2010/01/13

英雄の時代

須川展也氏のセッション録音CDのなかでは、一番目か二番目くらいに好きなCDかもしれない。そもそも、私が須川氏の演奏をライヴで初めて聴いたのは、このCDにも収録されているアンリ・トマジの「サクソフォン協奏曲」なのであった。当時高校二年生だった私は、長野県の松商学園高等学校の吹奏楽部定期演奏会に、須川氏が客演すると知り、先輩と出かけたのだ。忘れもしない第一部は、リヒャルト・シュトラウスの「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」、二曲目がトマジの「協奏曲」であった。初めて聴くプロのクラシック・サクソフォン、初めての須川さんということで、感動しすぎて涙が出たなあ。マルセル・ミュールのCDとともに、私がクラシック・サックスにはまるきっかけのひとつだった。

前置きが長くなったが、山下一史指揮東京佼成ウインドオーケストラと、須川展也氏の共演となるCD「英雄の時代(佼成出版社 KOCD-4002)」。好きなCDと言いながら、聴くのは久しぶりであった。

長生淳 - 英雄の時代
P.モーリス/仲田守 - プロヴァンスの風景
A.K.グラズノフ/仲田守 - サクソフォン協奏曲
H.トマジ/仲田守 - サクソフォン協奏曲
A.ララ/森田一浩 - グラナダ(ボーナストラック)

吹奏楽とサクソフォン。ただし、オリジナルの作品はひとつだけで、その他は仲田守氏によるオリジナル作品の編曲もの。完全な正統派と言えなくもないかもしれないが、これは素晴らしいCDだと思う。

長生淳「英雄の時代」は、これは最初聴いたときはピンとこなかったのだが、今聴いてみるととても面白い作品だ。最初のファンファーレは、まるでダールの冒頭のようなビビビとした感覚を聴衆に想起させるし、その後も、いろいろなスタイルの音楽がミックスされながら曲が進む。須川氏の超絶技巧、美しく色気のある音色に耳を奪われ、25分という曲の長さにも関わらず、あっという間だ。

モーリスやグラズノフは、さすがに吹奏楽編曲は見劣りしていることが否めず、原曲のオーケストラやピアノとのデュオが良いと思うが、それにしても須川氏の独奏の見事なこと!グラズノフなど、現代の奏者の演奏でもいろいろ聴いてきたのだが、今回あらためて須川氏の演奏を聴いて、すっかり耳を洗い直されてしまった。「そうそう、これこれ!」と思わせる独奏だ。

そして、トマジ。やはりこれが一番好きであるし、演奏の質としてもテンションとしても、本CD中の白眉だと思う。グラズノフやモーリスのようなマイナス点はほとんど感じられず、むしろ管楽器の様々な音色のブレンドにより、オーケストラ版に比べてずっと色彩感にあふれる演奏となっている。ちなみにトマジは、須川氏が第一回の管打楽器コンクールで優勝した時の本選課題曲だ。アツさと思い入れが感じられる。そして、ソロに加えて東京佼成WOの演奏もアツい!ほかの吹奏楽のCDからは、考えられないほどの気合いを感じ取ることができる。

磯田健一郎氏による解説も、けっこう面白い。なんにせよ、きちんと解説があるのはありがたいな。輸入盤であればピンきりだが、国内盤であればそれほど珍しくもないかな?amazonでの購入先は、こちら(→英雄の時代)。

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