最近発売されたCDだが、Sonic Art Saxophone Quartetのアルバム以来の、推薦盤である。コンセプトとしては「民族音楽・即興音楽とクラシカル・サクソフォンとの融合」と言い切ってしまってほぼ問題ないだろう。聴こえてくる響きは、なんとなくイスラム圏の音楽が想起されるのだが、「ナントカという原曲のアレンジ作品」「元になっている曲はアレコレ」といったことを細かく追っていく必要はないだろう。ただただ、響きに浸かるだけで楽しいアルバムだ。
演奏は、アルテ・カルテット Arte Quartett。もういまさら説明の必要もないが、ドイツの中堅どころの四重奏団で、特に様々なジャンルの音楽団体とのコラボレーションで有名。2001年には、あのテリー・ライリーと共演したことでも話題を呼んだ。ライリーとの共演アルバム「Assassin Reverie」は、New World Recordsからリリースされているが、こちらもなかなかに強烈なディスクだ。演奏者は下記の通り。アルトサックスのサッシャー・アームブリュスター氏については、平野公崇氏のエッセイが面白い。
Beat Hofstetter, soprano saxophone
Sascha Armbruster, alto saxophone
Andrea Formenti, tenor saxophone
Beat Kappeler, baritone saxophone
「Different Worlds(Marsyas MAR-1804)」
Sascha Armbruster - Chintro
Hang-Jurg Sommer - Moos-Ruef
Traditional - L'hioba
Traditional - Schonster Abendstern
Rabih Abou Khalil - Dreams of a Dying City
John Zorn - Tiferet
John Zorn - Nevalah
John Zorn - Mahshav
John Zorn - Mikreh
Rabih Abou Khalil - Arabian Waltz
Beat Kappeler - Indian Trail
名前すら聞いたことのない作品ばかりが並ぶが、まずはCDを再生…してみると、突然フルートのような音が聴こえてきてびっくり!そのまま2曲目に突入し、超高速なフレーズでは、スペシャルなテクニックを振りまく。フレーズはほとんど途切れない。おそらく、循環呼吸をバンバン使っているのだろうなあ。
曲中の各所に織り込まれる即興演奏は、とんでもなくカッコいい。ジャズの即興ではなく、おそらくフリーの即興をベースにしたものなのだろうが、この構成感とテクニック!セッション録音のはずなので、まるでライヴのような覇気に満ちた即興ばかりだ。
お気に入りは、John Zornの4曲。John Zornは、アメリカのジャズサックス奏者で、その彼が「Masada Vol.6&Vol.7」というアルバムで取り上げている4曲を、サクソフォン四重奏用に編曲したもの。まるで組曲のように聴いてしまうのだが、飛び出すテーマや即興がクールで、なんども聴いてしまう。これは自分たちでもやってみたいなあ。
最後の「Indian Trail」は、ぱっと聴いた感じでは、「Uncle Jard」や「Tread on the Trail」をリミックスして、さらに音を追加したものに聴こえる。このトラックからは、普通のクラシックサクソフォンに収まりきらないグルーヴ感を感じることができた。
と、文章ではなかなか伝わらないものがあるなあ。ぜひ購入して聴いてみていただきたい。amazonへのリンクは、こちら(→Different Worlds)。
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