ときどき思い出したように聴きたくなるCD。今となっては入手困難なのが非常に残念なのだが、現代におけるサクソフォン四重奏のありとあらゆるCDの中で、頂点に位置するものだと言い切ってしまいたいものだ。
マルセル・ミュール四重奏団が創始したクラシック界のサクソフォン四重奏は、ダニエル・デファイエ四重奏団の拡張によって頂点を極められた。その後、80年代後半のグローバル化に伴う多様化から、種々の進化のベクトルが生まれたが、ミュール~デファイエと続いたその伝統的なフランスの流れを押し拡げた結果の、ひとつの究極系なのだ。
2005年のハバネラ・サクソフォン四重奏団の、大阪国際室内楽コンクールにおける優勝は、サクソフォン界のすべての話題をかっさらうほどの快挙であり、特に日本国内では2006年に優勝ツアーが行われ、多くの聴衆がその素晴らしい演奏を堪能した。そのコンクールのライヴ盤である「The 5th Osaka International Chamber Music Competition & Festa 2005(Yomiuri Telecast Corporation YC-0515)」。読売放送が限定盤として作成したディスク。一次予選からデザンクロ「四重奏曲」、ドナトーニ「ラッシュ」、二次予選から野平一郎「四重奏曲」、そして本選からグラズノフ「四重奏曲」、クセナキス「XAS」を収録。
恐ろしいほどの集中力と覇気が、録音からビシバシと伝わってくる。間違いなく優勝のみを見据えて頂点を狙いに行く、一切手抜きなしの彼らの本気が凝縮された、その瞬間を切り取った素晴らしいディスクだ。本線のグラズノフ、クセナキスは、もはや異次元であり、そして一切守りなし、攻め一方の驚くべき内容。これから先これをのような演奏が果たして出てくるのかわからない、というほどのもの。
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