2012/12/03

たかの舞俐作品集(「リガリアン」所収)

サクソフォン関係者でたかの舞俐(まり)氏の名前をご存知の方は少ないと思うが、非常に面白い作品「リガリアンI」「リガリアンIV」をサクソフォン・デュオ+ピアノの編成に提供している。この曲を私が初めて聴いたのは、2010年2月にノースショア・サクソフォン・トリオ(ネイサン・ナブ氏、杉原真人氏、ウィストン・チョイ氏)が来日したときのことである。

「リガリアン=LigAlien」とは、たかの舞俐氏の作曲の師匠であるジェルジュ・リゲティの名前とエイリアン(異星人)を掛けあわせた造語である。以前この作品をライヴで聴いた時に、演奏の前に氏自身の口から作曲コンセプトが語られた。それによれば、リゲティのDNAにエイリアンのDNAを掛けあわせ、発展(進化?)させていったらどのような作品が生まれるか、ということを氏なりに解釈して作曲した…という、何だか理解できないようなできないような、そんなコンセプトに基づいて作曲されたとのこと。わかるようなわからないような。

とにかく聴いてみなければその面白さはわからない…というような作品なのだが、これまで商用録音が存在しなかった。YouTubeに、上記来日時の映像がアップロードされているが、録音状態など鑑みると観賞用としてはやはり完全とはいえない。…ということで、前置きが長くなったが、BISレーベルより同曲のセッション録音が含まれるたかの舞俐作品集「LigAlien || works by Mari Takano(BIS CD-1453)」がリリースされていたのでご紹介。

LigAlien I(サクソフォン・デュオ+ピアノ)
Jungibility(ピアノ)
LigAlien III(ヴァイオリン+ハープ)
LigAlien II(オーボエ+ヴァイオリン+琴)
Full Moon(ヴァイオリン+エレクトロニクス)
LigAlien IV(サクソフォン・デュオ+ピアノ)
Flute Concerto(フルート+オーケストラ)

「リガリアンI」「リガリアンIV」の演奏は、ノースショア・サクソフォン・トリオである!まさかここでまた彼らの演奏を聴くことができるとは思わなかった。嬉しいサプライズだ。安定した技術に基づきつつも"吹っ切れた"演奏は、この曲の面白さを存分に引き出すものだと思う。

また、フルート協奏曲の独奏はシャロン・ベザリーがつとめており(おそらくBIS CD-1649と同一セッション。BISだと良くあることだが)、こちらもクオリティの高い演奏を楽しめた。ヴァイオリンとエレクトロニクスのための「Full Moon」は初めて聴いたが、多彩な響きが面白いなあと思って聴いていたら…最終部の音作りがとんでもない。エレクトロニクス作品で、「恐怖」を覚えたのは、テリー・ライリーの「暗殺者の幻想」以来か。Amazonでの購入リンクはこちら→たかの舞俐作品集

ちなみに、現在たかの舞俐氏は、オペラ「雪の女王」を作曲中とのこと。クラリネット持ち替えでアルト・サクソフォンが編成に含まれており、オーケストラ編成のなかでどのような使われ方をするのか楽しみである。

0 件のコメント: