どこかのウェブページだかブログだかで書いてあったのを昔見たことがあるのだが、高橋悠治のことを、「高橋氏」「高橋悠治氏」とか「高橋さん」と呼ぶのは、なんだか変な感じがする。ただ単純に「こういう音楽をする人」という小さい枠で括ることが難しくて、高橋悠治という存在すべてをひっくるめて捉えなければ、この人の音楽を理解することは難しいと、無意識のうちに感じているせいだろう。まあ、私ごときが一生かかっても、高橋悠治を理解することなど、できないとは思っているのだが…。
例えば、表面に浮かびあがってくる、作曲・演奏・即興のどれを摘み取ってみても、すでに理解をはるかに超えた手の届かない場所にあり、まったく一筋縄ではいかない。以前、1時間30分に及ぶ即興のみの演奏会を聴いたときも、たまげた覚えがある。その時のブログ記事は、こちら。
前置きが長くなったが、今日久々に高橋悠治の公式サイト(→http://www.suigyu.com/yuji/)を覗いてみたら、サクソフォンのための新作の楽譜がアップロードされていた。2009/11/14に追加された楽譜で、「残り火 Embers」という無伴奏作品。「sax solo」とだけ指定があるので、たぶんEb管でもBb管でも、どのサクソフォンで吹いても良いのだろう。
サクソフォンの作品といえば、以前栃尾克樹氏のために、バリトンサクソフォンとピアノのための「影の庭」という作品が作曲されているが、その時は明確な委嘱があって…とのことだったはずだ。今回の「残り火」については、どういった動機があって作曲されたのだろうか。特別な注釈は付けられていないため、わからなかった。
せっかく楽譜があって演奏できるのだし、ちょっとだけ音を出してみた。まさか2010年の吹き初めが高橋悠治の作品になるとは…(苦笑)。tempo rubato、dynamics free、ミステリアスな雰囲気の作品で、ひとりであれこれと音を出していくうちに、その音楽世界に没入してしまった。dynamic freeだが、あらかじめ決めておかなくとも、即興的にダイナミクスを付けていくことすらも非常に面白い。そのダイナミクスも、不思議と曲に引っ張られているような感覚だ。
これだけ音数が少なくて、吸い込まれる作品というのも凄いな。聴き手としては、どういう印象を持つのだろうか。
4 件のコメント:
> どこかのウェブページだかブログだかで書いてあったのを昔見たことがあるのだが
それってワタシのところ?(笑)
http://thunder-sax.cocolog-nifty.com/diary/2006/10/post_76ed.html
> Thunderさん
おお!まさに!ドンピシャですね(笑)。
残り火、昨年の栃尾さんのリサイタルで演奏されてた覚えがあります。てっきり栃尾さんの委嘱初演かと思ってました。プログラム残ってるかなー。
> mckenさん
おお、そうでしたか。昨年も一昨年も、栃尾さんのリサイタルには伺えなかったのですが:
http://ktochio.com/category05/
…あ、やはり委嘱作品だったぽいですね。知りませんでした。
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