5SM9Po_JlcEKVyWdE2Eyyp9DZ&index=1

アコーディオン・パーカッションも交えての、クレツマー音楽を中心とした内容。サクソフォンならではの機動性とボーダレスな音色が、作品にマッチしている。

2024/03/17

パリ国立高等音楽院サクソフォン科の新教授はNicolas Arsenijevic

表題の通り、クロード・ドゥラングル教授の退官に伴う来年度以降のパリ国立高等音楽院 CNSMDPの教授が、選考の結果、Nicolas Arsenijevic ニコラ・アルセニイェヴィッチ氏に決定したとのこと。

カタカナ表記については、下記を参考にしたが、元の名前のスペルミス等もありなんとも言えないところで、今後落ち着くまで時間がかかりそう。そういえば、ドゥラングル氏も、2007年あたりに「ドラングル」という表記が流行ったりした。個人的にカタカナ表記はけっこう重要な情報ので、ぜひ野中貿易様あたりに早めに制定いただきたいところ。

https://ameblo.jp/chiharulemarie/entry-12817374181.html

初めてNicolas Arsenijevic氏の名前を知ったのは、無名時代に、彼の演奏するサン=サーンスの「序奏とロンド・カプリツィオーソ」の録音によって、だ(確か大西智氏さんに聴かせてもらったような)。世界最先端のフランスのサクソフォン界が次のステージへと移行を開始している時期のもので、その鮮やかな演奏に驚いた記憶がある。その後、ディナンのコンクールのライヴ中継や、クロアチアのコングレスで実演に触れたこともあるし、折につけ見る名前だったが、まさかこのサクソフォンの世界最高学府の教授に就任とは。

CNSMDPのサクソフォン科は、このグローバリゼーションの時代となってなお、世界のサクソフォンのトレンドを築く中心地といえる。Nicolas Arsenijevic氏がどのように動いていくのか…注目していきたい。


2024/03/10

SAXIDEA "Hommage"

新生SAXIDEAのアルバム第二弾が、NATレーベルより発売された。これでCDを入手‥などとなると、アメリカへの輸入は時間がかかるが、発売の瞬間に聴くことができるのは、やはり配信の利点の一つだ。

武藤賢一郎(Ss)、茂木建人(As)、小山弦太郎(Ts)、歌頭諒(Bs)という師弟カルテット。日本人初のパリ国立高等音楽院卒業生にして、国際コンクール入賞者という唯一無二の経歴を持つ武藤氏。いまだにその技術・音楽性は健在であり、弟子とともに大曲を見事に創り上げている。収録は、ブーニョ、シュミット、グラズノフ。

武藤氏の演奏に着目すると、(例えば年齢による)後退の姿勢など一切を感じさせず、それはソプラノサクソフォンの音色・音楽性ともに、稀にアンサンブルの上で先行しすぎるきらいに反映されるのかもしれないが、とにかく圧倒される演奏だ。弟子である他の3名が、いまこの時点でもかなりのものだが、さらにタガが外れたときに、いったいどんな次元の演奏になるのだろうかと、そんな妄想をしてしまう。次のアルバムも期待したい(ぜひ、旧SAXIDEAでも録音していたベルノーの再来を!)。

個人的にはブーニョの録音が嬉しい。商用録音として、私が知る限りはJacques DeslogesのLPアルバムに収録されているくらいで、CD時代に取り上げられたことを聞いたことがない。小品として扱われてしまうことも多いが、個人的には他の数あるネオ・クラシカルスタイルの作品と遜色ないと考えており、これをきっかけに現代でも取り上げられることが増えてほしい。



2024/03/04

Jacques Murgierの協奏曲集

ダニエル・ゴーティエ Daniel Gauthierは、カナダ生まれ、その後ドイツで活躍している奏者。ボルドー音楽院でロンデックスに師事。近年ではAlliages Quartettとしての活動が有名。メディアへの露出も多い。

オーケストラ奏者としての演奏も有名で、ハインツ・ホリガー指揮シュトットガルト放送交響楽団と共演したドビュッシー「ラプソディ」の録音は同曲の最高の録音の一つとして名高い。

そんなゴーティエ氏が、1996年に録音したJacques Murgierの協奏曲集の録音を聴いた。「アルトサクソフォンと弦楽オーケストラのための協奏曲」という作品で、ネオ・ロマンティックとでも表現できそうなスタイルの作品を、明るい良く通る音色で見事に演奏している。こういう音色を躊躇なくオーケストラとぶつけ合うことのできる奏者ってなかなか居ないなあと、30年近く前の世界に思いを馳せている。



2024/03/03

こんなところにIngolf Dahlの名前

こどもたちがスヌーピーにハマっている関係で、昔のピーナッツの映画「A Boy Named Charlie Brown」を観た。途中、ベートーヴェン大好き、シュローダーがピアノで「ピアノ・ソナタ第8番"悲愴"」を弾く場面が出てくるのだが(その時の映像はややサイケデリックで面白い)、それがまあ見事な演奏で、劇中でも印象に残る箇所であった。

誰が弾いているのかなと思ってクレジットを見ると、なんとIngolf Dahlの名前が!作曲者としてだけではなく、ピアニストや指揮者としても活躍していたことは知っていたが、まさかこのようなところで発見するとは思わず、驚いてしまった。以下、英語版のWikipediaからの抜粋の翻訳だが、しっかりその映画についても触れられている。

彼はエンターテインメント業界でも働き、 1941年にエドガー・バーゲンと彼の人形劇のピアニストとしてツアーし、その後1942年と1956年にはコメディアンのグレイシー・フィールズのためにツアーを行った。彼はトミー・ドーシーのために編曲をプロデュースし、ヴィクター・ボルジの編曲者兼指揮者を務めた。彼はベニー・グッドマンにもクラシックのレパートリーの個人レッスンを与えた。彼は、フォックス、ゴールドウィン・スタジオ、コロンビア、ユニバーサル、 MGM、ワーナー・ブラザース、およびポストプロダクション会社トッド・AOの多くの映画のサウンドトラック・オーケストラで鍵盤楽器を演奏した。彼はテレビ番組『トワイライト・ゾーン』にも取り組みました。この作品がもたらした収入には感謝しているが、『スパルタカス』の制作中、音符は他のいくつかの楽器でも倍増されているのに、「チェレステでいくつかの音を鳴らす」ことがいかに無意味であるかについて不満を漏らしていた。ダールは弟子のポール・グラスが『アブダクターズ』 (1957年)のサウンドトラックを指揮し、 1969年のアニメーション映画『A Boy Named Charlie Brown』ではベートーヴェンの悲愴ソナタの第2楽章と第3楽章の両方を演奏した。

https://en.wikipedia.org/wiki/Ingolf_Dahl



2024/02/12

HabaneraSQ plays Vincent David "Elementum"

昨年12月、ラ・パルマで開催された世界サクソフォン・コングレスにおけるライヴ映像で、ヴァンサン・ダヴィッド「Elementum」の、ハバネラサクソフォン四重奏団による演奏。高難易度のコンテンポラリー作品であっても、透明度が高くすっきりと先を見通すかのようなパフォーマンスは、ハバネラ四重奏団の真骨頂であろう。

シーンによっては非常に魅力的な響きが聴こえてきて楽しい。まだ出版もされておらず、レパートリーとしては認知度が低いが、いずれ広く取り上げられていきそうな予感がある。



2024/02/04

デファイエ氏の所持録音リスト更新

ダニエル・デファイエ Daniel Defffayet氏関連の、所持録音リストを更新。

https://docs.google.com/spreadsheets/d/1c98A6VaRUuYaFOOw8MycHDwJ9aFtiwYdx_pq32VGxOI/edit?usp=sharing

ラジオ・フランスの放送用録音を追加した。カルメルの「コンチェルト・グロッソ」が珍しいが、1988年のコングレスの録音のようにも聴こえる…。折を見て同定作業を実施する予定。

2024/02/03

Daniele Fazianiの多重録音アルバム

イタリアのサクソフォン奏者Daniele Faziani氏の多重録音による四重奏アルバム「Il volo del sax」。名前は存じなかったのだが、かなりベテランの域に入る奏者のようで、1980年代から各所で活躍していたそうだ。詳細なプロフィールはこちらのリンク先が詳しい。

四重奏の多重録音というと、ありそうであまり無く、国内では林田和之氏のYouTubeチャネルが有名だが、こういったまとまった形でのアルバムはあまり聞いたことがない。

おそるおそる聴き始めたのだが、意外にも(?)実にまっとうな演奏で、それぞれの作品がかなり高いレベルで演奏されていることに驚かされた。2015年の出版ということだから、これまでノーチェックであったことが勿体なかった。

Roberto Di Marinoの「Quartetto II」といえば、ネット黎明期にオンライン上で楽譜を入手できた数少ない曲のうちのひとつで、そんなニッチな作品が取り上げられていることに驚いたが、過度にメロディアスにならない、節度ある演奏。「カルメン」のメドレーも、短いながら面白い仕掛けが多く、とても楽しめる(アンコールピースとして良さそう)。デザンクロの「四重奏曲」も名録音と呼ばれているものに引けを取らない、というと言い過ぎかもしれないが、数多ある録音の中でもかなり良いほうに位置するもののように思えた。

ストリーミングサービス等で聴くことができる。YouTube Musicのリンクは下記。

https://music.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_nOju_GwKJ_16wBOUZ8lEOPiOY_Caalggc&si=wz6xsNLlfDr-DFLp



2024/01/29

M.Weiss plays Legende by Caplet

スイスのサクソフォン奏者、マルカス・ワイス Marcus Weiss氏が、室内楽団とともに演奏するアンドレ・カプレ「伝説」の録音。商用流通しているとは聴いたことがないが、放送用録音だろうか。

https://archive.org/details/cd_music-of-andre-caplet_andre-caplet/disc1/



2024/01/28

デファイエ氏の所持録音リスト更新

ダニエル・デファイエ Daniel Defffayet氏関連の、所持録音リストを更新。

https://docs.google.com/spreadsheets/d/1c98A6VaRUuYaFOOw8MycHDwJ9aFtiwYdx_pq32VGxOI/edit?usp=sharing

1977年のデファイエ四重奏団の日本でのリサイタルと、1992年日本での最後のリサイタルとなった、昭和音楽大学での藤井一興氏との共演を追加した。

F.Daneels plays Ballade by Absil

1921年生まれ、かつてブリュッセル王立音楽院の教授を務めるなど、ベルギーを代表するサクソフォン奏者の一人であったフランソワ・ダニール François Daneels氏。その録音がInternet Archiveに上がっている。ジャン・アブシルの「サクソフォンとピアノ、オーケストラのためのバラード」という作品の演奏で、私は初めて聴いた。

https://archive.org/details/cd_jarnach-erbse-kuula-schroeder-absil-compos_philip-jarnach-heimo-erbse-toivo-kuula-her/

サクソフォンとピアノのインタープレイが面白く、ネオ・ロマンティックとでも表現できる(アブシル)らしい響き。ダニール氏の濃密な音色は、存在感抜群だ。写真は、フランソワ・ダニール氏の近影。


2024/01/27

ハバネラ四重奏団の大阪ライヴ盤

ときどき思い出したように聴きたくなるCD。今となっては入手困難なのが非常に残念なのだが、現代におけるサクソフォン四重奏のありとあらゆるCDの中で、頂点に位置するものだと言い切ってしまいたいものだ。

マルセル・ミュール四重奏団が創始したクラシック界のサクソフォン四重奏は、ダニエル・デファイエ四重奏団の拡張によって頂点を極められた。その後、80年代後半のグローバル化に伴う多様化から、種々の進化のベクトルが生まれたが、ミュール~デファイエと続いたその伝統的なフランスの流れを押し拡げた結果の、ひとつの究極系なのだ。


2005年のハバネラ・サクソフォン四重奏団の、大阪国際室内楽コンクールにおける優勝は、サクソフォン界のすべての話題をかっさらうほどの快挙であり、特に日本国内では2006年に優勝ツアーが行われ、多くの聴衆がその素晴らしい演奏を堪能した。そのコンクールのライヴ盤である「The 5th Osaka International Chamber Music Competition & Festa 2005(Yomiuri Telecast Corporation YC-0515)」。読売放送が限定盤として作成したディスク。一次予選からデザンクロ「四重奏曲」、ドナトーニ「ラッシュ」、二次予選から野平一郎「四重奏曲」、そして本選からグラズノフ「四重奏曲」、クセナキス「XAS」を収録。

恐ろしいほどの集中力と覇気が、録音からビシバシと伝わってくる。間違いなく優勝のみを見据えて頂点を狙いに行く、一切手抜きなしの彼らの本気が凝縮された、その瞬間を切り取った素晴らしいディスクだ。本線のグラズノフ、クセナキスは、もはや異次元であり、そして一切守りなし、攻め一方の驚くべき内容。これから先これをのような演奏が果たして出てくるのかわからない、というほどのもの。

2024/01/25

デファイエ氏の所持録音リスト更新

ダニエル・デファイエ Daniel Defffayet氏関連の、所持録音リストを更新。

https://docs.google.com/spreadsheets/d/1c98A6VaRUuYaFOOw8MycHDwJ9aFtiwYdx_pq32VGxOI/edit?usp=sharing


1977年の日本でのリサイタルの録音と、ストリーミングサービスを通じてだれでも聴くことができるSWR musicのデジタル復刻盤についての情報を追記した。

2024/01/24

ダニエル・デファイエに関連したミュールのコメント

Marcel Mule: His Life & the Saxophone内の記述で、ダニエル・デファイエについて触れられている部分を訳してみた。

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ドイツの指揮者・オーケストラについて、他になにか特別な思い出はありますか?

私は多くのオーケストラで演奏しましたが、時折ドイツの指揮者とも共演しました。その中のひとりが、ヘルベルト・フォン・カラヤンで、彼がまだ30歳のときにラヴェル「ボレロ」を一緒に演奏しました。彼は心から我々のサクソフォンの演奏について驚き、喜んでくれました。今日では、ベルリン・フィルハーモニックで重要なサクソフォンパートがある時、カラヤンはダニエル・デファイエを呼んでいます。

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時折、サクソフォンの音について、いわゆるフランスの音、だとか、アメリカの音、といったカテゴライズがなされることを耳にしますが、それについてどう思いますか?

その考え方は誤っており、サクソフォンを真に学んだ奏者はそのような分類を使いません。それに関連して一つお話をしましょう。1970年のジュネーブ国際コンクールのサクソフォン部門での出来事です。多くのフランス人奏者のみならず、アメリカやカナダといった他の国からも奏者が参加しましたが、フランスの奏者は良い結果を残せず、アメリカやカナダの奏者が良い結果を残しました(注:最高位はアメリカのジャック・クリプル)。私はこれについて、演奏時の身体の方向と関連があると考えました。デファイエ教授に、彼の生徒が審査員の方を直接向かず、45度身体の方向を変えるよう、示唆したのは私です。しかし、コンクールを聴きに来ていた地元の批評家が、ジュネーヴの新聞に書いた記事には、音の違いはフレンチ・スクールとアメリカン・スクールの違いから来るものだと書いていました。(…後略)

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ピエール・ブーレーズと仕事をしたことはありますか?

いいえ、ありません。しかし彼を良く知っています。(…中略…)最近ダニエル・デファイエに教えてもらったことにより、私はとても勇気づけられました。デファイエは、ブーレーズ指揮でアルバン・ベルクの「ルル」を吹きました。ブーレーズがデファイエに曰く「このように演奏される時にこそ、私はサクソフォンをとても好きになる」とのことです。このコメントは、奇妙でありつつも勇気づけられます。まずはじめに「ルル」のサクソフォンパートは極めてメロディックなものなのです。ブーレーズはこれを好きだ、と言ったのです!翻って、彼がそれよりもサクソフォンが貧弱に演奏されることを聴いたことがあるということをも暗示するのです。彼はデファイエに、サクソフォンの作品を書く、とまで言いました。もしかしたら実現するかもしれません!

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たくさんの作品があなたのために書かれました。いくつくらいあるのですか?

数えたことがありません。そして、楽譜ももはや所持していません。多くの楽譜は、引退のときに、ダニエル・デファイエなど、元生徒たちにあげました。私はこれらの作品を演奏しないのだから、楽譜を持ち続ける理由が無かったのです。



2024/01/22

RascherSQのライヴ録音2題

https://archive.org/details/cd_live-in-hall-recordings-vol-79_augusta-read-thomas-philip-glass-heitor-vi/disc1/

ラッシャー・サクソフォン四重奏団と、Dennis Russell Davies指揮アメリカン・コンポーザーズ・オーケストラの演奏で、1988年1月11日、ニューヨーク・カーネギーホールにおける2曲のライヴ録音を聴くことができる。1曲目は、女流作曲家Augusta Read Thomasの「Brass Axis」、2曲目はフィリップ・グラスの「サクソフォン四重奏とオーケストラのための協奏曲」である。

ハイ・テンションで駆け抜ける1曲目も良いが、とにかく2曲目のオーケストラとの録音は貴重であり、やはりそちらに着目してしまう。やや音場が遠いが、セッション録音(やはり同じD.R.Daviesと、こちらはシュトットガルト室内管弦楽団との録音)と比べると、前進力の違いが顕著であり、ぐっと引き込まれた。

D.R.Daviesとフィリップ・グラスが写った写真。「交響曲第8番」のジャケットに使われている。

デファイエ氏の録音リスト更新

だいぶ久々ではあるが、ダニエル・デファイエ Daniel Defffayet氏関連の、所持録音リストを更新。

https://docs.google.com/spreadsheets/d/1c98A6VaRUuYaFOOw8MycHDwJ9aFtiwYdx_pq32VGxOI/edit?usp=sharing

大阪のリサイタルの録音(ヒンデミットは赤松二郎氏との共演と、ジャン=フランンソワ・パイヤール室内管弦楽団とのグラズノフの録音についての情報を追加した。

日本在住の最中に木下直人さんから頂戴したものや、最近はニコラ・プロスト氏の復刻録音なども出てきており、それらについても追記していく予定。


2024/01/21

東京SEとトルヴェールQの録音

昨年M先生のご自宅で聴かせていただいた録音の中に、「東京Sax・サクソフォンの饗宴」という録音があった。これは1980年代に東京サクソフォン・アンサンブルとトルヴェール・クヮルテットがジョイントコンサートを行った時のものである。

プログラムは次の通り。
東京サクソフォン・アンサンブルステージ:
 J.S.バッハ - G線上のアリア
 J.S.バッハ - バディネリ
 T.アルビノーニ - アダージョ
 E.グリーグ - 郷愁-家路
 M.ラヴェル - クープランの墓
トルヴェール・クヮルテットステージ:
 G.ガーシュウィン - 3つのプレリュード
ジョイントステージ:
 A.ヴィヴァルディ - 調和の霊感 Op.3-11
 H.ヴィラ=ロボス - ブラジル風バッハ第1番
 C.ドビュッシー - 小組曲よりバレエ
 S.ジョプリン - イージー・ウィナーズ

両者、演奏スタイルの違いは如実にあり、それぞれ「これぞ東京SE」「これぞトルヴェール」という、確立されたものを感じることができる。歴史に足跡を残す団体は、やはり団体としての演奏の個性を聴衆に伝える力があるものなのかな、とも思う。一方でジョイントステージなどを聴くと、意外にも個性のぶつかり合いよりも双方歩み寄っている箇所が目立つのは面白い。

須川展也氏の自伝「サクソフォーンは歌う!(時事通信社)」に、この演奏会についての次のような記載があった。トルヴェールQの東京デビューであったとのこと。

東京のホールで初めてトルヴェール・クヮルテットで演奏したのは、東京サクソフォン・アンサンブルの演奏会にゲストで出演させていただいたときのことである。今でもそのとき声をかけてくださった先輩方に大変感謝している。演奏した曲はガーシュウィンの『三つのプレリュード』だった。のっけからジャズテイストが出ると、私たちの演奏に、好意的な拍手と戸惑いのどよめきが客席から上がったことを、肌で感じた。

以下、トルヴェール・クヮルテットのFacebookページから拝借。おそらくこの演奏会と同時期の写真だろう。1988年夏、須川氏27歳、彦坂氏26歳、新井氏23歳、田中氏&小柳氏24歳。


2024/01/20

ヴォルフガング・ヤコビの協奏曲

シガード・ラッシャー Sigurd Rascher氏の演奏による、ヴォルフガング・ヤコビ Wolfgang Jacobi「サクソフォン協奏曲」の録音。Jan Koetsier指揮バイエルン放送交響楽団との共演。

ドイツ生まれの、ネオ・クラシカルの流派に属する作曲家であるヤコビは、ラッシャー氏とのコラボレーションにより多くのサクソフォン作品を書いているが、「サクソフォン協奏曲」の、ラッシャー氏による演奏が残っていたとは知らなかった。

https://archive.org/details/cd_schoenbachm-toch-martin-jacobi-composition_dieter-schoenbach-ernest-toch-frank-martin/disc1/07.+Wolfgang+Jacobi+-+Saxophone+Concerto.flac

ごく短い作品ではあるもの、前後半の対比により、サクソフォンの特徴を極めてよく引き出している作品だと感じた。ラッシャー氏のサクソフォンも冴えわたっており、冒頭の、まるでフルートのような音色から、後半のテクニカルな箇所まで、見事な演奏を繰り広げている。

ヤコビの功績を伝えるページには、ラッシャー氏と写った写真が掲載されていた。



2024/01/16

武藤賢一郎氏のアーカイブが更新

 武藤賢一郎氏の録音アーカイブが1ヶ月ほど前に更新されていた。シューベルト「セレナーデ」と、ディニク「ホラ・スタッカート」。これらの作品の演奏は、それぞれ「スーパー・ヴィルトゥオーゾ」「アメージング・サクソフォーン」というFontecのアルバムに収録されているが、同一ソースか、別ソース(ライヴ録音等)かは、判別することができなかった。



2024/01/14

Nagisa Ariza Piano Studio - Student Piano Recital

コンサートに伺ったのは久々だった。ベイエリアで長くピアノ指導に携わる有座なぎさ氏の「NAGISA ARIZA PIANO STUDIO」の生徒による発表会。下は4歳から上は15歳まで、弾く作品の尺もレベルも様々。3時間近くにわたる演奏を興味深く聴いた。

最初の「Solo Piano」ステージは、どの生徒さんも立派な演奏。これは私の印象だが、何となく男の子のほうが飄々と、女の子のほうが緊張して、それぞれ弾いているような傾向があるなあ。場面によってしっかり音色を弾き分けているのは、指導の賜物か、その子の特性か…は分からなかったが。おおっ、と思う瞬間をいくつも発見した。トリを務めたLisa Saitoさんの演奏、特にLiebermann、Chopinは一流で、聴き応えがあった。

ディズニー100周年を記念した連弾のディズニー特集を含む、「Four Hands」ステージ、兄弟姉妹のデュオ、というのは、練習風景などを想像すると理屈抜きに微笑ましいものだ。リラックスして、楽しく聴くことができた。

「Piano Trio」ステージに出演したヴァイオリンのYujin Ariza氏と、チェロのElena Ariza氏…共にジュリアード音楽院で音楽を専攻した経験あり…が、後半のピアノトリオステージに登場し、実に見事な演奏を生徒さん達と繰り広げていた。こうして間近で、デッドな音響環境で聴くと、撥弦楽器と、ピアノ(弦を打鍵する楽器)の、アンサンブルとしての相性の良さが際立つ。ハイドンの「Trio No.39」第3楽章のような作品での最後の煽るようなハイ・テンションな演奏を聴くと、これはサクソフォンでもきっと負けないぞ、と思うが、アントン・アレンスキーやクララ・シューマンの冒頭にあるような繊細なフレージングは、サクソフォンでは実現し難いものだなと、感じ入ったのだった。

写真は、会場のMountain View Center for the Performing Arts。