パソコンの調子がかなりやばいので、バックアップ作業を行いつつブログを書いている。まずいなあ、今年度いっぱいはこのPCで頑張ろうと思ったのに。ハードディスクを換装して何とかなれば良いが。
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武藤賢一郎氏がフランスのスタンダード曲集を吹き込んだLP(Fontec)。たしか、CDにもなっていたはずだが、そちらのフォーマットでは聴いたことがない。特に私自身の興味を引くこともなく、進んで探そうとも思わなかったのだが、夏にトランスファーの依頼を受けていたLPのリスト中にあり、そんなわけでたまたま聴くこととなったのだ。サクソフォンが武藤賢一郎氏、ピアノが藤井一興氏。両者とも日本人ながらフランスでの音楽教育を受けた経歴を持つ。
P.モーリス - プロヴァンスの風景
A.デザンクロ - プレリュード、カデンツとフィナーレ
D.ミヨー - スカラムーシュ
P.サンカン - ラメントとロンド
E.デニゾフ - ソナタ
録音は1982年。武藤氏がパリ国立高等音楽院のデファイエ・クラスを卒業したのが1977年、ギャップ国際コンクールに入賞したのが1978年、ということだから、まさに脂が乗りきった時期のレコーディングということになる。なんというか、最初から聴いていくとオサレ~なフレンチスタイルとはやや違く、ちょっと生真面目だなあと思ってしまうのである。ヴィブラートやアタックが単調で、「プロヴァンスの風景」「スカラムーシュ」なんかは、なんだか聴きながらこちらが緊張してしまう(^^;等速ヴィブラートとは言っても、なんだかデファイエやミュールの色気みたいなものが感じられないのだ。
ううむ、一曲目を聴いたところで疲れてしまうが、この生真面目さが続くデザンクロや、後半のサンカン、デニゾフで活きてくる。特に、サンカン、デニゾフは圧巻である。だってそもそも、曲の性格からして聴衆にも緊張を強いる曲なのだから、この曲にこの武藤氏の演奏がハマらないわけがない!聴き手を緊張の糸で縛りつけ、徐々に盛り上げていくサンカンの"ラメント"、そしてロンドのスーパー跳躍フレーズを含む譜面で聴けるハイ・テクニックなど、武藤氏の面目躍如といったところか。
デニゾフでは、武藤氏と藤井氏の強烈なインタープレイを聴くことができる。藤井一興氏のピアノはアルバム全編に渡ってもの凄い仕事をしているが、特にデニゾフでのサックスとの絡み方は尋常ではない。音色の変化、タッチの美しさ…第二楽章などは、漆黒の闇に煌く星のようだ、かと思えば、第三楽章では精密な歯車のような厳格さ(第三楽章よりも、第一楽章のほうがよほどロックに聴こえる)。武藤氏のサックスは、とにかくパワフル。聴き始めたらいつのまにか何もかもを巻き込んで終わってしまいました、という感じだ。すごい。
ううん、実演に接したことがないのだ。このデニゾフを聴いて、ぜひ生で聴きたくなった。武藤氏、リサイタル開いてくれないかなあ。
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