アメリカの重要なサクソフォン奏者のひとりに、ジョン・サンペン John Sampen氏という奏者がいる。ノースウェスタン大学でフレデリック・ヘムケ氏に師事したほか、ラリー・ティール、ドナルド・シンタらにも師事したそうだ。クラシカルな作品のみならず現代作品にも力を発揮し、これまでの委嘱作品・献呈作品の数は60を超える。CDも10枚以上を数え「Electric Saxophone(Capstone)」を始めとしていずれも素晴らしい物ばかり。
Marilyn Shrude - Renewing the Myth
William Albright - Sonata
Marilyn Shrude - Shadows and Dawning
Burton Beerman - Concerto No.1
Marilyn Shrude - Evolution V
ここで紹介するのは2002年にリリースされた「Shadows and Dawning(Albany Records TROY526)」。入手しやすく内容も充実しているため、サンペン氏のCDの中ではかなりお薦めできるもののひとつ(Amazonでの購入リンクはこちら)。ピアノはMarilyn Shrude女史…サンペン氏の奥様で、作曲家でもある。ここにも2作品収録されているが、並大抵にはいかないほどの超高密度の曲で驚かされる。たとえば「Renewing the Myth」は、パガニーニのカプリス第24番のコラージュ作品:YouTubeでも聴けるが、サクソフォン奏者にもピアニストにも高度な技術を要する作品。
収録されているプログラムは、そのシュリュード「Renewing the Myth」「Shadows and Dawning」を含み、さらに直前の記事でも紹介したウィリアム・オルブライトの「ソナタ」、テープとサクソフォンの「コンチェルトNo.1」に、Sax 4th Avenueとの共演となる「Evolution V」ときている。面白い作品ばかりだ。
どれも輝かしく濃密な音。そして、高い技術と誰が聴いても納得の音楽性。現代作品をきっちりと聴かせ、作品そのものの本質を聴き手に提示する。これはサクソフォンの録音として理想的な形と言えるだろう。「Evolution V」での師弟共演では、お互いがお互いを尊敬し合いながら着実に歩みを進めているのがわかる。オルブライトの「ソナタ」は、マカリスター氏の録音と甲乙付けがたいほどのカッコ良さだ。
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本年最後の記事となりました。2010年の隠れたブログ目標「ひと月ごと、その月の日数と同じ数の記事を書く」が達成できてホッとしています。皆様方におかれましては、どうか良い年をお迎えください。
2010/12/31
オルブライトのサクソフォン・ソナタ
ウィリアム・オルブライト William Albrightと言えば、もしかしたら一部の方は言語学者の名前を連想するかもしれないが、サクソフォン吹きにとっては、やはりアメリカの作曲家、オルブライトである。アルト・サクソフォンのための「ソナタ」を初めとして数々のサクソフォン作品を手がけたが、1998年に53歳という若さで亡くなっている。ジュリアード音楽院、ミシガン州立大学、パリ音楽院(ここではオリヴィエ・メシアンに師事)で学んだのち、帰国後はミシガン州立大学の教授として活躍した。
やはりアメリカの著名な作曲家であるウィリアム・ボルコムと親交が深く、彼のことを"wonderfully gifted, creative and inventive composer, and a marvelous teacher who cared about teaching and put his whole heart into it.(才能豊かで、創造力に富み、独創的な作曲家。そして心のすべてを後進の育成に注ぎ込んだすばらしい教育家)"と評している。
サクソフォンのための創作リストを眺めるだけで、「Fantasy Etudes(サクソフォン四重奏)」「Heater: Saga(サクソフォン+吹奏楽)」「Pit Band(アルトサクソフォン+バスクラリネット+ピアノ)」「Doo-Dah(サクソフォン三重奏)」と種々編成に渡っているが、やはり「Sonata for Alto Saxophone and Piano(サクソフォン+ピアノ)」だろう。
今年のティモシー・マカリスター Timothy McAllister氏来日の折に、この曲について初めて知った!という向きも多いはず。マカリスター氏は、この「ソナタ」をプログラムの最後に配置し、とんでもないインパクトを日本のサックス界に与えて帰っていった。あの場にいた誰もが圧倒されたことだろう。現代的かつ、叙情的でいて暴力的、そして超高難度のスペシャル・ピースである。もともとは、Donald Sinta、Laura Hunter、Joseph Wytkoという3人のサックス吹き(というか、サックス+ピアノのデュオ)のコンソーシアムのために書かれたそうだ。今では、アメリカのサックス吹きが取り組むべき4大ABCDレパートリーのひとつとして数え上げられている(Albright, Berio, Creston, Denisov)。
4つの楽章からなり、全部演奏するとおよそ20分の長さとなる。いやはや、大曲だ。
Two-Part Invention
La follia nuova: A Lament for George Cacioppo
Scherzo, "Will o'the wisp
Recitative - Mad Dance
第1楽章は、バッハとミニマル・ミュージックの影響を受けたインヴェンション。だが、全楽章中もっともシリアスな響きがする。第2楽章は、三拍子のシャコンヌ。友人の作曲家であったGeorge Cacioppoへの哀悼の意が込められており、サクソフォン作品の中でももっとも美しく悲しい作品のひとつだ。第3楽章は、あっけないほどに一瞬で終わるスケルツォ。第4楽章は、レチタティーヴォと呼ばれるサクソフォンの無伴奏カデンツを経て突入する凶暴なダンス。Folliaの"Madness"とは全く別世界の、表面的な"Madness"が強奏によって提示される。
CDも数多くリリースされているが、せっかくタイムリーなので、第5回アドルフ・サックス国際コンクールで一位を獲ったSimon Diricq氏が演奏する同曲の動画を貼り付けておこう。終楽章はやや守りに入っている感じもするが、それでも全編に渡って見事な演奏だ!特に第2楽章など筆舌に尽くしがたい。
やはりアメリカの著名な作曲家であるウィリアム・ボルコムと親交が深く、彼のことを"wonderfully gifted, creative and inventive composer, and a marvelous teacher who cared about teaching and put his whole heart into it.(才能豊かで、創造力に富み、独創的な作曲家。そして心のすべてを後進の育成に注ぎ込んだすばらしい教育家)"と評している。
サクソフォンのための創作リストを眺めるだけで、「Fantasy Etudes(サクソフォン四重奏)」「Heater: Saga(サクソフォン+吹奏楽)」「Pit Band(アルトサクソフォン+バスクラリネット+ピアノ)」「Doo-Dah(サクソフォン三重奏)」と種々編成に渡っているが、やはり「Sonata for Alto Saxophone and Piano(サクソフォン+ピアノ)」だろう。
今年のティモシー・マカリスター Timothy McAllister氏来日の折に、この曲について初めて知った!という向きも多いはず。マカリスター氏は、この「ソナタ」をプログラムの最後に配置し、とんでもないインパクトを日本のサックス界に与えて帰っていった。あの場にいた誰もが圧倒されたことだろう。現代的かつ、叙情的でいて暴力的、そして超高難度のスペシャル・ピースである。もともとは、Donald Sinta、Laura Hunter、Joseph Wytkoという3人のサックス吹き(というか、サックス+ピアノのデュオ)のコンソーシアムのために書かれたそうだ。今では、アメリカのサックス吹きが取り組むべき4大ABCDレパートリーのひとつとして数え上げられている(Albright, Berio, Creston, Denisov)。
4つの楽章からなり、全部演奏するとおよそ20分の長さとなる。いやはや、大曲だ。
Two-Part Invention
La follia nuova: A Lament for George Cacioppo
Scherzo, "Will o'the wisp
Recitative - Mad Dance
第1楽章は、バッハとミニマル・ミュージックの影響を受けたインヴェンション。だが、全楽章中もっともシリアスな響きがする。第2楽章は、三拍子のシャコンヌ。友人の作曲家であったGeorge Cacioppoへの哀悼の意が込められており、サクソフォン作品の中でももっとも美しく悲しい作品のひとつだ。第3楽章は、あっけないほどに一瞬で終わるスケルツォ。第4楽章は、レチタティーヴォと呼ばれるサクソフォンの無伴奏カデンツを経て突入する凶暴なダンス。Folliaの"Madness"とは全く別世界の、表面的な"Madness"が強奏によって提示される。
CDも数多くリリースされているが、せっかくタイムリーなので、第5回アドルフ・サックス国際コンクールで一位を獲ったSimon Diricq氏が演奏する同曲の動画を貼り付けておこう。終楽章はやや守りに入っている感じもするが、それでも全編に渡って見事な演奏だ!特に第2楽章など筆舌に尽くしがたい。
ラベル:
作品
2010/12/30
They Might Be Gods on YouTube
サクソフォン奏者であり、作曲家でもあるJohn Leszczynski氏が2009年に作曲した四重奏曲「They Might Be Gods」の、Xenix Saxophone Quartetによる演奏がYouTubeにアップロードされていた。最近までこの曲を知らなかったのだが、Facebookで「Perry GoldsteinのBlow!や、Russell PeckのDrastic Measuresのようなカッコイイ曲って何があるかな?」と書いたところ、この曲について教えてもらえたのだ。作品の解説は、作曲者の公式ページより参照することができる(こちら)。
聴いてみると、現代的でハードな響きをより強く感じるが、最終部の煽りなど鮮烈であり、四重奏のために書かれた佳曲のひとつとして捉えられるだろう。自分たちでできるとはあまり思えないが、日本でも取り上げる団体が出てきておかしくないはず。どなたか演奏しませんかね。
Xenix Saxophone Quartetという団体名は初めて聞いたが、おそらくアメリカの若手カルテットのひとつ。アメリカは、最近四重奏団の台頭が激しく、この他にもRed Line Saxophone Quartet、ZZyzx Saxophone Quartet、Anubis Quartetなど、注目しておきたいグループは数多い。
聴いてみると、現代的でハードな響きをより強く感じるが、最終部の煽りなど鮮烈であり、四重奏のために書かれた佳曲のひとつとして捉えられるだろう。自分たちでできるとはあまり思えないが、日本でも取り上げる団体が出てきておかしくないはず。どなたか演奏しませんかね。
Xenix Saxophone Quartetという団体名は初めて聞いたが、おそらくアメリカの若手カルテットのひとつ。アメリカは、最近四重奏団の台頭が激しく、この他にもRed Line Saxophone Quartet、ZZyzx Saxophone Quartet、Anubis Quartetなど、注目しておきたいグループは数多い。
灯禾軒
大学時代に一番お世話になったつくば市の飲み屋は"灯禾軒"だ。大学の吹奏楽団御用達のお店で、演奏会の打ち上げその他もろもろで、さらに引退してから、卒業してからも度々伺っている。今月27日にも伺って、その素敵さを再認識した。
割烹の卓に並べられても遜色ないようなとてもクオリティの高い料理と、美味しいお酒の数々、しかし価格は決して高くない。天スタのれっどりばー氏がかつて書いたこのブログ記事は、その灯禾軒の魅力を存分に伝えるものだが、さらにいくつか私も書いておきたい。
・まずはビール、そして季節のメニューはブラックボードで確認
まずはビールを一杯(サントリー・モルツ)。スタンダードに出てくるメニューのほかに、季節のメニューがたくさん。開店時にブラックボードに書かれたそのメニューをチェックして頼むのだ。27日にセレクトしたのは、なめこの天ぷら!アツアツ揚げたてに、美味しすぎて感動!スタンダードなメニューからは、鶏の唐揚げ(半年に一度仕込まれる秘密調合のタレに浸けられている)、えのきバター焼き、大根サラダ、エシャロットあたりを頼む。
・焼酎の水割りと、お湯割りと…
一番好きな焼酎は芋焼酎の白波なのだが、この白波が300円でたっぷりと(本当にたっぷりと)飲める。ビールに続いてシフトするのがこれ。暑い夏には水割りで、寒い冬にはお湯割りで、ちょっとゆっくり飲みたいときにはロックで…。薫り高いこのお酒は、どんなつまみにもよく合う。
・ブリのかま焼き
時価、そして在庫がいつもあるというわけではないのだが、あれば必ず頼んでしまうのがこれ。焼き上がるまで少し時間がかかるので、早めに頼むのが吉。そして少しお酒が進んだところで満を持して登場する巨大なかま焼き…。大根おろしに醤油をかけ、柔らかい身をみんなで箸でつつきながら食べるのは本当に美味しい。一番美味しいのは目玉の周りのコラーゲン!これを食べずしてブリカマ焼きを食べた気になってはいけない!
・刺身の盛り合わせと、日本酒
れっどりばー氏も書いているが、刺身の「盛り合わせxxx円ぶん」という頼み方ができる。この間伺ったときは、4人で1500円ぶんという頼み方をしたが、人数に合わせて作ってもらえ(4人なら4切れずつ6種とか)、赤身魚・白身魚と豪華絢爛そのもの。そして、併せて頼むのが日本酒!久保田・八海山・千寿・万寿などの銘柄が、なんと400円台から!灯禾軒でアルバイトしているかたに伺ってみると、刺身も日本酒も採算度外視のサービス品のようなものとのこと。灯禾軒に感謝しつつ味わいたい。
・〆は?
やっぱりお茶漬け(明太子・梅・シャケ)かなー。かつお節の香り高い、焼きおにぎり茶漬けというのも美味しい。
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またそのうち伺いたいなー。というか、灯禾軒に行くためだけにつくば市に行くのだっていいかも。
割烹の卓に並べられても遜色ないようなとてもクオリティの高い料理と、美味しいお酒の数々、しかし価格は決して高くない。天スタのれっどりばー氏がかつて書いたこのブログ記事は、その灯禾軒の魅力を存分に伝えるものだが、さらにいくつか私も書いておきたい。
・まずはビール、そして季節のメニューはブラックボードで確認
まずはビールを一杯(サントリー・モルツ)。スタンダードに出てくるメニューのほかに、季節のメニューがたくさん。開店時にブラックボードに書かれたそのメニューをチェックして頼むのだ。27日にセレクトしたのは、なめこの天ぷら!アツアツ揚げたてに、美味しすぎて感動!スタンダードなメニューからは、鶏の唐揚げ(半年に一度仕込まれる秘密調合のタレに浸けられている)、えのきバター焼き、大根サラダ、エシャロットあたりを頼む。
・焼酎の水割りと、お湯割りと…
一番好きな焼酎は芋焼酎の白波なのだが、この白波が300円でたっぷりと(本当にたっぷりと)飲める。ビールに続いてシフトするのがこれ。暑い夏には水割りで、寒い冬にはお湯割りで、ちょっとゆっくり飲みたいときにはロックで…。薫り高いこのお酒は、どんなつまみにもよく合う。
・ブリのかま焼き
時価、そして在庫がいつもあるというわけではないのだが、あれば必ず頼んでしまうのがこれ。焼き上がるまで少し時間がかかるので、早めに頼むのが吉。そして少しお酒が進んだところで満を持して登場する巨大なかま焼き…。大根おろしに醤油をかけ、柔らかい身をみんなで箸でつつきながら食べるのは本当に美味しい。一番美味しいのは目玉の周りのコラーゲン!これを食べずしてブリカマ焼きを食べた気になってはいけない!
・刺身の盛り合わせと、日本酒
れっどりばー氏も書いているが、刺身の「盛り合わせxxx円ぶん」という頼み方ができる。この間伺ったときは、4人で1500円ぶんという頼み方をしたが、人数に合わせて作ってもらえ(4人なら4切れずつ6種とか)、赤身魚・白身魚と豪華絢爛そのもの。そして、併せて頼むのが日本酒!久保田・八海山・千寿・万寿などの銘柄が、なんと400円台から!灯禾軒でアルバイトしているかたに伺ってみると、刺身も日本酒も採算度外視のサービス品のようなものとのこと。灯禾軒に感謝しつつ味わいたい。
・〆は?
やっぱりお茶漬け(明太子・梅・シャケ)かなー。かつお節の香り高い、焼きおにぎり茶漬けというのも美味しい。
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またそのうち伺いたいなー。というか、灯禾軒に行くためだけにつくば市に行くのだっていいかも。
ラベル:
その他
2010/12/29
サクソフォーン・フェスティバル2010二日目(2/2)
mixi以外に利用しているソーシャルメディア系サービスについて、これまでTwitterをそれなりに利用していたが、今後Facebookへシフトチェンジしていくこととした。Twitterは、演奏会の宣伝等のような発言のみになるかも(今のmixi日記がそんな状態)。
理由?いや、たいしたことではないのだが、Facebookを使ってみるとなかなか面白くて(^^;
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1/2からの続き。「協奏曲の夕べ」と題されたフェスティバルのメインイベント。5人の独奏者を迎えて、海老原光指揮東京フィルハーモニー交響楽団とともに一曲ずつ協奏曲を演奏してもらうという催し。
♪田中靖人
P.モーリス - プロヴァンスの風景
そういえばこの日、多摩センター駅からパルテノン多摩へと楽器を担いでせっせと歩いて行く田中靖人さんの後ろ姿をメインストリートでお見かけしたような。「プロヴァンスの風景」のオーケストラ版は、やはりこの曲がもつビート感をかなり損なうものである。それでも第2楽章や第4楽章の冒頭など、弦の荘厳な雰囲気で奏でられる上にサックスが鳴るのは感動的だ。第5楽章はやや牽制しあいながらだったが、第1楽章や第3楽章よりも、ずっと楽しくて好きだ。
♪西本淳
M.デュクリュック - ソナタ
最初鳴り始めたとき打楽器や弦楽器がおどろおどろしく鳴り出して、なんの曲かと思った(^^;ここの記事にも書いたが、そう、この曲は初めにサクソフォンとオーケストラの編成のために書かれたのだ。打楽器の扱い方が非常に面白く、全編を通して不思議なオーケストレーション。西本淳氏の演奏は音色・解釈ともども非常に清潔感のあるもので、とても好感が持てる。中央よりもやや前寄りで聴いていたが、あまり音が落ちてこなかった…後ろのほうでははっきり聞こえていたのかも。
♪平野公崇
H.ヴィラ=ロボス - ファンタジア
平野さんはやっぱり平野さんだった(^^;ものすごい覇気で飛ばす飛ばす。やはり、平野さんを聴いているとぐわーっ、と引きこまれてしまう。というわけで、ちょっとオーケストラとの絡みはいまひとつだったが(^^;存在感抜群のソプラノサックスは、多くの聴き手もインスピレーションを受けたようだ。
♪雲井雅人
岩代太郎 - Colors
幻想的な、壮大な音楽。私の言葉で表すなら…「調和するメシアン」だろうか。場面から場面にかけて、様々な色や明るさを
提示しながら曲が進む。いままでに聴いたことのない響き。オーケストラのテンションも、ここに至っては前半と打って変わって水を得た魚のよう。雲井氏の演奏に感化されての事だろうか。その雲井氏も、またとんでもないことだ。オーケストラの響きの中から、一筋の光のように突き抜けてくる音は、なんというか宗教的な崇高さすら感じさせるものがあった。
♪原博巳
H.トマジ - 協奏曲
いやー、こちらもまた凄い。オーケストラも完成度を上げてのトマジ。原さんの演奏も(思ったとおりに)完璧でオーケストラを凌駕する響きと音楽がパルテノン多摩に響いた。凄い。やはり、原さんの音楽と対等に渡り合えるのはオーケストラか、吹奏楽か、、、さもなくば野原みどりさんか(笑)。またリサイタルもあるそうなので楽しみだなあ。
理由?いや、たいしたことではないのだが、Facebookを使ってみるとなかなか面白くて(^^;
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1/2からの続き。「協奏曲の夕べ」と題されたフェスティバルのメインイベント。5人の独奏者を迎えて、海老原光指揮東京フィルハーモニー交響楽団とともに一曲ずつ協奏曲を演奏してもらうという催し。
♪田中靖人
P.モーリス - プロヴァンスの風景
そういえばこの日、多摩センター駅からパルテノン多摩へと楽器を担いでせっせと歩いて行く田中靖人さんの後ろ姿をメインストリートでお見かけしたような。「プロヴァンスの風景」のオーケストラ版は、やはりこの曲がもつビート感をかなり損なうものである。それでも第2楽章や第4楽章の冒頭など、弦の荘厳な雰囲気で奏でられる上にサックスが鳴るのは感動的だ。第5楽章はやや牽制しあいながらだったが、第1楽章や第3楽章よりも、ずっと楽しくて好きだ。
♪西本淳
M.デュクリュック - ソナタ
最初鳴り始めたとき打楽器や弦楽器がおどろおどろしく鳴り出して、なんの曲かと思った(^^;ここの記事にも書いたが、そう、この曲は初めにサクソフォンとオーケストラの編成のために書かれたのだ。打楽器の扱い方が非常に面白く、全編を通して不思議なオーケストレーション。西本淳氏の演奏は音色・解釈ともども非常に清潔感のあるもので、とても好感が持てる。中央よりもやや前寄りで聴いていたが、あまり音が落ちてこなかった…後ろのほうでははっきり聞こえていたのかも。
♪平野公崇
H.ヴィラ=ロボス - ファンタジア
平野さんはやっぱり平野さんだった(^^;ものすごい覇気で飛ばす飛ばす。やはり、平野さんを聴いているとぐわーっ、と引きこまれてしまう。というわけで、ちょっとオーケストラとの絡みはいまひとつだったが(^^;存在感抜群のソプラノサックスは、多くの聴き手もインスピレーションを受けたようだ。
♪雲井雅人
岩代太郎 - Colors
幻想的な、壮大な音楽。私の言葉で表すなら…「調和するメシアン」だろうか。場面から場面にかけて、様々な色や明るさを
提示しながら曲が進む。いままでに聴いたことのない響き。オーケストラのテンションも、ここに至っては前半と打って変わって水を得た魚のよう。雲井氏の演奏に感化されての事だろうか。その雲井氏も、またとんでもないことだ。オーケストラの響きの中から、一筋の光のように突き抜けてくる音は、なんというか宗教的な崇高さすら感じさせるものがあった。
♪原博巳
H.トマジ - 協奏曲
いやー、こちらもまた凄い。オーケストラも完成度を上げてのトマジ。原さんの演奏も(思ったとおりに)完璧でオーケストラを凌駕する響きと音楽がパルテノン多摩に響いた。凄い。やはり、原さんの音楽と対等に渡り合えるのはオーケストラか、吹奏楽か、、、さもなくば野原みどりさんか(笑)。またリサイタルもあるそうなので楽しみだなあ。
2010/12/28
サクソフォーン・フェスティバル2010二日目(1/2)
2010年12月23日の、サクソフォーン・フェスティバル010の二日目のレポートを書く(一日目は平日ということもあり、行けなかった)。
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この日は別所で練習があったため、午後から伺った。さすが会場に着くと、お知り合いの方がたくさん。練習後だったのでテナーサックスを抱えてフラフラ。楽器店ブースのダクで、杉本さんにレジェール・リードの新作(名前失念…)など試させてもらった。アルト用がだいぶ進化したそうで、実際に吹かせてもらったが、たしかに天然リードと変わらない吹き心地。音色も、吹き手ですら、違いがほとんどわからない。
♪田村真寛
C.ロバ - タージ
J.S.バッハ - パルティータBWV1013
いずれもソプラノ・サクソフォンで、ジャン=マリー・ロンデックス国際コンクールを意識したような選曲。ロバでの自らを手綱で抑えるような楷書体の演奏が、大変印象に残った。かなり完成度を高めようとする強い意志が感じられた。良く考えてみたら、タージをライヴで聴くのは初めてかもしれない。バッハは音ミスも散見され、音色は大変美しかったもののあまり田村氏らしくなかったような。やはりターゲットはJMLコンクールか。
♪ジェローム・ララン
久保禎 - イリュージョナル・フォレスト
凄かった!2006年の「サクソフォーン旋風」から、何度も来日してはそのたびに驚きの演奏を繰り広げるララン氏、さすがにもうこれ以上はないだろう、と思いつつ毎回聴くのだが、またしても度肝を抜かれてしまった。もともとはクラリネット作品だということだが、どんな音が出てこようがお構いなし、技術的にもなんのその、中間部では長大かつエキサイティングな即興まで披露して、聴き手を興奮の渦に巻き込んだ!
演奏後に会ってちょっと話したが、日本語も凄く上手くなっていて驚き。来週(ということは、もう今週)からソウルに行くとのこと。
♪クローバー・サクソフォーン・カルテット
R.R.ベネット - サクソフォン・シンフォネット
「サクソフォーン四重奏名曲館」という企画で、クローバーSQのほか、フィグールSQ、アテナSQ、ヴィーヴSQが一堂に会した。一番最初に演奏された「サクソフォン・シンフォネット」は、これはAATBでは"アンコン"ではもっとも演奏されている曲のひとつだろうが、雲のような軽やかさであっという間に駆け抜けていった。こういう曲をクローバーのような団体が演奏することはほとんど無いだろうから、貴重な機会だったかも。
♪フィグール・サクソフォーン・カルテット
三浦真理 - ティータイムの画集
名前は良く知っていたが、きちんと聴くのは初めて。2005年結成とのことだが、世代的にはどのくらいの方々なのだろう。そういえば、クローバーSQだって結成は2005年だぞ。安定した技術に加え、特にアンサンブルの"阿吽"の呼吸はさすがの活動の長さを感じさせる。「ティータイムの画集」という曲の可愛らしさと爽やかさを見事に表現していたと思う。演奏前のトークもさすが(^^)
♪サクソフォーン・カルテット・アテナ
M.&F.ジャンジャン - 四重奏曲
塩安真衣子、冨岡佑子、江川良子、平賀美樹(敬称略)というメンバーでごく最近結成された四重奏団。こちらも聴くのは初めてだ。第1楽章からしなやかな表現にホレボレ…と思っていたら、最後はアグレッシヴに終わってみたりと、いろいろな表現の要素が詰め込まれているように感じた。綿密なリハーサルのうえでの試行錯誤の結果だろうか?お手のもの!という感じだったので、今度はぜひもっとヘヴィな曲の演奏を聴いてみたい。
♪ヴィーヴ!サクソフォーン・カルテット
J.リヴィエ - グラーヴェとプレスト
何回もの定期演奏会、そしてCDリリースも行い、いよいよ中堅どころに入ってきたヴぃーヴ!SQだが、これまで意識して聴きに行くことはない。ただし、サクソフォーン・フェスティバルでは毎年のように耳にしているような気がするな。たぶん何度も演奏している曲なのではないだろうか。細かい部分は勝手に合ってしまう感じ。見せ場と構成をキチンと構築してしまうあたりは、手慣れたものだ。
♪クローバー・サクソフォーン・カルテット
A.デザンクロ - 四重奏曲
最近、デザンクロ「四重奏曲」の第1楽章を聴くたびに涙してしまう。なんでこんな旋律を着想できるの!?とか、なんでこんな和声進行を、なんでこんなユニゾンを…と、とにかく聴いていて、4声の音楽の奇跡を目の当たりにするような気がしてならない。クローバーのデザンクロを聴くのは3回目(たぶん)。四重奏結成以来何度となく演奏してきたのだと思うが、最初から最後まで一切の迷いがない素晴らしい演奏だった。
2/2に続く…。
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この日は別所で練習があったため、午後から伺った。さすが会場に着くと、お知り合いの方がたくさん。練習後だったのでテナーサックスを抱えてフラフラ。楽器店ブースのダクで、杉本さんにレジェール・リードの新作(名前失念…)など試させてもらった。アルト用がだいぶ進化したそうで、実際に吹かせてもらったが、たしかに天然リードと変わらない吹き心地。音色も、吹き手ですら、違いがほとんどわからない。
♪田村真寛
C.ロバ - タージ
J.S.バッハ - パルティータBWV1013
いずれもソプラノ・サクソフォンで、ジャン=マリー・ロンデックス国際コンクールを意識したような選曲。ロバでの自らを手綱で抑えるような楷書体の演奏が、大変印象に残った。かなり完成度を高めようとする強い意志が感じられた。良く考えてみたら、タージをライヴで聴くのは初めてかもしれない。バッハは音ミスも散見され、音色は大変美しかったもののあまり田村氏らしくなかったような。やはりターゲットはJMLコンクールか。
♪ジェローム・ララン
久保禎 - イリュージョナル・フォレスト
凄かった!2006年の「サクソフォーン旋風」から、何度も来日してはそのたびに驚きの演奏を繰り広げるララン氏、さすがにもうこれ以上はないだろう、と思いつつ毎回聴くのだが、またしても度肝を抜かれてしまった。もともとはクラリネット作品だということだが、どんな音が出てこようがお構いなし、技術的にもなんのその、中間部では長大かつエキサイティングな即興まで披露して、聴き手を興奮の渦に巻き込んだ!
演奏後に会ってちょっと話したが、日本語も凄く上手くなっていて驚き。来週(ということは、もう今週)からソウルに行くとのこと。
♪クローバー・サクソフォーン・カルテット
R.R.ベネット - サクソフォン・シンフォネット
「サクソフォーン四重奏名曲館」という企画で、クローバーSQのほか、フィグールSQ、アテナSQ、ヴィーヴSQが一堂に会した。一番最初に演奏された「サクソフォン・シンフォネット」は、これはAATBでは"アンコン"ではもっとも演奏されている曲のひとつだろうが、雲のような軽やかさであっという間に駆け抜けていった。こういう曲をクローバーのような団体が演奏することはほとんど無いだろうから、貴重な機会だったかも。
♪フィグール・サクソフォーン・カルテット
三浦真理 - ティータイムの画集
名前は良く知っていたが、きちんと聴くのは初めて。2005年結成とのことだが、世代的にはどのくらいの方々なのだろう。そういえば、クローバーSQだって結成は2005年だぞ。安定した技術に加え、特にアンサンブルの"阿吽"の呼吸はさすがの活動の長さを感じさせる。「ティータイムの画集」という曲の可愛らしさと爽やかさを見事に表現していたと思う。演奏前のトークもさすが(^^)
♪サクソフォーン・カルテット・アテナ
M.&F.ジャンジャン - 四重奏曲
塩安真衣子、冨岡佑子、江川良子、平賀美樹(敬称略)というメンバーでごく最近結成された四重奏団。こちらも聴くのは初めてだ。第1楽章からしなやかな表現にホレボレ…と思っていたら、最後はアグレッシヴに終わってみたりと、いろいろな表現の要素が詰め込まれているように感じた。綿密なリハーサルのうえでの試行錯誤の結果だろうか?お手のもの!という感じだったので、今度はぜひもっとヘヴィな曲の演奏を聴いてみたい。
♪ヴィーヴ!サクソフォーン・カルテット
J.リヴィエ - グラーヴェとプレスト
何回もの定期演奏会、そしてCDリリースも行い、いよいよ中堅どころに入ってきたヴぃーヴ!SQだが、これまで意識して聴きに行くことはない。ただし、サクソフォーン・フェスティバルでは毎年のように耳にしているような気がするな。たぶん何度も演奏している曲なのではないだろうか。細かい部分は勝手に合ってしまう感じ。見せ場と構成をキチンと構築してしまうあたりは、手慣れたものだ。
♪クローバー・サクソフォーン・カルテット
A.デザンクロ - 四重奏曲
最近、デザンクロ「四重奏曲」の第1楽章を聴くたびに涙してしまう。なんでこんな旋律を着想できるの!?とか、なんでこんな和声進行を、なんでこんなユニゾンを…と、とにかく聴いていて、4声の音楽の奇跡を目の当たりにするような気がしてならない。クローバーのデザンクロを聴くのは3回目(たぶん)。四重奏結成以来何度となく演奏してきたのだと思うが、最初から最後まで一切の迷いがない素晴らしい演奏だった。
2/2に続く…。
2010/12/27
週末〜今日
(携帯から更新)
昨日はTsukubaSQの練習と、そのあと四重奏メンバーで飲み会。なんかいろいろと可笑しく、楽しかった。
今日から仕事は休みに入った。今はラージアンサンブルの練習のためつくばに向かっているところ。ついでに、個人練習もしっかりしてこようと考えている。
2010/12/25
埼玉大学吹奏楽部第46回定期演奏会
サクソフォーン・フェスティバル2010のレポートは、まだ書いている最中…。
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【埼玉大学吹奏楽部第46回定期演奏会】
出演:埼玉大学吹奏楽部、小峰章裕、土澤雄太(以上cond.)
日時:2010年12月25日(土曜) 14:00開演
会場:埼玉会館
プログラム:
P.スパーク - ハンティンドン・セレブレーション
田中賢 - 光は大宇(そら)に満ちて
A.リード - アルメニアンダンス・パート1
生澤広次 - ユーフォニアム狂詩曲作品19(独奏:鎌田裕子)
樽屋雅徳 - マードックからの最後の手紙
P.I.チャイコフスキー - 大序曲「1812年」
~アンコール~
L.アンダーソン - そりすべり
M.ジャクソン&L.リッチー - We are the World
A.リード - 第1組曲より"ギャロップ"
サックス関係の縁があって伺った。朝日新聞社主催の吹奏楽コンクールでいうところの"西関東ブロック"では、文教大学に次ぐ規模のバンドだ。買い物をしていたらなんと一曲目にギリギリ間に合わず(>_<)2階席に構えて、二曲目から聴いた。
田中賢作品は、最初なんとなく「...im Licht」のような音を想像していたのだが、もっと規模は小さくて聴きやすい作品だった。ソプラノサックスのソロがあるところなんか、少し似ているなあと思いつつ聴き入る。埼玉大学吹奏楽部を聴くのは初めてだったが、交響的な吹奏楽のサウンドで、とても安定した技術を持っているようだ。「アルメニアンダンス」は常任指揮者の小峰氏のタクトで。実にオーソドックスな解釈と、全体構成から聴衆を興奮のテンションへと誘う堅牢な全体構成に感嘆。もちろん、各見せ場でも聴き応えがあった。
協奏曲では、まず独奏の鎌田裕子氏の経歴がすごくてびっくり。なんと、3回連続で日本管打楽器コンクールに3位→2位→1位と入賞しているとのこと。ちょっと考えられない。昨年管打楽器この協奏曲は委嘱初演。独奏パートはえらく低音を多用した曲で、自分のユーフォニアムの趣味(中~高音域のバカテク系)からは少し外れていたが、独奏・バンドともどもスコアを音にしようとする気概が伝わってきた。細かい音でカッチリ音形をはめていくようなフレーズがたくさん現れたが、やはりこういう楽想?には管楽アンサンブルのバックは良く合うと感じる。
樽屋氏はいまや日本の吹奏楽界を代表する作曲家の一人。描写音楽を得意とするが、今回はタイタニック沈没事故へのオマージュ作品が取り上げられた。ケルトふうの音楽を一貫した主題に、愉悦~崩壊~哀悼が奏でられる。同じ学生の指揮だったが、田中賢作品よりもかなり練り上げられた演奏を楽しんだ。中間部のソロも素敵な感じ。
最後はチャイコフスキー「1812」。まあこの写真を見てくださいな(クリックして拡大)…何かの合同バンドのようだ。トランペット、トロンボーン、ホルン、ユーフォニアム、テューバが、全て2列編成(2管じゃないよ2列だよ)。さらにバスドラムはメインの一台に加えて、両側の花道に4台ずつの計5台で、見た目からして圧倒されてしまった。ダイナミックな指揮のもと、全120名の部員がステージに密集して、壮大なテクスチュアを描き出す。大きいホールだったが、それでもちょっと会場が小さいなと思ってしまうくらいの迫力。
冒頭の荘厳なコラールはサクソフォンアンサンブルに割り当てられていたが、このアイディアって吹奏楽のどの編曲でも同じなのかなー。なんかクラリネットアンサンブルとかでも良さそうな雰囲気だけど。
アンコールに、「そりすべり」と、「We are the World(ユーフォニアム独奏)」と、なんか聴いたことのあるギャロップっぽい曲(何の曲か教えてください…)。サンタさんが登場した「そりすべり」が、特に楽しさに溢れ、会場いっぱいに音がキラキラしながら拡がっていくかのようだった。
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【埼玉大学吹奏楽部第46回定期演奏会】
出演:埼玉大学吹奏楽部、小峰章裕、土澤雄太(以上cond.)
日時:2010年12月25日(土曜) 14:00開演
会場:埼玉会館
プログラム:
P.スパーク - ハンティンドン・セレブレーション
田中賢 - 光は大宇(そら)に満ちて
A.リード - アルメニアンダンス・パート1
生澤広次 - ユーフォニアム狂詩曲作品19(独奏:鎌田裕子)
樽屋雅徳 - マードックからの最後の手紙
P.I.チャイコフスキー - 大序曲「1812年」
~アンコール~
L.アンダーソン - そりすべり
M.ジャクソン&L.リッチー - We are the World
A.リード - 第1組曲より"ギャロップ"
サックス関係の縁があって伺った。朝日新聞社主催の吹奏楽コンクールでいうところの"西関東ブロック"では、文教大学に次ぐ規模のバンドだ。買い物をしていたらなんと一曲目にギリギリ間に合わず(>_<)2階席に構えて、二曲目から聴いた。
田中賢作品は、最初なんとなく「...im Licht」のような音を想像していたのだが、もっと規模は小さくて聴きやすい作品だった。ソプラノサックスのソロがあるところなんか、少し似ているなあと思いつつ聴き入る。埼玉大学吹奏楽部を聴くのは初めてだったが、交響的な吹奏楽のサウンドで、とても安定した技術を持っているようだ。「アルメニアンダンス」は常任指揮者の小峰氏のタクトで。実にオーソドックスな解釈と、全体構成から聴衆を興奮のテンションへと誘う堅牢な全体構成に感嘆。もちろん、各見せ場でも聴き応えがあった。
協奏曲では、まず独奏の鎌田裕子氏の経歴がすごくてびっくり。なんと、3回連続で日本管打楽器コンクールに3位→2位→1位と入賞しているとのこと。ちょっと考えられない。昨年管打楽器この協奏曲は委嘱初演。独奏パートはえらく低音を多用した曲で、自分のユーフォニアムの趣味(中~高音域のバカテク系)からは少し外れていたが、独奏・バンドともどもスコアを音にしようとする気概が伝わってきた。細かい音でカッチリ音形をはめていくようなフレーズがたくさん現れたが、やはりこういう楽想?には管楽アンサンブルのバックは良く合うと感じる。
樽屋氏はいまや日本の吹奏楽界を代表する作曲家の一人。描写音楽を得意とするが、今回はタイタニック沈没事故へのオマージュ作品が取り上げられた。ケルトふうの音楽を一貫した主題に、愉悦~崩壊~哀悼が奏でられる。同じ学生の指揮だったが、田中賢作品よりもかなり練り上げられた演奏を楽しんだ。中間部のソロも素敵な感じ。
最後はチャイコフスキー「1812」。まあこの写真を見てくださいな(クリックして拡大)…何かの合同バンドのようだ。トランペット、トロンボーン、ホルン、ユーフォニアム、テューバが、全て2列編成(2管じゃないよ2列だよ)。さらにバスドラムはメインの一台に加えて、両側の花道に4台ずつの計5台で、見た目からして圧倒されてしまった。ダイナミックな指揮のもと、全120名の部員がステージに密集して、壮大なテクスチュアを描き出す。大きいホールだったが、それでもちょっと会場が小さいなと思ってしまうくらいの迫力。
冒頭の荘厳なコラールはサクソフォンアンサンブルに割り当てられていたが、このアイディアって吹奏楽のどの編曲でも同じなのかなー。なんかクラリネットアンサンブルとかでも良さそうな雰囲気だけど。
アンコールに、「そりすべり」と、「We are the World(ユーフォニアム独奏)」と、なんか聴いたことのあるギャロップっぽい曲(何の曲か教えてください…)。サンタさんが登場した「そりすべり」が、特に楽しさに溢れ、会場いっぱいに音がキラキラしながら拡がっていくかのようだった。
2010/12/24
ボーンカンプ氏のビデオ・コンサート
フェス、年末に良いものを聴けて良かった!レポートは後日。
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オランダのradio4で、アルノ・ボーンカンプ Arno Bornkamp氏の公開音楽コンサート Serreconcertを行った様子がYouTubeにアップロードされていた。radio4の公式アカウントのようで、動画の演奏時間、実に1時間5分!(笑)ぜひクリックしてリンク先に飛び、YouTube上で大画面で楽しむことをオススメ。
C.Delvincourt - Croquembouche
C.Debussy - Petit Suite
M.Ravel - Pavane pour une infante défunte
F.Martin - Petite Complainte
W.Lutoslawski - Dances Préludes
解説はオランダ語か?英語か?と、何を言っているのかよく分からないのが残念だが、全編を通してとにかく素晴らしい演奏。ダルヴァンクール「クロカンブッシュ」、ドビュッシーはアルト・サクソフォンとピアノでの「小組曲」など、ちょっとマニアックなレパートリーが続く。そしてテナーサクソフォンで奏でられる「亡き王女のためのパヴァーヌ」は鳥肌モノ。フランク・マルタンの「プチ・コンプライアント」だなんて、実に面白い(もともとはオーボエのための作品)。最後はルトスワフスキ自身がクラリネットから改作した「舞踏前奏曲」を、見事に奏でる。
そしてアンコールのサン=サーンス「白鳥」…これは大爆笑なので、ぜひ最後まで観ていただきたい(このアンコール動画は、いつか別の場所で紹介したような覚えがある)。最も人の声に近づいたサクソフォンかも!?
屋外の、それほど響かない場所での演奏であるはずだが、うまい具合にポストプロセッションが掛かっていて、音響的にもかなり良い状態で聴くことができる。
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オランダのradio4で、アルノ・ボーンカンプ Arno Bornkamp氏の公開音楽コンサート Serreconcertを行った様子がYouTubeにアップロードされていた。radio4の公式アカウントのようで、動画の演奏時間、実に1時間5分!(笑)ぜひクリックしてリンク先に飛び、YouTube上で大画面で楽しむことをオススメ。
C.Delvincourt - Croquembouche
C.Debussy - Petit Suite
M.Ravel - Pavane pour une infante défunte
F.Martin - Petite Complainte
W.Lutoslawski - Dances Préludes
解説はオランダ語か?英語か?と、何を言っているのかよく分からないのが残念だが、全編を通してとにかく素晴らしい演奏。ダルヴァンクール「クロカンブッシュ」、ドビュッシーはアルト・サクソフォンとピアノでの「小組曲」など、ちょっとマニアックなレパートリーが続く。そしてテナーサクソフォンで奏でられる「亡き王女のためのパヴァーヌ」は鳥肌モノ。フランク・マルタンの「プチ・コンプライアント」だなんて、実に面白い(もともとはオーボエのための作品)。最後はルトスワフスキ自身がクラリネットから改作した「舞踏前奏曲」を、見事に奏でる。
そしてアンコールのサン=サーンス「白鳥」…これは大爆笑なので、ぜひ最後まで観ていただきたい(このアンコール動画は、いつか別の場所で紹介したような覚えがある)。最も人の声に近づいたサクソフォンかも!?
屋外の、それほど響かない場所での演奏であるはずだが、うまい具合にポストプロセッションが掛かっていて、音響的にもかなり良い状態で聴くことができる。
2010/12/21
明日からフェスティバル
明日からの2日間、パルテノン多摩において恒例サクソフォーン・フェスティバルが催される。私は(当然だが)明日は平日であるので伺うことができず、23日の午前も用事があるので、午後から伺う予定。
詳細はサクソフォーン協会のページに譲り(→こちら)、見どころをいくつか挙げておく。
22日
・ディスカバリーコンサート
シュミット「伝説」のヴィオラ版を聴けるようだ。ご存じの方も多いと思うが、この曲の独奏譜にはヴァイオリンパート、ヴィオラパートが併記されており、音域や表現法の拡大が行われている。donaxさんがヴァイオリン版についてたいへん詳しい分析を行なっているので、行かれる前に読んでおくと面白く聴けると思う。
・ライヴエレクトロニクス レクチャーコンサート
大石氏を中心としたメンバーによる、エレクトロニクスのコンサート。「レクチャー」と言うからには講演形式なのだろうが、聴くことができないのが実に残念である。特にサクソフォンの近代作品の大傑作「私ではなく風が…」の実演なんて、めったに聴けませんぞ!
・スペシャルコンサート
なんと、出張版の「Happy Sax Concert」だ!もし今年のHappy Saxを聴きに行かれなかった…なんて方がいらっしゃったら、ぜひこちらを!
23日
・A会員によるプレミアムコンサート
たぶんいろんな方が出るのだと思うが、プログラムがわからず…。当日までのお楽しみといったところか?
・サクソフォーンカルテット名曲館
名曲を聴けるのも良いけれど、若い世代のカルテットをまとめて聴けるというところにも魅力を感じる。特にサクソフォーン・カルテット・アテナはまだ聴いたことがないのだ。
・フェスティバルコンサート「協奏曲の夕べ」
タイトルが「協奏曲の夕べ」とは、また大きく出たなあ(分かる人には分かる笑)。全てのプログラムが魅力的だが、オーケストラともども、どんな演奏が繰り広げられるのか居間から楽しみ。
詳細はサクソフォーン協会のページに譲り(→こちら)、見どころをいくつか挙げておく。
22日
・ディスカバリーコンサート
シュミット「伝説」のヴィオラ版を聴けるようだ。ご存じの方も多いと思うが、この曲の独奏譜にはヴァイオリンパート、ヴィオラパートが併記されており、音域や表現法の拡大が行われている。donaxさんがヴァイオリン版についてたいへん詳しい分析を行なっているので、行かれる前に読んでおくと面白く聴けると思う。
・ライヴエレクトロニクス レクチャーコンサート
大石氏を中心としたメンバーによる、エレクトロニクスのコンサート。「レクチャー」と言うからには講演形式なのだろうが、聴くことができないのが実に残念である。特にサクソフォンの近代作品の大傑作「私ではなく風が…」の実演なんて、めったに聴けませんぞ!
・スペシャルコンサート
なんと、出張版の「Happy Sax Concert」だ!もし今年のHappy Saxを聴きに行かれなかった…なんて方がいらっしゃったら、ぜひこちらを!
23日
・A会員によるプレミアムコンサート
たぶんいろんな方が出るのだと思うが、プログラムがわからず…。当日までのお楽しみといったところか?
・サクソフォーンカルテット名曲館
名曲を聴けるのも良いけれど、若い世代のカルテットをまとめて聴けるというところにも魅力を感じる。特にサクソフォーン・カルテット・アテナはまだ聴いたことがないのだ。
・フェスティバルコンサート「協奏曲の夕べ」
タイトルが「協奏曲の夕べ」とは、また大きく出たなあ(分かる人には分かる笑)。全てのプログラムが魅力的だが、オーケストラともども、どんな演奏が繰り広げられるのか居間から楽しみ。
ラベル:
情報
2010/12/20
Niels Bijl氏関連のいろいろ
伊藤あさぎさんが、ディナン国際の入賞者についてブログで書いてらっしゃいます。面白い~
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アウレリア・サクソフォン四重奏団 Aurelia Saxophone Quartetのアルトサクソフォン奏者、Niels Bijl氏が、新しいCDをリリースしたそうだ。なんと、全編テナーサクソフォンによるCDで、「Mozaik(Aliud CD ACD BH 049-2)」と名付けられている。収録曲はおそらく全てがアレンジもので、下記の通り。
F.Schubert - Arpeggione Sonata
A.Scriabin - Five Preludes, Op. 16
G.Faure - Nocturne, Op. 43
K.Kirkland - Dienda
F.Buis - The Devil and the Deep Blue Sea
他
また、CDレコーディング前の最後のリハーサルを映像素材とした、プロモーションビデオがYouTubeにあったので、貼りつけておく。
さらにさらに、このCDに収録されている作品のうち、シューベルト「アルペジョーネ・ソナタ」とフォーレ「夜想曲」の、テナーサクソフォン用楽譜が、Bijl氏のウェブページからダウンロード可能だ。テナーサクソフォン奏者にとっては朗報ではないだろうか。Niels Bijl氏の公式ページから、「Sheet Music」のメニューをクリックすると、楽譜がリストされているページに飛ぶことができる。ピアノ譜はIMSLPなどから入手可能だろう。
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アウレリア・サクソフォン四重奏団 Aurelia Saxophone Quartetのアルトサクソフォン奏者、Niels Bijl氏が、新しいCDをリリースしたそうだ。なんと、全編テナーサクソフォンによるCDで、「Mozaik(Aliud CD ACD BH 049-2)」と名付けられている。収録曲はおそらく全てがアレンジもので、下記の通り。
F.Schubert - Arpeggione Sonata
A.Scriabin - Five Preludes, Op. 16
G.Faure - Nocturne, Op. 43
K.Kirkland - Dienda
F.Buis - The Devil and the Deep Blue Sea
他
また、CDレコーディング前の最後のリハーサルを映像素材とした、プロモーションビデオがYouTubeにあったので、貼りつけておく。
さらにさらに、このCDに収録されている作品のうち、シューベルト「アルペジョーネ・ソナタ」とフォーレ「夜想曲」の、テナーサクソフォン用楽譜が、Bijl氏のウェブページからダウンロード可能だ。テナーサクソフォン奏者にとっては朗報ではないだろうか。Niels Bijl氏の公式ページから、「Sheet Music」のメニューをクリックすると、楽譜がリストされているページに飛ぶことができる。ピアノ譜はIMSLPなどから入手可能だろう。
ラベル:
演奏家
2010/12/19
Happy Sax Concerto 2010!!
そう、コンサート名にはビックリマークが2つ付くのです(笑)。
金曜日、小串俊寿氏のHAPPY SAX CONCERTに伺った。チケットをおなじみmckenさんにお世話になり(ありがとうございました!)、有楽町から徒歩にて銀座ブロッサム中央会館へ。私としたことがなんとHAPPY SAX CONCERTは初めて!毎年毎年演奏会の情報は入ってきていたが、なんだか上手く予定が合わなかったりで、ついに2010年になってしまった。初めてのコンサート、初めての会場とはなかなか久しぶりで、ワクワク。
【Toshihisa Ogushi Happy Sax Concerto 2010!!】
出演:小串俊寿、池上政人、田中靖人(以上sax)、白石光隆(pf)、横山達治(perc)
日時:2010年12月17日 19:00開演
会場:東京・銀座ブロッサム中央会館ホール
プログラム:
星出尚志 - ブラボー・サックス
天野正道 - コンチェルティーノ
F.ショパン - -夜想曲第8番
L.アンダーソン - そりすべり
樽屋雅徳 - メルシー・パリシー
真島俊夫 - サンバ・エクスプレス
星出尚志 - チェイサー
星出尚志 - モンマルトルの石畳
C.コリア/天野正道 - スペイン
鈴木英史 - サンバ・フィエスタ2010
300人くらいのライブハウスのような会場を想像していたのだが、二階席まであるような1000人弱規模の巨大コンサートホール。そこに、老若男女、たくさんのお客さんが…どのように定着していった客層なのだろう。サックス担いだ音大生、という感じの人たちは少なくて、あまりサックスの演奏会という感じではないな。
小串さん、ピアノの白石光隆さん、譜めくりスト(Special Page Turnerと紹介されていた)の星出尚志さんが登場。MCも交えながら和やかな雰囲気だが、いざ演奏が始まると途端にスーパーセッションが展開される。小串さんの演奏スタイルは、デファイエの演奏姿(DVDで観たことがある)のようにどっしりと直立不動で奏でるもので、飛び出す音とのギャップがすごい。超速フィンガリングもフラジオも何のその。でもきっとお客さんの半分くらいはサックスの演奏なんかやったことのない人たちで、決して演奏の裏にあるサックスの楽器らしさは表向きに出ずに、曲の心地よい楽しさと、音色だけが耳に残る。
天野正道「コンチェルティーノ」も、楽しく聴けた。最初のセクションの主題が、なんかイベールの「祝典序曲」のフーガの主題っぽいなあと思っていたら、耳が追いつかないほどに次々に技巧が飛び出して、ラテン風な部分までも交えながら、最後には輝かしいままにフィニッシュ。小串さんて、本当に上手い!すごい!
白石光隆さんのピアノソロも聴けた。ショパンの「夜想曲第8番」を聴いて、その音色のコントロールに感服。まるでハープを聴いているようで、ピアノはそういえば弦の楽器なんだと目から鱗が落ちるようだった。その後に「そりすべり」を何気なく聴かせてしまうあたりも、また素敵。
さらにゲストも登場。サックス池上政人さんと田中靖人さんそれぞれと、小串さんのデュエットが聴けたり(曲もテクニカルで、その辺のデュエット曲を鼻の先で吹き飛ばすような…)、さらに横山達治さんも加わってのサックス三本+ピアノ+パーカッションの豪華編成も。チック・コリアの「スペイン」でほとんどアドリブ対決のような楽しさだった。途中でも拍手をしたい!というような、こんなクラシックのコンサートは初めてだ!
暮れに素敵なコンサートが聴けて良かった!コンサート後は、山形蕎麦の「山形田」で一杯。久々に味わう薫り高い蕎麦や、ツマミのイナゴなどを楽しみながら余韻に浸った。
金曜日、小串俊寿氏のHAPPY SAX CONCERTに伺った。チケットをおなじみmckenさんにお世話になり(ありがとうございました!)、有楽町から徒歩にて銀座ブロッサム中央会館へ。私としたことがなんとHAPPY SAX CONCERTは初めて!毎年毎年演奏会の情報は入ってきていたが、なんだか上手く予定が合わなかったりで、ついに2010年になってしまった。初めてのコンサート、初めての会場とはなかなか久しぶりで、ワクワク。
【Toshihisa Ogushi Happy Sax Concerto 2010!!】
出演:小串俊寿、池上政人、田中靖人(以上sax)、白石光隆(pf)、横山達治(perc)
日時:2010年12月17日 19:00開演
会場:東京・銀座ブロッサム中央会館ホール
プログラム:
星出尚志 - ブラボー・サックス
天野正道 - コンチェルティーノ
F.ショパン - -夜想曲第8番
L.アンダーソン - そりすべり
樽屋雅徳 - メルシー・パリシー
真島俊夫 - サンバ・エクスプレス
星出尚志 - チェイサー
星出尚志 - モンマルトルの石畳
C.コリア/天野正道 - スペイン
鈴木英史 - サンバ・フィエスタ2010
300人くらいのライブハウスのような会場を想像していたのだが、二階席まであるような1000人弱規模の巨大コンサートホール。そこに、老若男女、たくさんのお客さんが…どのように定着していった客層なのだろう。サックス担いだ音大生、という感じの人たちは少なくて、あまりサックスの演奏会という感じではないな。
小串さん、ピアノの白石光隆さん、譜めくりスト(Special Page Turnerと紹介されていた)の星出尚志さんが登場。MCも交えながら和やかな雰囲気だが、いざ演奏が始まると途端にスーパーセッションが展開される。小串さんの演奏スタイルは、デファイエの演奏姿(DVDで観たことがある)のようにどっしりと直立不動で奏でるもので、飛び出す音とのギャップがすごい。超速フィンガリングもフラジオも何のその。でもきっとお客さんの半分くらいはサックスの演奏なんかやったことのない人たちで、決して演奏の裏にあるサックスの楽器らしさは表向きに出ずに、曲の心地よい楽しさと、音色だけが耳に残る。
天野正道「コンチェルティーノ」も、楽しく聴けた。最初のセクションの主題が、なんかイベールの「祝典序曲」のフーガの主題っぽいなあと思っていたら、耳が追いつかないほどに次々に技巧が飛び出して、ラテン風な部分までも交えながら、最後には輝かしいままにフィニッシュ。小串さんて、本当に上手い!すごい!
白石光隆さんのピアノソロも聴けた。ショパンの「夜想曲第8番」を聴いて、その音色のコントロールに感服。まるでハープを聴いているようで、ピアノはそういえば弦の楽器なんだと目から鱗が落ちるようだった。その後に「そりすべり」を何気なく聴かせてしまうあたりも、また素敵。
さらにゲストも登場。サックス池上政人さんと田中靖人さんそれぞれと、小串さんのデュエットが聴けたり(曲もテクニカルで、その辺のデュエット曲を鼻の先で吹き飛ばすような…)、さらに横山達治さんも加わってのサックス三本+ピアノ+パーカッションの豪華編成も。チック・コリアの「スペイン」でほとんどアドリブ対決のような楽しさだった。途中でも拍手をしたい!というような、こんなクラシックのコンサートは初めてだ!
暮れに素敵なコンサートが聴けて良かった!コンサート後は、山形蕎麦の「山形田」で一杯。久々に味わう薫り高い蕎麦や、ツマミのイナゴなどを楽しみながら余韻に浸った。
2010/12/18
Calefax、最高!
やはり、カレファックス五重奏団は最高だ!と思えるムービー。ファゴットのAlban Weslyのプレゼンテーションに続いて5人が登場し様々な演奏を繰り広げる。内容は説明せずに、まずは見てもらうのが◎だろう。五枚…いや、七枚のリードから、こんな音楽が飛びだすなんて、まるで魔法みたいだ!
ちなみに、贔屓目にせずとも、やはり圧倒的な存在感を示しているのはサクソフォンではないかな?サクソフォンという楽器も凄いし、もちろん演奏するラーフ・ヘッケマ Raaf Hekkemaのウデによる部分もあるのだろう。カレファックスは何度か来日しているが、いまだに聴きに行くことができていない。次にいつか来日した折には、ぜひコンサートに伺いたい。
ちなみに、贔屓目にせずとも、やはり圧倒的な存在感を示しているのはサクソフォンではないかな?サクソフォンという楽器も凄いし、もちろん演奏するラーフ・ヘッケマ Raaf Hekkemaのウデによる部分もあるのだろう。カレファックスは何度か来日しているが、いまだに聴きに行くことができていない。次にいつか来日した折には、ぜひコンサートに伺いたい。
2010/12/17
The Garden of Loveの訳
ウィリアム・ブレイク「無垢と経験のうた」より William Blake - Songs of Innocence and of Experience
「愛の園 The Garden of Love」
I went to the Garden of Love,
And saw what I never had seen:
A Chapel was built in the midst,
Where I used to play on the green.
愛の園へと出かけてみると
見たこともないものが建っていた
子供の頃に遊んでいた芝生の真ん中に
教会が建てられていたのだ
And the gates of this Chapel were shut,
And "Thou shalt not" writ over the door;
So I turn'd to the Garden of Love,
That so many sweet flowers bore,
教会の門は固く閉ざされ
扉には「入るべからず」と書いてあった
私は仕方なく愛の園へと引き返し
美しい花たちを眺めようと考えた
And I saw it was filled with graves,
And tomb-stones where flowers should be:
And Priests in black gowns were walking their rounds,
And binding with briars my joys and desires.
…かつて花が咲き乱れていた場所は墓地になっていた
花は根こそぎ掘り返されて墓石が建てられ
黒いガウンを纏った僧侶が墓地を見張っている
私はまるで茨で縛られたような悲しみを感じたのだ
JacobTV - The Garden of Love
Oboe: Irma Kort
Video: Amber Boardman
----------
ずっと前にブログで紹介した長尾高弘氏や壺齋散人氏の訳がなんだか気に入らなかったので、自分で訳してみた結果、こんな感じになった。やや現代的に、20代か30代の若い人が詩を作ったらどうなるだろうと試行錯誤すること一時間。最後のパラグラフについては韻を踏むことができなかったが、まあそこまでこだわると言い回しを犠牲にしてしまうことになるので許してくだされ。それなりにまとまった形にできたと自負しているのだが、いかがだろうか。
「愛の園 The Garden of Love」
I went to the Garden of Love,
And saw what I never had seen:
A Chapel was built in the midst,
Where I used to play on the green.
愛の園へと出かけてみると
見たこともないものが建っていた
子供の頃に遊んでいた芝生の真ん中に
教会が建てられていたのだ
And the gates of this Chapel were shut,
And "Thou shalt not" writ over the door;
So I turn'd to the Garden of Love,
That so many sweet flowers bore,
教会の門は固く閉ざされ
扉には「入るべからず」と書いてあった
私は仕方なく愛の園へと引き返し
美しい花たちを眺めようと考えた
And I saw it was filled with graves,
And tomb-stones where flowers should be:
And Priests in black gowns were walking their rounds,
And binding with briars my joys and desires.
…かつて花が咲き乱れていた場所は墓地になっていた
花は根こそぎ掘り返されて墓石が建てられ
黒いガウンを纏った僧侶が墓地を見張っている
私はまるで茨で縛られたような悲しみを感じたのだ
JacobTV - The Garden of Love
Oboe: Irma Kort
Video: Amber Boardman
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ずっと前にブログで紹介した長尾高弘氏や壺齋散人氏の訳がなんだか気に入らなかったので、自分で訳してみた結果、こんな感じになった。やや現代的に、20代か30代の若い人が詩を作ったらどうなるだろうと試行錯誤すること一時間。最後のパラグラフについては韻を踏むことができなかったが、まあそこまでこだわると言い回しを犠牲にしてしまうことになるので許してくだされ。それなりにまとまった形にできたと自負しているのだが、いかがだろうか。
ラベル:
作品
2010/12/16
山本哲也「チャラサックス」
JacobTV Showの会場で、サクソフォンの由井平太さんのご紹介により、作曲家の山本哲也さんにご挨拶することができた。山本さんは、第27回現音作曲新人賞において、コントラバスとハープのための「誤謬」という作品で最高位を得るなど、ご活躍中である。最近は、声楽で有名な松平敬氏から委嘱を受けるなどしているようだ。
その山本さんが2009年に書いたサクソフォンのための室内楽作品を聴かせてもらった。「チャラサックス」と名付けられたSATBの四重奏のための作品である。
全体を通してお洒落な小品、といった趣。シンコペーションのリズムを多用したややポップス風の部分が置かれ、続いてテナーサクソフォンの牧歌的メロディ(なんだかグラズノフ「四重奏曲」第1楽章の主題に似ている)に導かれて始まる小ワルツ、そして再びポップス風のセクションに戻ってゆくABA構成。最後には、ポップス風主題と牧歌風主題が連結して幕となる。冒頭部分を聴くと、なんだかずいぶんハードな現代音楽か!?と思わせるパルスが聴こえる。これは冒頭部分とポップス風セクションの真ん中に出現するが、なんだかまるで別の曲のように聴こえるのが面白い。最後、転調?したあとの音程感覚を捉えるのが少し難しそう。
演奏上の特殊なテクニックは必要とされず、曲のグルーヴや性格をどのように表現するかは演奏者の手に委ねられているのかなと感じた。私が普段吹いているTsukuba Saxophone Quartetは楽譜に引きずられっぱなしになるような曲しか演奏しないもので、例えばこのような作品を吹くとどんな演奏になるのかな。ちょっと音を出してみようかなあ。
山本さんに許可をいただいて録音を聴けるようにアップロードした。演奏は、由井さんを中心とする昭和音楽大学の四重奏だそうだ。もし演奏したい!と興味がある方は、山本さんに直接お問い合わせいただきたい(ご本人のブログ→http://feblog2009.blog113.fc2.com/)。
山本哲也「チャラサックス」(クリックしてダウンロード)
その山本さんが2009年に書いたサクソフォンのための室内楽作品を聴かせてもらった。「チャラサックス」と名付けられたSATBの四重奏のための作品である。
全体を通してお洒落な小品、といった趣。シンコペーションのリズムを多用したややポップス風の部分が置かれ、続いてテナーサクソフォンの牧歌的メロディ(なんだかグラズノフ「四重奏曲」第1楽章の主題に似ている)に導かれて始まる小ワルツ、そして再びポップス風のセクションに戻ってゆくABA構成。最後には、ポップス風主題と牧歌風主題が連結して幕となる。冒頭部分を聴くと、なんだかずいぶんハードな現代音楽か!?と思わせるパルスが聴こえる。これは冒頭部分とポップス風セクションの真ん中に出現するが、なんだかまるで別の曲のように聴こえるのが面白い。最後、転調?したあとの音程感覚を捉えるのが少し難しそう。
演奏上の特殊なテクニックは必要とされず、曲のグルーヴや性格をどのように表現するかは演奏者の手に委ねられているのかなと感じた。私が普段吹いているTsukuba Saxophone Quartetは楽譜に引きずられっぱなしになるような曲しか演奏しないもので、例えばこのような作品を吹くとどんな演奏になるのかな。ちょっと音を出してみようかなあ。
山本さんに許可をいただいて録音を聴けるようにアップロードした。演奏は、由井さんを中心とする昭和音楽大学の四重奏だそうだ。もし演奏したい!と興味がある方は、山本さんに直接お問い合わせいただきたい(ご本人のブログ→http://feblog2009.blog113.fc2.com/)。
山本哲也「チャラサックス」(クリックしてダウンロード)
ラベル:
作品
2010/12/15
とある方の演奏録音を聴いて…
今日、NHK-FMでラヴェルの「ピアノ協奏曲」を聴いた。ソリストはピエル=ロラン・エマール、シャルル・デュトワ指揮NHK交響楽団のライヴ。さすがに第3楽章はアンサンブルが苦しかったが、全体的には大変見事な演奏。アンコールにまさかジェルジ・リゲティの「ムジカ・リチェルカータ」を聴けるとは思わなかった。
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現在サクソフォンを専攻する音大生だが、すでに各方面で活躍されているとある方の、昔の映像を観る機会があった。ご本人から観せてもらったというわけではなくて、また別の方から提供していただいたものだ。サクソフォンを始めて2年ほどのころに演奏したというモーリス「プロヴァンスの風景」抜粋と、モンティ「チャルダーシュ」、そしてさらに後のクレストン「協奏曲」の第2楽章、そして一番最近のオーケストラとの共演でグラズノフ「協奏曲」という3つの時代にわたるラインナップである。
こういった、あるひとりの奏者の年齢ごとのしっかりした記録というものは、例えばデビュー後には連続的に追うこともできるだろうが、デビュー前の段階的記録はめったなことでは入手しようと思ってもかなわないものであり、とても興味深く観ることができた。その演奏者ご本人というのは、まだプロフェッショナルとして活動を開始しているわけではないが、それでも面白いものは面白い。
現在の姿とは見間違うほどのあどけなさを残したサクソフォン奏者が奏でるモンティというのも粋であるが、それよりもさらに私の耳が惹かれたのは「プロヴァンスの風景」であった。美しい音色…に、誰のものでもない、おそらくこの方自身の音楽。誰のスタイルを真似た、というわけではなく、自分で作ってきた音楽なのだと思う。その傾向はクレストン、そしてグラズノフでも顕著であり、どの時代の演奏を聴いても、オリジナルのスタイルを追求しているように感じることができた。
伺ってみると、例えばピアノや声楽といった方面の勉強も同時並行的に行なっており、そんな音楽的バックグラウンドの大きさとサクソフォンに固まらない視野の大きさが、独自スタイルの追求を可能にしているのかな、などとも思った。サクソフォンだけ知っていても、誰かのサクソフォンを真似ることしかできないからなあ。
今後その方がどういった方向に進んでいくかは、私も知る由もないが、もしサクソフォンの演奏家としての道を歩むとしたときに、例えば20年経ってさらにいくつかの演奏の記録を並べ、一気通貫にその変遷を俯瞰する、というのもまた楽しいことであろう。
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現在サクソフォンを専攻する音大生だが、すでに各方面で活躍されているとある方の、昔の映像を観る機会があった。ご本人から観せてもらったというわけではなくて、また別の方から提供していただいたものだ。サクソフォンを始めて2年ほどのころに演奏したというモーリス「プロヴァンスの風景」抜粋と、モンティ「チャルダーシュ」、そしてさらに後のクレストン「協奏曲」の第2楽章、そして一番最近のオーケストラとの共演でグラズノフ「協奏曲」という3つの時代にわたるラインナップである。
こういった、あるひとりの奏者の年齢ごとのしっかりした記録というものは、例えばデビュー後には連続的に追うこともできるだろうが、デビュー前の段階的記録はめったなことでは入手しようと思ってもかなわないものであり、とても興味深く観ることができた。その演奏者ご本人というのは、まだプロフェッショナルとして活動を開始しているわけではないが、それでも面白いものは面白い。
現在の姿とは見間違うほどのあどけなさを残したサクソフォン奏者が奏でるモンティというのも粋であるが、それよりもさらに私の耳が惹かれたのは「プロヴァンスの風景」であった。美しい音色…に、誰のものでもない、おそらくこの方自身の音楽。誰のスタイルを真似た、というわけではなく、自分で作ってきた音楽なのだと思う。その傾向はクレストン、そしてグラズノフでも顕著であり、どの時代の演奏を聴いても、オリジナルのスタイルを追求しているように感じることができた。
伺ってみると、例えばピアノや声楽といった方面の勉強も同時並行的に行なっており、そんな音楽的バックグラウンドの大きさとサクソフォンに固まらない視野の大きさが、独自スタイルの追求を可能にしているのかな、などとも思った。サクソフォンだけ知っていても、誰かのサクソフォンを真似ることしかできないからなあ。
今後その方がどういった方向に進んでいくかは、私も知る由もないが、もしサクソフォンの演奏家としての道を歩むとしたときに、例えば20年経ってさらにいくつかの演奏の記録を並べ、一気通貫にその変遷を俯瞰する、というのもまた楽しいことであろう。
2010/12/14
Red Line Saxophone Quartet "Back Burner"
ダグラス・オコナー Doug O'Connorといえば、第2回ジャン=マリー・ロンデックス国際サクソフォンコンクールで2位に輝いたことでも有名な奏者である。オコナー氏に関連するキーワードは、例えばイーストマン音楽院であったり、クリスチャン・ロバ「Worksong」の委嘱者であったり、Chien Kwan Linの弟子であったり、Red Line Saxophone Quartetのソプラノ奏者であったり…というところなのだが、そのRed Line SQのCDを入手した。この四重奏団は近年のアメリカの室内楽コンクールで入賞しまくっており、アメリカの次世代を代表する四重奏団となることが期待されている。
「Back Burner(private)」と名付けられたCDは、彼らの実質的デビュー盤。なにが面白いって、あのディヴィッド・マスランカ「レシテーション・ブック」が収録されているのだ!商用録音として同作品をとりあげた団体は、雲井雅人サックス四重奏団に続いて2番目となる。マスランカ氏自身もRed Line SQに対して"...extraordinary. I think that your quartet is now among the very best."との賛辞を寄せており、これは気になる!ということで購入してみた。収録曲目は、以下。ティケリ、マスランカにゴトコフスキーですかい。なんとまあ重いプログラムだ。
Frank Ticheli - Back Burner
William Byrd - Motet: Ave verum corpus
David Maslanka - Recitation Book
Ida Gotkovsky - Quatuor
Jean Matitia - Trap Rag
フランク・ティケリについては、作曲家の名前は有名だが、こんな四重奏曲を書いていたとは知らなかった。しかも作曲されたのは1988年(ずいぶん昔だ…)ということだ。複雑にフレーズが絡み合った高難易度の曲で、下手に触るとヤケドしそうなほどの近寄り難い作品だが、Red Line SQの面々はこの作品を見事に演奏している。さらに、曲に内在するグルーヴをも見事に引き出しており、一曲目からノックアウトされてしまった。ウィリアム・バードのような作品も、手加減なし。音楽の密度はますます高まっていく。
さて、「レシテーション・ブック」だが、あまりに上手すぎてびっくりした。自分たちでも吹いたことがあるせいか、余計にその異常さがわかるのだが、例えば第5楽章のファンファーレとか、その後に続く変奏曲とか、ちょっと人間の域を超えているのではないか、というような楽器のコントロールやアンサンブルを聴くことができる。いやあ、マイッタ。ゴトコフスキーも同じで、どこまでもクール、そしてハイレベル。ただし、個人的な意見としては、マスランカもゴトコフスキーも、自らを演奏の中に没入させたときの感動というものもあると考えるのですよ。ちょーっとだけ、上から目線のようなものを感じてしまって(^^;
ジャン・マティシア「トラップ・ラグ」は、録音としても貴重だ。マティシアのファン(そんな人いるのかな?)は要チェックでしょう。この曲でRed Line SQがタップダンスと共演する様子をYouTubeで観ることができるので、こちらもぜひ。
CDの入手先だが、彼らの公式ページからどうぞ。支払いはPayPalで行うことができる。
「Back Burner(private)」と名付けられたCDは、彼らの実質的デビュー盤。なにが面白いって、あのディヴィッド・マスランカ「レシテーション・ブック」が収録されているのだ!商用録音として同作品をとりあげた団体は、雲井雅人サックス四重奏団に続いて2番目となる。マスランカ氏自身もRed Line SQに対して"...extraordinary. I think that your quartet is now among the very best."との賛辞を寄せており、これは気になる!ということで購入してみた。収録曲目は、以下。ティケリ、マスランカにゴトコフスキーですかい。なんとまあ重いプログラムだ。
Frank Ticheli - Back Burner
William Byrd - Motet: Ave verum corpus
David Maslanka - Recitation Book
Ida Gotkovsky - Quatuor
Jean Matitia - Trap Rag
フランク・ティケリについては、作曲家の名前は有名だが、こんな四重奏曲を書いていたとは知らなかった。しかも作曲されたのは1988年(ずいぶん昔だ…)ということだ。複雑にフレーズが絡み合った高難易度の曲で、下手に触るとヤケドしそうなほどの近寄り難い作品だが、Red Line SQの面々はこの作品を見事に演奏している。さらに、曲に内在するグルーヴをも見事に引き出しており、一曲目からノックアウトされてしまった。ウィリアム・バードのような作品も、手加減なし。音楽の密度はますます高まっていく。
さて、「レシテーション・ブック」だが、あまりに上手すぎてびっくりした。自分たちでも吹いたことがあるせいか、余計にその異常さがわかるのだが、例えば第5楽章のファンファーレとか、その後に続く変奏曲とか、ちょっと人間の域を超えているのではないか、というような楽器のコントロールやアンサンブルを聴くことができる。いやあ、マイッタ。ゴトコフスキーも同じで、どこまでもクール、そしてハイレベル。ただし、個人的な意見としては、マスランカもゴトコフスキーも、自らを演奏の中に没入させたときの感動というものもあると考えるのですよ。ちょーっとだけ、上から目線のようなものを感じてしまって(^^;
ジャン・マティシア「トラップ・ラグ」は、録音としても貴重だ。マティシアのファン(そんな人いるのかな?)は要チェックでしょう。この曲でRed Line SQがタップダンスと共演する様子をYouTubeで観ることができるので、こちらもぜひ。
CDの入手先だが、彼らの公式ページからどうぞ。支払いはPayPalで行うことができる。
ラベル:
CD
2010/12/13
ロバのエチュード
クリスチャン・ロバ Christian Laubaの「エチュード」だが、いつの間にか20番まで完成していたようだ。献呈先が豪華であることで有名なこのエチュード集だが、例えば「Kabuki」はClaude Delangle教授に、「Clouds」はNicolas Prost氏に、「Twins」はÉric DevallonとDamien Royannaisに、それぞれ捧げられている。なんと(笑)すごいなあ。
1~12番、15番以外は聴いたことがなく、しかも気になる作品ばかり。また、ヴェルサヴォーの作品集のように、まとめてリリースされないだろうか。録音だけでなく、もちろん実演でも聴いてみたい!12番以降が日本で演奏されるのは、いつになるのだろうか。
1. Balafon [A.Sax]
2. Savane [A.Sax]
3. Sanza [A.Sax]
4. Jungle [A.Sax]
5. Tadj [S.Sax]
6. Gyn [T.Sax]
7. Vir [T.Sax]
8. Ars [2 S.Sax]
9. Bat [B.Sax]
10. Hard too Hard [T.Sax]
11. Stan [B.Sax & Tape]
12. XYL (Balafon2)
13. Cadenza (for Glazounov's Cocerto) [A.Sax]
14. Massaï [A.Sax & T.Sax]
15. Worksong [A.Sax]
16. Kabuki [S.Sax]
17. Clouds [A.Sax & Tape]
18. Arak [S.Sax]
19. Partita
20. Twins [2 B.Sax]
1~12番、15番以外は聴いたことがなく、しかも気になる作品ばかり。また、ヴェルサヴォーの作品集のように、まとめてリリースされないだろうか。録音だけでなく、もちろん実演でも聴いてみたい!12番以降が日本で演奏されるのは、いつになるのだろうか。
1. Balafon [A.Sax]
2. Savane [A.Sax]
3. Sanza [A.Sax]
4. Jungle [A.Sax]
5. Tadj [S.Sax]
6. Gyn [T.Sax]
7. Vir [T.Sax]
8. Ars [2 S.Sax]
9. Bat [B.Sax]
10. Hard too Hard [T.Sax]
11. Stan [B.Sax & Tape]
12. XYL (Balafon2)
13. Cadenza (for Glazounov's Cocerto) [A.Sax]
14. Massaï [A.Sax & T.Sax]
15. Worksong [A.Sax]
16. Kabuki [S.Sax]
17. Clouds [A.Sax & Tape]
18. Arak [S.Sax]
19. Partita
20. Twins [2 B.Sax]
ラベル:
作品
2010/12/11
ビジネスクラスSEの演奏会
ちょっと前に伺った演奏会の感想を。
【Business Class Saxophone Ensemble 2010 Concert】
出演:Business Class Saxophone Ensemble
日時:2010年12月5日(日曜)15:00開演
会場:台東区生涯学習センター・ミレニアムホール
プログラム:
B.ウィーラン/柏原卓之 - リバーダンス
吉俣良作/島藤 寛 - NHK大河ドラマ「篤姫」よりメインテーマ
秋透編「三つの富山県民謡」より
三浦真理「ティータイムの画集」より
J.リヴィエ - グラーヴェとプレスト
M.ルグラン/大島忠則 - キャラバンの到着
M.ファリャ - バレエ音楽「恋は魔術師」より
S.プロコフィエフ/宇田川不二夫 - バレエ音楽「ロメオとジュリエット」より
P.I.チャイコフスキー/宇田川不二夫 - バレエ音楽「くるみ割り人形」より
いまいちちょうど良いアクセス方法がわからず、鶯谷駅から徒歩で向かったのだが、テナーサックスを担ぎながらもじゅうぶん歩いて行ける距離で良かった。古いお店がたくさんあって、道が入り組んでいて、歩くのは楽しい。ビジネスクラス・サキソフォン・アンサンブル(以下BCSE)のメンバーにはお知り合いも多く、さらに今回はおなじみゆうぽんさんも賛助出演とのことで、客席にも見知った顔がたくさん。
ミレニアム・ホールは初めてだったが、高天井の木のホールで、響きの美しさに惚れぼれしながら一曲一曲を楽しむことができた。ちなみに普段のBCSEのコンセプチュアルな選曲とは相反して、一見すると無作為にも見えるが、実はこれまでの演奏会で取り上げた曲からピックアップした結果なのだそうだ。演奏会は今回が9回目であり「10回目につなげていきたい」との思いがあった、ということをMCで聞いたような。
演奏が素晴らしいことは言うまでもないが、団体名の由来ともなっている活動理念(?)をそのまま感じた。アマチュアだから、アマチュアらしく、といったことは一切考えず、選曲も演奏も何もかも目指している部分はずっと上のほうなのだ。それが目指すだけでなく、きちんと具現化されているところも凄くて、大いに共感し見習っていきたいと考える。まずは私たちもこういった境地に辿りつきたいなあ。
次の予定があったため、チャイコフスキーを聴けずに失礼しなければならなかったのがちょっと残念。
【Business Class Saxophone Ensemble 2010 Concert】
出演:Business Class Saxophone Ensemble
日時:2010年12月5日(日曜)15:00開演
会場:台東区生涯学習センター・ミレニアムホール
プログラム:
B.ウィーラン/柏原卓之 - リバーダンス
吉俣良作/島藤 寛 - NHK大河ドラマ「篤姫」よりメインテーマ
秋透編「三つの富山県民謡」より
三浦真理「ティータイムの画集」より
J.リヴィエ - グラーヴェとプレスト
M.ルグラン/大島忠則 - キャラバンの到着
M.ファリャ - バレエ音楽「恋は魔術師」より
S.プロコフィエフ/宇田川不二夫 - バレエ音楽「ロメオとジュリエット」より
P.I.チャイコフスキー/宇田川不二夫 - バレエ音楽「くるみ割り人形」より
いまいちちょうど良いアクセス方法がわからず、鶯谷駅から徒歩で向かったのだが、テナーサックスを担ぎながらもじゅうぶん歩いて行ける距離で良かった。古いお店がたくさんあって、道が入り組んでいて、歩くのは楽しい。ビジネスクラス・サキソフォン・アンサンブル(以下BCSE)のメンバーにはお知り合いも多く、さらに今回はおなじみゆうぽんさんも賛助出演とのことで、客席にも見知った顔がたくさん。
ミレニアム・ホールは初めてだったが、高天井の木のホールで、響きの美しさに惚れぼれしながら一曲一曲を楽しむことができた。ちなみに普段のBCSEのコンセプチュアルな選曲とは相反して、一見すると無作為にも見えるが、実はこれまでの演奏会で取り上げた曲からピックアップした結果なのだそうだ。演奏会は今回が9回目であり「10回目につなげていきたい」との思いがあった、ということをMCで聞いたような。
演奏が素晴らしいことは言うまでもないが、団体名の由来ともなっている活動理念(?)をそのまま感じた。アマチュアだから、アマチュアらしく、といったことは一切考えず、選曲も演奏も何もかも目指している部分はずっと上のほうなのだ。それが目指すだけでなく、きちんと具現化されているところも凄くて、大いに共感し見習っていきたいと考える。まずは私たちもこういった境地に辿りつきたいなあ。
次の予定があったため、チャイコフスキーを聴けずに失礼しなければならなかったのがちょっと残念。
2010/12/10
グラズノフ「協奏曲」New Edition予約再開
アレクサンドル・グラズノフ「サクソフォン協奏曲」のカリーナ・ラッシャー Carina Rascher監修版の楽譜(Baerenreiter BA 8732a)だが、ようやく出版の目途がついたようだ。Amazonでも予約が再度開始されている(→Konzert fuer Altsaxophon und Streichorchester)ほか、本家Baerenreiter、Eble Music等でも取り扱いを開始している。この新版については、これまでもたびたびブログ上で話題に取り上げてきた。
グラズノフのカリーナ・ラッシャー監修版がリリース?
グラズノフ「協奏曲」カリーナ・ラッシャー監修版
グラズノフのカリーナ・ラッシャー監修版出版予定
「なんだそりゃ」とお思いの方に簡単に説明しておく。サクソフォン協奏曲の傑作のひとつ、グラズノフが最晩年に書いた「サクソフォン協奏曲」は、サクソフォン界で最も有名な作品であるにもかかわらず謎に包まれた部分が多い。自筆譜からの楽譜の変更、A.Petiotとは誰か、作品番号が誤って付けられたのはなぜか、成立におけるLeduc社の役割は何だったか、ラッシャーの役割は何だったか…。これら一連の疑問については、日本サクソフォーン協会の機関誌「サクソフォニスト Vol.22」に寄せた私の記事を読んでいただければと思うが、それらに決着を与えるきっかけとなるであると期待されているのが、この楽譜なのである。
シガード・ラッシャー(この曲の献呈先)の娘、カリーナ・ラッシャー Carina Rascherが監修したということで、自筆譜に忠実な楽譜が収録されるほか、貴重な情報が満載とのこと。さらに充実した内容を目指したため発売が遅延したが、ご覧の説明通り、まさに全サクソフォン奏者必携の内容となりそうだ。来年あたりは、このバージョンでの演奏がブームになりそうだなー…というか、このバージョンの日本初演をするのは誰になるだろうか!?
・自筆スコアに忠実な楽譜
・自筆譜の複製と、ラッシャーがつけた演奏上の注釈
・作品成立に当たりラッシャーとグラズノフの間で交わされた書簡集
・弦楽オーケストラのオススメ編成
・カデンツのフルバージョン、ショートバージョン、作曲家も演奏許可したラッシャーのバージョン
グラズノフのカリーナ・ラッシャー監修版がリリース?
グラズノフ「協奏曲」カリーナ・ラッシャー監修版
グラズノフのカリーナ・ラッシャー監修版出版予定
「なんだそりゃ」とお思いの方に簡単に説明しておく。サクソフォン協奏曲の傑作のひとつ、グラズノフが最晩年に書いた「サクソフォン協奏曲」は、サクソフォン界で最も有名な作品であるにもかかわらず謎に包まれた部分が多い。自筆譜からの楽譜の変更、A.Petiotとは誰か、作品番号が誤って付けられたのはなぜか、成立におけるLeduc社の役割は何だったか、ラッシャーの役割は何だったか…。これら一連の疑問については、日本サクソフォーン協会の機関誌「サクソフォニスト Vol.22」に寄せた私の記事を読んでいただければと思うが、それらに決着を与えるきっかけとなるであると期待されているのが、この楽譜なのである。
シガード・ラッシャー(この曲の献呈先)の娘、カリーナ・ラッシャー Carina Rascherが監修したということで、自筆譜に忠実な楽譜が収録されるほか、貴重な情報が満載とのこと。さらに充実した内容を目指したため発売が遅延したが、ご覧の説明通り、まさに全サクソフォン奏者必携の内容となりそうだ。来年あたりは、このバージョンでの演奏がブームになりそうだなー…というか、このバージョンの日本初演をするのは誰になるだろうか!?
This score contains the original version of the work without the alterations which were made in the proofs to the orchestral score as well as the full version of the composer's cadenza which was later shortened. The autograph manuscript also contains some performance markings by Raschèr. The correspondence between Raschèr and Glazunov documents the composer's thoughts on the work and his recommendations about the size of the accompanying string orchestra. Evidence from this correspondence has been integrated into this edition. This first scholarly-critical edition of a work by Glazunov contains an informative introduction with commentaries about the history of its composition, facsimiles and a critical commentary. The solo part includes both the complete and the shortened version of the cadenza as well as a cadenza by Raschèr which the composer authorised.
・自筆スコアに忠実な楽譜
・自筆譜の複製と、ラッシャーがつけた演奏上の注釈
・作品成立に当たりラッシャーとグラズノフの間で交わされた書簡集
・弦楽オーケストラのオススメ編成
・カデンツのフルバージョン、ショートバージョン、作曲家も演奏許可したラッシャーのバージョン
ラベル:
楽譜
2010/12/09
ルデューSQ@Calliope
ジャン・ルデュー四重奏団のCDを久々に聴いた。その昔、イィンドジフ・フェルド Jindrich Feldの「四重奏曲」を吹くときに参考にした演奏で、おなじみmckenさんからお借りしてMDに録音してあったものである(Calliope CAL 9238)。
P.M.デュボワ「四重奏と管弦楽のための協奏曲」
R.カルメル「合奏協奏曲(コンチェルト・グロッソ)」
J.リヴィエ「グラーヴェとプレスト」
J.フェルド「四重奏曲」
ジャン・ルデュー Jean Ledieuは私が世界一好きなバリトン・サクソフォン奏者。デファイエ四重奏団のバリトン奏者としての活動を1988に終えたあと、自身の名を冠し、自らの子の世代とともにルデュー四重奏団を結成し、さらに10年以上に渡って活動を継続した。ちなみに、ソプラノサクソフォンはあのファブリス・モレティ氏である。確認できる最新の商用リリース録音は、2003年に録音されたリュエフ他が収録されているCD。時にルデュー氏、73才。ところで現在は活動しているのだろうか?
そんなルデュー四重奏団だが、吹き込まれたいずれのCDも素晴らしいと感じる。珠玉の出来を誇るサンジュレ他が収録されたファーストアルバム(Opus)、上にチラと書いた最新アルバム、そしてこのオーケストラとの共演アルバムである。少し珍しいところだと、ガスパリアンの室内楽作品集なんてのもあったかな。持っていないけど。
サックス四重奏+オーケストラという編成では著名なデュボワ、カルメルに、こちらは純粋な四重奏曲であるリヴィエ、フェルド。ワインのごとき芳醇な音色(ちょっとサックスの音場が近いのが気になる)、キラキラの才気に満ち溢れたエスプリ、もちろんベースとなる技術もしっかりしている。
デュボワ、カルメルは、キャトル・ロゾーの25周年記念盤にも収録されており、聴き比べてみるのも一興(キャトル・トゾーはライヴ録音)。デュボワは、個人的には四重奏版よりも面白い要素が満載だと感じる…第2楽章の魅せ方など、およそ後からオーケストラパートをつけたとは思えない。さらにその曲としての面白さに、演奏の魅力が加わるのだ。フェルドは珍しい作品であり、CD録音されることは稀。私もこの録音以外にはフルモー四重奏団の録音くらいしか持っておらず、個人的な考えではもっと多くのカルテットに取り上げて欲しいと考えている。曲が要求する精緻一辺倒というわけにはいかないが、この温かみもルデュー四重奏団の魅力かな。
P.M.デュボワ「四重奏と管弦楽のための協奏曲」
R.カルメル「合奏協奏曲(コンチェルト・グロッソ)」
J.リヴィエ「グラーヴェとプレスト」
J.フェルド「四重奏曲」
ジャン・ルデュー Jean Ledieuは私が世界一好きなバリトン・サクソフォン奏者。デファイエ四重奏団のバリトン奏者としての活動を1988に終えたあと、自身の名を冠し、自らの子の世代とともにルデュー四重奏団を結成し、さらに10年以上に渡って活動を継続した。ちなみに、ソプラノサクソフォンはあのファブリス・モレティ氏である。確認できる最新の商用リリース録音は、2003年に録音されたリュエフ他が収録されているCD。時にルデュー氏、73才。ところで現在は活動しているのだろうか?
そんなルデュー四重奏団だが、吹き込まれたいずれのCDも素晴らしいと感じる。珠玉の出来を誇るサンジュレ他が収録されたファーストアルバム(Opus)、上にチラと書いた最新アルバム、そしてこのオーケストラとの共演アルバムである。少し珍しいところだと、ガスパリアンの室内楽作品集なんてのもあったかな。持っていないけど。
サックス四重奏+オーケストラという編成では著名なデュボワ、カルメルに、こちらは純粋な四重奏曲であるリヴィエ、フェルド。ワインのごとき芳醇な音色(ちょっとサックスの音場が近いのが気になる)、キラキラの才気に満ち溢れたエスプリ、もちろんベースとなる技術もしっかりしている。
デュボワ、カルメルは、キャトル・ロゾーの25周年記念盤にも収録されており、聴き比べてみるのも一興(キャトル・トゾーはライヴ録音)。デュボワは、個人的には四重奏版よりも面白い要素が満載だと感じる…第2楽章の魅せ方など、およそ後からオーケストラパートをつけたとは思えない。さらにその曲としての面白さに、演奏の魅力が加わるのだ。フェルドは珍しい作品であり、CD録音されることは稀。私もこの録音以外にはフルモー四重奏団の録音くらいしか持っておらず、個人的な考えではもっと多くのカルテットに取り上げて欲しいと考えている。曲が要求する精緻一辺倒というわけにはいかないが、この温かみもルデュー四重奏団の魅力かな。
ラベル:
CD
2010/12/08
最近の、そしてこれからのTsukuba Saxophone Quartet
Tsukuba Saxophone Quartetは、2011年5月22日の演奏会に向け、選曲をほぼ完了して練習を進めている。その他、協会のコンクールにも出場したいし(これは録音審査を通らないと)、第2回のサクソフォン交流会にも出るし、温めてきた活動のアイデアが来年からいろいろと実現してゆくことになる。
私なんかは、昔から一貫して「丁寧な演奏」「知られていないレパートリーの紹介」を目指しているのだが、たぶんメンバーがそれぞれ考えているTsukuba Saxophone Quartetの未来は違っていて、それぞれの役割も違っており、だがしかしそんな状態が良いのかなあなんて考えている。
ちなみに次の演奏会、だいぶ面白いプログラムになりそう。"New Standards for Saxophone Quartet"と言ってしまっても良いくらいの、知られていない曲かつ素敵な曲ばかり。期待してお待ちください。
私なんかは、昔から一貫して「丁寧な演奏」「知られていないレパートリーの紹介」を目指しているのだが、たぶんメンバーがそれぞれ考えているTsukuba Saxophone Quartetの未来は違っていて、それぞれの役割も違っており、だがしかしそんな状態が良いのかなあなんて考えている。
ちなみに次の演奏会、だいぶ面白いプログラムになりそう。"New Standards for Saxophone Quartet"と言ってしまっても良いくらいの、知られていない曲かつ素敵な曲ばかり。期待してお待ちください。
ラベル:
演奏
2010/12/06
JacobTV Show@原宿VACANT
【JacobTV Show】
出演:大石将紀、西本淳、江川良子、冨岡祐子(以上sax)、有馬純寿(sound ope)
日時:2010年12月1日(水)19:00開演
会場:VACANT
プログラム(全てJacobTV作品):
Pitch Black
Postnuclear Winterscenario No.10
White Flag No.4
Grab It!
KAKU
Syracuse Blues
BUKU
The Garden of Love
The Body of Your Dreams
Broken Dreams(アンコール)
だいぶ時間も経ってしまったが、12/1に原宿VACANTで行われたJacobTV Showについて感想というかレポートというか…を書いていく。まず最初にひとつ、本当にエキサイティングな経験であった、ということを言っておきたい。ニューヨークをはじめとして世界中でJacobTVのポートレートコンサートが開かれているが、当然ながら日本国内では初めての試み。私はJacobTV作品の大ファンであるので、それはもう期待・期待・期待という感じで伺ったのだが、その期待を超える素晴らしい一夜であった。
「この演奏会を聴けて良かった!」とは、なかなか心から思えるものではないが、演奏会が終わって渋谷駅に向かって歩いているときの満足感・充足感といったらなかった。この催しに携わった全ての関係者に、まずは心より御礼申し上げたい。
さて、それでは当日の様子を。竹下通りを抜けた先にあるVACANTだが、この日は大盛況。あまりに人が来すぎて受付手続が追いつかず、なんと40分遅れてのスタートとなった(さすがにその段取りの悪さはどうかと思ったのだが、続く演奏でそんな不満も打ち消されてしまった)。会場内はこの写真に示すように長い椅子に観客が向い合って座り、前と後で演奏が行われる、といったふう。必ず右か左かを向いて演奏を楽しむことになる。
最初は「Pitch Black」。おそらく、日本で初めて演奏されたJacobTVのBOOMBOX作品である。大石将紀さんもその日本初演に携わっていたそうだ。ブルージーなサクソフォンの音運びをこれでもかと表現する4本のサクソフォン。そして音響とのバランスの良さ(有馬氏の手腕による部分が大きいのだろう)。さらに四重奏での演奏が続くが、「Postnuclear Winterscenario」のようなゆっくりとした曲でも、音楽の流れはますます濃密となり、聴き手を惹きつけていた。
前半最後は「Grab It!」を大石氏のソロで。これがめちゃくちゃかっこよかった!実演で聴いた「Grab It!」のなかでは、これまでで最高の演奏だったかもしれない。サウンドトラックとの完璧なリズムの一致、ハードな音色の変化など、演奏後には客席も大盛り上がりだった。
後半は、日本語の某大物政治家のスピーチを利用した「KAKU」から。主張もかなり激しい内容なのだが、それをコラージュしてしまえばあっという間にJacobTVの音楽へと早変わり。西本淳さんはなんとバスドラムをたたきまくる。さすがに客席も沸いたなあ(笑)これは、ビデオと一緒に観れば、さらに楽しいぞ。「Syracuse Blues」も楽譜からはどんな曲であるか想像がつかなかったのだが、演奏の完成度と相まってちょっと感動的なほどのメッセージ性を備えた演奏に仕上がっていた。
アルトサックスとゲットブラスターの「BUKU」は、まるでサウンドプロセッシングされているかのような音響バランスの取り方。これはサクソフォンもかなり技巧的に難しいが、こちらも完璧…(ブーレーズ作品を吹いてしまうような大石氏のことだから、向かうところ敵なしなのだろう笑)。聴いている間、鳥肌が立ちっぱなしであった。最後は、健康ベルトのCMを題材にした「Body of Your Dreams」。うーん、日本のテレビショッピングをJacobTVにミックスして欲しい(笑)。
「Body of Your Dreams」に続くアンコールに「Broken Dreams」、という選曲もエスプリが効いていて素晴らしかった(^^;ということで、とても充実した演奏会だった。今後もますますJacobTVの作品が日本国内で認知されていくと良いな。
出演:大石将紀、西本淳、江川良子、冨岡祐子(以上sax)、有馬純寿(sound ope)
日時:2010年12月1日(水)19:00開演
会場:VACANT
プログラム(全てJacobTV作品):
Pitch Black
Postnuclear Winterscenario No.10
White Flag No.4
Grab It!
KAKU
Syracuse Blues
BUKU
The Garden of Love
The Body of Your Dreams
Broken Dreams(アンコール)
だいぶ時間も経ってしまったが、12/1に原宿VACANTで行われたJacobTV Showについて感想というかレポートというか…を書いていく。まず最初にひとつ、本当にエキサイティングな経験であった、ということを言っておきたい。ニューヨークをはじめとして世界中でJacobTVのポートレートコンサートが開かれているが、当然ながら日本国内では初めての試み。私はJacobTV作品の大ファンであるので、それはもう期待・期待・期待という感じで伺ったのだが、その期待を超える素晴らしい一夜であった。
「この演奏会を聴けて良かった!」とは、なかなか心から思えるものではないが、演奏会が終わって渋谷駅に向かって歩いているときの満足感・充足感といったらなかった。この催しに携わった全ての関係者に、まずは心より御礼申し上げたい。
さて、それでは当日の様子を。竹下通りを抜けた先にあるVACANTだが、この日は大盛況。あまりに人が来すぎて受付手続が追いつかず、なんと40分遅れてのスタートとなった(さすがにその段取りの悪さはどうかと思ったのだが、続く演奏でそんな不満も打ち消されてしまった)。会場内はこの写真に示すように長い椅子に観客が向い合って座り、前と後で演奏が行われる、といったふう。必ず右か左かを向いて演奏を楽しむことになる。
最初は「Pitch Black」。おそらく、日本で初めて演奏されたJacobTVのBOOMBOX作品である。大石将紀さんもその日本初演に携わっていたそうだ。ブルージーなサクソフォンの音運びをこれでもかと表現する4本のサクソフォン。そして音響とのバランスの良さ(有馬氏の手腕による部分が大きいのだろう)。さらに四重奏での演奏が続くが、「Postnuclear Winterscenario」のようなゆっくりとした曲でも、音楽の流れはますます濃密となり、聴き手を惹きつけていた。
前半最後は「Grab It!」を大石氏のソロで。これがめちゃくちゃかっこよかった!実演で聴いた「Grab It!」のなかでは、これまでで最高の演奏だったかもしれない。サウンドトラックとの完璧なリズムの一致、ハードな音色の変化など、演奏後には客席も大盛り上がりだった。
後半は、日本語の某大物政治家のスピーチを利用した「KAKU」から。主張もかなり激しい内容なのだが、それをコラージュしてしまえばあっという間にJacobTVの音楽へと早変わり。西本淳さんはなんとバスドラムをたたきまくる。さすがに客席も沸いたなあ(笑)これは、ビデオと一緒に観れば、さらに楽しいぞ。「Syracuse Blues」も楽譜からはどんな曲であるか想像がつかなかったのだが、演奏の完成度と相まってちょっと感動的なほどのメッセージ性を備えた演奏に仕上がっていた。
アルトサックスとゲットブラスターの「BUKU」は、まるでサウンドプロセッシングされているかのような音響バランスの取り方。これはサクソフォンもかなり技巧的に難しいが、こちらも完璧…(ブーレーズ作品を吹いてしまうような大石氏のことだから、向かうところ敵なしなのだろう笑)。聴いている間、鳥肌が立ちっぱなしであった。最後は、健康ベルトのCMを題材にした「Body of Your Dreams」。うーん、日本のテレビショッピングをJacobTVにミックスして欲しい(笑)。
「Body of Your Dreams」に続くアンコールに「Broken Dreams」、という選曲もエスプリが効いていて素晴らしかった(^^;ということで、とても充実した演奏会だった。今後もますますJacobTVの作品が日本国内で認知されていくと良いな。
2010/12/05
JacobTV氏レクチャー(質疑応答)
うーむ、ブログに書きたいことが溜まっているぞ。JacobTV Showのレポートもまだだし、今日はBCSEの演奏会に伺って、さらにその後練習だったし…。
というわけで、ひとつひとつ書いていくしかない。今日はJacobTVレクチャーの質疑応答の部分。最初の質問と最後の質問は、私が投げかけたものであるが、特に最初の質問は私が長年の間疑問に思っていたことだ。訊くことができて良かった!
----------
[Q] あなたが音楽に織り込んでいる音素材は、かなり極端な主張を含んでいるものが多いが、これらの内容はあなた自身の主張でもあるのか?
[A] 今日の午後の池谷薫監督のレクチャーを聞いていたら私の考えがもう少しわかりやすかったかもしれないが、池谷監督は自身が制作するドキュメンタリーの中で何かを主張することを好まない、と話していた。私も同じような考え方である。私は作品の中で何かを説いたり、何かを主張したりということは好まず意識的に避けている。
私は我々を取り巻くこの世界のことをとても面白いと考えており、またインスピレーションを受けている。だが、一方で私はこの世界のことを全て知っているわけではないし、誰も本当のことを知っている人はいないと考えている。
私はそういった世界で話されるスピーチのうち極端なものを取り上げて作品にしている。ベルルスコーニ首相やBroken Dreamsの素材となった宣教師など、極端な意見をしゃべる人たちは感情の高まりを表に出してスピーチを行っており、それこそが私の興味の対象である(だから、プーチン大統領は素材としては面白いと思わない)。
[Q] 今までインスピレーションを受けたアーティストはいるか?
[A] はい、プラスの意味でもマイナスの意味でも。現在、多くのアーティストが腐敗し、世の中は衰え、苦しみあっている、痛みあっている。Paradisoでは、命を保って生きて行くことの素晴らしさを訴えたいと思ってたが、むしろ生きていくことは苦しみと表裏一体である、ということがわかった。ある意味では現実逃避的な作品である、とも言えるだろう。
これで答えになっているだろうか?
[Q] あなたの作品に付随する映像について、専門のスタッフがいるのか?
[A] 知り合いに映像作家・ドキュメンタリー作家が多いので、恵まれた立場にいると思う。私の作品がドキュメンタリーとしてまとめられたこともあるし、時には私の周りを撮影チームがずっと付いて回る、といったこともある。
ということで、ビデオのための素材(マテリアル)はたくさんあるが、さらに私はいつもカメラを持ち歩いている(あとで使うことがあるかもしれない)。リヒャルト・ワグナーのように全て自分でできてしまえば良いが、そうはいかないため、映像に関しては専門家の力添えを受けている。
[Q] Boombox Musicについて、小さい空間 or 大きい空間など、どのような場所で演奏されることを好むか?
[A] Boomboxはスケールが小さいものに限定されると考えている(高々2、3の楽器とラジカセの組み合わせであるから)。
先週日本の女性のサックス奏者が、演奏した映像を見せてくれた:浜辺でboombox Musicを演奏していて、近くでアクション・ペインティングを行っている。周りの人は通りすぎていったり、たまに足を止めて聴いたり、という状況だが、これをとても素晴らしいと感じた。逆に、チャロとBoomboxの組み合わせで教会などで演奏すると、反響で音が分からなくなってしまうため、あまり合わないと思う。
だが、Boomboxの良いところは、持ち運び可能でボタンを押せば演奏できるというところだ(日本のカラオケに似ている)。つまりストリートでも聴いて・体験してもらえることができるということで、私は作曲のアカデミックな勉強もしたけれど、音楽はストリートへと飛び出すべきものである、と考えている。
というわけで、ひとつひとつ書いていくしかない。今日はJacobTVレクチャーの質疑応答の部分。最初の質問と最後の質問は、私が投げかけたものであるが、特に最初の質問は私が長年の間疑問に思っていたことだ。訊くことができて良かった!
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[Q] あなたが音楽に織り込んでいる音素材は、かなり極端な主張を含んでいるものが多いが、これらの内容はあなた自身の主張でもあるのか?
[A] 今日の午後の池谷薫監督のレクチャーを聞いていたら私の考えがもう少しわかりやすかったかもしれないが、池谷監督は自身が制作するドキュメンタリーの中で何かを主張することを好まない、と話していた。私も同じような考え方である。私は作品の中で何かを説いたり、何かを主張したりということは好まず意識的に避けている。
私は我々を取り巻くこの世界のことをとても面白いと考えており、またインスピレーションを受けている。だが、一方で私はこの世界のことを全て知っているわけではないし、誰も本当のことを知っている人はいないと考えている。
私はそういった世界で話されるスピーチのうち極端なものを取り上げて作品にしている。ベルルスコーニ首相やBroken Dreamsの素材となった宣教師など、極端な意見をしゃべる人たちは感情の高まりを表に出してスピーチを行っており、それこそが私の興味の対象である(だから、プーチン大統領は素材としては面白いと思わない)。
[Q] 今までインスピレーションを受けたアーティストはいるか?
[A] はい、プラスの意味でもマイナスの意味でも。現在、多くのアーティストが腐敗し、世の中は衰え、苦しみあっている、痛みあっている。Paradisoでは、命を保って生きて行くことの素晴らしさを訴えたいと思ってたが、むしろ生きていくことは苦しみと表裏一体である、ということがわかった。ある意味では現実逃避的な作品である、とも言えるだろう。
これで答えになっているだろうか?
[Q] あなたの作品に付随する映像について、専門のスタッフがいるのか?
[A] 知り合いに映像作家・ドキュメンタリー作家が多いので、恵まれた立場にいると思う。私の作品がドキュメンタリーとしてまとめられたこともあるし、時には私の周りを撮影チームがずっと付いて回る、といったこともある。
ということで、ビデオのための素材(マテリアル)はたくさんあるが、さらに私はいつもカメラを持ち歩いている(あとで使うことがあるかもしれない)。リヒャルト・ワグナーのように全て自分でできてしまえば良いが、そうはいかないため、映像に関しては専門家の力添えを受けている。
[Q] Boombox Musicについて、小さい空間 or 大きい空間など、どのような場所で演奏されることを好むか?
[A] Boomboxはスケールが小さいものに限定されると考えている(高々2、3の楽器とラジカセの組み合わせであるから)。
先週日本の女性のサックス奏者が、演奏した映像を見せてくれた:浜辺でboombox Musicを演奏していて、近くでアクション・ペインティングを行っている。周りの人は通りすぎていったり、たまに足を止めて聴いたり、という状況だが、これをとても素晴らしいと感じた。逆に、チャロとBoomboxの組み合わせで教会などで演奏すると、反響で音が分からなくなってしまうため、あまり合わないと思う。
だが、Boomboxの良いところは、持ち運び可能でボタンを押せば演奏できるというところだ(日本のカラオケに似ている)。つまりストリートでも聴いて・体験してもらえることができるということで、私は作曲のアカデミックな勉強もしたけれど、音楽はストリートへと飛び出すべきものである、と考えている。
ラベル:
作曲家
2010/12/04
JacobTV氏レクチャー(後半)
JacobTVのレクチャー、後半の内容をまとめた。この次は質疑応答。
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* White Flag
- ドキュメンタリーをミックスした例
♪White Flag(ホイットニー美術館で行われた3日間のライヴより)
- ドキュメンタリー内での告白(シリアスな内容)
「動くものは…男も、女も、犬も、子供も、猫も…何であろうと、撃ち殺せ」と言われた。私たち兵士は、とにかくその命令のとおりに行動したんだ。
ある町での戦闘の合間のことだ。遠くから、ブルカ(イスラム圏の女性の黒い衣装)を纏い、腕にバッグを持った女性がこちらに向かってくるのが見えた。戦闘用車両に乗っていた兵士は、彼女に向かって「止まれ!さもなくば撃つぞ!」と警告したが、いくら警告しても彼女は近づくことをやめないのだ。
彼女が150ヤード(137メートル)くらいまで近づいた時、私は確信した。「彼女はこの車両に近づいて、自爆するつもりだ。」すぐさま銃を構えて放った2発の銃弾のうち、一発が彼女に当たった。ほんの僅かの間の出来事だった。続いて仲間の兵士が40ミリ口径のマシンガンを放った。
何発もの弾丸を受けた彼女は地面へと倒れこみ、バッグの中から…白旗を…そう、爆弾でもなく、銃でもなく、白旗(White Flag)を取り出したのだ。
私は銃を捨て、ただひたすらに泣くしかなかった。
* Body of Your Dreams
- Funnyなものを素材として使うこともある
o 腹筋を鍛える装置(10分間に3000回の振動)のCMをミックス
o ピアニストのアンディ・ラッセルは、ボディビルダーでもある
♪The Body of Your Dreams
- CMの内容「興奮した口調で、理想の体を汗をかかずに苦労せずに手に入れられる!」
- このCMの口調を大げさに私の作品に応用してみた
* Heartbreakers
- JacobTVバンド
- スクリーンを使って、視覚的にも訴える
- アメリカのトーク番組に出演していた、ドラッグ中毒の売春婦たちの声をミックス
♪Heartbreakers
* Cities change the Song of Birds
- サンプリングしているのは、社会のギリギリの端のところで生きている人たち…ドラッグ中毒者、ホームレスの声
- タイトルの意味:都会に生きる鳥たちは、お互いの声でなく、車のクラクションの声を真似る
♪Cities change the Song of Birds
* ライヴ演奏
- 特別ゲスト:大石将紀氏
o NHKでThe Garden of Loveが放映された
- The Garden of Love
o ウィリアム・ブレイクの詩に基づく作品
o メタファーは「死、愛、宗教」
♪The Garden of Love(大石将紀氏によるライヴ・パフォーマンス)
- アンブラ・ボートン氏の新作ビデオ
- 水曜日に、VACANTで大石将紀氏のJacobTV SHOWが開催
* Paradiso
- 大きなオラトリオ作品
- 奇しくも、初演は同時多発テロ9/11の次の日となった
o 苦しむことのない作品を書こうと考えて生み出したが、その考えとは程遠い状況の中で初演された
- 13世紀イタリアのダンテ「新曲」
o 地獄から、煉獄を経て、最終的に愛しのベアトリーチェとともに天国へ向かう物語
- Aurora
o Auroraでは、2つの太陽が海の上で日の出を迎えている
o 煉獄の山を登っているダンテは、ベアトリーチェが自分を呼ぶ声をどこからか聞く
♪ParadisoよりAurora
- Nirvana
o 3つの円がひとつの中心に接し、その円の中に世界の全ての苦しみが映しだされている→視覚化
♪ParasidoよりNirvana
- 天国を描写
o Heaven on Earth
o Heaven of Religion
o Garden of Eden
o Heaven of Love
- 一年ほどかけて完成させたが、終わったところで満足できなかった
- 結局は私が表現しようとした世界(苦しみのない世界)は存在しないのではないか、と感じた
* The NEWS
- 新しいオペラ作品
o 絶対に完成しない:何年もかけて進めていくプロジェクト
o シカゴで公開放送のスタジオを通りかかり、インスピレーションを受けた
o 音素材のターゲット…政治家や評論家すべて…が歌手だったら素敵だろうと考えた
- アメリカの政治家、サラ・ペイリンが政治について語っているテレビ番組をリミックス
- 映像はJacobTVの奥様、クリスティンによるもの
♪The NEWSよりサラ・ペイリンのアリア
♪The NEWSよりウォール・ストリートの暴落を伝えるキャスターたち
♪The NEWSよりイタリア首相ベルルスコーニのアリア
- ベルルスコーニの主張「自由は存在しなくなった」
o ある意味では現代を象徴している
o 道徳となになのか、経済は後退、神は死んだ
- JacobTVが目指すもの
o 全てが流動的な時代のなかで、自分たちは正しいと思っている人たち(ニュースキャスターやベルルスコーニ首相)の声をミックスすることに価値があると考える
- このオペラのオープニング:Broken Dreamsを最後に…
o アメリカの宗教家→福音派、やや原理主義的傾向
o 宗教家たちが、テレビを通じて主張を繰り広げている
o 宗教家たちが主張する内容:何もかもが壊れた時代に生きている、家族も壊れていく、経済も壊れている、全てが壊れている
♪Broken Dreams
…「質疑応答」に続く。
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* White Flag
- ドキュメンタリーをミックスした例
♪White Flag(ホイットニー美術館で行われた3日間のライヴより)
- ドキュメンタリー内での告白(シリアスな内容)
「動くものは…男も、女も、犬も、子供も、猫も…何であろうと、撃ち殺せ」と言われた。私たち兵士は、とにかくその命令のとおりに行動したんだ。
ある町での戦闘の合間のことだ。遠くから、ブルカ(イスラム圏の女性の黒い衣装)を纏い、腕にバッグを持った女性がこちらに向かってくるのが見えた。戦闘用車両に乗っていた兵士は、彼女に向かって「止まれ!さもなくば撃つぞ!」と警告したが、いくら警告しても彼女は近づくことをやめないのだ。
彼女が150ヤード(137メートル)くらいまで近づいた時、私は確信した。「彼女はこの車両に近づいて、自爆するつもりだ。」すぐさま銃を構えて放った2発の銃弾のうち、一発が彼女に当たった。ほんの僅かの間の出来事だった。続いて仲間の兵士が40ミリ口径のマシンガンを放った。
何発もの弾丸を受けた彼女は地面へと倒れこみ、バッグの中から…白旗を…そう、爆弾でもなく、銃でもなく、白旗(White Flag)を取り出したのだ。
私は銃を捨て、ただひたすらに泣くしかなかった。
* Body of Your Dreams
- Funnyなものを素材として使うこともある
o 腹筋を鍛える装置(10分間に3000回の振動)のCMをミックス
o ピアニストのアンディ・ラッセルは、ボディビルダーでもある
♪The Body of Your Dreams
- CMの内容「興奮した口調で、理想の体を汗をかかずに苦労せずに手に入れられる!」
- このCMの口調を大げさに私の作品に応用してみた
* Heartbreakers
- JacobTVバンド
- スクリーンを使って、視覚的にも訴える
- アメリカのトーク番組に出演していた、ドラッグ中毒の売春婦たちの声をミックス
♪Heartbreakers
* Cities change the Song of Birds
- サンプリングしているのは、社会のギリギリの端のところで生きている人たち…ドラッグ中毒者、ホームレスの声
- タイトルの意味:都会に生きる鳥たちは、お互いの声でなく、車のクラクションの声を真似る
♪Cities change the Song of Birds
* ライヴ演奏
- 特別ゲスト:大石将紀氏
o NHKでThe Garden of Loveが放映された
- The Garden of Love
o ウィリアム・ブレイクの詩に基づく作品
o メタファーは「死、愛、宗教」
♪The Garden of Love(大石将紀氏によるライヴ・パフォーマンス)
- アンブラ・ボートン氏の新作ビデオ
- 水曜日に、VACANTで大石将紀氏のJacobTV SHOWが開催
* Paradiso
- 大きなオラトリオ作品
- 奇しくも、初演は同時多発テロ9/11の次の日となった
o 苦しむことのない作品を書こうと考えて生み出したが、その考えとは程遠い状況の中で初演された
- 13世紀イタリアのダンテ「新曲」
o 地獄から、煉獄を経て、最終的に愛しのベアトリーチェとともに天国へ向かう物語
- Aurora
o Auroraでは、2つの太陽が海の上で日の出を迎えている
o 煉獄の山を登っているダンテは、ベアトリーチェが自分を呼ぶ声をどこからか聞く
♪ParadisoよりAurora
- Nirvana
o 3つの円がひとつの中心に接し、その円の中に世界の全ての苦しみが映しだされている→視覚化
♪ParasidoよりNirvana
- 天国を描写
o Heaven on Earth
o Heaven of Religion
o Garden of Eden
o Heaven of Love
- 一年ほどかけて完成させたが、終わったところで満足できなかった
- 結局は私が表現しようとした世界(苦しみのない世界)は存在しないのではないか、と感じた
* The NEWS
- 新しいオペラ作品
o 絶対に完成しない:何年もかけて進めていくプロジェクト
o シカゴで公開放送のスタジオを通りかかり、インスピレーションを受けた
o 音素材のターゲット…政治家や評論家すべて…が歌手だったら素敵だろうと考えた
- アメリカの政治家、サラ・ペイリンが政治について語っているテレビ番組をリミックス
- 映像はJacobTVの奥様、クリスティンによるもの
♪The NEWSよりサラ・ペイリンのアリア
♪The NEWSよりウォール・ストリートの暴落を伝えるキャスターたち
♪The NEWSよりイタリア首相ベルルスコーニのアリア
- ベルルスコーニの主張「自由は存在しなくなった」
o ある意味では現代を象徴している
o 道徳となになのか、経済は後退、神は死んだ
- JacobTVが目指すもの
o 全てが流動的な時代のなかで、自分たちは正しいと思っている人たち(ニュースキャスターやベルルスコーニ首相)の声をミックスすることに価値があると考える
- このオペラのオープニング:Broken Dreamsを最後に…
o アメリカの宗教家→福音派、やや原理主義的傾向
o 宗教家たちが、テレビを通じて主張を繰り広げている
o 宗教家たちが主張する内容:何もかもが壊れた時代に生きている、家族も壊れていく、経済も壊れている、全てが壊れている
♪Broken Dreams
…「質疑応答」に続く。
ラベル:
作曲家
2010/12/03
こんな催し…@埼玉県立近代美術館
ミュージアム・コンサートというと、大きな絵画の前で弦楽四重奏が優雅にモーツァルトなんかを弾いているようなものを想像してしまうのだが(なんと貧弱なイマジネーション…)、そんなミュージアム・コンサートにサクソフォンが登場する演奏会のご案内を頂いた。
恩地元子さん(http://mce.geidai.ac.jp/faculties/lecturers)は音楽評論家だが、その他の活動として、ミュージアム・コンサートのコーディネイトにも携わっているそうだ。ご自身の研究分野とサクソフォンは何の繋がりもないそうなのだが、北浦和公園のサックスのオブジェが埼玉県立近代美術館の所有物ということで、このミュージアム・コンサートではサクソフォンを取り上げる機会が多いとのこと。
私はこういったプロデュースのような世界には疎いが、プロフェッショナルな演奏家の皆様の演奏機会がどのように回っているか、ということについては興味をもっている。邪推ながら、もしかしたらアマチュアの演奏機会にもヒントになる部分があるのではないか…と考えつつ。
【ノスタルジーのアメリカ、モダン・エイジのアメリカ】
出演:クローバー・サクソフォン・クヮルテット
日時:12月4日(土) 13:00~14:00
会場:埼玉県立近代美術館 センターホール(地階)
料金:入場無料
プログラム:
A.フラッケンポール「ラグタイム組曲」
R.ロジャース「マイ・フェイヴァリット・シングス」
詳細:http://www.momas.jp/
主催:埼玉県立近代美術館
何気にクローバーSQ、しかも演奏曲目がちょっと素敵な感じ。クローバーSQが「ラグタイム組曲」だなんて、ちょっとイメージがわかないが…聴いてみたい!(が、この日私は実家に帰っているため、聴けない)入場無料とのことだし、お近くの方はぜひ伺ってみてはいかがだろうか?
ちなみに、別の機会に恩地元子さんがコーディネイターとして携わったミュージアムコンサートのレポートを、下記リンクから読むことができる。
http://www.fujitv.co.jp/event/art-net/clsc_02mumu/011.html
恩地元子さん(http://mce.geidai.ac.jp/faculties/lecturers)は音楽評論家だが、その他の活動として、ミュージアム・コンサートのコーディネイトにも携わっているそうだ。ご自身の研究分野とサクソフォンは何の繋がりもないそうなのだが、北浦和公園のサックスのオブジェが埼玉県立近代美術館の所有物ということで、このミュージアム・コンサートではサクソフォンを取り上げる機会が多いとのこと。
私はこういったプロデュースのような世界には疎いが、プロフェッショナルな演奏家の皆様の演奏機会がどのように回っているか、ということについては興味をもっている。邪推ながら、もしかしたらアマチュアの演奏機会にもヒントになる部分があるのではないか…と考えつつ。
【ノスタルジーのアメリカ、モダン・エイジのアメリカ】
出演:クローバー・サクソフォン・クヮルテット
日時:12月4日(土) 13:00~14:00
会場:埼玉県立近代美術館 センターホール(地階)
料金:入場無料
プログラム:
A.フラッケンポール「ラグタイム組曲」
R.ロジャース「マイ・フェイヴァリット・シングス」
詳細:http://www.momas.jp/
主催:埼玉県立近代美術館
何気にクローバーSQ、しかも演奏曲目がちょっと素敵な感じ。クローバーSQが「ラグタイム組曲」だなんて、ちょっとイメージがわかないが…聴いてみたい!(が、この日私は実家に帰っているため、聴けない)入場無料とのことだし、お近くの方はぜひ伺ってみてはいかがだろうか?
ちなみに、別の機会に恩地元子さんがコーディネイターとして携わったミュージアムコンサートのレポートを、下記リンクから読むことができる。
http://www.fujitv.co.jp/event/art-net/clsc_02mumu/011.html
ラベル:
情報
Edward Gregsonの協奏曲のCD
Yさん(というかPさん)より、来年の管打楽器コンクールの課題曲を教えていただいた。発表されていることを知らなかったのだが、本選がエドワード・グレグソン Edward Gregsonの「サクソフォン協奏曲 Saxophone Concerto」だって?2006年の初演ライヴを中継で聴いており、その後も実演やCDで何度か聴く機会があったが、およそコンクール向けとは思えないコンサート・ワークスという趣の作品。
こういった作品が課題曲になるとは、ちょっと意外だった。しかも第2楽章はソプラノサックス持ち替えだし、なかなか面白い選曲だよなあ。2次予選の課題曲にソプラノサックスの作品がいくつか入っている、とはいえ…?
Chandosから、グレグソン作品集として出版されているのはご存知のとおり。Amazonからも買える→Gregson: Concertos。おなじみの須川展也氏による録音で、初演の時よりもさらにパワーアップした隙のない演奏。当たり前だが、この曲の模範的な演奏だと言えるだろう。クラーク・ランデルが指揮するBBCフィルのクオリティも高い。
個人的には「サクソフォン協奏曲」よりも併録されている「トランペット協奏曲」のほうが好きだ。しかも、演奏はあのオーレ・エドヴァルド・アントンセン!技巧派という括りでは済まされない、とても歌のある演奏をされる方で、好きなトランペット奏者のひとりだ。こんなところでフィーチャーされているとは知らなかった。
こういった作品が課題曲になるとは、ちょっと意外だった。しかも第2楽章はソプラノサックス持ち替えだし、なかなか面白い選曲だよなあ。2次予選の課題曲にソプラノサックスの作品がいくつか入っている、とはいえ…?
Chandosから、グレグソン作品集として出版されているのはご存知のとおり。Amazonからも買える→Gregson: Concertos。おなじみの須川展也氏による録音で、初演の時よりもさらにパワーアップした隙のない演奏。当たり前だが、この曲の模範的な演奏だと言えるだろう。クラーク・ランデルが指揮するBBCフィルのクオリティも高い。
個人的には「サクソフォン協奏曲」よりも併録されている「トランペット協奏曲」のほうが好きだ。しかも、演奏はあのオーレ・エドヴァルド・アントンセン!技巧派という括りでは済まされない、とても歌のある演奏をされる方で、好きなトランペット奏者のひとりだ。こんなところでフィーチャーされているとは知らなかった。
ラベル:
CD
2010/12/02
第2回サクソフォン交流会~参加団体募集~
昨年大成功のうちに終えることができたサクソフォン交流会だが、第2回の開催が決定したことは、既にブログでも公表したとおり。
ということで、参加団体の募集を開始する。詳細については下記公式ページから辿っていただきたい。
http://enjoysax.michikusa.jp/
※募集は終了しました。
ということで、参加団体の募集を開始する。詳細については下記公式ページから辿っていただきたい。
http://enjoysax.michikusa.jp/
※募集は終了しました。
2010/12/01
JacobTV Show、最高だった!
原宿VACANTで行われたJacobTV Show、本当に最高だった!
作品・演奏・音響・映像・会場全てがパーフェクトな一夜限りの貴重なライヴ。この場にいられたことを嬉しく思う。夜も遅いので、詳しいレポートはまた今度。
作品・演奏・音響・映像・会場全てがパーフェクトな一夜限りの貴重なライヴ。この場にいられたことを嬉しく思う。夜も遅いので、詳しいレポートはまた今度。
JacobTV氏レクチャー(前半)
先日行われたJacobTV氏のレクチャー内容をざっくりとまとめた。前半・後半・質疑応答の3セクションにわけてご紹介する。ところどころ文章がおかしいところがあるが、あくまで自分のメモ用なので…。
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JacobTV公開レクチャー@東京ワンダーサイト青山
2010/11/28 18:15~
* ペンネームの由来
- ニューヨークの音楽家たちが、フルネームである"Jacob Ter Veldhuis"を言うことができなかった
- そこで頭文字を取って、ペンネームのJacobTVとした
- 作曲家だがメディア・ミックス作品を多く手がけているため、レコード会社もこのペンネームを気に入っている
* オランダ
- ロンドン、パリ、ベルリンに近い
- ロンドンや東京のような一極集中型ではない
- アムステルダム、ロッテルダム、ハーグ、ユトレヒトなどの、中規模都市が連なっている
- 作曲家にとって良い点
o 町と町の距離が近い(せいぜい50km)
o 町ごとにオーケストラ、現代音楽アンサンブルが存在
o jacobTV自身は、ユトレヒトに近い、オランダの中心部に住んでいる
* JacobTVの仕事場
- (パソコン、キーボード、電子ピアノ、数多くのディスプレイ、スピーカーが置かれている近代的な部屋の様子)
- キャリアの初期においては紙と鉛筆で作曲していた
- 作曲家に限らず、今では様々な道具を駆使するのがアーティストのスタイル
* 音楽家として
- 40年前に音楽の仕事を始めた
- 現在59歳
- 今手がけている音楽の種類:
o オーケストラ、室内楽:アムステルダムの出版社から出版されている
o BOOMBOX:BOOMBOX作品については、JacobTV氏のウェブサイトから購入可能
* キャリア初期
♪バンドの即興演奏
- 即興演奏のバンド
o 刑務所で演奏していた:音響が良いし、受刑者も喜んでくれる
o 即興を楽譜として残していったほうが良いと考え、徐々に作曲へと傾倒していった
* 転機となる作品
- ピアノのためのトッカータ(1988年)
- きっかけ
o 南イタリアで、1986年の夏の晩に不思議な音を聞いた
o 鳥(フクロウ)の声。ひとつの音だけがずっと聞こえている(メロディではない)
o ひとつの音だったのでとても退屈だったが、突然面白いことが起きた:鳥一羽一羽が、別の音程・メロディで鳴き始めた→その中にメロディが聴こえてきた
o 当時37歳、自分の音楽的スタイルを模索していた時期であった
o 周りの同僚・先生は難解な作品を作っていた。
- ピアノのためのトッカータ
o 2つの腕だけでなく、鼻までも使わなければいけない作品
o 現代音楽の複雑さに対するパロディでもある
o この作品を弾くピアニストの姿は、フクロウが獲物を捉える姿に重ねている
♪ピアノのためのトッカータ
o あまり強く弾き過ぎると、鼻血が出るのでご注意!
o 現代音楽界で好意的に受け入れられた
o ドイツの現代音楽フェスティバルでは「現代音楽における鼻の使用」について講演をした
* スタイルの確立へ
- 弦楽四重奏曲第3番
o 音の使い方:最低限の単音のみを使っていく
o 副題は、ボブ・ディランの言葉を引用した物
o 冒頭部:チェロ、ヴィオラのグリッサンド
♪弦楽四重奏曲第3番(ハンス・フォン・マーレンの振り付けとともに)
- この作品によって自分のスタイルを確立した、と感じた
* 作品のスタイル
- オランダの音楽学者が、JacobTVの作品を分類した
o Heaven Style: Slow, Ambient, Sprituality, Classical, High Art, East
o Earth Style: Fast, Groove, Reality, Pop, Low Culture, West
- 私にとっては、両方のスタイルに自分を見出していくことが必要
- Low Cultureの音楽の例
o 終身刑の受刑者の声をミックスした作品
♪Grab It!(Electric Kompanyの演奏)
- High Artの音楽の例
o チェロの協奏曲
o 昨年東京シティフィルが日本で演奏した
♪Rainbow Concerto
* 90年代なかば
- 「人の声が音楽的な性質を持っている」という発見
- 視覚芸術分野ではマルセル・デュシャンが既に行っている
- 音楽分野ではサンプラーの発明により可能となった
- 最初のBOOMBOX作品:TATATATATA
o フランスの年老いた退役兵が歌う2,3秒の軍歌
o タイム・ストレッチ、ピッチベンド操作
o チェロとのデュエット
o JacobTVが初演の場で行ったことは、ゲットブラスター(屋外用大音量ラジカセ)の再生ボタンを押す、それだけ
♪TATATATATA
* BOOMBOX Musicの確立へ
- TATATATATAによって、新たな可能性が広がるのを感じた
- 池谷薫監督「ドキュメンタリーの中に登場する人物は、役者となっていく」
o それと重ねて…私にとっては、周りを取り巻く環境すべてが音の素材となっていく
…「後半」に続く。
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JacobTV公開レクチャー@東京ワンダーサイト青山
2010/11/28 18:15~
* ペンネームの由来
- ニューヨークの音楽家たちが、フルネームである"Jacob Ter Veldhuis"を言うことができなかった
- そこで頭文字を取って、ペンネームのJacobTVとした
- 作曲家だがメディア・ミックス作品を多く手がけているため、レコード会社もこのペンネームを気に入っている
* オランダ
- ロンドン、パリ、ベルリンに近い
- ロンドンや東京のような一極集中型ではない
- アムステルダム、ロッテルダム、ハーグ、ユトレヒトなどの、中規模都市が連なっている
- 作曲家にとって良い点
o 町と町の距離が近い(せいぜい50km)
o 町ごとにオーケストラ、現代音楽アンサンブルが存在
o jacobTV自身は、ユトレヒトに近い、オランダの中心部に住んでいる
* JacobTVの仕事場
- (パソコン、キーボード、電子ピアノ、数多くのディスプレイ、スピーカーが置かれている近代的な部屋の様子)
- キャリアの初期においては紙と鉛筆で作曲していた
- 作曲家に限らず、今では様々な道具を駆使するのがアーティストのスタイル
* 音楽家として
- 40年前に音楽の仕事を始めた
- 現在59歳
- 今手がけている音楽の種類:
o オーケストラ、室内楽:アムステルダムの出版社から出版されている
o BOOMBOX:BOOMBOX作品については、JacobTV氏のウェブサイトから購入可能
* キャリア初期
♪バンドの即興演奏
- 即興演奏のバンド
o 刑務所で演奏していた:音響が良いし、受刑者も喜んでくれる
o 即興を楽譜として残していったほうが良いと考え、徐々に作曲へと傾倒していった
* 転機となる作品
- ピアノのためのトッカータ(1988年)
- きっかけ
o 南イタリアで、1986年の夏の晩に不思議な音を聞いた
o 鳥(フクロウ)の声。ひとつの音だけがずっと聞こえている(メロディではない)
o ひとつの音だったのでとても退屈だったが、突然面白いことが起きた:鳥一羽一羽が、別の音程・メロディで鳴き始めた→その中にメロディが聴こえてきた
o 当時37歳、自分の音楽的スタイルを模索していた時期であった
o 周りの同僚・先生は難解な作品を作っていた。
- ピアノのためのトッカータ
o 2つの腕だけでなく、鼻までも使わなければいけない作品
o 現代音楽の複雑さに対するパロディでもある
o この作品を弾くピアニストの姿は、フクロウが獲物を捉える姿に重ねている
♪ピアノのためのトッカータ
o あまり強く弾き過ぎると、鼻血が出るのでご注意!
o 現代音楽界で好意的に受け入れられた
o ドイツの現代音楽フェスティバルでは「現代音楽における鼻の使用」について講演をした
* スタイルの確立へ
- 弦楽四重奏曲第3番
o 音の使い方:最低限の単音のみを使っていく
o 副題は、ボブ・ディランの言葉を引用した物
o 冒頭部:チェロ、ヴィオラのグリッサンド
♪弦楽四重奏曲第3番(ハンス・フォン・マーレンの振り付けとともに)
- この作品によって自分のスタイルを確立した、と感じた
* 作品のスタイル
- オランダの音楽学者が、JacobTVの作品を分類した
o Heaven Style: Slow, Ambient, Sprituality, Classical, High Art, East
o Earth Style: Fast, Groove, Reality, Pop, Low Culture, West
- 私にとっては、両方のスタイルに自分を見出していくことが必要
- Low Cultureの音楽の例
o 終身刑の受刑者の声をミックスした作品
♪Grab It!(Electric Kompanyの演奏)
- High Artの音楽の例
o チェロの協奏曲
o 昨年東京シティフィルが日本で演奏した
♪Rainbow Concerto
* 90年代なかば
- 「人の声が音楽的な性質を持っている」という発見
- 視覚芸術分野ではマルセル・デュシャンが既に行っている
- 音楽分野ではサンプラーの発明により可能となった
- 最初のBOOMBOX作品:TATATATATA
o フランスの年老いた退役兵が歌う2,3秒の軍歌
o タイム・ストレッチ、ピッチベンド操作
o チェロとのデュエット
o JacobTVが初演の場で行ったことは、ゲットブラスター(屋外用大音量ラジカセ)の再生ボタンを押す、それだけ
♪TATATATATA
* BOOMBOX Musicの確立へ
- TATATATATAによって、新たな可能性が広がるのを感じた
- 池谷薫監督「ドキュメンタリーの中に登場する人物は、役者となっていく」
o それと重ねて…私にとっては、周りを取り巻く環境すべてが音の素材となっていく
…「後半」に続く。
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作曲家
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