2023/05/31

ダニエル・ケンジーへのインタビュー@Radio Romania Muzical

Radio Roumania Muzicalのサイトに、サクソフォン奏者ダニエル・ケンジー Daniel Kientzy氏のインタビューが掲載されていた。ごく短い内容だが、ケンジー氏のルーマニア音楽・電子音楽への思いが語られており、興味深い内容だ。以下、個人的に翻訳した内容を掲載する。

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https://en.romania-muzical.ro/articole/art.htm?c=18&g=2&arh=1&y=2009&a=592

フランスの著名なサクソフォン奏者であるダニエル・ケンジー、ヴァイオリン奏者のコーネリア・ペトロウ、電子音響を専門とするポルトガル人のレイナ・ポーテュオンドによるPROmoZICAトリオが、10月28日から11月13日までスペインでツアーを開催することが決定しました。リサイタルでは、作曲家アディナ・ドゥミトレスク、コスティン・ミエレアヌ、オクタヴィアン・ネメスクの作品が演奏されます。ダニエル・ケンジーは、これらの作曲を選んだ理由や、電子音響音楽が好きになったきっかけについて、独占インタビューに応じてくれました。

インタビュアー:今回のスペイン公演では、ルーマニアの現代作曲家、コスティン・ミエレアヌ、アディナ・ドゥミトレスク、オクタヴィアン・ネメスクによるオペラ等がレパートリーに含まれていますね。彼らの作品を選んだ理由は何ですか?

ケンジー:この質問に答えるのは難しいのですが、リサイタルでルーマニアの音楽を取り上げないということはほとんどありません。リサイタルでルーマニアの作品を演奏しないのは、私にとっては不思議なことです。私が演奏するのは、ほとんどすべてルーマニアの音楽なのです。

インタビュアー:ルーマニアの現代作曲家の作品には、どのような特徴があるのでしょうか?

ケンジー:ルーマニアの音楽は、別々の作曲家の作品であっても、特定の「エトス」を持っています。文化の深遠な源泉と現代的な要素を融合させた、救済とこの国の性格から来るものがありますね。

インタビュアー:スペインの人々は、これまでルーマニアの作品をどのように受け止めてきたのでしょうか?

ケンジー:とても好意的に受け止めていると思います。ルーマニアの現代音楽の流派は、最も身近なもののひとつです。ルーマニアの作曲家の作品は、世界で最も「輸出しやすい」作品のひとつです。ルーマニアの音楽はとても評価されているので、旅行やプレゼンテーションがしやすいのです。

インタビュアー:電子音楽がお好きな理由は何ですか?

ケンジー:この音楽は、音楽の詩を一般的な可能性を超えて拡張する可能性を与えてくれます。楽器には多くの可能性がありますが、電子音響はその可能性を広げてくれます。私は、電子音響音楽がもたらす詩、夢想、絶対的なものに興味があります。



2023/05/17

ImpetusSE with Vincent David

2022年9月に開催されたインペトゥスサクソフォンアンサンブルの演奏会の模様が、YouTubeにアップされていた。私はこの演奏会に伺うことはできなかったのだが、チラシに書かれた「ヴァンソン・ダヴィッド氏から届く音と映像のコラボレーション!?」という謳い文句から、どのような演奏会になったのかが気になっていた。

当日の写真は演奏会直後に拝見しており、舞台写真ダヴィッド氏自身は来日せず(理由は当時のコロナ禍の難しい状況のためだろう。「短期滞在のビザ免除&個人旅行の解禁」を含む入国制限の大幅緩和が施行されたのは、2022年10月11日からである)、事前収録されたソロ映像+舞台上のインペトゥスサクソフォンアンサンブル、という形での共演がなされたことは把握していた。映像として演奏の模様を観たのは初めてだった。

そもそもこのライヒ「ニューヨーク・カウンターポイント」、ライヴでのソロ楽器と、残りの10パートを重ねる(事前にテープ録音)という形式がオリジナルの指示だが、それの真逆の形式。バランスやタイミングを始めとして、どのようにアンサンブルを成立させたか、そのアプローチは気になるが、結果的になかなか面白い舞台となった様子が窺える。

2020年4月時点ではインペトゥスSEとダヴィッド氏はリアル共演を狙っていたがコロナ禍で延期、その後2022年9月の延期後演奏会でも事前収録映像との共演。いずれは、リアル共演を実現させてほしいものだ。


2023/05/14

普門バンドフェスティバル1983年(ロンデックス氏来日)

ジャン=マリー・ロンデックス氏は、1983年6月の来日時、銀座中央会館でリサイタルを開いた他、6月5日には普門バンドフェスティバルというイベントに出演した。大友直人指揮東京佼成ウインドオーケストラと共演し、ロナルド・ビンジ「サクソフォン協奏曲」を共演している。この時の録音がM先生のところに残っており、聴く機会に恵まれた。

極めて推進力のあるTKWOの演奏に驚かされるとともに、ロンデックス氏の輝かしい音色に、冒頭から驚かされる。ちなみに、ビンジの協奏曲は、決して独奏・バックの吹奏楽ともに、技術的に高難易度というわけではないが、妙な箇所(冒頭で大見得を切る箇所等)で独奏パートがつまずいたり、TKWOとのアンサンブルもやや噛み合わない箇所があり、本調子ではなかったのかな、という印象もある。

驚かされたのはボノー「ワルツ形式によるカプリス」の演奏で、これは物凄い演奏だ。ミュールが1980年代に存在していたかのような、アクロバティックな曲芸師と、泣きの歌心の要素を併せ持つ、類まれなる名演だ。この曲、MD+Gレーベルのロンデックス氏の復刻録音でも最終トラックとして取り上げられていたように、ロンデックス氏が初期から十八番として各所で演奏していた作品のはずだが、それにしても凄い。最後には聴衆に向けたパフォーマンスだろうか、ちょっとした楽譜の改変も(見事!)。

写真は、James C. Umble著「Jean-Marie Londeix Master of the Modern Saxophone」より。普門バンドフェスティバルの時の演奏の様子。


阪口新氏の演奏映像

先日のジャパン・サクソフォーン・フェスティバルにおけるポスター/映像展示制作にあたり、冨岡和男先生よりお借りした資料の中に、阪口新氏の演奏映像が含まれていた。本当は3月のフェスで展示したかったのだが、著作隣接権処理の打診先がわからず、展示できなかったもの。VHSだったのでデジタル化はしておこうと思ったのだ。

順に、高松ウィンドシンフォニー(第2回、1985年4月6日)、香川大学吹奏楽団(第10回)、高松第一高校(第10回、1982年8月8日)との各共演。指揮は、当時香川大学の教授だった佐倉友章氏。香川、ということで、ダッパーサクセーバーズの皆様が良く知っている演奏会(実は一部の演奏には乗っている)であり、"師匠"さんことOさん、"きんじ"さんに様々な情報を教えていただいた。

「インディアン・サマー」や、高校生との共演での「展覧会の絵より"古城"」など、往年の演奏スタイルでの見事なサウンドを聴くことができる。"きんじ"さんの感想によると、「客席に降りて一番後ろまで来るとホール全体を包み込むような響きになってて、遠鳴りの音ってこれかー!と感動した(…後略)」とのこと。








Oさんからは、プログラム冊子の写真も送っていただいた。それぞれ、高松ウィンドと、高松第一高校のプログラム冊子抜粋。


2023/05/12

「サクソフォン四重奏」の楽しさを子供たちに

ソニー音楽財団のYouTubeチャンネル「こどものためのクラシック」に、小学校高学年向けに、サクソフォン四重奏の魅力を伝える目的で、Urban Saxophone Quartetが企画・出演。次のような内容で、サクソフォン四重奏のことを開設。どのような経緯でこのような企画が実現したかはわからないが、こういう子供向けの企画、これまでありそうで無かった…と思う。

シバの女王の入城/ヘンデル
サクソフォンってどんな楽器?
4種類のサックス
聖者の行進/アメリカ民謡
サックス四重奏の魅力
サクソフォン四重奏曲 第1番より第4楽章/サンジュレー

わずか16分だが、とても親しみやすく、分かりやすい内容で、教材やアウトリーチの素材としても使えそうな内容だ。多くの子供たちの目に触れてほしい。


2023/05/04

Ensemble Saxophone de Francaisの音

Jacques Melzer (soprano)、Jean-Marie Londeix (alto)、Guy Lacour (tenor)、Roland Audefroy (baritone)というメンバー編成の、もはや伝説ともいえるカルテット、Ensemble Saxophone de Francaisの音。

バッハ作品集をリリースしたことがあるそうで、その抜粋録音。音を聴いたのは初めてだった。極めて明るい音と、小気味よいテクニック。そして何より、音楽の推進力に感心してします。

YouTubeのリンク先からさらにいくつかの録音を参照することができる。