ジャン=マリー・ロンデックス氏は、1983年6月の来日時、銀座中央会館でリサイタルを開いた他、6月5日には普門バンドフェスティバルというイベントに出演した。大友直人指揮東京佼成ウインドオーケストラと共演し、ロナルド・ビンジ「サクソフォン協奏曲」を共演している。この時の録音がM先生のところに残っており、聴く機会に恵まれた。
極めて推進力のあるTKWOの演奏に驚かされるとともに、ロンデックス氏の輝かしい音色に、冒頭から驚かされる。ちなみに、ビンジの協奏曲は、決して独奏・バックの吹奏楽ともに、技術的に高難易度というわけではないが、妙な箇所(冒頭で大見得を切る箇所等)で独奏パートがつまずいたり、TKWOとのアンサンブルもやや噛み合わない箇所があり、本調子ではなかったのかな、という印象もある。
驚かされたのはボノー「ワルツ形式によるカプリス」の演奏で、これは物凄い演奏だ。ミュールが1980年代に存在していたかのような、アクロバティックな曲芸師と、泣きの歌心の要素を併せ持つ、類まれなる名演だ。この曲、MD+Gレーベルのロンデックス氏の復刻録音でも最終トラックとして取り上げられていたように、ロンデックス氏が初期から十八番として各所で演奏していた作品のはずだが、それにしても凄い。最後には聴衆に向けたパフォーマンスだろうか、ちょっとした楽譜の改変も(見事!)。
写真は、James C. Umble著「Jean-Marie Londeix Master of the Modern Saxophone」より。普門バンドフェスティバルの時の演奏の様子。
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