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2025/09/29

塙美里「ここは素晴らしい場所」

塙美里さんのアルバム「ここは素晴らしい場所(ADORA)」。

https://www.adoranewmusic.com/music/how-fair-this-spot

S.Rachmaninov - Daisies, Op.38 No.3
G.F.Handel - Recorder Sonata, Op.1 No.2 HWV 360: I. Larghetto
S. Rachmaninov - 12 Songs, Op. 21: How fair this spot
H.Wieniaski - Polonaise de Concert No.1
A.Scriabin - Prelude, Op.16 No.1
E.Bloch - Baal Shem: III. Simchas Torah
R.Schumann - Fantasiestücke, Op.12 No.3: Warum?
E.Kohler - Vals de fleurs, Op.87 (with F.C.Garcia)

スペインで録音・リリースされたCDで、一般的なサクソフォン向けではない歌曲、器楽曲を中心に構成された内容。

アルトサクソフォンによる演奏もいくつか収録されているが、やはり真骨頂はお得意のソプラノサクソフォンによる演奏だろう。歌心を持ちつつ、テクニカルな面をほとんど意識させない演奏。サクソフォンが本来持つ音色の不連続性を、逆にうまく使っている場所などもあり…ヴィエニャフスキの「ポロネーズ」など。

最近、デファイエ氏の世代の演奏と、ドゥラングル氏の世代の演奏を、交互に聴いているのだが、こういう演奏を聴くたびに、90年代以降のジャンプアップというか、方向転換というか、その影響力の大きさに驚かされる。

最終トラックは、スペインのサクソフォン奏者、Federico Coca Garcia氏との軽やかなデュエットで、アンコールのような一口菓子的雰囲気を楽しく聴いた。

水戸での初リサイタルの時を未だに覚えているのだが、全くその時とは違う活動方向性、確固たる個性といったものには、常々驚かされる。

2025/06/02

Wonki Lee - American Sonatas from Two Millennia

※本アルバムは、6/13をもって発売となった。ぜひ多くの方に聴かれてほしい。

Wonki Lee 李源冀さんは、韓国人のご両親を持つ東京生まれのサクソフォン奏者。日本で育ち、その後ニューヨークのマンハッタン州立音楽院でサクソフォンを学び、現在、モンタナ州立大学にてAssistant Professor of Saxophoneとして後進を育成する傍ら、様々なプロジェクトで演奏活動を展開する。昨年11月、Leeさんが教鞭をとるモンタナ州立大学において、雲井雅人氏、日下瑶子氏らとともに、ディヴィッド・マスランカ「サクソフォン四重奏と吹奏楽のための協奏曲」を演奏している。このモンタナの演奏会には私は伺う予定だったのだが、たまたま本業の日本出張が重なり叶わなかったのだった。

だいぶ前…2013年に日本でお会いしたことがあり、また、演奏も直接聴いたことがあるのだが、テクニックがあるのは当然のこと、実に美しい音でサクソフォンを操る奏者であり、「ニュートラルな」という言葉でも片づけられない…日本、そしてアメリカで、サクソフォンを学んだ経験を上手く取り入れ、他の誰でもないLeeさん自身の音楽としてプレゼンテーションする能力のある方だ。その後はしばらく聴く機会が無かったが、2020年に発売された「American Sonatas」を聴き、これがとても良いアルバムだった(特にクレストンのWith Vigorが持つロマンティシズムを、くどくならずしてこのように聴かせられる奏者はちょっと思いつかない)。小品集、ミニアルバムと、いくつかのリリースを経て、久々の大作を集めたアルバムのリリースとなった(ご本人から直接送っていただいた、感謝!)。

「American Sonatas from Two Millennia(Clarinet & Saxophone Classics Recordings CC0080)」マスランカ、ムツィンスキー、オルブライト、という、いまでこそ技術的に吹いてしまう人はたくさん出てきてはいるが、音楽性や精神性を維持したまま登攀することは、一筋縄ではいかないようなレパートリー。一方で、アメリカ産のソナタとしては間違いなくいずれも傑作であり、多くの奏者がレコーディング、もしくは演奏会で取り上げている。

Leeさんの演奏は、驚くべきことに、美しい音や歌心をしっかりと維持している…のだが、これまでの演奏・録音で聴いたような、演奏の裏にあるキャパシティの余裕、というものを、敢えて取り去るまで、音楽へと没入しているように感じた。マスランカ氏の音楽は、奏者を限界を超えたところへ連れ去り、驚くべき表現を引き出すが、その方向性を地でいくような演奏だ。なかなか軽い気持ちで聴くことができず、受け取り手にも強い集中力が必要だ。

CDと一緒に同封されていたメッセージに書かれている「マスランカ氏がたどってきた経験(NYからモンタナ州に移住)を共感できた」との言葉通り、マスランカ「ソナタ」への思い入れの強さは尋常ではない。ライナーの冒頭に置かれたForwardには、ディヴィッド・マスランカ氏と、Wonki Leeさんの、不思議なほどの一致が語られている。ぜひCDを入手して全文を読んでいただきたい。また、Maslanka Pressによる再浄書版を初めて使った録音とのこと。のみならず、ムツィンスキー、オルブライトといったアメリカ産の傑作ソナタをも、同時代のアメリカの奏者による最高の演奏でもって堪能できる、多くの方に聴いていただきたい盤だ。

CDを送っていただいたときに頂戴したモンタナ州立大学のポストカード。素敵ですね。

2025/03/18

立花ハジメ「H」に…

音楽家、グラフィックデザイナーとして、1980年代から活躍する立花ハジメ氏のファーストアルバム「H」について。昨年末あたりの、お知り合いMさんのFacebook投稿を見て、備忘録的に書いておく。

冒頭のトラック「IF」は、デザンクロ「四重奏曲」第1楽章の、第2主題。最終トラック「MEMORIAL」は、グラズノフ「四重奏曲」第2楽章"カンツォーナ・ヴァリエ"の主題である。

ある程度サクソフォン四重奏に取り組まなければ、これらの主題を取り上げることは無いであろうから、どういった経緯でこれらの作品を引用したのか、非常に気になっている。



2024/05/12

ウィーン放送響の「City Noir」

今年リリースされたばかりの、Marin Alsop指揮ウィーン放送交響楽団演奏の「City Noir」。これまで、ジョン・アダムス「City Noir」商用録音としては初演のLAフィルライヴ盤、初セッション録音のセントルイス交響楽団のものがあり、どちらも素晴らしい内容であったが、そこにまた一つ素晴らしい録音が追加された。

サクソフォンについてはクレジット記載が無い。ティモシー・マカリスター氏とは若干解釈が違うようにも感じるが、誰が吹いているのかは調べがつかなかった。

「Fearful Symmetries」には、サクソフォン四重奏がフィーチャーされている。アダムス氏は様々な作品でサクソフォンを活用しているが、この作品は知らなかった(John Sampen氏が、「Postmark」というトラックタイトルでソロアルバムに抜粋を吹き込んでいる)。こちらの作品は、お膝元のNonesuchからも1989年時点で録音がリリースされており、そちらの演奏も気になり始めているところ。


2024/04/07

細川俊夫サクソフォン作品集:Light and Darkness

KAIROSレーベルより、大石将紀氏をフィーチャーした、細川俊夫氏のサクソフォン作品集「Light an Darkness」が発売された。演奏者は他に、宮田まゆみ(笙)、イルゼ・イーレンス(ソプラノ)、吉野直子(ハープ)、大宅さおり(ピアノ)、葛西友子(打楽器)。武生国際音楽祭にゆかりの深い奏者による布陣。

私が細川俊夫氏のサクソフォン曲に初めて触れたのはクロード・ドゥラングル氏の演奏による「Vertical Time Study II」であり、その後もヨハネス・エルンスト氏演奏の「サクソフォン協奏曲」、ドゥラングル氏演奏の「3つの愛のうた」などを録音で聴いた。魅惑的な作品が多いが、氏のサクソフォン作品集は初めてだと思われる。

「Vertical Time Study II」など、聴き慣れた曲は、大石氏のしなやかなサクソフォンによって耳を洗い直され、ドゥラングル氏との解釈の差分を面白く聴くことができる。笙とサクソフォンのための「明暗」やハープとサクソフォンのための「弧の歌」など、初めて聴く細川氏の編成の作品では、音色のブレンドや楽器間のインタープレイに、じっと聴いていると「細川氏の独特の節まわし」のようなものが感じられてくるのが面白い。

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以前、「3つの恋のうた」の題材となった短歌について、自分なりに調べて解釈した現代語訳を載せておく。

【暗きより 暗き道にぞ 入りぬべき はるかに照らせ 山の端(は)の月 - 和泉式部】

歩けば歩くほどに、暗い暗い中に迷い込んでしまいそうだ。山の端の月よ、どうか行く先を照らしてくれ。※ここでの「暗き道」とは、「煩悩の道」のことをも言っているそうだ。

【あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの 逢ふこともがな - 和泉式部】

私は間もなく死ぬだろうが、せめてものこの世の最後の思い出に、あなたにもう一度だけ会っておきたい。

【物おもへば 沢の蛍も 我が身より あくがれいづる 魂(たま)かとぞみる - 和泉式部】

恋に悩めば、沢に飛び回るほたるも、私の身体から抜け出していくたましいではないかと思えてしまう。

2024/03/18

Quatuor LaloyのCDを紹介

…ということで、以前も紹介したのだが、あまり知られていないようなので再掲。Nicolas Arsenijevic氏が参加した商用録音の中で、個人的に最も好きなもの。

Arsenijevic氏がソプラノを務めるQuatuor Laloyという四重奏団で、2008年の結成。最新の状況としてアルトにEva Barthas氏が参加したとの情報もあるが、公式サイトが消滅しており、確証が得られていない。この「Diptyque」というアルバムは2014年の録音で、その際のメンバーは下記の通り。

Nicolas Arsenijevic, saxophone soprano
Guillaume Berceau, saxophone alto
Vincent Dupuy, saxophone ténor
Julien Bire, saxophone baryton
Sébastien Farge, accordéon
Jérôme Souille, batterie

YouTube上のプレイリストから全編を聴くことができる。これは、コロナ流行時のロックダウンの際、様々なコンサートがキャンセルとなる中で、オンライン上で聴衆に楽しんでもらおうとの試みにより公開されたものである。

https://www.youtube.com/watch?v=hWkAI1xMqzw&list=PLImaPFgp5SM9Po_JlcEKVyWdE2Eyyp9DZ&index=1

アコーディオン・パーカッションも交えての、クレツマー音楽を中心とした内容。サクソフォンならではの機動性とボーダレスな音色が、作品にマッチしている。

2024/03/10

SAXIDEA "Hommage"

新生SAXIDEAのアルバム第二弾が、NATレーベルより発売された。これでCDを入手‥などとなると、アメリカへの輸入は時間がかかるが、発売の瞬間に聴くことができるのは、やはり配信の利点の一つだ。

武藤賢一郎(Ss)、茂木建人(As)、小山弦太郎(Ts)、歌頭諒(Bs)という師弟カルテット。日本人初のパリ国立高等音楽院卒業生にして、国際コンクール入賞者という唯一無二の経歴を持つ武藤氏。いまだにその技術・音楽性は健在であり、弟子とともに大曲を見事に創り上げている。収録は、ブーニョ、シュミット、グラズノフ。

武藤氏の演奏に着目すると、(例えば年齢による)後退の姿勢など一切を感じさせず、それはソプラノサクソフォンの音色・音楽性ともに、稀にアンサンブルの上で先行しすぎるきらいに反映されるのかもしれないが、とにかく圧倒される演奏だ。弟子である他の3名が、いまこの時点でもかなりのものだが、さらにタガが外れたときに、いったいどんな次元の演奏になるのだろうかと、そんな妄想をしてしまう。次のアルバムも期待したい(ぜひ、旧SAXIDEAでも録音していたベルノーの再来を!)。

個人的にはブーニョの録音が嬉しい。商用録音として、私が知る限りはJacques DeslogesのLPアルバムに収録されているくらいで、CD時代に取り上げられたことを聞いたことがない。小品として扱われてしまうことも多いが、個人的には他の数あるネオ・クラシカルスタイルの作品と遜色ないと考えており、これをきっかけに現代でも取り上げられることが増えてほしい。



2024/03/04

Jacques Murgierの協奏曲集

ダニエル・ゴーティエ Daniel Gauthierは、カナダ生まれ、その後ドイツで活躍している奏者。ボルドー音楽院でロンデックスに師事。近年ではAlliages Quartettとしての活動が有名。メディアへの露出も多い。

オーケストラ奏者としての演奏も有名で、ハインツ・ホリガー指揮シュトットガルト放送交響楽団と共演したドビュッシー「ラプソディ」の録音は同曲の最高の録音の一つとして名高い。

そんなゴーティエ氏が、1996年に録音したJacques Murgierの協奏曲集の録音を聴いた。「アルトサクソフォンと弦楽オーケストラのための協奏曲」という作品で、ネオ・ロマンティックとでも表現できそうなスタイルの作品を、明るい良く通る音色で見事に演奏している。こういう音色を躊躇なくオーケストラとぶつけ合うことのできる奏者ってなかなか居ないなあと、30年近く前の世界に思いを馳せている。



2024/02/03

Daniele Fazianiの多重録音アルバム

イタリアのサクソフォン奏者Daniele Faziani氏の多重録音による四重奏アルバム「Il volo del sax」。名前は存じなかったのだが、かなりベテランの域に入る奏者のようで、1980年代から各所で活躍していたそうだ。詳細なプロフィールはこちらのリンク先が詳しい。

四重奏の多重録音というと、ありそうであまり無く、国内では林田和之氏のYouTubeチャネルが有名だが、こういったまとまった形でのアルバムはあまり聞いたことがない。

おそるおそる聴き始めたのだが、意外にも(?)実にまっとうな演奏で、それぞれの作品がかなり高いレベルで演奏されていることに驚かされた。2015年の出版ということだから、これまでノーチェックであったことが勿体なかった。

Roberto Di Marinoの「Quartetto II」といえば、ネット黎明期にオンライン上で楽譜を入手できた数少ない曲のうちのひとつで、そんなニッチな作品が取り上げられていることに驚いたが、過度にメロディアスにならない、節度ある演奏。「カルメン」のメドレーも、短いながら面白い仕掛けが多く、とても楽しめる(アンコールピースとして良さそう)。デザンクロの「四重奏曲」も名録音と呼ばれているものに引けを取らない、というと言い過ぎかもしれないが、数多ある録音の中でもかなり良いほうに位置するもののように思えた。

ストリーミングサービス等で聴くことができる。YouTube Musicのリンクは下記。

https://music.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_nOju_GwKJ_16wBOUZ8lEOPiOY_Caalggc&si=wz6xsNLlfDr-DFLp



2024/01/27

ハバネラ四重奏団の大阪ライヴ盤

ときどき思い出したように聴きたくなるCD。今となっては入手困難なのが非常に残念なのだが、現代におけるサクソフォン四重奏のありとあらゆるCDの中で、頂点に位置するものだと言い切ってしまいたいものだ。

マルセル・ミュール四重奏団が創始したクラシック界のサクソフォン四重奏は、ダニエル・デファイエ四重奏団の拡張によって頂点を極められた。その後、80年代後半のグローバル化に伴う多様化から、種々の進化のベクトルが生まれたが、ミュール~デファイエと続いたその伝統的なフランスの流れを押し拡げた結果の、ひとつの究極系なのだ。


2005年のハバネラ・サクソフォン四重奏団の、大阪国際室内楽コンクールにおける優勝は、サクソフォン界のすべての話題をかっさらうほどの快挙であり、特に日本国内では2006年に優勝ツアーが行われ、多くの聴衆がその素晴らしい演奏を堪能した。そのコンクールのライヴ盤である「The 5th Osaka International Chamber Music Competition & Festa 2005(Yomiuri Telecast Corporation YC-0515)」。読売放送が限定盤として作成したディスク。一次予選からデザンクロ「四重奏曲」、ドナトーニ「ラッシュ」、二次予選から野平一郎「四重奏曲」、そして本選からグラズノフ「四重奏曲」、クセナキス「XAS」を収録。

恐ろしいほどの集中力と覇気が、録音からビシバシと伝わってくる。間違いなく優勝のみを見据えて頂点を狙いに行く、一切手抜きなしの彼らの本気が凝縮された、その瞬間を切り取った素晴らしいディスクだ。本線のグラズノフ、クセナキスは、もはや異次元であり、そして一切守りなし、攻め一方の驚くべき内容。これから先これをのような演奏が果たして出てくるのかわからない、というほどのもの。

2022/11/05

Denis Levaillant「Trombone en Coulisses」

1985年制作の同名の短編フィルム向けに作曲されたDenis Levaillant「Trombone en Coulisses」という作品に、ダニエル・ケンジー Daniel Kientzy氏が参加、2021年にDenis Levaillant氏の作品集アルバムの中の一曲としてリリースされていることを知った。

「Denis Levaillant "Pastiches"」というアルバムの第2曲。カウンターテナーと多重録音によるサクソフォン、という取り合わせ。曲想として、教会の中で録音されたような、賛美歌風の調性感のあるトラックも。(わざわざケンジー氏が抜擢されたことには、若干違和感を感じる)。

フィルムの詳細は以下。

https://www.cinergie.be/film/trombone-en-coulisses

2022/10/29

東京藝大ウインドオーケストラの「エルサレム讃歌」

指揮:山本正治、東京藝大ウインドオーケストラのセッション録音。

若手奏者を中心とした、極めて精度の高い演奏。さらに解釈も極めてスタンダードなもので、万人に勧めることができる演奏と言えよう。TKWOの演奏に続く、新世代の標準盤として、併録の他作品の録音とともに(特にC.T.スミス作品は奏者の力量がダイレクトに表出する)筆頭盤として位置づけられるものと感じた。

録音が「おや?」と思えてしまう状態なのは残念。ミキシングなのかマスタリングなのか、妙なカタマリ感があり、どこかで失敗しているような印象。

サクソフォンの布陣は、上野耕平、住谷美帆、田島沙彩、宮越悠貴(以上asax)、戸村愛美(tsax)、田中奏一朗(bsax)(敬称略)。


2022/10/16

広島ウインドオーケストラの「エルサレム讃歌」

指揮:下野竜也氏、広島ウインドオーケストラの演奏。かなり新しいCDで、「エルサレム讃歌」は第55回定期演奏会におけるライヴ録音とのこと。

"なにわ"を聴いてしまうと、ソリスト/各奏者の力量等の差が気になってしまうが、そういったアラ探しのような真似は無意味。この「エルサレム讃歌」の演奏の中核はずばり、最後のコラール変奏だろう。下野氏の独自解釈なのかと思うが、必要以上に劇的なフォルテを強調せず、mf~mpで、そこに至るまでの全てを優しく包み込むような印象。

同じ物語なのに、語り部を変えたことにより、ここまで印象を変えるのかと、心底驚いた。「極めてヒロイックな物語の最後に、読者が知り得なかった主人公の痛みと悲しみの心情を滔々と語ることにより、ここまでの寓話の真意を描き出しているかのよう」…これは全くの架空の話だが、そういった読者の心を捉えて離さないような、見事な結末を提示する。

サクソフォンの布陣は、宮田麻美、前田悠貴(以上asax)、日下部任良(tsax)、石田大輔(bsax)、西川佑太(bssax) (敬称略)。



なにわ《オーケストラル》ウィンズの「エルサレム讃歌」

私的に好きな吹奏楽曲のひとつ、アルフレッド・リード「エルサレム讃歌」について、おすすめいただいたCDをいくつか購入したので、順に紹介していく。

なにわ《オーケストラル》ウィンズ2014のライヴ録音。丸谷明夫氏の指揮の下、関西方面のオーケストラ奏者が一同に会してのスペシャル吹奏楽団。丸谷氏のカラーが極めて良く出ており、音運びや構成などから、淀工の種々の演奏のエコーを感じる。緩徐部での歌い方の、ソリスティックな響きと統制の取れた響きの、極めて絶妙なバランス感覚が聴きもの(ソリストの潜在能力の高さ!)。そして、最終部での劇的なクライマックスと聴衆の興奮。

ライヴ録音ながら、極めて精度の高い演奏は、さすがオーケストラ奏者、といったところか。中間部のソプラノサクソフォン独奏は、雲井雅人氏(の可能性が高い)とのこと。聴いたことのない空気感の演奏。

録音は、主環境(モニタースピーカー)で聴いても、イヤフォンで聴いても、音場がやや遠く、各楽器の分離を聴き取ることが難しく、細かいポリフォニックな響きが重畳されて、ややモノトーンっぽく聴こえてしまうのが残念。

サクソフォンの布陣は、岩田端和子、雲井雅人、佐藤渉、陣内亜紀子、西尾貴浩、林田和之、平田洋子、前田幸弘(敬称略)。

2022/07/20

ロジェ・カルメル サクソフォン作品集

3年前に突如として発表されたアルバムで、発売当初あまりの内容の「濃さ」に勢い余ってFacebookに投稿したことを思い出す。

フランスの作曲家、ロジェ・カルメルのサクソフォン作品集「Roger Calmel - Oeuvres pour quatuor de saxophones」。それだけでも驚きなのだが、奏者が「Quatuor 1846」という(おそらく臨時編成の)団体で、メンバーがJean-Pierre Baraglioli, Philippe Portejoie, Fabien Chouraki, Serge Bertocchiという、フランス・サクソフォン界のベテラン布陣。さらに、有名な「コンチェルト・グロッソ」は吹奏楽編曲で、Jean Louis Delage指揮ポンピエ吹奏楽団との演奏という、直球なのか変化球なのか、コメントしづらいほど。

聴く前にすでに満腹状態だが、実際の演奏内容も(微温的と形容してしまう箇所もあるにせよ)しっかりしていて、「ロジェ・カルメル サクソフォン作品集」として広く知られるべき内容だと思う。各種ストリーミングサービスで聴くことができる(「Roger Calmel」で検索)。デジタルアルバム形式以外での流通を知らず、もしかしたらデジタル限定なのかもしれない。

カルメルといえば…と昔アンリ=ルネ・ポラン氏にお借りした資料を探したところ、1976年のデファイエ四重奏団の演奏のプログラムのスキャンデータを見つけた。指揮はPol Mule(マルセル・ミュールの息子)で、「コンチェルト・グロッソ」を演奏している。

2022/07/13

「ワルツ形式によるカプリス」をソプラノで

スウェーデンのサクソフォン奏者Anders paulssonの、「A Date wih a Soprano Saxophone」というアルバムにはポール・ボノーの「ワルツ形式によるカプリス」が収録されている。しかしながら、アルバムタイトル通り、ソプラノサクソフォンで演奏されているのが珍しい。

キーは思い切りよく変えて(楽譜をin Bbで読む)いるのだが、違和感が先行するかと思いきや、聴いた瞬間に「これは可愛らしい!」と思ってしまった。何か小さくてコミカルなキャラクターの動きにそのまま付けられそうな音楽で、アルトサクソフォンで演奏されたときに感じる、「名人芸を披露する無伴奏作品」というイメージからかけ離れてしまっているのが楽しい。

2022/05/28

オシレーション・サーキット(須川氏参加)

東芝EMI他から何枚もリリースされていた須川展也氏本人の名義のアルバムの他、探してみると須川氏の参加アルバムがいろいろと見つかる。特に、1980年代~1990年代前半にかけて、そういった「知られざる」参加作品が多い印象で、当時東京藝術大学在学~卒業後にかけて、様々なシーンで登用されていた須川氏の活躍ぶりが垣間見えるようだ。

今回見つけたのは、盟友(?)磯田健一郎氏が絡んだアルバムで、「セリ・リフレクション1 オシレーション・サーキット(サウンドプロセスデザイン)」という1984年に出版されたもの。ジャンルとしては、アンビエントにいちばん近いかもしれない。夢と現を行き来するような、実体がどこにあるかを掴みかねるような雰囲気が漂う。

須川氏は「ノクチュルヌ」「サークリング・エア」に参加している。「ノクチュルヌ」は1979年の献呈作品だそうだ。「サークリング・エア」では、バリトンで参加している、というのも面白いポイント。下記の音源はLP盤起こしのようだが、LPのプチノイズが妙に曲想にマッチして、意図せず作品の一部となっているかのようにも聴こえる。

2022/03/27

サクソフォンを含む管弦楽作品:アダムズ「シティ・ノワール」の名盤

グスターボ・ドゥダメル指揮ロサンゼルス・フィルハーモニックのライヴ録音(2009年)。ジョン・アダムズ「シティ・ノワール」初演にして最高傑作と断言する。

人気指揮者の大舞台ということで、日本国内でもNHKで映像が放映され、その熱い演奏が当時話題となった。事前の下馬評では、メイン曲であるマーラー「交響曲第一番」への期待が高く、「世界初演」は、ほぼ世間の眼中に無かったようだが、演奏会後の話題をかっさらったのはこの「シティ・ノワール」であった。

モダンなジャズの影響を色濃く受けた作品で、これがドゥダメルのキャラクターにどハマり。シモン・ボリバル・ユース・オーケストラを率い、「マンボ!」で一世を風靡した"若き"指揮者が、LAフィルという、技術的にもエンタメ的にも充実した手兵を得て、未知の作品に体当たりしたのだ。面白くないはずがない。映像はDVD化/配信などもされているが、とにかく激しく、熱く、アダムズの分厚い響きをホール一杯に昇華させている。

サクソフォンは、ティモシー・マカリスター。巧さが際立つ。巧いとはいっても、サラサラっと行くわけではない。スコアを見ていただければわかるが、とにかく「どう吹くべきか」というのが想像がつかない音運びだが、この初演一発目にして、極めて説得力ある、完成された解釈を提示してしまう驚き。

スコア参考(アカウント作成で無料で参照可能):https://www.boosey.com/cr/perusals/score?id=982

現代サクソフォンの完成形が聴ける場として、ぜひ多くの方に聴いていただきたい録音/映像だ。

2020/11/25

ドゥラングル氏の参加CD

https://music.youtube.com/watch?v=szXnk8BQKhU&feature=share


Fausto Sebastianiというイタリアの作曲家の作品集にて、「Solo for Soprano Saxophone」「Now's the Sax」にクロード・ドゥラングル氏が参加している。おなじみ、Stradivariusレーベル。

残響控えめながら(だからこそ?)、いつものごとく繊細なコントロールが映える。「Now's the Sax」はなんとも微温的な作風だが、場面によってはかなりピタリとハマっているような。

2020/11/13

Quatuor LaloyのCDがフル公開

フランスの再度のロックダウンにより、いくつかのコンサートがキャンセルとなりました。そのような状況下で、コンサートの代わりとして、聴き手の皆様の傍らに我々の演奏を置いていただければ、と思います。

…とのこと。良いCDなので、ぜひ。


以下、原文。

Nous voici de nouveau confinés, et on a décidé de penser à vous. 
Du coup voilà notre disque Diptyque est en écoute intégrale sur Youtube.
Malgré nos concerts qui s'annulent, on sera tout de même un peu avec vous pendant les mois à venir. 

https://www.youtube.com/watch?v=MpI4EK3m-TU&list=PLImaPFgp5SM9Po_JlcEKVyWdE2Eyyp9DZ

Diptyque avec : 
- Le Quatuor Laloy,
- farge sebastien à l'accordéon,
- Jerome Souille à la batterie.