【埼玉大学吹奏楽部第48回定期演奏会】
出演:埼玉大学吹奏楽部、近藤久敦(客演指揮)、舩越孝太、池上龍一(以上指揮)
日時:2012年12月23日(日曜)14:00開演
会場:さいたま市文化会館おおみや
プログラム:
福島弘和 - 祝典のためのファンファーレ(委嘱作品・初演)
酒井格 - 森の贈り物
天野正道 - 交響組曲「GR」よりシンフォニックセレクション
G.ビゼー/G.イアシッリ - 「アルルの女」第2組曲よりファランドール
近藤久敦 - ファンファーレ&マーチ「イン・メモリアル」
A.グラズノフ/仲田守 - サクソフォン協奏曲(客演独奏:大津立史)
P.スパーク - 交響曲第一番"大地・水・太陽・風"
J.ヴァン=デル=ロースト - カンタベリー・コラール(アンコール)
A.リード - 交響組曲第一番よりギャロップ(アンコール)
創部50周年の記念演奏会とのこと。開場直後位の時刻に文化会館に到着したのだが、驚くほどの長蛇の列。会場内も、見た目9割5分の座席が埋まる大盛況。この盛り具合は毎度のことだが、どんな宣伝をしているのだろう。すごいなあ。
福島弘和氏への委嘱作品から演奏会がスタート。現代日本の吹奏楽界におけるスタンダードな響きで、50周年に相応しい佳曲。学生指揮者として出てきた舩越さんという方は、ソツなく…というレベルを超えてバンドからダイナミックな響きを引き出していた。プログラム冊子の紹介文を読んでみると、教育学部の作曲専攻に在籍しているとのことで、そういった裏付けがある指揮なのだなと感心した。なんだか、このまま常任指揮者にでもなってしまいそうな勢いだ。
酒井格「森の贈り物」という描写音楽のような作品を経て、第一部最後はおなじみ「GR」。数年前に吹奏楽界で爆発的にヒットしたことは記憶に新しく、最近ではさすがに演奏機会は減っているはずだが、天野正道氏の泣かせるメロディや見事なオーケストレーションはやはり魅力満載。15分近くに及ぶ大曲を集中して聴き通してしまった。この曲を知らないかたでも楽しめるような演奏に仕上がっていたと思う。
第二部は、まずビゼーの賑やかな「ファランドール」を。その昔、埼玉大学吹奏楽部が、音楽専攻の発表会から独立して演奏会を開催し始めた時のメイン曲が「アルルの女」組曲だったとのこと。冒頭、ちょっと弦楽入りのオーケストラっぽいサウンドすら聴こえて驚き。続いて近藤久敦氏が登場。30周年記念演奏会の折に作曲したという自作「イン・メモリアル」を。すこし斜めに構えたファンファーレ(グラスハープまで入っている)と、まるでアンコール曲のようなマーチの対比が面白い。しかしあの指揮で有名な近藤氏が作曲をなさるとは思わなかった。解説によると、公式作はこの作品だけだそうだが(笑)。
二部の最後はグラズノフの「サクソフォン協奏曲」をシエナWOのメンバーとしても有名な大津立史氏の独奏で。もちろん、仲田守氏のアレンジである。毎年、定期演奏会の折に高確率で協奏曲を取り上げるというのはなかなかバンドにとってハードだが、今年も良い演奏を堪能した。大津氏の独奏はとても高いテクニックを伴ったもので、清潔感あふれるスマートな、サクソフォン奏者のお手本となるべき内容である。ただ、この曲に独奏としてのオリジナリティを付与するというとなかなか難しいところなのかなとも思ってしまったのだった(バックが管楽アンサンブルだっただけに、余計にそう思ったのかもしれない)。アンコールは、福田洋介「さくらのうた」のサクソフォン+ピアノ版。会場が沸いた。
最後は、部員全員揃ってのフィリップ・スパーク「交響曲第一番"大地・水・太陽・風"」を、近藤氏の指揮で。埼玉大学吹奏楽部の演奏は三回目の観覧になるが、毎年ステージに120人前後の奏者が所狭しと並び集結する様子は圧巻である。この編成で、グレインジャー「ローマの権力とキリスト教徒の心」なんて演奏してくれたら凄いだろうなあ…まあ、ありえないだろうけど。
スパークの第一番は、学生だった当時所属していた大学の吹奏楽団で、8年前くらい前にテナーサックスのパートを演奏したことがあり、懐かしく聴いた。曲のとらえどころの無さ…妙にテクニカルな木管パート、新主題出現しまくり、交響曲なのにソナタ形式楽章皆無、30分近くに及ぶ演奏時間…といったところはなかなか演奏者にとって大変なはず。さすがに細かい場所ではいろいろあったようだが、120人がひとつの目指すベクトルを共有して、この曲の再現に成功していた。もちろん近藤氏の手腕によるところも大きかっただろうが、それのみならずバンド全体にしっかりとした地力がある証拠だ。あるひとつのパートでも技量的に劣れば、たちまちそこから崩壊してしまう作品だと思うが、まったくそんなことはなかった。作品としては、第三楽章でシンセサイザーが導入されていることの高い効果に感じ入ったのだった。冒頭なんて、まるでリゲティの「レクイエム」のようにも聴こえたぞ(さすがにそれは言い過ぎかしらん)。
アンコールは、ヤン・ヴァン=デル=ロースト「カンタベリーコラール」。好きな曲なのでこれは嬉しい!そして最後の最後に、埼玉大学吹奏楽部の演奏会ではおなじみのアルフレッド・リード「第一組曲」から「ギャロップ」を。
50周年記念ということもバイアスとしてあるのだろうが、単純なひとつの演奏会としては捉えられない、過去から未来に続く歴史の重み…いや、歴史そのもののような演奏会であったと感じた。部外者の私ですらこんな調子なのだから、会場にいたであろう埼玉大学吹奏楽部のOB/OGの皆様は、今回の演奏会をどう捉えたのだろうか。気になるところだ。
終演後は、ラーメン二郎大宮店(会場に向かう最中に見つけた)に寄ってから帰還。実は二郎デビューだった。
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