フランスでご活躍の、アレクサンドル(アレックス)・スーヤ氏、そして安井・スーヤ・寛絵さんによる演奏会。前半がアレックス氏によるソロ、後半がアレックス氏と寛絵さんの二重奏、という仕立ての演奏会だった。
【アレクサンドル・スーヤ&安井寛絵コンサート】
出演:アレクサンドル・スーヤ、安井寛絵(以上sax)、渡辺麻里(pf)
日時:2016年10月23日(日曜)15:00開演
会場:アクタス ノナカ・アンナホール
プログラム:
B.バルトーク - ルーマニア民俗舞曲
G.エネスコ - カンタービレとプレスト
E.シュルホフ - ホット・ソナタ
P.モーリス - プロヴァンスの風景
J.B.サンジュレ - 協奏的二重奏曲
N.ロータ - 三重奏曲~フルート、ヴァイオリン、ピアノのための~
G.コヌッソン - テクノ・パラード(アンコール)
武満徹 - 小さな空(アンコール)
いつだったかブログにも書いたが、安井寛絵さんは、だいぶ昔(留学開始直後くらい)から注目していた奏者である。…といっても、演奏を聴いたとかではなく、当時ブログを頻繁に更新されていた、ということと、長野出身である、ということが、その理由。気がつけば、様々な経験を積み、コンクールで入賞を重ね、クラシックも現代作品もなんでもござれの、超強力な演奏家となってしまった。アレックス氏と結婚されて、すでにお子さんもおられる忙しい中、変わらず様々な方面で活躍されていることは驚嘆させられる。
アレックス氏も、実に素晴らしい経歴を持つ奏者だが、そういえばしっかりと演奏を聴くのは初めてかも。チャンスはあったはずだが…。CDやYouTubeなどで聴く限り、演奏技術や音楽性にとどまらない部分(プログラミングとか、コンセプトとか)についても相当なこだわりを持っていることが窺え、本日聴くのを楽しみにしていた。
スーヤ氏の独奏ステージは、比較的耳に馴染みやすい作品を取り上げていた。しかし、どの作品の演奏でも、作品のコンセプトを色濃く表現していたのが面白い。例えばバルトークでは曲ごとの極端な音色変化を、シュルホフではポルタメント的な表現を前面に押し出し、モーリスでは民謡的なエッセンスを強調し…といった具合。こうやって文章にしてしまうと何気ないのだが…実際演奏を聴いてみると、クラシック・サクソフォンの表現域を拡大しようと試みるような、そんな心意気を感じたのだった。シュルホフは耳を洗い直されたなあ…すごかった。エネスコは、フラジオ音域を見事にコントロールしながらの演奏、原曲(フルート)の軽やかさ、機動性を失わないどころか、ダイナミックレンジなどにも色を添えた、鮮烈な演奏だった。
後半は、サンジュレから。デュオのレパートリーとしては、演奏されすぎているほど演奏されており、食傷気味ではあるのだが、今日の演奏は凄かった!このような演奏が聴けるのであればもっと聴きたいなと思わせるような…ご夫婦だから息がピッタリ、というそんな次元を超えた、音と音の超高速の会話。丁々発止、という表現がピッタリで、フランス人同士の早口の会話を見ているかのようだった。いやはや、すごかった。ニーノ・ロータの三重奏曲は、Trio Saxianaがたまに取り上げているクラリネット、チェロ、ピアノ…ではなく、フルート、ヴァイオリン、ピアノのための作品(初めて聴いた)。かなり緊張感を要する作品で、ソプラノ2本のハモリによる倍音が凄く、響きが会場に収まりきらないほど。大喝采。
アンコールはコヌッソンの「テクノ・パラード」と、武満徹の「小さな空」。武満徹のほうは、寛絵さんからあるお二方に捧げられた演奏だった。ちょっと言葉にできないような、心へと深い響きが浸透していくような、そんな演奏だった。
打ち上げ等も出たかったのだが、別件もあったため早々に退散。
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