2021/10/20

Instruments a vent français(木下直人さんより)

だいぶ昔から存在は知っている盤だが、聴いたのは初めてだった。これも木下直人さんに送っていただいた。

Erato(原盤)STE50212という型番の、木管楽器オムニバス盤。国内では、日本コロムビアから販売されていた。国内盤のジャケッは、素材は同じだが色合いやレイアウトが違う。

フルートのマクサンス・ラリュー、オーボエのピエール・ピエルロ、バソンのモーリス・アラール、クラリネットのジャック・ランスロ、ピアノのアニー・ダルコ、そしてデファイエが独奏として、デファイエ四重奏団として…錚々たるメンバが参加した豪華な企画盤である。サクソフォン的興味のみならず、フランスの管楽器ファンにとっては垂涎モノの内容ではないだろうか。もちろん、サクソフォンの演奏も十分豪華なのだが、それ以上に弾けるようなみずみずしさを湛えたA面ばかりを聴いてしまう。

ヴィヴァルディ「協奏曲 フルート、オーボエ、バソンのための」
テレマン「オーボエ・ソナタ」
モーツァルト「バソンとチェロのためのソナタ」
フォン=ウェーバー「ヴァリエーション・コンチェルタンテ」
グラズノフ「カンツォーナ・ヴァリエ」
ガロワ=モンブラン「6つの音楽的エチュード」
リヴィエ「グラーヴェとプレスト」

サクソフォンのトラックについては、「カンツォーナ・ヴァリエ」はシューマン風が省略されており、「6つの音楽的エチュード」についてはトリル、スタッカートのみの抜粋となっている。収録時間の関係だろうか。

デファイエ氏の演奏は極めて冴え渡っており、数ある録音のなかでも非常に聴きごたえのあるものだと感じた。復刻環境のせいもあると思うが、古い録音ならではの、原盤起因の解像度の低さやノイズはあるものの、音楽のコアがきちんと捉えられていて、耳が吸い付いていく(たまに商用録音であるような極端に加工された復刻は聴き疲れしてしまう)。

「グラーヴェとプレスト」は、EMIの録音でも有名だが、こちらはより統制が取れ、モダンな演奏に聴こえる。4人の音楽性が発揮された上での統制…面白くないはずがない。そして、EMIの冒頭の編集ミスのようなものは無い(当たり前といえば当たり前だが)。「カンツォーナ・ヴァリエ」は、これはぜひ第1楽章や第3楽章も聴きたかった、録音として残してほしかった…と叶わぬ願い。

2021/10/16

魅惑のサクソフォーン(木下直人さんより)

木下直人さんより、いくつかの復刻を送っていただいた(いつもありがとうございます)。少しずつ紹介していきたい。

今回は、丸針ではなく、楕円針を使っている。この形状に正解は無く、聴きながら判断していく、とのこと。この判断と取り扱いは非常に難しいところがあるようだ。

「魅惑のサクソフォーン(邦題)=Les classique du saxophone」は、マスターテープからのCDでも所有しているが、国外原盤のLPからの復刻。聴き比べがとても面白かった。LPからの復刻を聴いていくと、トラックごとの、録音環境の違い(マイクの位置だろうか、音場がトラックごとに違う)が顕著に目立つのに対して、CDを聴くと巧妙に調整され、差異が目立たないようにされているのだ。

このアルバム、聴き流すと「ダニエル・デファイエ氏の気品あふれる演奏」というありふれたものにしかならないが、高い精度で分析的に聴いていくのも一興。"完璧"ともいえるCrest盤と比べると、人間味を感じる場面が多い。そのせいか必ずしも評価が高いアルバムではないが、聴き疲れとは無縁の、気楽に音楽に浸ることができる、という点で気に入っている。