なんじゃそりゃ、と思うかもしれないが、実際出てくる音も「なんじゃそりゃ」という感じ。つまり、かなり理論的に作曲されているはずなのだが、音にしてしまえば、クラスターはクラスターなわけで、使われている技法などは言われなければ判らない。昨年も「Music Tomorrow 2007」で金子仁美「Nの二乗」を聴いたが、使用されている技法などはサッパリであったのだ。
だが、このスペクトル音楽というやつ、他の曲と聴き比べたときの「ひんやりとして鋭利な感じ」が、ちょっと好きだ。どんな不協和な響きが出てきても、私の耳には常に洗練されているように聴こえるのが面白い。

フランク・ベドロシアン Franck Bedrossianは、CNSMDPでグリゼイに学んだ作曲家。グリゼイの弟子であるフィリップ・ルルーとも親交があったと記されているから、どうやらスペクトル楽派の流れに属する作曲家だと考えて間違いがなさそうだ。写真を見る限り、まだかなり若い。30~40歳くらいじゃないかな?収録されているのは、以下の5作品である。
"Charleston" pour 15 musiciens
"L'usage de la parole" pour clarinette, violoncelle et piano
"Digital" pour contrabasse et électronique
"La solitude du coureur de fond" pour saxophone alto
"Transmission" pour basson et électronique
一曲目から「いかにも」という感じのクラスターが耳をつく。楽譜の内部で、どういった理論のもとに、どういった音の重なりが構築されているのか、ということは判らないが、テンションと響きに身を委ねていると、聴き手は徐々にその音響世界へとトリップしてゆく。続く「L'usage de la parole」も、クラリネット、チェロ、ピアノという編成からは想像もできないかなりのテンション。この2曲を並んだのは、偶然ではないだろう。
「Digital」は、エレクトロニクスとコントラバスの作品。ダイナミクスレンジの広い音響…コントラバスにも、極限的なテクニックを要していることがわかる。ラランさん独奏の「La solitude du coureur de fond」。唯一の独奏作品だが、編成の大きい作品が続いたせいか、不思議と耳を傾けたくなる。冒頭のゆったりしたテンションが、クライマックスに向けて特殊奏法を交えながら盛り上がっていく様は、見事!
しかし、サクソフォン独奏のあとに、「Transmission」は、かなりビビります(笑)。個人的には「Digital」よりもずっと好みだなー。サクソフォンにもこういう曲ないかなあ。
なかなか日本では流通しづらいCDだろうが、(コンテンポラリーに対するアレルギーが無い向きには)見つけたらぜひ手にとっていただきたい。
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