2010/01/31

5周年記念プレゼント企画!

1/21に、ウェブサイトkuri_saxoが5周年を迎えました。これもひとえに、読んでくださっている皆様のおかげです。この場を借りて、あらためて御礼申し上げます。

さて、日頃からkuri_saxoやdiary.kuri_saxoを読んでくださっている方々に感謝の意味を込めて、プレゼント企画やります!(※終了しました)賞品は何にしようかなあと考えたのですが、これにします。

…。

……。

………じゃん!

現代最高のクラリネット奏者の一人、アレッサンドロ・カルボナーレのアルバム「No Man's Land」!「サックスの事を書いているブログなのに、なぜクラリネットのアルバムなんだー!」と思う向きもいらっしゃるかもしれませんが、これがまた面白いアルバムなのです。

なんと……吉松隆「ファジイバード・ソナタ」やフィル・ウッズの「アルトサクソフォン・ソナタ」を、Bbクラリネットで演奏しちゃったという、前代未聞のCD!私も、初めて聴いたときは仰天しましたが、これは実にエキサイティングなCDです。コンセプトに引きずられず、技術的な制約と音楽性を軽々とクリアして、ひとつの素晴らしいエンターテイメント作品として実を結んでいます。

以前、ブログ上でレビュー記事を書いたこともあります。

収録曲は、以下。良く好んで聴くのは、ザッパ、ウッズ、フィトキン、吉松隆あたりですね。

F.ザッパ - FZ for Alex
P.ウッズ - ソナタ
G.フィトキン - GATE
E.ピエラヌンツィ - Elisions du Jour
P.ドリヴェラ - 小組曲
吉松隆 - ファジイバード・ソナタ
C.ボッカドーロ - エレジー マイルス・ディヴィスの思い出に
F.ダンロレア - トレント

素晴らしいCDにも関わらず、なぜか国内では入手する方法がありません。オンラインショップでも、これまで扱っているところを見かけたことがありません。今回の企画に際して探しまくった結果、ようやく入手することができました。このなけなしの(?)1枚を、抽選で1名様にプレゼントいたします!

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!応募方法!(※終了しました)
・メールアドレスkuri_saxo@yahoo.co.jp宛に、ニックネーム(本名可)と「5周年プレゼント希望」と書いたメールを送って下さい。ブログの感想を書いていただけると、とても嬉しいです。
・どなたでもご応募できます(お知り合いの方も、そうでない方も)。
・締切は、2010/1/31 23:59です(日本時間)。
・日本国外からの応募も可能です。

・抽選は、Excelの乱数生成機能を使って無作為に行い、当選された方にはメールをお送りします。また、ブログ上でニックネームを発表させていただきます。その後、メールにて住所・本名を教えていただいて、こちらからCDを発送します。もちろん、送料等は頂きませんのでご安心下さい(送料いただいたらプレゼントじゃないですよね…)。

一件もメールが来なかったら寂しいので(;_;)CDに興味がなくても、ブログの感想メールも受け付けています!笑。それでは、よろしくお願いします。

2010/01/30

武藤賢一郎サロンコンサート@ドルチェ楽器

ウェブページ「kuri_saxo」5周年記念プレゼント応募受付中です!くわしくは、こちら

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【Ken-ichiro Muto Salon Concert】
出演:武藤賢一郎(sax)、野原みどり(pf)
日時:2010年1月30日(土曜)19:00開演
会場:アーティストサロン"ドルチェ"(ドルチェ楽器管楽器アヴェニュー東京)
プログラム:
~第1部~
André Caplet - Légénde
Bernard Heinden - Sonata
Ferenc Farkas - Bihari roman tancok
~第2部~
Lucie Robert - Cadenza
Jérôme Naulais - Frissons
Carl Hohne - Slavische Fantasie
~アンコール~
Alexandre Glazounov - Chant du menestrel
Pedro Itturralde - Suite hellenique
Astor Piazzolla - Oblivion

「サロンコンサート」という名前はタイトルだけで、出演者もプログラムも豪華そのもの。東京文化会館の小ホールか浜離宮朝日ホールあたりで催されたとしても、まったくおかしくない内容だ。

私は、武藤賢一郎氏の演奏を生で聴くのは初めてだった。日本人として初めて、パリ国立高等音楽院を1977年に卒業、次の年のギャップ国際サクソフォンコンクールで、第5位入賞。帰国後は、独奏者としてリサイタルやオーケストラとの共演で活躍しつつ、昭和音楽大学や桐朋音楽大学などで教鞭を執り、後進の育成にも力を注いでいる。

プレイヤーとしてのキャリアで有名なのは、1980年頃のベルリンフィル来日時に、「展覧会の絵」のソリストに指名されたという経歴や、ラーションの「サクソフォン協奏曲」をスウェーデンのオーケストラとともに日本初演した、という事実だろう。ラーションについては、フラジオ奏法や、ダブルタンギングの奏法を、国内で初めて本格的に導入した、ということで、お得意のレパートリーであっただろうことが想像できる。

私が知る限りでは、武藤氏のひとつ前の本格的なリサイタルは、2003年の1月だったと記憶する。ノナカ・サクソフォン・フレンズ等でも大々的に宣伝されていたが、当時私は長野県の高校生。聴きに行くことを考えもしなかった。茨城県の某大学に進学したのちにも「武藤氏が演奏する」という情報を聞くことすらなかったのだが、まさか2010年になって、こういう機会が巡ってくるなど、想像もしなかった。

前置きが長くなったが、大変素晴らしいリサイタルだった。一週間前に聴いたばかりのミーハ・ロギーナ氏&李早恵さんのリサイタルを思い起こし、音を自在に操る草書体の演奏だと表現するなら、本日の武藤氏の演奏は、揺るぎないスタイルを構築しようとする楷書体の演奏だったと思う。

一曲目のカプレから、ピアノと会場の空気を、サックスのベルから呑み込んでしまうような堂々とした音色と音楽。"室内楽"ではなく、完全に"独奏サクソフォン"の世界だ。武藤氏のこれまでのプレイヤーとしての経歴が、そうさせているのだろう。"室内オーケストラの一員としてのサクソフォン"という観点からすれば、さすがにややアンバランスな印象も受けたが、サクソフォンが大活躍する二曲目以降は圧巻だった。

頭から最後まで緊張感の途切れないハイデンのソナタに、珍しいレパートリーだがルーマニア民謡をベースにして構築されたファルカシュの珍しいレパートリー。どちらもテクニック的にレベルが高い曲だが、その辺のサックス吹きを鼻の先で吹き飛ばすような、そんな演奏だった。野原みどりさんをも巻き込み、重戦車のようなオーラを放ちながら吹き進め、気付いたそのきには、荘厳な大伽藍が目の前にそびえ立つ。

休憩後も、すごかった。あれ?そういえば、ロギーナ氏のリサイタルも休憩後がロベールだったぞ。確かに、休憩でゆるんだ空気を一気に引き締めるにはもってこいなのかもしれないな。武藤氏が「フリッソン」を吹くというのも、不思議な感じがしつつ大変な演奏だったし、最後の「スラヴ幻想曲」は、ダブルタンギングをふんだんに散りばめた、チャルダーシュ風ヴィルトゥオジックな難曲で(もとはコルネット曲?)、場内が大いに沸いた。

アンコールは、最後の最後に演奏された「オブリヴィオン」が印象深い。ピアノの序奏に導かれて演奏されたGの音が、どこまでもどこまでも続きそうで、ちょっとホロリときてしまった。

いやはや、どれもすごい演奏だったなあ。また聴きたい!

初めての平日練習

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社会人になってから初めて、平日に、というか会社終業後にサクソフォニーの練習に参加した。朝、テナーサックスを抱えて部署で一番早く出社して早々にデスクの下に放り込み(なんだか周りの人に見られるのが恥ずかしかったので汗)、終業後に会社から直接練習場所へ伺った。

ミューザ川崎の練習場所は初めて伺ったが、あんなに奥まったところにあんなに大きな場所があるのだな。平日にも関わらず15人が集合し()、「スカイブルー・ファンファーレ」と「オペラ座の怪人」を2、3時間ほどがっつりと。平日に練習するなんて疲れてしまうかなあと思ったけれど、思いのほか集中できた。

練習後は、軽く飲みに行った。こちらも楽しかったなあ。結局終電で帰宅してしまった(^^;

2010/01/28

礼状

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先日伺った絵画のグループ展から、礼状のはがきが届いた。あ、そういえば行ったなあと思い返すと同時に、はがき裏面に描かれていた3人それぞれの絵画の一部の写真を見て、それぞれの絵画の印象を思い出した。

ギャラリーで催されるような展覧会だと、こういった礼状って定着している気がするが、音楽の演奏会だとどうなのだろうか?けっこう珍しいのではないのかな?音楽の演奏会だと、来てもらって、それでおしまいだからなあ。やっぱり、訪れる人数とかそういったことの制約からなのだろうか。

そういえば、前に伺った大石将紀さんの演奏会については、後日礼状が届いたっけなあ。演奏者側は大変だろうが、出向く方としては、けっこう嬉しかったりする。そもそも、お礼の手紙やはがきをもらって嬉しくないはずがないのだ。

ということで、もし次に自分が演奏者側になる機会があったら、礼状を送ってみようかな、と思った次第。

2010/01/26

アレクサンドル・スーヤ氏のウェブサイト

パリ市立13区音楽院を経て、パリ国立高等音楽院を卒業したサクソフォン奏者、アレクサンドル・スーヤ Alexandre Souillart氏のウェブサイトを見つけた。昨年末、サクソフォーン・フェスティバルに合わせて初来日し、Frédéric Durieux「Ubersicht Ib」とヒンデミットのアルトホルン・ソナタを演奏した。私は2日目に行けなかったため、聴くことができなかったのが残念だ。次の来日の機会には、ぜひ聴きたいなあ。

http://alexandresouillart.com/

Flashを使い、リッチコンテンツをふんだんに散りばめたサイト。演奏を試聴することもできるのだが、目が醒めるようなデニゾフの溌剌とした演奏は、一聴の価値あり。ほかの演奏も、大変レベルが高い。

…そういえば、普通に日本語で書かれたページがあることにも驚いた。

2010/01/25

Lament on the Death of Music

さて、どこから紹介したものか。Amherst Saxophone Quartetという名前は日本ではほとんど知られていないし、この刺激的なアルバムタイトルが気になる方もいるだろうし、あの「チェンバー・シンフォニー」を切り口にしてもいいし…。そもそも、買ったきっかけすらも、とっくに忘れてしまった。きっかけは「チェンバー・シンフォニー」かなあと思ったのだが、たぶん日本で同曲が流行るよりも前に買っていると思う。

Amherst Saxophone Quartetは、ニューヨーク大学州立大学バッファロー校のメンバーによって1978年に結成されたサクソフォン四重奏団。ニューヨーク州立大学というと、サクソフォンの世界ではバッファロー校よりもラッシャー派の本拠地とも言うべきフレドニア校のほうが有名だ。だが、この四重奏の構成メンバーは、経歴を見てもラッシャー派とは縁がなさそう。と思いきや、このCDの録音時点(1998年)では、アルトのメンバーのみを入れ替えて活動しているようで、そのRuss Carereというメンバーは、フレドニア校の出身なのだそうで。だが、やはりラッシャー派のプレイヤーに師事したという経歴は見つけられなかった。

Salvatore Andolina, soprano saxophone
Russ Carere, alto saxophone
Stephen Rosenthal, tenor saxophone
Harry Fackelman, baritone saxophone

そのアムハーストQが、同時代の作曲家の作品に取り組んだCD「Lament on the Death of Music(Innova 516)」。この不可思議なアルバムタイトルは、1曲目の作品名をそのまま持ってきたものである。

Leila Lustig - Lament on the Death of Music
Chan Ka Nin - Saxophone Quartet
Anita D. Perry - Quartet for Saxophones
Andrew Stiller - Chamber Symphony

この作品リストを見ると、ちょっとサクソフォンをかじったことのある方ならば、「あ!」と思うだろう。そう、なんと、アンドリュー・スティラーの「チェンバー・シンフォニー」が収録されているのだ。国内では、雲井雅人サックス四重奏団の演奏とCDによって一躍有名になった作品。第2楽章の旋律に心奪われた方も多いのではないだろうか。雲QのCDが発売されたのは2004年か2005年頃だから、それよりも6年ほど前に、すでに同曲を取り上げたCDがあったということになる。

一曲目は、なんとソプラノ(声楽)とサクソフォン四重奏のための作品。怪しさ満点の作品だが、一線超えたものを表現しようとする雰囲気が伝わってくる。美しく、艶やかで、そしてちょっと恐ろしい曲。最初のネリフが、「Music died yesterday.」ってねえ…。二曲目は、たくさんのリズムやハーモニーが織り込まれた作品。一曲目も二曲目も聴きやすく、また、自分たちで吹いたとしても、アピール度は高いのではないかな。

三曲目と四曲目は、巷の"新"古典主義作品がしっぽを巻いて逃げ出すほどの、"新しい"作品だ。外見上はアレグロ~アンダンテ~スケルツォ~フィナーレという、ハイドンあたりとまったく違わぬ構成を持ちながら、飛び出してくる音楽は実験的、かつ刺激的。ただし、ゲンダイオンガクにありがちな不協和音や歪んだリズムのようなものは出てこなくて、あくまで古典的な和声の上で構築されたものだ。どちらも、非常に聴く価値のある音楽だと思う。

私は「チェンバー・シンフォニー」はこのCDで慣れ親しんでいたため、個人的にはこの演奏がスタンダードだ。演奏のレベルは大変高く、技術的な不安を感じるどころか、柔軟な音色と良く練り上げられたアンサンブルで、作品の魅力を軽々と引き出すまでに至っている。惜しむらくは、やや録音が悪いことか。InnovaらしいといえばInnovaらしい、ちょっとこもったあの感じそのまま。

探してみたところ、Amazonで買えるようだ(→Lament on the Death of Music)。

2010/01/24

この週末

四重奏関連の雑務と個人練習ののち、午後から会社の友達と遊びに出かけた。いろいろと遊び回り、夕方から映画「アバター」を観たのだが、話題になっているだけあってなかなか良かったなあ。

今日は、四重奏の練習。これまでは4月の本番向けにリゲティの「ムジカ・リチェルカータ」を合わせていたのだが、こちらはしばらくお預けとなった。かわりに、3月上旬に予定されている某マスタークラス(後日告知します)向けに「レシテーション・ブック」を4時間ほど合わせた。全体的な流れは、各個人の頭の中に残っているようだ。あまり残された時間もないのだが、技術的な衰えが激しいところを中心にさらっていけば、なんとかなりそうだ。

やはり、一度吹いたことのある曲だと、気分的にも余裕があるな。吹いている最中はそんなことはないが(^^;何はともあれ、がんばろう。

2010/01/23

上野耕路「N.R.の肖像」

はじめて"上野耕路"という音楽家…作曲家でもありキーボーディストでもあり…の名前を知ったのは、アルモ・サクソフォン四重奏団のアルバム「革命児」に収録された「N.R.の肖像」によってだった。おそらく大抵の人が"ゲルニカ"や"たらこ"といったキーワードをベースにして上野耕路の音楽世界に入り込んでいくであろうことを考えると、私のそれは誠に奇っ怪な切り口であったと思う。

そうなのだ。私にとって上野耕路氏といえば、まずは「N.R.の肖像」であり、その後偶然手に入れた室内楽作品集に所収された「Connotations」であり「Quartetto per Sassofoni」なのである。そんなに多くの作品を聴いたことがあるわけではないが、この音楽家の魅力はメジャーな部分からマイナーな部分まで、幅広い部分に現れていると思う。何年に作曲されたこの作品が一番の傑作、という感覚で捉えるときちんとその音楽家の像を捉えることが難しいように、さまざまなジャンルを渡り歩かなければ本質的な部分を観測することはできない。群盲象を撫ずとは、良く言ったものだ。

かくいう私も、最近になってようやく上野耕路氏のことを勉強し始めた身。戸川純とのデュエットによるゲルニカを聴いて衝撃を受け、うわ、これはヘタに触るとヤケドをするだろうと感じ、あと一歩のところで踏みとどまっているその最中。自分の"聴く器"の小ささを実感させられた。ということで、「N.R.の肖像」に関しても限定的な紹介となってしまうのだが…。

上野耕路氏が幼少の頃より親しんだ、フェデリコ・フェリーニ作品、そしてニーノ・ロータの音楽を、氏独自の解釈で再構成した4楽章から成る傑作。第1楽章の冒頭は、フェデリコ・フェリーニ監督の最高傑作「8 1/2(はっかにぶんのいち)」で、サラギーナが踊るルンバの音楽、というよりも、グイドがその後ひとり海岸を訪れたとき、椅子に腰掛けたサラギーナがもの悲しげに口ずさむ、同一のメロディながらそちらの雰囲気を想起させる。続いて、エドガー・アラン・ポーの原作を元に制作された「悪魔の首飾り(オムニバス映画、世にも怪奇な物語において、フェリーニが担当した作品)」の、空港のメロディをベースにしたフーガ。フェリーニ好きには、たまらないのではないだろうか。しかも、単純なメロディの引用ではなくて、どのメロディもかなり技巧的な変形が加えられており、見事だ。第4楽章は、なぜかテナーが演奏する「ペルシャの市場にて」を挟みながら、最後は「8 1/2」のメイン・テーマが、まるで映画の最後を思わせるシーンのように消えてゆく。映画を知っている向きには、ニヤリだろう。

ところで、私はこれまでフェデリコ・フェリーニの作品を観たことがなく、この曲を少し勉強してみようと思い、「8 1/2」を観てみたのだが、驚異的なモノクロの映像美に、美しい構図の数々、美しい女優たち、最後の超特急展開と、非常に興味をそそられる作品だった。途中、展開に頭がついて行かなくなったのだが、もう一回くらい見れば判るのかなあ。

もとはフルート、バソン、2本のサクソフォン、ヴィブラフォン、マリンバ、アコーディオン、ピアノ、弦楽五重奏という室内オーケストラの編成のために書かれた作品なのだそうだ。こちらのバージョンも、機会があればぜひ聴いてみたい。

2010/01/22

Christian Laubaの15番目のエチュード on YouTube

無伴奏サクソフォンのために書かれたクリスチャン・ロバ氏の一連のエチュードは、今やサクソフォン界にとっての重要レパートリー。「Balafon」から始まり、「Bat(バリトンサクソフォンのためのグランドエチュード)」で終わる「9つのエチュード」が最初のユニットとなり、その後以下の作品が続いている。

10. Hard too Hard(無伴奏テナーサクソフォン)
11. Stan(バリトンサクソフォン&テープ)
12. XYL (Balafon2)(無伴奏アルトサクソフォン)

私はここまでしか知らなかったのだが、いつのまにやら15番目まで到達していたそうだ。YouTubeで、Doug O'Connor氏(第2回ジャン=マリー・ロンデックス国際コンクールで第2位入賞)が15番目のエチュード「Worksong」を演奏している動画を見つけた。これは面白い作品だ!そして、メチャクチャ難しそう…笑。ロバ氏のコメントまでついていて、びっくり。


15番目があるということは、13番目と14番目があるということだよなあ。どんな作品なのだろうか。ご存じの方は教えてください。

2010/01/21

なんと、5周年

2005年1月21日に解説したウェブサイト「kuri_saxo」が、5周年を迎えた。現在メイン・コンテンツとなっている日記(?)は、最初はHTMLのベタ書きであり、ブログに移行したのが2006年の11月頃、ブログ移行前からの累積投稿記事数は1443となった。

今年度は、社会人一年目ということもあり、インターネット接続環境がなかった4月~6月頃に更新が滞ったが、幸いその後は元のペースで更新を続けることができている。これもひとえに、ブログをご覧になっている皆様のおかげだ。この場を借りて感謝申し上げる。

5年という時間は、長いようでもあり、短いようでもある。次は10年かなあ…さらに5年が経過したとき、サックス界はいったいどうなっているのであろうか。

まあ、気を張っても仕方がないので気楽にやっていこうと思う。長続きするコツは、頑張りすぎないこと?なのではないかな。

うーん。せっかくの機会なので、プレゼント企画でもやろうかな。

2010/01/20

演奏会情報:SAX EXPO

田村さんよりご案内いただいた、ブリッツ・ブラスと、4人のサクソフォン奏者の共演。非常に面白そうな演奏会。すでに大変な傑作として知られた「Muta in Concerto」「He calls...!」に加え、國末氏、そしてなんとスクウェアの元メンバーとしても知られた宮崎隆睦氏、それぞれのために書かれたサクソフォン協奏曲の新作が取り上げられるのだそうだ。

予定が入っていなかったら、確実に聴きに行っていると思うのだが…、残念だ。CDのレコーディングも行ったという噂をどこかで聴いたので、楽しみにしていましょう。

【ブリッツ・ブラス特別演奏会2010~Sax Expo!!~】
出演:松元宏康指揮 ブリッツ・ブラス
日時:2010年1月31日(日)13:30開場 14:00開演
会場:新宿文化センター
料金:一般 2500円(当日2800円)高校生以下 1500円(当日1500円)
プログラム:
L.バーンスタイン - キャンディード序曲
福田洋介 - Saxophone Chansonnet(國末貞仁)
建部知弘 - Street Songs II(宮崎隆睦)
石毛里佳 - Muta in Concerto(田村真寛)
長生淳 - He calls...!(彦坂眞一郎)
三浦秀秋 - That's all folks!(彦坂眞一郎、宮崎隆睦、國末貞仁、田村真寛)
問い合わせ:
http://blitzbrass.ikaduchi.com/

2010/01/19

ギャルドの「ローマの松」

発売から半年以上が過ぎたが、皆様はもうお聴きになっただろうか。ギャルド・レピュブリケーヌ来日公演CD&DVDである。内容はいまさら繰り返すまでもないが、フランソワ=ジュリアン・ブラン率いる同吹奏楽団の1961年の伝説的な初来日ライヴ録音、そして二度目の来日となった1984年の映像をセットにした、驚異のパッケージである。間違いなく、2009年に発売された吹奏楽関係のメディアのなかでは最高のものであろう。

私は、今でこそブログの話題はクラシックのサクソフォンに注力しているが、高校2年頃から大学1年頃にかけては、吹奏楽のマニア畑にどっぷり浸かっていたのだった。そんな中で初めて聴いた「ディオニソスの祭」や「トッカータとフーガ」の録音は、当時の私に大きな衝撃を与えたものだ。そういった意味でも、NHKからこの録音がリリースされたことは誠にめでたいことであり、大きな驚きでもあった。

時々取り出しては聴いているが、今日はレスピーギの「ローマの松」を聴いている。ローマ三部作の中で一番好きな作品であり、それゆえに今まで聴いた録音も数多いが、この1961年のギャルドの演奏はそのどれとも対等に張り合えるだけの魅力を湛えていると思う。色彩感という点に絞って議論すれば、そこらへんのオーケストラを寄せ付けないほどだ。

ジャニコロの松で、弦楽器パートに代わってサクソフォンの甘い音色(たぶん、ヌオーかロンムだと思う)が響くのも素敵。この時代の管楽器って、どうしてこんな音が出るのだろう。今という時代から考えると、想像できないなあ。

2010/01/18

Miha Rogina Saxophone Concert

昨日は、ミーハ・ロギーナ Miha Rogina氏の演奏会を聴きに行ってきた。たしか初来日が2005年、フェスティバルでハチャトゥリアンの「ヴァイオリン協奏曲」を演奏し、日本のサクソフォン界に大きな衝撃を与えたのが2007年のフェスティバル。その頃から考えると、ロギーナ氏、そしてデュオのパートナー、ピアニストの李早恵氏の名前もすっかり有名になったと思う。この日の演奏会も、音大生らしき人たち、プロの人たちがたくさんいらっしゃっていた。

【Miha Rogina Saxophone Concert】
出演:Miha Rogina(sax)、李早恵(pf)
日時:2010年1月17日(日)14:00~
会場:アクタス・ノナカ・アンナホール
プログラム:
Paul Hindemith - Viola Sonata in F
Maurice Ravel - Sonatine
Piet Swerts - Klonos
Lucie Robert - Cadenza
Sergei Prokofiev - Sonata, op.94
Giacomo Rossini - Figaro Paraphrase

国内でもおなじみのレパートリーがたくさん演奏された。なんとなくディナンのアドルフ・サックス国際コンクールを視野に入れている印象を受けるのは、気のせいではないだろう。

アンナホールという狭い会場、状態が良いとは言えないピアノ、特別寒く感じる気候(ホール内も寒い!)と、コンサートとして決して良い条件ではなかったのだが、飛び出してきた音楽は驚異的だった。ヒンデミットの冒頭、最初のテーマが演奏された瞬間に、これは素晴らしいと。これだけ小さい会場で、サクソフォンという楽器でここまで安定し、自身に充ち溢れた演奏など、聴いたことがない。

ロギーナ氏のサクソフォンは驚異的なコントロールで、サクソフォンとしてはとっくに日本人の想像を突き抜けてしまっており、それどころか「クラシックの室内楽」の領域に踏み込んでいると感じた。李早恵さんのピアノは、あのアンナホールのピアノから、驚くほどの多彩な音色と音の形を引き出していた。いつもと楽器が違うのではないか?と思ったほどだ。このレベルは、棚田文則氏のピアノを聴いて以来か、いや、それ以上だろう。

そんな、それぞれの楽器でできることなど、とうに突き抜けてしまっている二人が、実に息のあった演奏を繰り広げているのだ。ヴィオラ・ソナタのような決め決めの曲でも、もともとピアノ独奏のために書かれたラヴェルの「ソナチネ」でも、デュオなのに、まるでひとりの奏者が奏でているかのような、一体感。聴いて楽しくないはずがない。

休憩直前のクロノス、そして休憩後に演奏されたロベールはすごかったなあ。ロベールなど、ホールでは収まりきらないほどの、会場を揺るがすようなテンションで演奏された…と思ったら、なんと演奏後に地震が…(笑)いちばんびっくりしていたのは、ロギーナ氏自身のようだったが。

プロコフィエフは、ロギーナ氏が演奏家としてライフワークとしている「ヴァイオリン作品のアレンジ」というジャンル。さすがにすべてがすべて、ホンモノのヴァイオリンを聴いている風にはいかないかも、と思っていたのだが、これも素晴らしかった。ヒンデミットがそうであったように、ハチャトゥリアンやプロコフィエフも、徐々にサクソフォンのレパートリーとして確立されていくことを予感させる演奏だ。

ロッシーニと、最後に演奏されたリムスキー=コルサコフの「熊蜂の飛行」は、超絶技巧の嵐。クラシックの端正さのみならず、最後はこのようなエンターテイメント性も感じさせてくれるのは、やっぱりサックス吹きだからだろうか。会場も大いに湧いていた。

2010/01/17

こんな日曜日

渋谷でミーハ・ロギーナさん&李早恵さんの演奏会を聴き(素晴らしかった!)、その後平井でサクソフォニー新年会(楽しかった!)。

休日は、外に出ていろいろ活動してこそだなあ。

2010/01/16

エディソン・デニゾフの経歴

ロシアの作曲家、エディソン・デニゾフ Edison Denisov氏の経歴を調べてみた。

1929年4月6日、シベリアのトムスク生まれ。父は電気技術者であり、そんなこともあってか、両親はかの有名な発明王エジソンの名前を息子に与えたそうだ。彼が最初勉強していたのは、数学。モスクワ大学で数学の学士号を取得したが、ドミトリ・ショスタコーヴィチの勧めにより作曲家に転向する決意をする。1951年よりモスクワ音楽院で作曲、管弦楽法、アナリーゼ、ピアノ(ウラジミール・ベロフに師事)を学び、1956年に卒業する。1959年には、同音楽院の管弦楽法の教授として採用された。

デニゾフは、他の同世代のロシアの作曲家と同じく、ドビュッシー、ストラヴィンスキー、ヴェーベルン、ブーレーズ、バルトーク、ノーノらに影響を受けた。もちろん、単なる模倣というわけではなくて、デニゾフの作曲スタイルは、独自のものと伝統音楽を、絶妙な感覚でミックスしたものである。

Gabriela Mistralの詩による、「インカの太陽」を作曲したのが1964年。同年、ヨーロッパで初演され、大変な好評を得た。それがきっかけとなって、デニゾフは海外の雑誌や記事に対し、ソヴィエトの同時代の作曲界についての記事を掲載するなどし、ソヴィエトの音楽の啓蒙に務めた。また、知人となった音楽関係者に、自国の音楽のスコアや録音を送るなどした。それ以上に、デニゾフ自身も、数多くの西側のスコアや録音を受け釣り、最終的にちょっとしたライブラリほどの所蔵資料がデニゾフの手元に集まったという。

1990年には、Association for Contemporary Musicの設立に携わり、その活動からモスクワ現代音楽アンサンブルが生まれた。同年、デニゾフはパリへ移住。パリ移住後も、創作意欲は衰えることなく、数多くの作品を作曲。1996年に故郷へ戻ることなく、亡くなった。

2010/01/15

Linda Bangsのアルバム

バリトンサックスを含む室内楽曲集。日本国内では、バリトンサックスのプレイヤーというと田中靖人氏に栃尾克樹氏といったところだが、フランスにはマルセル・ジョセやジャン・ルデューといった伝説の名手がいるし、ポルトガルであれば「無伴奏チェロ組曲」のCDでおなじみのヘンク=ファン・トゥイラールトなんかが、有名だろう。このCDの主役、リンダ・バングス Linda Bangsという女性のプレイヤーもそのひとりで、特にラッシャー派の間では、最高のバリトンサクソフォンの名手と謳われている人物だ。

ニューヨーク州立大学フレドニア校において、シガード・ラッシャー Sigurd Manfred Rascherのもとで学び、その後才能を認められ、ラッシャー四重奏団、南ドイツサクソフォン合奏団の主要メンバーとして活躍した。現在は、ドイツで教鞭をとり、後進の育成に力を注いでいるそうだ。リンダ・バングスの演奏は、ラッシャー四重奏団の演奏を聴いた&観たことはあったが、独奏のアルバムというのは、少々意外だった。気になる!もともとバリトンサックスを吹いていた身としては、これは買わなければ!…ということで、購入。

Kammermusik für Baritonsaxophon(ANTES BM-CD 31.9245)
Felix Treiber - Duo [bsax, pf]
Antonio Vivaldi - Sonata No.1 [bsax, pf]
Otmar Mácha - Sonata [bsax, pf]
J.Ryan Garber - Another Twist [bsax, pf]
Ernst Prappacher - Quartett [bsax, vn, va, vc]
Jan Dismas Zelenka - Adagio und Allegro [bsax, vn, va, vc]

やはりラッシャー派だなと思うのは、バロックの名曲+同時代の作曲家、という選曲。ちなみに、同時代の作曲家の作品は、ほとんどがリンダ・バングス自身に捧げられている。録音がかなり即物的で、生々しい音が耳に入ってくるのだが、かえってそれが演奏のリアルさを増していて興味深い。バランスも、どちらかというとピアノ>サックスという感じで、この録音ポリシーは、個人的には歓迎すべきところだ。

一曲目から、激しい響きに驚く。アルティシモの音域をも交えた難曲ではあるが、ラクラクと操ってしまうあたりも、ラッシャー派特有のオーヴァートーン・トレーニングの賜物だ。なんとなくラッシャー派というと、音程感覚が不安定なイメージがつきまとうのだが、ここでのリンダ・バングスの演奏はまったく技術的な不安を感じさせない、驚異的なものだ。

Mácha氏のソナタを聴いてみてほしい。アダージョにおいてはフラジオ音域を見事なレガート奏法で吹ききり、アレグロはスリリングなフレーズの応酬をスラスラと切り抜けている。続くAnother Twistも、聴いた感じはかなり難しそうであるが、ロックやポップミュージックの影響を受けた短いながらも佳曲であると思う。最後は超絶技巧のまま終わってしまうが、生で聴いたら興奮するだろうなあ。

バロック作品の演奏においては、ヴィブラートを多用しているが、少し細かめに揺らすヴィブラートも、特徴の一つと言えるだろう。また、硬質なタッチのピアノと、柔らかいバリトンサックスの音色が対比となり、面白い効果を出していると感じる。

ということで、かなり聴き所は多い。バリトンを吹いている方は、ぜひ手にとっていただきたい。

2010/01/14

伊藤あさぎさんのブログ

サクソフォン奏者の伊藤あさぎさんより、ブログのご案内をいただいたので、ご紹介したい。伊藤あさぎさんは、東京藝術大学大学院在学中にジャン=マリー・ロンデックス国際コンクールのセミファイナリスト、そして日本管打楽器コンクールのサクソフォン部門において第二位を獲得した。その後、2009年の大学院卒業と同時にフランスに留学し、現在はパリ国立高等音楽院の第二過程において、クロード・ドゥラングル教授のもとで学んでいる(この第二過程の入学試験に合格する事自体も、大変な難関であったようだ)。

何度か演奏を拝聴したことがあるが、初めて聴いた「PCF」と、野平一郎の「舵手の書」が印象に残っているなあ。とても素敵な演奏をされる方だ。

伊藤あさぎのNANDEYANEN!! フランス留学日記
http://itoasagi.blog12.fc2.com/

タイトルが良いですね笑(あさぎさんは大阪の出身)。ブログは、まだまだ開始して日が浅いものの、フランスでの生活が多くの写真を交えて紹介されており、とても楽しい。相互リンクありがとうございました!

2010/01/13

英雄の時代

須川展也氏のセッション録音CDのなかでは、一番目か二番目くらいに好きなCDかもしれない。そもそも、私が須川氏の演奏をライヴで初めて聴いたのは、このCDにも収録されているアンリ・トマジの「サクソフォン協奏曲」なのであった。当時高校二年生だった私は、長野県の松商学園高等学校の吹奏楽部定期演奏会に、須川氏が客演すると知り、先輩と出かけたのだ。忘れもしない第一部は、リヒャルト・シュトラウスの「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」、二曲目がトマジの「協奏曲」であった。初めて聴くプロのクラシック・サクソフォン、初めての須川さんということで、感動しすぎて涙が出たなあ。マルセル・ミュールのCDとともに、私がクラシック・サックスにはまるきっかけのひとつだった。

前置きが長くなったが、山下一史指揮東京佼成ウインドオーケストラと、須川展也氏の共演となるCD「英雄の時代(佼成出版社 KOCD-4002)」。好きなCDと言いながら、聴くのは久しぶりであった。

長生淳 - 英雄の時代
P.モーリス/仲田守 - プロヴァンスの風景
A.K.グラズノフ/仲田守 - サクソフォン協奏曲
H.トマジ/仲田守 - サクソフォン協奏曲
A.ララ/森田一浩 - グラナダ(ボーナストラック)

吹奏楽とサクソフォン。ただし、オリジナルの作品はひとつだけで、その他は仲田守氏によるオリジナル作品の編曲もの。完全な正統派と言えなくもないかもしれないが、これは素晴らしいCDだと思う。

長生淳「英雄の時代」は、これは最初聴いたときはピンとこなかったのだが、今聴いてみるととても面白い作品だ。最初のファンファーレは、まるでダールの冒頭のようなビビビとした感覚を聴衆に想起させるし、その後も、いろいろなスタイルの音楽がミックスされながら曲が進む。須川氏の超絶技巧、美しく色気のある音色に耳を奪われ、25分という曲の長さにも関わらず、あっという間だ。

モーリスやグラズノフは、さすがに吹奏楽編曲は見劣りしていることが否めず、原曲のオーケストラやピアノとのデュオが良いと思うが、それにしても須川氏の独奏の見事なこと!グラズノフなど、現代の奏者の演奏でもいろいろ聴いてきたのだが、今回あらためて須川氏の演奏を聴いて、すっかり耳を洗い直されてしまった。「そうそう、これこれ!」と思わせる独奏だ。

そして、トマジ。やはりこれが一番好きであるし、演奏の質としてもテンションとしても、本CD中の白眉だと思う。グラズノフやモーリスのようなマイナス点はほとんど感じられず、むしろ管楽器の様々な音色のブレンドにより、オーケストラ版に比べてずっと色彩感にあふれる演奏となっている。ちなみにトマジは、須川氏が第一回の管打楽器コンクールで優勝した時の本選課題曲だ。アツさと思い入れが感じられる。そして、ソロに加えて東京佼成WOの演奏もアツい!ほかの吹奏楽のCDからは、考えられないほどの気合いを感じ取ることができる。

磯田健一郎氏による解説も、けっこう面白い。なんにせよ、きちんと解説があるのはありがたいな。輸入盤であればピンきりだが、国内盤であればそれほど珍しくもないかな?amazonでの購入先は、こちら(→英雄の時代)。

2010/01/12

ダニエル・デファイエの生徒たち(その21)

長いようで短かった本連載も、本日で最後となる。ダニエル・デファイエ Daniel Deffayet氏は、1988年を最後に教授職を退き(この年のコングレス@川崎を最後に、四重奏をも解散している)、後任を決めるための最終選考には、クロード・ドゥラングル氏、ジャン=マリー・ロンデックス氏、ジャン=イヴ・フルモー氏が残り、最終選考が行われた結果、ドゥラングル氏が次期教授に就任した…これは、周知の通り。

[1988]
新作課題曲:
なし
1er prix:
Philippe Braquart
Daniel Gremelle
Antoine Bellec
Eric Devallon

フィリップ・ブラキャール氏は、パリ国立高等音楽院の助教授として、また、モンペリエ音楽院の教授としての教育活動が有名であり、日本からも多くのプレイヤーがブラキャール氏に学んでいる。井上麻子氏(パリ音)、大栗司麻氏(モンペリエ)らが弟子にあたる。ディアステマ四重奏団 Quatuor de saxophones Diastemaのテナー奏者。

ダニエル・グレメル氏は、パリ警視庁音楽隊の首席奏者として有名だ。ソロCDも幾つか出しているようだが、私は持っていない。日本の作曲家である田中久美子氏が、ランベルサール国際吹奏楽作曲コンクールに出品し、第1位を獲得した作品「セドナ」は、実質的なサクソフォン協奏曲だが、このコンクールで独奏を務めたのが、グレメル氏であった。その他のオーケストラや吹奏楽団との共演も多い。Rueil Malmaison音楽院教授。

Antoine Bellec氏は、ヨシコ・セファー氏との共演など、ジャズの方面での記述をいくつかみつけた。ジャズに転向したプレイヤーかもしれないな。

エリック・ドゥヴァロン氏は、ディアステマ四重奏団のバリトン奏者として名前を知っていた。リヨン音楽院のセルジュ・ビションクラスを卒業してパリ音楽院に入学、1988年に卒業し、1989年以来Bayonne côte Basque音楽院の教授を努めている。トゥールーズ・キャピトル管弦楽団のサクソフォン奏者としても呼ばれることが度々あるそうだ。

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以上。やはり、きちんと調べるのは重要だ。なんとなく名前を聞いたことのある奏者も、きちんと調べてみると面白い情報が引っ張り出せるものだなと感じた。

デファイエ氏はこの年を最後に教授職を引退したが、演奏活動や、マスタークラス等での講師は、これより後も続けていたそうだ。最後の来日となった1992年、昭和音楽大学で開かれたリサイタルの映像が某所に残されているが、見事というほかない映像であり、70歳という年齢が信じられないほどのパフォーマンスを魅せている。彼の下で学んだプレイヤーが、いかに素晴らしい音楽家の下で学んだのか、ということを再確認させられた思いである。

2010/01/11

ダニエル・デファイエの生徒たち(その20)

[1987]
新作課題曲:
なし
1er prix:
Joël Hérissé
Dieson Afonso Feirreira
Claude Brunel
Hervé Saliot

Joël Hérissé氏は、ナント音楽院教授。作曲者としての名前が引っかかったが、書いているのは一作品だけで「Doux Paysage」というフルートとクラリネットとサクソフォンのための作品だそうだ。教育以外には、特に際立った活動をしていないのだろうか?

Claude Brunelは、女性のサクソフォン奏者。アクス・レ・バン音楽コンクール等での優勝経歴がある。196年、パリ警視庁音楽隊のサクソフォン奏者として有名なダニエル・グレメル Daniel Gremelle氏とともに、Duo de Saxophones de Parisを結成している。また、Quatuor de saxophones de Versaillesのテナー奏者。このカルテット、フランセの「組曲」やリヴィエの「グラーヴェとプレスト」を含んだCDが非常に面白いらしいのだが、未だ聴く機会には恵まれない。教育者としては、ボーヴェ Beauvais音楽院教授を務めている。

Hervé Saliot氏は、バレンティン文化センター Les sites culturels de Barentinのサクフォン講師という記述を発見した。

Dieson Afonso Feirreiraは、名前の綴りがフランス人ぽくないなあ。際立った情報は見つけられなかった。

次回、最終回です。

2010/01/10

四重奏練習

「Trip to Skye」と「Musica ricercata」の合わせ。「Trip to Skye」は少しずつ歩みを進めている感じだが、「Musica ricercata」は非常にやっかいだ。あんまり普通の人間が「吹く」ものではないのかもな(使用している編曲には、とんでもない跳躍が出現する)。もともとピアノ曲だし…。ただし、ハマれば強烈にカッコ良さそう。

サックス吹きにはあまり知られていない、「Musica ricercata」の4番も取り上げようかなと思っている。この曲は、いびつな形をしたワルツで、手回しオルガン(バレル・オルガン)のようなaccel.とrit.の攻めぎ合いが面白い。木管五重奏だとマッチしないかもしれないが、サックスであれば、シングルリードの同属楽器ということで、狙った曲想を出すことがそれほど難しくはないかもしれない。

そういえば今日はつくば市で練習を行ったのだが、来るたびに研究学園駅周辺の発展具合には驚かされる。いったいどこまで大きくなるのだろうか。

2010/01/09

Saxophone Concentus "Second Tale"

ノルウェーの四重奏団、サクソフォン・コンセンタス Saxofon Concentusのアルバムをご紹介。日本国内においては、同四重奏団はサンジュレ、シュミット、ゴトコフスキーの四重奏曲を収録したアルバムによって特に知られているが、こちらのアルバム「Second Tale(SIMAX PSC 1200)」もなかなか。サンジュレ、シュミット、ゴトコフスキーのアルバムが、伝統的な作品に取り組んだものであったのに対して、全く逆のコンセプトとしてノルウェーの同時代の作品を取り上げたディスクだ。

Helge Havsgård Sunde - The Thousand and Second Tale
Lasse Thoresen - Roman for saxofonkvartett
Jon Øivind Ness - Phylloxera (fy-) se vinlus
Henrik Hellstenius - Fem avtrykk av tiden

どの作品も、大変高い技術で演奏されているのが判る。特にダイナミクスの幅などは見事で、「1002nd Tale」では、執拗に繰り返される音量変化を見事に再現している。同曲においてはリズム感も最高で、現代音楽なのに、ロックのようなシンコペーションをクリアに描き出して、曲全体にグルーヴを与えることに成功していると思う。

Thoresenの「Roman」という作品は、これは民族音楽にインスピレーションを受けた作品なのだろうか。ピッチをゆがめつつ、なんとなくモード的な響きのコラージュが、全編を支配している。音色は、室内楽のサクソフォンの響きそのまま。最後は精緻な響きで、荒涼とした夜の野原に狼が遠吠えるような雰囲気のまま終わる。

「Fem avtrykk av tiden」は、無窮動やパルスのまわりに極端な音程差のフレーズが絡みつく、不思議な作品。解説を読んでみると、これはどうやら音遊びに徹している作品のようである。実際にアコースティック楽器を使用して楽譜を再現するのには、得てして難しいものだと思うのだが、サクソフォン・コンセンタスは、ここでも素晴らしい演奏を繰り広げている。

全体的に、やや玄人志向の響きがありながらも、サックスのゲンダイオンガクとしては耳に馴染みやすいものばかりだと感じた。これは、作品のせいだけではないだろうな。カルテットのゲンダイオンガク入門編としては、かなり良いディスクではないだろうか。私も、このアルバム買ったの高校生の頃だしね~(笑)。amazonへのリンクは、こちら→Saxofon Concentus - Second Tale

2010/01/08

Stockhausen "Knabenduett"

シュトックハウゼン作品集78ライナーノートに掲載されている、作曲者自身の言葉による解説:

本作品「少年のデュエット」は、オペラ「光」の"木曜日"から、「ミカエルの帰郷」第3幕第1場「フェスティバル」の挿入曲である。初演は、1980年6月14日のオランダ・フェスティバルにおいて、アムステルダムのコンセルトヘボウで行われた。「光」の"木曜日"全体は、1981年4月3日、ミラノのスカラ座において初演された。この演奏においては、Hugo ReadとSimon Stockhausenがソプラノサクソフォンのデュエットを奏でた。本作品は、シュトックハウゼンの息子であるSimonに捧げられている。彼は、スカラ座での演奏のときにはまだ12歳であった。
「少年のデュエット」は、「フェスティバル」とは独立して演奏可能である。その他の楽器によって演奏することもできる。
スコアは、楽譜と、それに対する説明文、そしていくつかの写真によって構成されている。これは、Stockhausen-Verlagから出版されている。「少年のデュエット」の文脈は、「フェスティバル」のスコアを参照することによって明らかとなるだろう。「フェスティバル」のスコアは、別売りである。
演奏は、暗譜で行うべきである。
本レコーディングは、2005年2月26日にCologneのSound Studio Nにおいて、Antonio Felipe Belijar(1st Soprano Sax)とJulien Petit(2nd Soprano Sax)によって行われた。

2010/01/07

ダニエル・デファイエの生徒たち(その19)

[1986]
新作課題曲:
Alain Louvier - Le jeu des sept musiques
1er prix:
Frédéric Grange
Bruno Totaro
Marc Duchene
Emmanuel Héraud
Vibéké Bernstein

アラン・ルヴィエという名前は、耳にしたことがあるのだが、どこで聞いたことがあるのだったかな。管弦楽法の大家であり、この年から1991年まで、パリ国立高等音楽院の院長を務めた。この「Le jeu des sept musiques」という作品は、独奏アルトサクソフォンと3本のSTBサクソフォンのための作品で、1) Free Jazz, 2) Récitatif d'opéra, 3) Constellations, 4) Frileuses, 5) Valse mécanique, 6) Marche militaire, 7) Les 7 musiques, 8) Anathème, 9) Trompettes, 10) Vagues, 11) Valse interrompue, 12) Jericho, 13) Sortie des artistesという、13の楽章に分かれた大曲。音を聴いたことはないのだが、楽章の名前をみるだけで面白そう!

Frédéric Grange氏は、あまり際立った情報を見つけられなかったが、現在でも演奏活動を行っているようだ。なんと、昨年末、12月30日のコンサート案内を発見した。

Bruno Totaro氏は、ドゥラングル教授がソプラノサクソフォン奏者を務めていた伝説のカルテット、Quatuor Adolphe Saxにおいて、テナーサクソフォンを担当していた。同四重奏団は、1981年から1986年まで活動を行い、野平一郎「四重奏曲」、エディソン・デニゾフの「サクソフォンとピアノのための五重奏曲」等を委嘱初演している。この四重奏団が、アルジェリア・ツアーで演奏したデザンクロの演奏(凄いらしい)、聴いてみたいなあ!…っと、話がそれたが、Totaro氏は現在Vichy音楽院教授。

Marc Duchene氏は、ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団のサクソフォン奏者として有名。パリ五重奏団の活動にも参加しており、比較的新しい時期のCDに、クレジットを発見することができる。以前木下直人さんから頂戴したCDの、演奏データをご覧頂きたい(→こちら)。Emmanuel Héraud氏、前の年に2等賞だったのだが、もう一年残ってきちんと一等賞(プリミエ・プリ)を獲ったのだな。五重奏団、Atout Saxの創始者。

Vibéké Bernstein氏は、探そうとしたらあちらのバーンスタインが多く引っかかってしまい、見つけられなかった。

2010/01/06

ダニエル・デファイエの生徒たち(その18)

[1985]
新作課題曲:
なし
1er prix:
Serge Bertocchi
Philippe Lecoq
Stephane Laporte
Bertrand Dubreuil
2eme prix:
Emmanuel Héraud

Harry R.Gee氏の「Saxophone Soloists and Their Music」が出版された年だ。本のなかでは、もちろんこの年度よりあとに活躍しているプレイヤーについては触れられていないわけなのだが、もうこのくらいの世代になってくると、「Saxophone Soloists...」に頼らなくとも情報が集められる奏者ばかりだ。

この年度の"初めて"は2つ。1つめ、新作の課題曲がないのは、おそらくアドルフ・サックス~マルセル・ミュール~ダニエル・デファイエと続いたパリ国立高等音楽院サクソフォン科の歴史の中で、おそらく初めてのことだ。そして2つめ、プリミエ・プリ(一等賞)を輩出し続けた同サクソフォン科から、初めて二等賞が出た年度でもある。

セルジュ・ベルトッキ氏は、アミアン音楽院のサクソフォン科教授。主に現代音楽の分野に力を発揮しているサクソフォン奏者であり、四重奏団XASAXを通して、数多くの新作初演を行っている。近年では、Tubaxの第一人者として活躍し、全編Tubaxで演奏されたCD「Saxophone Extreme」を世に送り出している。ちなみに、日本人ピアニストである浜田ゆかり氏と結婚している。

Philippe Lecoq氏は、トゥールーズ音楽院の教授。ディアステマ四重奏団 Quatuor de saxophones Diastemaのソプラノサクソフォン奏者としても有名(あ、新しいCD出たんだ…)。1986年の結成以来、一度もメンバーを変えずに活動を続けている。伸びやかで質の高い演奏は、ある意味デファイエ四重奏団とハバネラ四重奏団の間を埋める、ミッシング・リング的な存在となっている。NaxosからCDが出ているので、聴いたことのない方は機会があればぜひ聴いていただきたい。

Stephane Laporte氏は、フルモー四重奏団のテナーサクソフォン奏者。早くに亡くなったGuy Demarle氏の後任として、フランス警察音楽隊つながりで同四重奏団に参加。すでに多くのコンサートやレコーディングに参加している。

Betrand Dubreuil氏は、現在ではジャズのプレイヤーとして活躍しているようだ。こんなビデオを見つけた。無声映画に、コンテンポラリーなBGMをつける試み、のようだ。

Emmanuel Héraud氏は、五重奏団Atout Saxの創設者だそうだ。最近人気のサクソフォン五重奏曲、ジェローム・ノレ「Atout Sax」は、この団体のために書かれている。

2010/01/05

衝撃!ドゥラングル教授 on YouTube

うわー!久々にビビビときてしまった!これはすごい!クラシカルサクソフォン界の最高峰、クロード・ドゥラングル教授が演奏する、中国の伝統音楽のひとつ「江河水(Jiang He Shui)」。



現在では二胡のスタンダード・レパートリーとして有名なこの曲を、原曲の笙管に近い管楽器…サクソフォンで堂々としたスタイルで奏でてしまうとは!いやはや、恐れ入った(改めて、この音楽家には束にかかっても敵わないと思ってしまった)。Embeddedだと、最高の音質と画質で楽しむことはできない。ぜひリンク先のYouTubeへ。

ところで、中国語でサクソフォンのことを薩克斯風、クロード・ドゥラングル Claude Delangle教授のことを克勞德隆と書くらしい。なんだかカッコいいですな。

2010/01/04

高橋悠治「残り火」

どこかのウェブページだかブログだかで書いてあったのを昔見たことがあるのだが、高橋悠治のことを、「高橋氏」「高橋悠治氏」とか「高橋さん」と呼ぶのは、なんだか変な感じがする。ただ単純に「こういう音楽をする人」という小さい枠で括ることが難しくて、高橋悠治という存在すべてをひっくるめて捉えなければ、この人の音楽を理解することは難しいと、無意識のうちに感じているせいだろう。まあ、私ごときが一生かかっても、高橋悠治を理解することなど、できないとは思っているのだが…。

例えば、表面に浮かびあがってくる、作曲・演奏・即興のどれを摘み取ってみても、すでに理解をはるかに超えた手の届かない場所にあり、まったく一筋縄ではいかない。以前、1時間30分に及ぶ即興のみの演奏会を聴いたときも、たまげた覚えがある。その時のブログ記事は、こちら

前置きが長くなったが、今日久々に高橋悠治の公式サイト(→http://www.suigyu.com/yuji/)を覗いてみたら、サクソフォンのための新作の楽譜がアップロードされていた。2009/11/14に追加された楽譜で、「残り火 Embers」という無伴奏作品。「sax solo」とだけ指定があるので、たぶんEb管でもBb管でも、どのサクソフォンで吹いても良いのだろう。

サクソフォンの作品といえば、以前栃尾克樹氏のために、バリトンサクソフォンとピアノのための「影の庭」という作品が作曲されているが、その時は明確な委嘱があって…とのことだったはずだ。今回の「残り火」については、どういった動機があって作曲されたのだろうか。特別な注釈は付けられていないため、わからなかった。

せっかく楽譜があって演奏できるのだし、ちょっとだけ音を出してみた。まさか2010年の吹き初めが高橋悠治の作品になるとは…(苦笑)。tempo rubato、dynamics free、ミステリアスな雰囲気の作品で、ひとりであれこれと音を出していくうちに、その音楽世界に没入してしまった。dynamic freeだが、あらかじめ決めておかなくとも、即興的にダイナミクスを付けていくことすらも非常に面白い。そのダイナミクスも、不思議と曲に引っ張られているような感覚だ。

これだけ音数が少なくて、吸い込まれる作品というのも凄いな。聴き手としては、どういう印象を持つのだろうか。

2010/01/02

ミヨー「世界の創造」SP録音 on YouTube

以前、ハンス・リヒター撮影の実験映画「Filmstudie」に、ダリウス・ミヨー Darius Milhaudの「世界の創造 La creation du monde」の序曲がBGMとして使用されている、という記事を書いたが(→こちら)、その録音の全編を再生した動画が、YouTubeにアップロードされていた。動画、といっても、映像はSPが回っているところを映しているだけ。

SPの型番は、ColumbiaのLX-1582。ミヨー自身が指揮する管弦楽団の演奏だ。サックスを吹いているのは誰かとSOTWで話題になったのだが、マルセル・ミュールであるという説が、現時点では濃厚となっている。ただ、実際に聴いてみてもこの演奏では断定しづいらいなあ。

・前半


・後半


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やはり、「世界の創造」については、ダニエル・デファイエが参加したバーンスタイン盤(EMI)がトドメを刺していると思う。もし知らない方がいたら、ぜひ聴いておくべきだと思う。オーケストラの中のサクソフォンとして、史上最高の録音のひとつ。

Jazz Dispute

2年ほど前に、ごく一部で話題になっていた動画。いったん取り上げられると、それがどんなに素晴らしいものであっても、そのまま忘れ去られてしまうのが普通で、時々こうやって引っ張り出さなければいけない。

ひさびさに見返してみたが、やっぱすごいや。ご存知ない方は、ぜひご覧あれ。後ろで流れている音、サックスはチャーリー・"バード"・パーカー、トランペットはディジー・ガレスピー。ピアノは、セロニアス・モンクかな?

2010/01/01

阪口新氏、生誕100周年

本年は、国内クラシカル・サクソフォン界の父、阪口新氏(1910 - 1997)の生誕100周年となる。その功績たるや、いまさら説明するまでもないほどのものだろう。おそらく、日本のサクソフォン奏者ほぼ全員が、阪口氏直系の弟子にあたるはずだ。

阪口氏がコロムビアに吹き込んだ、世界のメロディと題されたLPレコードを聴いている。以前、木下直人さんにトランスファーしていただいたものだ。私は、阪口氏の音楽にはリアルタイムで触れることができなかった世代であるのだが、こうやって今聴いても、「なんて素敵な…!」と思ってしまう。

これだけ素晴らしい功績を残しながら、残念ながらまとまった資料や決定的な録音が市場に出回っているとは言い難く、もしかしたら今の音大生のなかには、「名前すら知らない」という方もいらっしゃるのではないだろうか。それではさすがにあんまりだと思うので、私もなにか動きをおこしていければ、と思う次第。考えてみよう。

ニューイヤー・コンサート2010

さっきまで中継を観ていた。いやはや、素晴らしかった。ジョルジュ・プレートル氏のお茶目さ&素敵な笑顔と、それに相乗してキラキラした音を振りまくウィーンフィル。ああいうのが、新年初めの雰囲気には最高にマッチしているなあ。まったく、言葉など必要ない。出てくるそばから幸せだけを残して次々に蒸発してゆく音楽に、身を委ねるのみである。

以下、演奏曲目。

~第1部~
ヨハン・シュトラウス「喜歌劇"こうもり"序曲」
ヨゼフ・シュトラウス「ポルカ・マズルカ"女心"」
ヨハン・シュトラウス「ポルカ"クラップフェンの森にて"」
ヨハン・シュトラウス「ポルカ"愛と踊りに熱狂"」
ヨハン・シュトラウス「ポルカ"酒、女、歌"」
ヨハン・シュトラウス「常動曲」
~第2部~
オットー・ニコライ「歌劇"ウィンザーの陽気な女房たち"序曲」
ヨハン・シュトラウス「ワルツ"ウィーンのボンボン"」
ヨハン・シュトラウス「シャンパン・ポルカ」
ヨハン・シュトラウス「ポルカ・マズルカ"心と魂"」
ヨハン・シュトラウス一世「ギャロップ"パリの謝肉祭"」
ジャック・オッフェンバック「喜歌劇"ラインの妖精"序曲」
エドゥアルト・シュトラウス「美しいエレーヌのカドリーユ」
ヨゼフ・シュトラウス「ワルツ"朝の新聞"」
ハンス・クリスチャン・ルンビー「シャンパン・ルンビー」
~アンコール~
ヨハン・シュトラウス「ポルカ"狩り"」
ヨハン・シュトラウス「ワルツ"美しく青きドナウ"」
ヨハン・シュトラウス「ラデツキー行進曲」