2011/08/02

岩代太郎「世界の一番遠い土地へ」

ロンデックスコンクールでの記事投下数が尾を引いて、だいぶ紹介できていない話題が蓄積しているのだが、順番にさばいていこうと思う。

岩代太郎「世界で一番遠い土地へ To The Farthest Land Of The World」。このCDを、Thunderさんからお借りすることができた(ありがとうございます!)。雲井氏のプロフィールを見ると必ず載っているこの曲だが、音として聴くのは初めてだ。

ユネスコ、朝日新聞、テレビ朝日の三団体同時バックアップで開催された"シルクロード管弦楽作曲コンクール(審査委員長:團伊玖磨)"の最優秀作品となるわけだが、CDが出版早々入手困難となるのはテレビ局の企画モノ、のある種運命であろうか…。いま再発売したら、サクソフォン方面にはかなり受けそうだが。詳しい解説・データは、Thunderさんのブログ記事にお譲りするとして、聴きながら考えたことをちょっとだけ。

昨年暮れにサクソフォーン・フェスティバルで演奏された、岩代太郎「Colors」を聴いた方ならば、「あの曲の印象に近い」と言ってしまえばわかってもらえるだろう。煌めくような管弦楽の響きに、断片的に絡み合うソプラノサクソフォン。同じサクソフォン協奏曲でも、ダールやイベールは精密に作りこまれた時計のようなイメージがあるし、トマジ「協奏曲」は大地を思わせるスケールの大きさがあるし、トマジ「バラード」は道化のダンス、グラズノフは…何だろ(笑)という感じだが、今まで聴いたことのある協奏曲とは明らかに違う。

実に有機的で、16分半の中に織り込まれた大小様々な"うねり"は、まるで光り輝く大きな生物が呼吸しているのを眺めるかのようなのだ。岩代太郎作品以外に、サクソフォンであまりこういうタイプの作品は聴いたことがない。光を振り撒いたまま、最後は波が引くように終わってしまう。何度か聴き返してみても、形式を捉えることができないし、テーマがどれなのかもわからないし、拍がどこにあるのかもよく分からないし…なんとも不思議な感覚。

こういう曲では、雲井氏のサクソフォンの美しさがいっそうに際立つ。「サクソフォン協奏曲」ということだが、オンマイクで録音されておらず、オーケストラの大音量とぶつかる鮮烈な雲井氏のサックス!という趣。曲の美しさと演奏の、響きの美しさに身をゆだねていると、あっという間に時間が過ぎていってしまった。

ところで、"シルクロード管弦楽作曲コンクール"についてインターネット上にあまり情報がないなあ(まあ、1990年頃の話なのだから無理も無いか)と思っていたのだが、ネット上をふらふらしていたら審査委員長だった團伊玖磨氏に関するこんなエピソードが。おやまあ(^^;

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