2010/07/12

好きな吹奏楽曲

もともとはサクソフォン好き以前に吹奏楽マニアであったので、いろいろと聴いている中で、「これは!」とお気に入りになった曲は多い。今回ご紹介する3曲は、個人的な超お気に入りである。いずれも音楽的に非常に優れた内容のものであるので、ご存じない方はぜひ聴いていただきたい。また、優れた作品は、優れた演奏とともに在るべきだと考えている。そんなわけで、オススメの演奏と共に紹介する。

ちなみに、ご紹介する3曲、私自身はいずれも演奏したことがない(爆)。

・Florent Schmitt - Dionysiaques
(フローラン・シュミット - ディオニソスの祭)
説明の必要がないほどの名曲だ。1913年の作曲当時、世界最高水準と言われたギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団のために書かれ、125名ものプレイヤーと特殊楽器、そして究極の技巧と音楽性を惜しみなく要求するスコア。そのギャルドですら、演奏をためらったと今に伝えられている、20世紀最強の吹奏楽曲である。これを初めて聴いた時の衝撃は凄かったなあ。コンクール云々で演奏されている軽々しい作品群を見る目が変わったもんな。

愛聴盤は、もちろんギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団の演奏で、1961年11月16日の"奇跡のセッション"と伝えられる杉並公会堂での録音。フランソワ=ジュリアン・ブラン指揮。さすがにやや録音状態は悪いが、これがワン・テイクの録音だとは信じがたい。これまでも、そしてこれからも、これ以上の演奏が出てくることは(おそらく)ないだろうし、逆にこれを超えた時は、"吹奏楽の再誕"となることだろう。最近デュポン指揮のSP録音が発掘されたと、木下直人さんから伺ったが、こちらの演奏も気になっているところ。

・Adam Gorb - Metropolis
(アダム・ゴーブ - メトロポリス)
一気に時代が現代寄りとなるが、いわゆる吹奏楽がハイブリッドな作品を量産し始めた、おそらく最初期の作品のひとつだと思う。ジャズとコンテンポラリーの融合を目指しており、近未来的なスピード感にみちあふれた作品である。同じくアダム・ゴーブの「アウェイデー」あたりをさらに10倍ほどテクニカルに醸成させて、クールさだけを搾り取ったような印象。イギリス産のハイブリッド作品て、サクソフォンの世界でもそうだが、やっぱり頭ひとつ抜けていますよね。

日本国内ではシエナWOあたりが取り組んでいるようだが、おそらくこれには敵わないのだろうな…と推薦するのが王立北部音楽院のCD、その名も「メトロポリス(Klavier KCD-11152)」。これの最初のトラックに14分ほどの作品として収録されているのだが、自分にとってはとにかくセンセーショナルであった。中間部にサクソフォンのどソロがあるのだが、その演奏も見事だ。

・Percy Aldridge Grainger - The Power of Rome and Christian Heart
(パーシー・グレインジャー - ローマの権力とキリスト教徒の心)
グレインジャーの音楽を好きになったのはいつ頃だっただろうか。"民謡"という、素朴でさりげない表情の裏に隠れながら、ハイ・テクニックをズバズバと要求してくる楽譜には、私自身も何度か苦しめられた経験がある。そのグレインジャーが、仮面を剥がして本性を剥き出しにしている(私の知る限り)唯一の吹奏楽作品である。タイトルからは、何か標題音楽のようなイメージを持つが、実際はそういったものはなく、このタイトル、そして曲想から何を感じるのかは、聴衆に委ねられている。

いくつか録音が出ているが、フェネル&ダラスWSの「Pomp & Pipes(Reference Recordings RR-58CD)」を推す。スピーカーの奥に、圧倒的に拡がる音…。ゆったりとした大河の流れのようなテンポも、曲想に実にマッチしている。吹奏楽の神様フェネルが、ダラスWSという最強の手兵を得て紡ぎ出した音楽の洪水…ご存じない方はぜひ一聴を。

2 件のコメント:

keco さんのコメント...

メトロポリスは初めてシエナの演奏で聴いたとき、驚愕しました。
それを上回る演奏・・・
聴いてみたいです!!

kuri さんのコメント...

> kecoさん

聴いてみて聴いてみてー!
ここで買えます。最終トラックの、サムライって曲も面白いですよ。
http://www.amazon.co.jp/Metropolis-Nigel-Clarke/dp/B000AQKU9K