今日、NHK-FMでラヴェルの「ピアノ協奏曲」を聴いた。ソリストはピエル=ロラン・エマール、シャルル・デュトワ指揮NHK交響楽団のライヴ。さすがに第3楽章はアンサンブルが苦しかったが、全体的には大変見事な演奏。アンコールにまさかジェルジ・リゲティの「ムジカ・リチェルカータ」を聴けるとは思わなかった。
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現在サクソフォンを専攻する音大生だが、すでに各方面で活躍されているとある方の、昔の映像を観る機会があった。ご本人から観せてもらったというわけではなくて、また別の方から提供していただいたものだ。サクソフォンを始めて2年ほどのころに演奏したというモーリス「プロヴァンスの風景」抜粋と、モンティ「チャルダーシュ」、そしてさらに後のクレストン「協奏曲」の第2楽章、そして一番最近のオーケストラとの共演でグラズノフ「協奏曲」という3つの時代にわたるラインナップである。
こういった、あるひとりの奏者の年齢ごとのしっかりした記録というものは、例えばデビュー後には連続的に追うこともできるだろうが、デビュー前の段階的記録はめったなことでは入手しようと思ってもかなわないものであり、とても興味深く観ることができた。その演奏者ご本人というのは、まだプロフェッショナルとして活動を開始しているわけではないが、それでも面白いものは面白い。
現在の姿とは見間違うほどのあどけなさを残したサクソフォン奏者が奏でるモンティというのも粋であるが、それよりもさらに私の耳が惹かれたのは「プロヴァンスの風景」であった。美しい音色…に、誰のものでもない、おそらくこの方自身の音楽。誰のスタイルを真似た、というわけではなく、自分で作ってきた音楽なのだと思う。その傾向はクレストン、そしてグラズノフでも顕著であり、どの時代の演奏を聴いても、オリジナルのスタイルを追求しているように感じることができた。
伺ってみると、例えばピアノや声楽といった方面の勉強も同時並行的に行なっており、そんな音楽的バックグラウンドの大きさとサクソフォンに固まらない視野の大きさが、独自スタイルの追求を可能にしているのかな、などとも思った。サクソフォンだけ知っていても、誰かのサクソフォンを真似ることしかできないからなあ。
今後その方がどういった方向に進んでいくかは、私も知る由もないが、もしサクソフォンの演奏家としての道を歩むとしたときに、例えば20年経ってさらにいくつかの演奏の記録を並べ、一気通貫にその変遷を俯瞰する、というのもまた楽しいことであろう。
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