テナーサクソフォンとライヴエレクトロニクス(MAX/MSP)のための「Mixtion」については、今までも何度かこのブログで触れてきた。2003年のパリ国立高等音楽院の卒業試験のために書かれたもので、「サクソフォンとコンピュータ」というジャンル中では疑うことなき名曲である。
曲のコンセプトとしては、「異質なものが組み合わさったるつぼの中で、そこから錬金術のように生み出される音を楽しむ」といったところだが(だからタイトルがMixtion="混合")、そんなわけで本当にいろいろな音とサクソフォンが複雑に絡み合って、何も考えず聴いているだけで面白い。ちなみにエレクトロニクスパートは、電子音は控えめに使われており、どちらかというとミュージック・コンクレートをたくさん聴くことができる。
で、「Mixtion」を何度も聴いているうちに、ちょっと邦楽的な要素をいくつか発見したのでご紹介。手元に楽譜があるため、譜例を載せつつ追ってみる。
譜例として載せたのはPerformance Instructionの一部。各セクションごとに数字が割り振られており、数字の最中はシーケンシャルかつ等間隔に演奏時間が進んでいくけれど、数字から数字を跨ぐにはMidiパルス(ペダルを使ったりする)が必要。そう、そもそも曲の進め方からして伝統的な邦楽に見られるone by oneの方式なのだ!
前半から中盤にかけて、エレクトロニクスパートにウッドブロックが多く聴かれる。まあ音はウッドブロックなのだが、叩き方が特殊。譜例は横軸が時間に対応して書かれているが、リズムを刻むのではなくて、かなり即興的なクラスタっぽい叩き方をしている。まるで拍子木?
サクソフォンパートに何度か出てくるこの表示。上のマス表示は音色の指定(ジャズっぽいサブトーン)、ppとmfの間を行き来する音量のヴィブラートをかけながら、ヴィブラートの波をaccel.という感じだろうか。これ、実際にテナーサクソフォンで吹いてみると、なんというか尺八のような面白い効果が出るのである。サクソフォンパートの中では、一番邦楽っぽい部分だろうか。
微分音のトリルは珍しくないが、この譜例に限ってはかなり面白い音がする。オクターヴキー+開放でC3キーを使用してトリルするのだが、まるで笛でトリルするような不安定な効果を出すことができる。
明らかに梵鐘の音。後ろで等間隔に鳴っているのは、鈴かな。まあ、邦楽的というよりもアジア的といったところだろうか。
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