2009/12/31

Piet Swerts "Klonos"の四重奏版

ピート・スウェルツ Piet Swerts氏の「クロノス」は、アルトサクソフォンとピアノのための作品。非常に至難かつな作品であり、しばしば国際コンクールの課題曲としても使用されるほどだが、一方でとても楽しくカッコ良いため、人気も高い作品であると思う。

私の好きなサクソフォン奏者、David Brutti氏の演奏。音程感覚がやや不思議な感じではあるが、そんなことを感じさせないほど、テクニック的に突き抜けている。隅々までよく歌われた演奏で(さすがイタリア人!)、素晴らしい。


その「クロノス」であるが、2008年に作曲者自身の手によって、サクソフォン四重奏のバージョンが作成されたらしい。全く知らなかったのだが…。スウェルツ氏の公式サイトで、Catalogue→Saxophoneと辿っていくと情報を確認できる。Zzyzx Quartetという不思議な名前の四重奏団がレコーディングを作成中であり、すでに彼らのウェブサイトで試聴可能となっている。

聴いてみると、「これはアリ!」という具合で、もともとのピアノとサックスのデュオバージョン自体もコンパクトにまとまった作品であったし、もしかしたら今後、サックス吹きの間でも流行るかもしれないなあ。Zzyzx Quartetが来年の7月に発表するCDの、収録曲目となることが決まっているそうだ。

第4回世界サクソフォーン・コングレスのプログラム冊子

1974年にボルドーで開かれた第4回世界サクソフォーン・コングレスは、初めてフランスで行われたコングレスだった。今でこそ、アメリカ、日本を始めとして、どの国もレベルの高いサクソフォーン奏者を擁しているが、当時、最高のサクソフォン国家と言えば、フランスであった(事実、1978年に行われた世界初の国際コンクールにおいては、フランスのパリ国立高等音楽院で学んだ5人が、入賞を独占している)。そんなわけで、かなり気合の入ったコングレスになっていたと伝え聞くが、そのコングレスのプログラム冊子を見つけたので、ご紹介したい。

Guy Bordierというバソン奏者&サクソフォン奏者の個人的なウェブサイトに、プログラム冊子のスキャンデータがアップロードされている。下記リンク先のページの右のほう、「Auditeur au 4 eme Congres Mondial de Saxophone a Bordeaux en 1974」と書いてあるリンクをクリックすると、スキャンされたPDFデータが開く。

http://christian.lemenager.free.fr/saxophone.htm

ノースウェスタン大学四重奏団のソプラノサックスに当時まだ学生だったロバート・ブラック氏がいるとか、リヨン音楽院四重奏団のバリトンサックスを吹いているのが、こちらもまだ学生だったクロード・ドゥラングル教授(!)だとか、現在のサックス界を見渡したときに、世界のトップクラスに立っているプレイヤーが、学生として四重奏団に参加している様子がわかる。

うおお!クロージング・コンサートでボルドー管弦楽団を降っているのは、なんとポル・ミュール(マルセル・ミュールのご子息)だ。1978年のギャップ国際コンクールを想起させるな。ここでも、デファイエ四重奏団はカルメルを吹いているのだな。

レパートリー的にも非常に面白い。やはり、当時最先端の音楽が初演されまくっており、フレデリック・ヘムケ氏が「ドリームネット」を吹き、デファイエ四重奏団がエディット・ルジェの「四重奏曲」を吹き、あ、そういえばデファイエ氏とルデュー氏がベルノーの「デュオ・ソナタ」を3楽章バージョンで初演したのもこのときだ、とか、ロベールの「カデンツァ」って、この時が初演なの?とか、挙げていけばキリがない。

…という風に、非常に面白い資料であるので、ぜひじっくりご覧頂きたい。

余談:この資料は、単なるスキャン画像をまとめたPDFファイルであるはずなのに、なぜかGoogleの文字検索により見つけることができた。知らなかったのだが、もう一年以上も前から、Googleは画像から文字を認識して(OCR)インデックスする、ということをやっているそうだ。

2009/12/30

Sheet Music Plus

Sheet Music Plusを利用する機会が増えている。言わずと知れた楽譜の通販サイトで、確かに以前から利用していたこともあったのだが、ここ1年ちょっとの円高で、もうほとんど国内の楽譜販売業者から買うことはなくなり、楽譜の購入は(よほどの急ぎでない限り)すべて海外から行うことにしている。

一番最初にSheet Music Plusを利用したのは、イィンドジフ・フェルドの「サクソフォン四重奏曲」を買った時であった。国内で楽譜を探すと、どうしても13000円とか11000円とか、ずいぶんと高くてうろたえた記憶があるが、Sheet Music Plusで、たまたま"室内楽作品の楽譜全品20%オフ"なるキャンペーンをやっていて、送料込みで8000円+α程度で買えたのだった。その当時は、かなりの円安だったにも関わらず、だ。

その後の円高で、さらに利用しやすくなってしまった。スタンダードな作品について品揃えが豊富、買う量によっては送料が安い(5ドルくらい)、通常1週間とちょっとで届く、等々、あまり他のストアを使う意味がないのだ。最近も、国内で買うと5000~6000円する楽譜をSheet Music Plusで購入したところ、4000円ちょっとで買うことができ、満足。

最大の弱さは、コアな(マニアックな)ラインナップの欠如だろう。全ジャンルの楽譜を扱っているため、その部分は割り切っているのかもしれないが、個人的にはまだまだ不満足だ(笑)。まあ、カスタマーとしては棲み分けを行えばいいのだから、気長に待とうと思う。

2009/12/28

空間音楽を聴く

目下、世界最高難易度のサクソフォン作品の一つではないかとも言われる、ピエール・ブーレーズ Pierre Boulez「二重の影の対話 Dialogue de l'ombre double」。もともとグラモフォンから出版されていたブーレーズのエレクトロニクス作品集のCDに、原版であるクラリネット・ヴァージョンが収録されており、さらに一年ほど前にヴァンサン・ダヴィッド氏の演奏によってサクソフォン版のCD化がなされた。この驚異的な本作品を、CDで気軽に楽しめるようになったのは幸いであるし、ダヴィッド氏の演奏も素晴らしいのだが、本作品をきちんと楽しもうと思うと、やっぱり不足だなあと思う。

佐藤淳一氏の演奏、そして大石将紀氏の演奏により、これまで実演で2回ほど聴いたことがあるのだが、ライヴで聴く「二重の影の対話」は、すごい。6chものスピーカーを使用して、のっけから頭上を音が様々な方向に飛び交い、三半規管がグルグルしてくるような感覚すらおぼえる。電子音楽の世界ではSpatializationという名前が付いている効果で、音楽に空間芸術のエッセンスを加えた表現方法。CDで聴くことのできる、せいぜい2.1chとは大違いで、とてもエキサイティングなのだ。

CDで聴くと、どちらかというとその無数の音符のバラマキっぷりに耳が引き付けられ、「これは難しい作品だなあ」という印象が一番最初に浮かぶのだが、ライヴで聴くと印象は全く違う。一つ一つ発せられる音に、耳が追いついていかず、ちょっとしたトリップ状態に陥るのだ。音についていこうとして、突き放されるという感じ。

基本的に、音楽ってライヴで聴くほうが素晴らしいい印象を受けるものだが、空間音楽に関しては、殊、印象が別格かもしれない。あまり現代音楽という感じがせず、これはまさに体感する音楽!耳だけしか使っていないはずなのだけれど、なんというか五感を使う音楽のようにも思える。

「二重の影の対話」の演奏が毎月どこかであるわけではないけれど、もし機会があれば、ぜひ一度、ライヴで聴いてみることをおすすめしたい。

International Competition of Paris Ville d'Avray

このブログのコメント欄に、パリのVille d'Avrayで開かれるコンクールの要項が貼りつけられていた。書き込みを行ったのは、Jean-Louis Petit氏かな?

以下の情報は、募集要項から手写しでコピーしたものであるので、間違いを含んでいる可能性もある。正しい情報は、公式サイトを参照いただきたい。公式版の要項のPDFファイルは、こちらのリンクからどうぞ。

審査員:
Nicolas Prost
Christian Wirth
Claude Delangle
Jean-Louis Petit

予選課題曲:
Nicolas Bacri - Sonatina lapidaria
Pascal Zavaro - Rush
予選選択曲(1曲):
Pierre-Philippe Bauzin - Poème
Heitor Villa-Lobos - Fantasia
Franck Martin - Ballade pour saxo ténor
Darius Milhaud - Scaramouche

本選課題曲:
Florent Schmitt - Légende
Philippe Hersant - Chant hassidique
Jean-Louis Petit - L'un multiple

国籍制限がないのは普通だが、年齢制限がない、というのがおもしろいな。たぶん、日本からも何人か参加するんじゃないだろうか。それにしても、プログラムがマニアックすぎて、自分もほとんど知らない曲ばかりだ。

2009/12/27

中国の四重奏作品集

Prism Saxophone QuarteがInnovaレーベルから新しいアルバムを出したのだが、その内容が面白い。なんと、中国の四重奏作品集なのだそうだ。PrismSQというと、一番最初に出した(?)フィル・ウッズ他の作品が入ったアルバムは、どうもぱっとした印象がなかったのだが、その後コンセプチュアルなアルバムを立て続けに出している。昨年くらいに出したオルブライトの作品集や、JacobTVの作品集などは、内容も素晴らしいと思う。

Antiphony with Music From China(Innova764)
Wang Gouwei: Songs
Zhou Long: Antiphony
Lei Liang: Yuan
Chen Yi: Septet
Tan Dun: Shuang Que
Ming-Shiu Yen: Chinatown

(日本以外の)アジアのサクソフォン作品というと、2004年にダニエル・ケンジー Daniel Kientzy氏がKEAMSに吹き込んだ「KOREA-SAX」くらいしか思いつかないが、今後すこしずつ増えていくことだろう。まだ聴いていないのでなんとも感想を申し上げられないのが残念。

「KOREA-SAX」を聴き返してみると、外国から作曲スタイルを輸入した作品が多い。この「Antiphony」はどうなのだろうか。徐々にオリジナリティを獲得していくという、そういったプロセスを聴き続けていくのも、一つの楽しみだ。

2009/12/26

当たり前

いろいろな演奏団体が増えて、演奏会も増えるばかりで、なかなかすべてをカバーしきれなくなってきた。音楽だ学を出たサクソフォン奏者は数多く、留学して帰ってくるということも当たり前となってしまっている。

どんなジャンルの事柄でもそうだけれど、スーパースターが一人いるだけという時代は、とっくの昔に終わってしまったのかもしれない。良いことなのか、悪いことなのか、判断は難しいが…。

Boutry's new Concerto on YouTube

現在、ロジェ・ブートリー Roger Boutry氏はオーケストラアンサンブル金沢のレジデンス・イン・コンポーザーを務めている。その中で新作の「サクソフォン協奏曲」がブートリー氏に対して委嘱され、今年の9月にオーケストラ版、室内楽版(ピアノとのデュオ)、吹奏楽版が、それぞれ国内において世界初演されたことは、記憶に新しい。

そのなかで、吹奏楽版は林田祐和氏の独奏、ブートリー氏の指揮と、ホワイト・タイ・ウィンド・アンサンブル(洗足学園音楽大学の吹奏楽団)という組み合わせで演奏されたが、その演奏がYouTubeにアップロードされていた。

3楽章形式。独奏はソプラノ、アルト持ち替えで、バックの吹奏楽団の編成は、木管楽器を中心とした編成(バックバンドのアルトは、小川さんかな?)。林田氏の独奏は、音域によるコントロールのばらつきといったサクソフォンの弱点からは完璧に逸脱した、清潔感あふれる素晴らしい演奏だ。ブートリー氏は、けっこうなお年のはずだが、指揮を振る姿はオーラあるなあ。

・第1楽章


・第2楽章


・第3楽章

2009/12/25

増殖する温度~視覚芸術

ダッパーさんのCD当たった~♪これは素敵なクリスマスプレゼントですな。いや、届く時期を考えると、お年玉?

----------

12/23、代官山駅近くのアップステアーズ・ギャラリーに伺った。学生時代の吹奏楽団の後輩(ある意味では飲み騒ぎ仲間かも)が、その友人と一緒にグループ展を開くことを知り、比較的今の私の住まいから近いこともあって、伺うことにした次第。彼女は芸術専攻で、現在修士過程の2年生。今秋にはつくば市で個展を開催し、さらに現在は修了制作を控えているなど、忙しい毎日を送っているとのこと。

【増殖する温度】
出展:安部ゆかり、藤嶋卓、篠塚江里
日時:2009/12/13~2009/12/28 11:00~18:30(最終日は16:00まで)
会場:Upstairs Gallery(東急東横線代官山駅近く)
問い合わせ:03-3780-1165(会期中のみ)

それほど広くないギャラリー、さらに遠隔地ということで作品数もそれほど多くなかったが、大変見ごたえがあって、その後輩といろいろしゃべりながら、1時間半ほども長居してしまった。以前観て印象に残っていたのは、紙と鉛筆のみで作られた超巨大な細密画という趣の作品「L・R」というタイトルのものだったが、今回のメインは、その緻密さは残しつつ、全体にヴィヴィッドな色合いを載せた作品。バックグラウンドに人の顔がおぼろげに映り、その中心点から手前に向かって、華やかな線が踊り狂う。細かい仕掛けもたくさん施されていて、ずっと観ていても、次々に新しい発見があった。

私は絵画とか写真とかの視覚芸術に関しては、音楽以上にドシロウトで、感じたことを言葉にするのが難しいなあと感じてしまうので、なんとなーく、観ながら考えたことを個条書きにすると…

・ぱっと観て、「これはこういうものかな」というふうにイメージが固定されると、そこから離れることなく、コアとなるイメージの周りにごてごてとパーツをくっつけて、思考を膨らませていこうとする、という見方をしていることがわかった。

・音楽は時間軸上にマッピングされる芸術だけれど、視覚芸術は空間上にマッピングされており、全体像を把握するのが容易だ。これはすなわち、着目した部分について細部を観察しやすいということに繋がっているのかなと思った。

・作品そのものが発する即興的な面白さというのは、やっぱり音楽のほうが勝っていたりするのかしらん。絵画はその場に固定されていて変わりようがないからな。

うーん、きちんと勉強しないとだめですね(^^;本グループ展は、12/28日まで。お近くの方はぜひどうぞ。あ。いまふと思ったけど、絵画の印象を基にして、フリーの即興とかやったら面白いかもな。

2009/12/23

ハマ★クリ大舞踏会

先週土曜日の「ハマ★クリ大舞踏会」をちょっと振り返ってみたい。

ハマクリというのはヨコハマクリエイティブセンターの略。旧第一銀行の横浜支店の一部を移設・改築した美しい建物で、みなとみらい線馬車道駅に直結している。そのハマクリで、Ms Projectsというイベント企画団体が、サルサを中心としたダンスパーティを企画・運営し、そのダンスフロアでの演奏団体としてOrquesta de la Candaが呼ばれ…ということだったらしい。私は特にOrquesta de la Candaのメンバーではないのだが、今回いろいろご縁あって、エキストラのバリトンサックスで参加させていただいた、というわけ。

14時頃に会場入りし、PAセッティングやリハをこなし、18:50からの演奏に向けて備える。コロ(コーラス)を練習してみたり、おやつを買いに行ったり。そのうち暇を持て余してしまい、あまりにやることがないので、mckenさんからの情報をもとに、mckenさんとともにサクソフォンアンサンブル・なめら~かの忘年会に突撃。乾杯&ビールを一杯だけ頂いてとんぼ返り。リハのあとのビールって、美味しいなあ(爆)。

1stステージは少し遅れて19:00頃から始まった。フロアはダンスをする人で埋め尽くされて、吹いているこちらもテンションが上がりっぱなし。

♪1st stage
Engano
Que nos paso
Herida
A Puro Dolor
Rumba Y Salsa

2ndステージまで、1時間ほど時間が空く。参加者がダンスをするだけではなくて、パフォーマンスもあったりして、観ても楽しめるイベントだった。…が、やっぱり踊れた方が楽しそうだ。地道に覚えていこうっと。写真は、一番広いフロアの様子。いかにも「舞踏会」って感じの、石造りの豪勢な空間だ。外からも、中で踊っている様子が見え、なかなか面白い。

2ndステージも、テンション上がりっぱなし。自分の出来はともかく(?)とても楽しく吹けた。それにしても、福本氏のソロ(写真)は素晴らしかったなあ。この時ばかりはフロアのお客さんもダンスをやめて聴き入っていたし、後ろで聴いているこちらも思わずホロリ。打って変わって、Oyelo que te convieneやQuimbaraなどでは、超ハイテンションで、楽しかった。

♪2nd stage
Amigo
Oyelo que te conviene
Como fue(福本氏 solo)
Feliz Navidad(福本氏 solo)
The Christmas Song

♪Encore
Quimbara

当日の演奏の一部は、YouTubeにもアップロードされている。Orquesta de la Candaで検索してみてください(例えば、Enganoはこちら→http://www.youtube.com/watch?v=FsR2IMe6h2Q

2009/12/22

ダニエル・デファイエの生徒たち(その17)

昨日は、4/17に中目黒で開催を予定している某企画について、新宿で決起飲み?を行った。仕事が長引いてしまい、着いたときには21:30!しかし、西尾貴浩さんが話してくださる爆笑ネタを肴に、終電まで飲んでしまった。

----------

[1984]
新作課題曲:
Alain Bernaud - Rhapsodie
1er prix:
Jacques Baguet
Gérard Candel
Toshihisa Ogushi
Jean Marc Larché

卒業生のなかで注目すべきは、「ハッピーサックス」の小串俊寿氏。東京藝術大学を経て、パリ国立高等音楽院に留学。帰国後の活躍っぷりは、周知の通り。教育活動にも熱心で、様々な音楽大学で教えているので、おそらくお弟子さんも多いことと思う。私としたことが、「ハッピーサックス」まだ聴いた事ないんだよなあ…(>_<)来年こそは行かなきゃ。

以前レビューした「Ogushi's Ballade」。これ、良いです。収録されているのは、平たく言えばポップスなのだけれど、高潔さと親しみやすさ、その中間地帯を、幸せを振りまきながら歩みを進めていく、そんな素敵な演奏(どんな演奏だ)。まあ、聴いてみてください。短い曲だけれど「女心は秋の空」という作品が、個人的にはいちばん好きかな。「翼をください」もいいなあ。

課題曲は、アラン・ベルノーの作品。日本でベルノーと言えば「四重奏曲」がほとんどで、ソロの曲を書いているというのは、あまり知られていないと思う。どんな音なのだろうか。サクソフォンのための作品としては、バリトンサックスのために「ユモレスク」というソロ曲を、ソプラノサックスとバリトンサックスのために、有名な「二重奏のためのソナタ」を書いている。珍しいところだと、ソプラノサックスとチェロのための二重奏なんてのもあるそうだ。

Jacques Baguetは、ドゥラングル教授率いる伝説のいぶし銀カルテット(?)Quatuor Adolphe Saxのバリトンサクソフォン奏者としての名前を知っていた。クラシックに留まらずジャズも手がけ、さらに1993年からはシタール(インドの伝統楽器)を学び、現在も各所で活躍しているそうだ。Macon音楽院教授。

Jean Marc Larchéは、どうやらジャズの方面で活躍しているらしい。ECMレーベルに、参加アルバムを発見した。Gérard Candelについては、際立った情報を見つけられず。

2009/12/20

四重奏練習

つくば市で、四重奏練習。卒業してからはつくばに行く機会もほとんど無くなってしまったが、これからしばらくは練習で伺うことが多くなりそうだ。

John Whelan/Benoit Menutの「Trip to Skye」と、Gyorgy Ligetiの「Musica ricercata」を音出し&合わせ練習。「Trip to Skye」のほうは、本当に美しいメロディで、おまけにアレンジも素晴らしくて(原曲が持つ遅さ・もどかしさの面影がほとんどない笑)、あとは奏者の力量次第といったところ。「Musica ricercata」は、譜面を見た感じの3倍くらい難しく、かなり苦労しそうだ。そういえば、Fabio Oehrliという人のアレンジなのだが、ギョーム・ブルゴーニュ編の音とは、かなり違う感じがする。

四重奏練習のあとは、場所を移して2時間ほど個人練習。特にリゲティはけっこう無茶な譜面もあったりして(↑)大変だ。

----------

下の写真は、美しく飾り付けられた、つくばセンタービル"石の広場"の様子。そう、ライトアップじゃなくて、これぜんぶキャンドル!びっくりした。

昨日の横浜

昨日は、ヨコハマクリエイティブセンター(旧第一銀行横浜支店の一部を移設改装した建物)で、オルケスタ・デ・ラ・カンダのエキストラとして吹いてきた。楽しかった~。

詳しいレポートはまた後日。ちなみに、建物の外観はこんな感じだった。美しいですね。

2009/12/19

今日の演奏のご案内

先週に引き続いて、オルケスタ・デ・ラ・カンダというバンドのエキストラで出演。このイベントは、ほぼ完全にダンス系イベントのため、あまり音楽関係のお知り合いにプッシュできないのが心苦しいところだ(笑)。このブログを見ている方で、サルサをガンガン踊れちゃうぜ!という稀有な方は、お越し下さいませ~。

今日はmckenさんもいらっしゃるので、大変楽しみ。ついで、なんと今日もオルケスタ・デ・ラ・ルスの福本氏、ゲスト出演予定。なんと豪華な。

【ハマ★クリ大舞踏会】
日にち:12月19日(土曜)
会場:YCC全館 http://www.yaf.or.jp/ycc/(みなとみらい線・馬車道駅)
タイムスケジュール:
☆昼の部 14:00-16:20
◆Lesson 
 14:00-15:00  YASUJI&AKI Son 入門
 15:00-16:00  HIROSHI サルサ初心・初級
◆Work Shop
 15:10-16:20  HIROKO ON1 中級
☆夜の部 17:00-22:00 *ドレスコード有り
★SALSA Lesson(無料)
 17:30:18:00  YUKO(Los Salseros)
★Performance
 Los Salseros(Yuko&Manuel produce)
 Muchakucha(Hiroko produce)
 Golden Eggs(Tetsu produce)
 YASUJI&AKI
★Latin Live
 Orquesta de la Canda
★DJs
 Kura2・RON and more
Charge:
 Work Shop  2,000円
 WS+Party  4,500円
 Lesson  各1,000円
 only Party(1Drink)3,000円

2009/12/18

ダニエル・デファイエの生徒たち(その16)

[1983]
新作課題曲:
Pierre Ancelin - Saxophonie
1er prix:
Fabrice Moretti
Claude Héraud
Hervé Saillard
Bernard Guillaume

ファブリス・モレティ氏だ!フランスのナンシーに生まれ、ナンシー音楽院で、デファイエQのバリトン奏者としても著名な、名手ジャン・ルデュー氏に学んだ。16歳でパリ国立高等音楽院に入学、卒業時には、一等主席の他、審査員特別賞を受賞している。この審査員特別賞というやつは、なんでもパリ音楽院サクソフォン科の歴史上、ロンデックス氏とモレティ氏しか受賞していないということだから、驚き。コンクールの入賞歴としては、何といっても第1回アドルフ・サックス国際コンクール@ディナンでの第3位入賞が有名(第1位:ヴァンサン・ダヴィッド、第2位:ファブリツィオ・マンクーゾ)であり、その他にも数々のコンクールで入賞しまくっている。現在は、パリ市立ベルリオーズ音楽院教授。今はもうおそらく解散してしまった、ジャン・ルデュー四重奏団のソプラノサクソフォン奏者だった。

モレティ氏の演奏は、驚異的だ。テクニックがものすごいとか、高潔な美しい音色をしているとか、今はもうメインストリートから外れてしまった往年のフレンチストイルを受け継いでいるとか、素晴らしい点を挙げていったらキリがない。数年前に初めて生演奏を聴く機会に恵まれたが、そのときは本当に感動したものだ。聴きにはいけなかったのだが、今年も来日してD-SAXとイベールの「コンチェルティーノ」を演奏したそうだ。

モレティ氏のアルバム「SONATA!(Momonga Records)」。フランスのプレイヤーでフランスの作品、かつ手に入りやすい音盤、ということだったら、真っ先におすすめするCD。「プロヴァンスの風景」や「PCF」といったスタンダードな作品から、サンカンやリュエフ、服部吉之先生とのデュオで演奏されたベルノーなど、ちょっとマニアックな曲が入っているのも、良い。以前レビューした記事もご覧頂きたい。

…ということで、モレティ氏に関する記述が多くなってしまったが、この年の課題曲はPierre Ancelinの作品。1934年の生まれで、サクソフォンに関する作品はこの「Saxophonie」一曲しか書いていないそうだ。

Claude Héraud氏は、五重奏団 Atout Saxのメンバーとしての記述を見つけた。Clermond-Ferrand音楽院教授。この五重奏団、CDも出しているはずだが、今は活動していないのかな。Hervé Saillardとともに、Quatuor Ars Gallicaのメンバーでもあるそうだ。Bernard Guillaumeについては、際立った情報を見つけられなかった。

2009/12/17

Paul Brodie plays...

島根県のF様より送っていただいたCD-R。ポール・ブロディ Paul Brodie氏の小品集。ジャン=マリー・ロンデックスとポール・ブロディの二重奏の話になって、そんなことから送っていただけることになったものだ。ブロディ氏というと、カナダ出身のサクソフォン奏者で、Ambassador of the Saxophoneの異名を取る、大変著名なプレイヤーのひとり。レコーディング、演奏機会ともに、非常に多く世に出たとのことなのだが、世界中で聴かれているとは言い難い。実際、私もブロディ氏の演奏をきちんと聴くのは初めてだ。

出版はGolden Crest。ピアノは、George Broughという方が弾いている。

J.S.Bach - Bourree
E.Bozza - Aria
J.Ibert - Bajo la Mesa
P.Lantier - Sicilienne
A.Tcherepnine - Sonatine sportive
D.Milhaud - Brazilleira
E.Granados - Goyscas
R.Rungis & F.Maurice - Scherzo
C.Debussy - Syrinx
P.Maurice - Tableaux de Provence

ミュールのような、ふくよかな音色と深いヴィブラート。そして、息の長いフレーズ。いくつか演奏されているアレンジものを聴くと、往年のフレンチ・スタイルを彷彿とさせるような感覚を覚える。弱音でのヴィブラートから始まる、ボザの「アリア」なんか、ぞくぞくしてしまう。やや残響が不自然なのだが、これは人工的に擬似残響を入れているのかな?

ただ、一方で(Fさんも指摘していたが)テクニック的にかなり難があるのも事実(^^;速いパッセージになると、リズム処理が崩れるし、せっかくの美しい響きも一緒に引っ込んでいってしまう。ミヨーの「ブラジレイラ(=スカラムーシュの第3楽章)」や「プロヴァンスの風景」では、開き直って楽譜まで変えてしまっている!それはどうかとも思ったが(笑)こちらも、ある意味聴きものなのかな。

2009/12/16

IBC SE plays Gotkovsky! on YouTube

サクソフォーン・フェスティバルのレセプション時の会話。「IBCさんの演奏動画、YouTubeにアップしてくださいよー」「あ、実はあるよー」…ということで、探してみたところ、あっさり見つかった。

イダ・ゴトコフスキーの「四重奏曲」、最終楽章。驚異的なダイナミック・レンジ。やっぱり、プロの領域に踏み込んでいる気がする。数年前のサクソフォーン協会のコンクールでIBCサクソフォンアンサンブルさんがみせた、あの素晴らしい演奏を思い出す。



関連動画として、ティエリー・エスケシュの、「タンゴ・ヴィルトゥオジテ」もあった。こちらも相当難しい曲のはずだが、もう余裕綽々な感じ。すごいなあ。

2009/12/15

サルサ・パラダイス4

築地のキューバンカフェという、なかなか馴染みのない場所での本番。今回はオルケスタ・デ・ラ・カンダ Orquesta de la Candaのエキストラとして、バリトンサックスで出演してきた。そう、このバンドでバリトンサックスを吹いている方こそ、おなじみmckenさんなのである。さらに、その他にもいろいろとご縁があって、今回参加させていただくことになったというわけ。

ホーンセクションのみならず、リズムセクション、ヴォーカルまで、なかなかアマチュア離れした技術を持つ方ばかりが参加しているバンドで、練習段階からヒイヒイ言いながらなんとか付いていった、という感じ。おまけに、オルケスタ・デ・ラ・ルスの福本佳仁氏や、サックスのクビート氏まで参加して、緊張しっぱなしだった。とは言っても、やっぱり演奏が始まってしまえば楽しさのほうが勝ってしまうのだけど(^^;

お店のスペースの半分をダンスフロアにしてしまうという会場のセッティングで、ひとたび曲が始まれば、全面ダンステリア化していた。写真撮ってくれば良かったな。それにしても、あれだけダンスできれば楽しそうだなあ。かくいう私も、機会があるごとに少しずつ教えてもらっているところだが…。

お知り合いの方が何人も来てくれた。ありがとう!

以下がセットリスト。アンコールの、トランペットのソロ回しは、リアルに鳥肌がたってしまった。いやあ、すごかった。

♪1st stage
Engano
Que nos paso
Herida
A Puro Dolor
Rumba Y Salsa

♪2nd stage
Amigo(クビート氏 solo)
Oyelo que te conviene
Moanin'(福本氏 solo)
Feliz Navidad(福本氏 solo)
The Christmas Song

♪Encore
Quimbara

2009/12/14

某仕分けについて

ちょっと迷ったのだけれど、いちおうリンクだけ載せておきます。12/15までだそうです。

この問題についてどのくらいの動きがあるのかなーと、オーケストラのウェブページを巡って調べてみて驚いたのが、在京オケに関しては、ウェブ上でほとんど動きが見られない、ということ。在京オケに関して言えば、助成金が及んでいる事業って、少ないのかなあ。今回は時間がほとんどないので調べられないのだけれど、19億円という数字がどのように分かれていくのかは、非常に興味あるところだ。

事業仕分け問題に関する、神奈川フィルのページ:
http://www.kanaphil.com/info/index.html#47

サクソフォーン・フェスティバル2009・一日目

♪オープニングコンサート/フェスティバルオーケストラ
E.グリーグ - 組曲「ホルベアの時代から」よりプレリュード
伊藤康英 - 地球は踊る

♪B会員・サクソフォーン愛好家たちの祭典/各団体
R.G.オルモス - コンチェルティーノ(Duo Green Green)
W.A.モーツァルト - アイネ・クライネ・ナハトムジーク(VIFサクソフォーン・アンサンブル)
A.リード - 「オセロ」からの3章(サクソフォンアンサンブル・なめら~か)
NAOTO/啼鵬 - for you...&葉加瀬太郎/啼鵬 - 情熱大陸(EnsembleΦ)
N.リムスキー=コルサコフ - 交響組曲「シェラザード」より(サックス倶楽部アクシェ)
G.ホルスト - セント・ポール組曲(KMA-OBオーケストラ)

♪出演愛好家とフェスティバルオーケストラによる合同演奏/フェスティバルオーケストラ&各団体
伊藤康英 - サクソフォーンのためのファンファーレ
M.ラヴェル - 亡き王女のためのパヴァーヌ
C.タイケ - 旧友

毎年恒例のアマチュアサクソフォン愛好家向けステージでした。お昼時であり、しかもフェスティバルが始まって間もない時間帯ということで、関係者はみんな出払ってしまっていて、お客さんがかなり少ない状況になっているのが残念。来年は30回記念ということだし、我々としてもぜひ盛り上げていきたいところだ(と、気持ちだけでも前向きに!)。

私は、EnsembleΦという団体に参加させていただいた。毎年恒例の臨時編成アンサンブルで、クラシックが続く中にすこしばかりのアクセントを、ということで、ややポップス寄りの選曲をしている。今回の目玉は、高橋宏樹さんを鍵盤ハーモニカに迎えての演奏でしょう!吹きながら、聞き惚れてしまった。

♪第6回アンサンブルコンクール最高位受賞団体/IBCサクソフォンアンサンブル
C.ドビュッシー/V.ダヴィッド - 弦楽四重奏曲より第1,4楽章

おなじみIBCさん。ヴァンサン・ダヴィッド編のドビュッシー「弦楽四重奏曲」をやってしまうとは…やっぱりハンパないっす。年々、アマチュア離れして、なんかもうプロの領域に踏み込んでいるのではないかと思わせるような演奏だった。あ、YouTubeに動画上がってるじゃん…( ̄ー ̄)ニヤリ。

♪第12回ジュニアサクソフォーンコンクール最高位受賞者/上野耕平
L.E.ラーション - サクソフォン協奏曲より第1,2楽章

なんと、自分のリハで聴けなかった!これは残念。どなたか感想聞かせてください。
…しかし、高校2年生が、ラーションを吹いてしまう、そういう時代なのだな(ちなみに、2位の方も高校2年生で、クレストンの「協奏曲」だと!)。あと20年くらいしたら、中学生がデニゾフ吹いているかも、というのも、あながち冗談ではなくなるのかもしれない。恐ろしいことだ。

♪スペシャルコンサート第1部/Quintet CIRC
塩安真衣子 - きらきら星 for Quintet CIRC
塩安真衣子 - CIRC!
塩安真衣子 - ふるさと変奏曲
渡部哲哉 - 2つのアメリカ民謡
M.ムソルグスキー/塩安真衣子 - 組曲「展覧会の絵」より

シルクの演奏は楽しい。技術的に完璧以上のものを持つ5人が、(良い意味で)プロフェッショナルらしからぬ推進力とノリで、ぐいぐいと突き進んでいくのだ。キラキラ星からCIRC!へのクールな繋ぎなんか、これはちょっと鳥肌がたってしまったくらい。塩安真衣子さんは、たぶんアレンジを専門に学んだことはないと思うのだが、ほとんどプロの世界の仕事に到達していると思う。ちなみに、ムソルグスキーは、これは羽石道代さんを迎えて、意外や意外、かなり正統的なアレンジだった。
あ、塩安さんのMCが、なんだか意外な感じで可愛らしかったです(笑)…というのは、私も含めた周辺の人たちの評。

♪スペシャルコンサート第2部/石渡悠史
G.ビゼー - アルルの女 ほか
ハーバート - インディアン・サマー
H.カーマイケル - スターダスト
R.カーペンター - 青春の輝き

いちばん楽しみにしていたコンサート。最初の3曲がクラシックで、まず2曲をピアノと、そして「アルルの女」を滝上典彦、宗貞啓二、福住拓朗、坂東邦宣というメンバーとともに。最初の伸ばしのヴィブラートから、ぐっときた。聴いたことのないような倍音構造の音色に、じっくりとかかる深めのヴィブラート。素晴らしい、本当に素晴らしすぎる。ところで、上田卓さんが石渡氏にインタビューを行いながら進行したのだが、そのなかで話されるエピソードがいちいち面白くて、つい聞き入ってしまった。芸大受験のときはクラリネットでウェーバーを吹いたとか、阪口氏の代役としてコロムビアのスタジオにしょっちゅう出入していたとか、阪口氏の手紙の話とか…。一度、インタビューを敢行したい…いや、これはぜったい実現させたいぞ!
しかし、さらにパワーアップしての石渡氏の真骨頂は後半だった。テナーにPE'Sの門田晃介を迎えて(けっこうびっくりした。石渡氏のお弟子さんなのだろう)、インディアンサマー。ホールをいっぱいに満たす強烈な音色の存在感と、フラジオ音域を交えての見事なアドリブ。そして、最後は「青春の輝き」でしょ、感動を超えて、本当に泣いてしまった。もっともっと聴きたかった!

----------

終了後は、レセプション。アマチュアの方、プロの方関係なく、いろんな方々と話せて良かった。しかし、ジャンケンが弱いのはどうにかならんものか…(苦笑)。レセプション後は二次会までくっついていって、終電30分前に駅前の居酒屋を飛び出した。帰りの電車、気がついたら逆走していた(汗)

今年は、二日目は自分の本番で行くことができなかった。来年は、両日とも行けるといいなー。

昨日の築地

サルサパラダイス4という催しで、オルケスタ・デ・ラ・カンダのエキストラとして参加でした。こちらはこちらで、面白かったなあ。こちらもまた、レポート書きます。

2009/12/13

昨日のフェス

昨日のフェスティバル、楽しかったなあ。詳しいレポートは、またこんど書きます。

今日は残念ながら伺えない。頭を切り替えて、ラテンな本番です。

2009/12/11

Quatuor de saxophones contemporain plays Aubert Lemeland

島根県のF様より、LP復刻のCD-Rを、また何枚か送っていただいた。今日ご紹介するのは、Quatuor de saxophones contemporain(以下、Contemporain SQ)のアルバムで、Aubert Lemelandという作曲家の作品集。Contemporain SQは、連載「ダニエル・デファイエの生徒たち」で何度か話題にしているのだが、ジャック・シャルル Jacques Charles氏が率いた四重奏団で、同世代の作曲家たちに積極的に作品を委嘱し、多くの初演を手がけた団体である。もちろん、現在は存在せず、その活動実態はいまいち掴めなかったのだが…。ちなみに、このアルバムに参加しているメンバーは、SATBの順にJacques Charles, Pierric Leman, Ghislain Mathio, Max Jezouinである。

そして、このLPで取り上げられているオーベール・ルムランは1932年生まれの作曲家。今回CD-Rを送っていただくまで、名前を存じなかったのだが、サクソフォンの作品を大量に書いているようだ。演奏されているのは、以下の4曲。

Concertino, Op.103
Variations, Op.57b
Noctuor, Op.93
Epilogue nocturne, Op.22

おそるおそる聴いてみると、意外なほどの聴きやすさに驚く。メロディは、トンがった現代音楽にありがちなわけのわからなさは全くなくて、はっきり言って「美しい」。作品のせいなのか演奏のせいなのか判らないのだが、リズムがずいぶんと身を潜めており、微温的というかなんというか、実に不思議な密度を湛えた演奏だ。

ジャケットの縮小コピーを付けてもらったので、ジャック・シャルル氏による作品解説を、ざっと翻訳してみた。相当意訳な部分もありますが、ご勘弁ください(^^;

今回、アーベール・ルムラン Aubert Lemelandがサクソフォン四重奏のために書いたすべての作品が、初めてレコーディングされた。これらの作品は、ルムランがギャルド・レピュブリケーヌ四重奏団のために「Epilogue Nocturne」を作曲した1971年から、Concertino, Op.103を作曲した1980年までの間に、作曲されている。Concertino(Contemporain SQに献呈)は、Noctuor(1978年)とともに、シカゴのサクソフォンコングレスで初演された。Variationsは、1977年に作曲され、クラリネット版も制作されている。
ルムランは、サクソフォンに対する嗜好が強いようであり、それはこれまでの作品に現れている。「サクソフォンと弦楽のための四重奏曲」「オーボエ、サクソフォン、クラリネットのためのテルツェット」「ソプラノサックスとピアノのための"Epitaph to John Coltrane"」「ソプラノサックスとピアノのための"ウォーキング"」「Paul Pareille Ensembleのための"Reed Quartet"」などである。
1971年に作曲された「Epilogue Nocturne」は、いくつかのメロディを含むゆっくりな楽章で構成されている。楽章に含まれるメロディは、瞑想的な雰囲気を持つ旋律線が、ポリフォニーの中に組み込まれ、密度の大小を繰り返すようなものである。これにより、作品に対して、永遠につづくかのような感覚を与えることに成功している。「Noctuor(NocturneとQuatuorを掛け合せた造語である)」は、連続して演奏される3つの楽章のなかで、作曲者は、サクソフォンの表現力の豊かさと比類なき柔軟性を現わしている。楽曲の最終部には、コラール風のコーダが挿入されている。「Concertino」は、2つの対照的な楽章(ゆっくりな楽章と速い楽章)から成り、一週間もかからずに書かれたという。この9分の短い作品は、後に管弦楽曲「Ultramarine Noocturne」に転用された。ほとんどのメロディラインが、この四重奏曲から採られている。同作品は、トゥールーズ・キャピトル管弦楽団によって、1982年2月に初演されている。最終部のプレストに入る直前、2つのリズムが出現するが、そのうちひとつは高潔な音でもって演奏されているのが判るだろう。「Variations」は、テーマと8つの変奏からなる作品である。変奏は、ダイナミックなもののあとに続いて緩やかなものが演奏され、それはさながら生命のバイオリズムのようでもある。

2009/12/10

演奏のご案内

クラシックだけではなくて、ご縁があっていろいろと取り組んでいる。今週末の演奏会の予定をご案内したい。

----------

B会員向けの愛好家演奏ステージということで、毎年出演しているEnsembleΦ(8重奏)での演奏。啼鵬氏の新編曲「for you...」と、高橋宏樹さんを鍵盤ハーモニカに迎えて「情熱大陸」を演奏する。

【サクソフォーン・フェスティバル2009】
日時:2009年12月12日(土曜) 14:00過ぎくらい?
会場:パルテノン多摩
主催:日本サクソフォーン協会
http://homepage2.nifty.com/jsajsa/

----------

オルケスタ・デ・ラ・カンダというサルサバンドに、バリトンサックスでエキストラとして出演する。mckenさん、にこらすうさんにお世話になっている。クラシック畑の人間としては、どちらもなかなか様子が想像できないのだが、面白そう。豪華ゲストの予定あり!なんと、デ・ラ・ルスの元トランペッターの福本氏、そしてサックスのクビート氏がいらっしゃるのか。え!?すごい!

【サルサパラダイス!4】
日にち:2009年12月13日(日曜)
会場:築地キューバンカフェ(築地市場駅3分)http://www.geocities.jp/cubancafe2005/
時間:18:00open、19:15ライブ(1st)、20:00パフォ、20:45ライブ(2nd)
Charge:当日3000円/前売・予約2500円(ドリンク込)
演奏:Orquesta de la Canda(http://www.delacanda.com/)
DJ:Kura2
MC:YUKARIN
18:00 open/DJ time
18:30 無料ダンスレッスン
19:15 Orquesta De La Canda 1stステージ
20:00 ダンスパフォーマンス
20:45 Orquesta De La Canda 2ndステージ
21:20 DJタイム(タンゴ数曲あり)
~22:30 DJ time

四重奏の楽譜とか

忘年会のシーズンだと、ブログがなかなか書けないですね(笑)

----------

Benoit Menut氏から、とある四重奏曲の楽譜を送っていただいた。売り物ではなく、どんな感じの楽譜かなと思っていたのだが、予想通り手書きのスコアだったため、時間を見つけてはパート譜を作成している。しかし、これは非常に楽しそうな楽譜で、音を出してみるのが楽しみだ。

あとは、リゲティのおなじみの四重奏曲。こっちは、なんだかトリッキーというか、音は聴いたことがあったけれど、実際に楽譜を見てみると、不思議な感じだ。拍子とか、記法とか、こうなっていたんだーと思う部分が多数。

2009/12/07

ビジネスクラスSEの演奏会

日曜日は、朝早くに実家から東京へ戻り、上中里へ。週末のサクソフォーン・フェスティバルのための練習を、午後いっぱい行った。いつも参加させていただいているEnsembleΦで、今年はNAOTO氏作曲/啼鵬さん編曲の「for you...」を、サクソフォン・オクテットにて。そして、オクテット版の「情熱大陸」に、ピアニカ、ピアノ、ドラムスを迎えて。ピアニカは、なんと高橋宏樹さんです。カッコいい!!楽しいサウンドになりそうだ。

練習後は、早々に失礼して、都営新宿線の瑞江駅へ。ビジネスクラスサクソフォンアンサンブルさんの演奏会を聴きに伺った。

【Business Class Saxophone Ensemble Concert】
日時:2009年12月6日 18:30開演
会場:東部フレンドホール
プログラム:
R.Clerisse - Introduction et Scherzo
E.Bozza - Andante et Scherzetto
F. et M. Jeanjean - Quatuor de saxophones
A.E.Chabrier - Espana rapsodie
斉藤高順 - サクソフォンのための四重奏曲
櫛田[月失]之扶 - サクソフォン四重奏曲「彩」
村松崇継/浅利真 - 彼方の光
内藤淳一 - 動物の謝肉祭

時間的に、最後の曲だけ聴ければ良いかなあと思っていたのだが、なんとか「動物の謝肉祭」の途中で駆け込んで、楽章間にドアをくぐることができた。うわっ、ものすごい数のお客さん、しかも、サックスを吹いている感じではない感じの方が多数。8回近く続けてきたということだが、固定客がついているのだろうか…いや、それにしても。

演奏がすばらしかった。8重奏だったのだが、驚くほどのダイナミクスの幅に、積極的な表現。表現のベクトルの一致具合は、これは指揮者無しのアマチュアのアンサンブルではちょっと聴いたことがないほどかも。テンポの取り方とか、かなり何度も何度もリハーサルしたと思われるほどに、気持ちよく揃っていて、この手のアンサンブルによくある危なげなさを感じるどころか、とても惹き込まれて聴いた。

最後に演奏していた内藤氏の作品は、委嘱作品で、プーランクのそれとは裏腹(?)に「鯉のぼり」「いぬのおまわりさん」「子ぎつね」「赤とんぼ」「黒ネコのタンゴ」という、純和風愛唱歌集を元に再構成した組曲。それぞれの楽章にテーマが与えられており、それに伴って各楽章のスタイルも変化に富んでいて、大変楽しかった。子ぎつねがインフルエンザをひいていたとは…。

アンコールに、内藤淳一氏の「ブライアンの休日」と村松崇継の「あなたがいるから」。最後の最後はしっとりとした素敵なサウンド、そしてメロディで締めて、客席からは大きな拍手が響き渡った。今度はぜんぶ聴いてみたいなあ。特に、小編成の演奏に興味がわいてきた。

2009/12/05

Ducros plays "Hard" on YouTube

クリスチャン・ロバ Christian Lauba作品のインタラプタの筆頭格として著名な、Richard Ducros氏が、テナーサクソフォンのための無伴奏作品「Hard」を演奏している動画を見つけた。CDを聴くと、けっこう落ち着いた解釈をしているようにも聴こえるのだが、ここでのデュクロス氏の演奏は、なかなか自由奔放というか、激しい(^^;

国内では、平野公崇さんが取り上げて以来、そんなに流行った印象がないなあ。一度くらいは実演で聴いてみたいものだが。

2009/12/04

ダニエル・デファイエの生徒たち(その15)

一日だけお休みをとって、長野県の実家に帰ってきています(ホームシックとかじゃないよ)。やっぱり落ち着くなあ。

----------

[1982]
新作課題曲:
Pierre Max Dubois - Respirations
1er prix:
Hiroki Saito
Marc Sieffert
Philippe Duchesne
Michel Buatois
Miguel Villafruella
Koichi Araki
Philippe Portejoie

これはこれは、よく知られた名前ばかりであることよ。まず、課題曲の作曲家であるデュボワは、おなじみですね。「Respirations」は、現在はBillaudotから出版されているそうだが、どんな曲なのだろうか…聴いてみたい。

日本人の卒業生が二人いる。斎藤広樹氏、荒木浩一氏、両者とも九州で活躍するサクソフォン奏者。1974年、デファイエ氏二度目の来日となったおりに、お二人は福岡市でレッスンを受け、それが契機となってパリへ留学したそうだ。斎藤広樹氏とデファイエ氏のかかわりについては、ThunderさんのWebページにアップロードされているエッセイ「Memory of Deffayet」、荒木浩一氏については、こちらの記事を参照いただきたい。いずれも非常に有名な資料だが、改めて読んで、その価値の大きさを再確認したところ。

ミゲル・ヴィジャフルエラ氏は、キューバ生まれのサクソフォン奏者で、デファイエ氏に師事して以降、現在では中南米を代表するサクソフォン奏者として活躍している。氏の公式ページを観ていただければ、そのアクティブさがわかると思う。YouTubeにも大量に動画がアップロードされており、素敵な演奏を楽しむことができる。ホラ・スタッカートトマジのバラード南アメリカ組曲コンチェルティーノ・ダ・カメラロナルド・ミランダのファンタジアに、電子音楽との共演、果てには湯山昭のディヴェルティメント(しかもマリンバ演奏者は日本人だ)まで!YouTubeで「Miguel Villafruella」と検索をかければ、ほかにもいろいろと動画が出てくるので、ぜひ探してみていただきたい。

フィリップ・ポルテジョワ氏は、私なんかはルデュー四重奏団のアルトサクソフォン奏者としておなじみだ。素晴らしい音でルデュー四重奏団のサウンドに色気を与えている様子が聴ける。まさにデファイエ氏の弟子!というところだろうか。ソロアルバム「Musique Française du XXe Siecle Saxophone & Piano」に興味があるのだが、いまだ聴く機会は巡ってこない。

2009/12/03

NSF Vol.30

ノナカサクソフォンフレンズの最新号がアップロードされていた。

http://www.nonaka-boeki.com/nsf/magazine.html

今回は非常に面白いぞ!冨岡和男氏(!)インタビュー、伊藤あさぎさんのギャップ夏期講習セミナーレポート(ボーンカンプの特別講演の内容がすごい)、坂田明氏(!)インタビュー…他。

あと数号で廃刊になってしまうのだよなあ。つくづく残念である。

2009/12/02

福井健太さんのリサイタル「サックスの時間」

【福井健太Recital「サックスの時間」】
出演:福井健太(sax)、小柳美奈子(pf)
日時:2009年12月2日 19:00開演
会場:東京オペラシティ リサイタルホール
料金:一般4000円 学生3000円
プログラム:
Jean Baptiste Singelee - Caprice Op.80
Jean Baptiste Singelee - Fantaisie Op.50
Jean Baptiste Singelee - 7éme Solo de concert Op.93
Paul Creston - Sonata
Robert Planel - Suite romantique
Jacques Ibert - Concertino da camera
Wilhelm Franz Ferling - Etude No.1 (encore)
Jean Michel Damase - Vacanse (encore)

折しも、東京での初リサイタルとなったようだ。

サンジュレの三曲は、ソプラノ→テナー→バリトンという順番で、アルト以外の三本を持ちかえての演奏。クリスティアン・ペータース氏や、ドゥラングル教授のCDで聴いたことこそあれど、今まで実演として聴いたことはほとんどない。けっこう良い曲なのだが。古典的なスタイルに即した、端正な解釈を打ち出してくると思いきや…かなり「うた」を全面に押し出したアプローチで、良い意味での自由奔放なサンジュレを楽しんだ。録音媒体でない、ライブならではの演奏であったと感じた。ソプラノのキラキラした音、テナーのふくよかな音、バリトンの太く芯のある音、どれも魅力的だ。

クレストンは、こちらも実演で聴くのは初めてかも。今どき、クレストンがリサイタルで取り上げられることも少ないと思うが、敢えて取り上げるのは、自信の表れか、それともクラシックサックスをほとんど聴いたことのない方に向けた選曲だろうか。(聴いていた位置のせいかもしれないが)意外とコンパクトにまとまった音楽で、小回りを利かせながら、クレストンらしいリズムを完璧にハメたときに表出するグルーヴ感を味わった。

休憩をはさんだ後のロベール・プラネル「ロマンティック組曲」は、本日の白眉であったと思う。実は、6曲全部演奏すると20分弱に及ぶという大曲(?)なのだが、それぞれの楽曲のスタイルを、見事に描き分け、まったく聴き手を飽きさせない。「哀しい歌」と「ロバ使いの歌」など、同じサクソフォン奏者が演奏しているとは思えないほどであった。

イベール。これは、今回のリサイタルの軸として取り上げたのだそうだ。プロフェッショナルのサクソフォン奏者が一度は通る道だが、やはり愛着が感じられたなあ。小柳美奈子さんのピアノも、素晴らしかった。冒頭のドミナントな響きからしてビビビときて、そのまま最後までいってしまった。改めて、こうして聴いてみると、非常に細かい音符並びの曲であり、エスプリを振りまきながら疾走する様相に、聴き入ってしまう。

こんどは、がっつりした曲をずらりと並べて聴いてみたいなー。福井さんの演奏というと、前田ホールで聴いた「デスノート・コンチェルティーノ」が忘れられないのだ。

2009/12/01

【演奏会のご案内】福井健太Recital

福井健太さんのリサイタルのお知らせ。今年の11月に某アンサンブルでお世話になったのだが、このたびリサイタルを開催するということで、ひと月ほど前にご案内いただいたのだ。ご本人の口から伺った話だと、「ソプラノからバリトンまで、すべての楽器について書かれたオリジナル作品を演奏する」とのことだが、アルトサックス以外は、何の作品を取り上げるのだろうか。

福井さんは、クラシックの演奏のほか、スタジオワークでも活躍されているプレイヤーだ。最近では、ドキュメンタリー映画「アルビン号の深海探検」のBGMをプロデュースしたそうな。これまでの参加作品も、ポップス、吹奏楽、映画音楽、ゲーム音楽等、実に幅広い。そんな福井さんが、本職とも言えるクラシックに改めて取り組まれるということで、非常に楽しみである。しかも、王道中の王道、イベールかー。

【福井健太Recital「サックスの時間」】
出演:福井健太(sax)、小柳美奈子(pf)
日時:2009年12月2日 19:00開演
会場:東京オペラシティ リサイタルホール
料金:一般4000円 学生3000円
プログラム:
Paul Creston - Sonata
Jean Baptiste Singelée - Fantaisie
Jacques Ibert - Concertino da camera
問い合わせ:
http://web.mac.com/kentax1/