2008/09/30

1000件目

1000件目の記事投稿。ブログの1000記事達成と、Tsukuba Saxophone Quartetの演奏会がほぼ重なるとは予想できなかった。演奏会後記は、また今度書いていきます。

----------

もともとはウェブサイトkuri_saxoの上でサクソフォンに関する日記を書いていたのだが、管理や双方向性を考えてブログ「diary.kuri_saxo」に移行したのがおよそ2年前。それまでの記事は全部ブログに移動したということで、厳密にはブログで1000件書いたとは言えないような気もするが、まあいちおう1000件です。

最初の記事を書いたときには考えられないくらい、周りの環境が変わった。国内の様々な(アマチュア、プロを問わない)サクソフォン奏者や研究者との交流が増えた。サックス関連のちょっとマニアックなキーワードをGoogleに打ち込むと、すぐこのブログが出てくるため、それをきっかけとして頻繁に訪問してくださる方もいる。コンクールやフェスティバルなどに参加し、「ブログ見てるよ」と言われたときの何とも言えない嬉しさ。また、ウェブ上に情報を公開する=世界に向けて情報発信しているわけで、そういったレベルでのやりとりがわずかながらも存在する。フランス、アメリカ等、日本から留学されている方や、プロの方など…。

自分から継続して情報を発信していけば、何かしら変化があるということだ。普段は気付かないけれど、ふと振り返ったときに、「ああ、やっぱり書くのと書かないのとでは違うんだなあ」と思う。ひとつひとつの記事はどうでも良いものばかりだが、そんなものでも積み重ねることによって得られるものはあるようだ。2000件目、3000件目、あるいは10000件目(!?)に達したとき、果たして私自身はどうなっているのか。周囲の環境はどうなっているのか。そして私と周囲の関係がどうなっているのか、ということが楽しみ。

今後ともよろしくお願いいたします。

2008/09/29

終演&ありがとうございました

本記事が、999件目のブログ投稿になります。1000件目は何を書こうか。

----------

Tsukuba Saxophone Quartet - SAXOPHONE CONCERT Vol.2にお越しいただいた皆様、激励のメール・電話を下さった皆様、スタッフ、演奏者、客演の松雪明先生、指揮の俣野さん、皆様に感謝申し上げます。運営面・演奏面では、いろいろと迷惑かけて申し訳なかったです。

やりたいことを(ほぼ)やりきった!かも!?という感覚が自分の中ではあるのですが、もしかしたら一週間後にはまた新しいことをやりたくなっているかもしれません。

3/1(日曜)の午後、会場は取得してあります。何らかの形でまた面白いことをできれば…と思います。

2008/09/28

【宣伝】Tsukuba Saxophone Quartetの演奏会

いよいよこの週末となりましたので、お知らせしておきます。

Tsukuba Saxophone Quatetの3度目の自主公演となります。今回は、客演サクソフォン奏者として松雪明先生をお迎えし、グラズノフの「協奏曲」を演奏いたします。オーケストラのサクソフォン8重奏へのアレンジは、新進気鋭のアレンジャーである柏原卓之氏の手によるものです。そのほかにもソロ、四重奏、ラージを取り混ぜて、盛りだくさんの内容でお送りします。ぜひお越しください。

終演は21:00ちょっと過ぎくらいです。首都圏の皆様も、ぜひ。

【Tsukuba Saxophone Quartet - SAXOPHONE CONCERT Vol.2】
出演:Tsukuba Saxophone Quartet
客演:松雪明
日時:2008年9月28日(日曜) 開場19:00 開演19:30
場所:つくばカピオホール(TXつくば駅より徒歩10分)
料金:入場無料
プログラム:
C.サン=サーンス - オーボエ・ソナタ(ssax)
C.ドビュッシー - チェロ・ソナタ(bsax)
J.t.フェルドハウス - Grab It!
J.フェルド - サクソフォン四重奏曲
A.グラズノフ/柏原卓之 - サクソフォン協奏曲(独奏:松雪明)
G.ホルスト/TSQ - セント・ポール組曲より 他
問い合わせ:
http://tsukubasaxophone.blog51.fc2.com/
kuri_saxo@yahoo.co.jp
後援:
日本サクソフォーン協会、筑波大学吹奏楽団

2008/09/26

目崎紫野サクソフォンリサイタル@つくば

つくばでは珍しいサクソフォンの演奏会だった。目崎さんは、武蔵野音楽大学の出身。つくば市の楽器屋さんで教えている関係で、ここでのリサイタルが実現したようだ。

【目崎紫野サクソフォンリサイタル】
出演:目崎紫野(sax.)、荒川由貴(pf.)
日時:2008年9月26日(金)19:00開演
場所:つくばカピオホール
プログラム:
F.シューベルト - アヴェ・マリア
C.ドビュッシー - ラプソディ
加羽沢美濃 - シュヴァルツヴァルト、S・N・S
D.ミヨー - スカラムーシュ
A.リード - バラード
J.ノーレ - フリッソン
R.シューマン - アダージョとアレグロ

クラリネットのような細めの音色とヴィブラートで、「フリッソン」のようなフレーズの応酬が見られる曲では軽々とフレーズをつないでいく。緩徐楽章やバラードでは、もうちょっと音色の変化を聴きたいかな、とも思った。もう少し小さい会場で聴いたら、印象が違ったかもしれない。アンコールが素敵。きちんとしたジャズを学んだ経験があるようで、アメイジング・グレイス~グリーン・スリーヴスのメドレーを絶妙なスタイルで奏でていた。

しかし、つくば市でドビュッシーやノーレのサクソフォン作品を聴く機会が巡ってくるとは、まさか思いもよらなかったことであった。

2008/09/24

楽譜貼り

演奏会の楽譜は、個人的にはクリアファイルに入れてめくっていくのが好きなのだが、どうしても2ページ単位ではめくれないときに、楽譜をテープで張る必要が出てくる。「Grab It!」なんかは、正直めくっている暇がないため、楽譜と楽譜をテープでつなげて準備してある。

そんなときに使えば良いと友人に薦められたのが、このテープ(メンソレータムのサージカルテープ)。不織布でできているテープならばメンソレータムのものでなくとも良くて、たまたまコンビニに売っていたのがこれだから、という理由なのだが。粘着力はほとんどないのだが、"布"であるので、貼りやすいし、折りやすいし、裂けづらいし、見た目も綺麗だしと、良いことずくめ。今まではセロハンテープで固定していたので、あまりの扱いやすさに感動した。

----------

ピエール・ブーレーズ「二重の影の対話」を鑑賞中。カッコいいなあ。

2008/09/23

アワセ

松雪先生、そして指揮をお願いしたM氏を迎えて、グラズノフを中心に合わせ練習。前回はどうなることかと思ったが、本日はずいぶんさくさくと進み、1時間ちょっとで一曲丸ごとが終わってしまった。

松雪先生のソロは前回よりもさらにグレードアップし、本番クオリティの音楽をなんと暗譜で(!)私たちにぶつけてきた。私たちのサックスラージパートはというと、まだソロとの間に温度差があるため、あと1回の合わせでどこまでいけるかというところ。

プログラム冊子も刷り上ってきて、いよいよ演奏会本番モード。

【Tsukuba Saxophone Quartet - SAXOPHONE CONCERT Vol.2】
出演:Tsukuba Saxophone Quartet
客演:松雪明
日時:2008年9月28日(日曜) 開場19:00 開演19:30
場所:つくばカピオホール(TXつくば駅より徒歩7分)
料金:入場無料
プログラム:
J.t.フェルドハウス - Grab It!
C.サン=サーンス - オーボエ・ソナタ
J.フェルド - サクソフォン四重奏曲
A.グラズノフ/柏原卓之 - サクソフォン協奏曲(独奏:松雪明)
G.ホルスト/TSQ - セント・ポール組曲より 他
問い合わせ:
http://tsukubasaxophone.blog51.fc2.com/
kuri_saxo@yahoo.co.jp
後援:
日本サクソフォーン協会、筑波大学吹奏楽団

ふと思うと

音楽をやっていく上で、コンクールとかそういう勝負の世界に身を投じなければいけない状況になったとき、そして演奏会や発表の場などクオリティの高さが求められる時、どのようにして自分たちをその中に埋没させるか、というのは、けっこう重要な問題だったりするのかなと思う。それはそのまま、最終的な演奏の出来につながってくると感じる。

個人の場合であれば、まあそれは個人の問題なのだからしょうがないとして。

少しでも外部から見ているような斜めに構えた感じの人がいると、コンクールだったら勝ちに行くのは難しいのだろうなあ。

私なんかは単純なので、ダマされやすく、録音や結果やなんやかんやに対して一喜一憂しながら、いつのまにか客観視なんて言葉は頭からきれいさっぱりなくなってしまうもので。振り返ってみると、けっこう自分でない自分(埋没した自分)を振り返っているような感覚に陥る。

2008/09/22

アメリカのサックス協会

日本にサクソフォーン協会、フランスにA.Sax.Fra.があるように、アメリカにもNorth American Saxophone Alliance(NASA)という団体がある。

ちょっと興味があったので、入会してみた。ただし、1年間限定のオンライン会員。年会費10ドルだっていうし。PayPalを経由して支払いを済ませると、フォーラムやニュースなどのいくつかのコンテンツにアクセスできるようになった。うーん、コンテンツは質、量ともに、いまいちな感があるなあ。調べてみると、ウェブページ自体は今年の5月にリニューアルしたばかりだそうだ。これからの発展に期待しよう。

"Update"というNASAの季刊誌があるのだが、なかなか面白い。日本のサックス協会でいうところの、「ニュース」と同じものなのだが、ちょっと内容が濃いめ。あと、NASA提出された修士論文や博士論文の目録なんてのもあるのだが、そちらもなかなか。タイトルだけで内容が読めないのは、しょうがないか。

たとえば、ヘムケ氏の博士論文。
The Early History of the Saxophone. D.M.A. Dissertation, The University of Wisconsin - Madison, 1975.

ポール・コーエン氏の博士論文タイトル。
The Saxophone Concerto of Ingolf Dahl: A Historical and Comparative Analysis. D.M.A. Dissertation, Manhattan School of Music, 1985.

セシル・リースン氏のもの。
The Basis of Saxophone Tone Production: A Critical and Analytical Study. D.F.A. Dissertation, Chicago Musical College, 1955.

そのほか、興味をひかれるものがたくさん。これで内容が読めれば最高なのだが…せめてアブストラクトだけでもいいからー(泣)。

また、オンライン会員ではなく正会員になると、サクソフォンシンポジウムの論文集が送られてくるようなのだが、こちらも面白そうだ。ショップ経由で過去の冊子がいくつか買えるようなので、ちょっと買ってみようかな。

【情報】国立音大サックス科演奏会

国立音楽大学の学生の方からメールを頂戴し、演奏会の案内をいただいた。幸いまだ予定が入っていないため、聴きに行くことができそうだ。

【国立音楽大学専攻生によるサクソフォーンアンサンブル】
日時:2008年10月8日(水)18:30開演
会場:府中の森芸術劇場ウィーンホール(京王線東府中駅北口下車)
料金:800円 全席自由
プログラム:
C.パスカル「四重奏曲」
A.ピアソラ「Time for Piazzolla」
R.R.ベネット「四重奏曲」
D.ウィレン「弦楽合奏の為のセレナーデ」
E.フォン=コック「11本のサクソフォーンの為のモデラートとアレグロ(日本初演)」
B.ウィーラン「リバーダンス」 他

第2部に北欧の作品を集めたとのこと(リバーダンスはアイルランドだが)。個人的に注目したいのがエルランド・フォン=コックの「モデラートとアレグロ」である。ラッシャー派のラージサクソフォンアンサンブルにとって、大変重要な作品の一つであり、南ドイツサクソフォン室内合奏団がレコーディングしているはず。

「11」という人数はラッシャーアンサンブルにとって重要な数だが、これは、ある時期のラッシャーサックスオケのメンバーが11名だったということに由来する(録音も存在する)。例えばあのカレル・フサは11本のサクソフォンのために作品を書いているし、ラッシャーサクソフォンオーケストラも、バロックや古典を11本のサクソフォンのために数多く編曲しているのである。

フォン=コックの他にも、ウィレンの弦楽合奏という、おおよそサックス奏者には馴染みのない作品をトランスして演奏するとか。この曲は私も知らないなあ。

知られざる作品、しかも大編成のものを取りあげるという試みはアマチュアでは難しく、高い技術力・表現力を持つ方が数多く在籍する、音楽大学ならではの選曲だなあと思う。聴きに行くのが楽しみだ。

2008/09/21

「Grab It!」の試演

思いがけず空いた時間で2時間ほど合わせ。楽器を組み立てて基礎練習ののち、早速合わせた。最初はなんでもないところでズレズレになってしまったが、2,3回合わせるうちに勘を取り戻してきた。

片付けの前に、音楽仲間3人の前で演奏してみた。もうちょっと緊張すると思ったが、演奏中はそんなことも考えられないほど忙しい。3.5 Extの中庸な硬さのリードを使用すれば、体力配分的もなんとかなりそう。汗がダラダラ出てくるのはどうしようもないのか…(ボーンカンプみたいに、バンダナ巻こうか)。

曲想に関しては、大方予想通りの反応(^^;良くも悪くもインパクトはありますわな。こういう曲は「凄いけど何だか良く分からない」と言われるのが常で、じゃあどうすれば良いかというと、「良く分からないけれど、[カッコイイ/美しい/…]」というように、分からなさのなかに何かしらのもう一歩突っ込んだところを感じさせることができれば良いのかなあと思う。

本番の音響に関しては、ミキサーを噛ませるか、それともダイレクトにプレイヤーから出力するか、悩み中。

----------

月末のTsukuba Saxophone Quartetの演奏会、ぜひお越しください。

【Tsukuba Saxophone Quartet - SAXOPHONE CONCERT Vol.2】
客演:松雪明
日時:2008年9月28日(日曜) 開場19:00 開演19:30
場所:つくばカピオホール(TXつくば駅より徒歩7分)
料金:入場無料

2008/09/20

管打レクチャー演奏会

(私信)プログラム冊子の校正、結局一人分しかもらってないぞ。うおーい。

----------

アクタスまで、原博巳さんの管打レクチャー演奏会を聴きに行ってきた。なぜ聴きに行ったかというと、もちろん私自身が出場するということではなくて、別の理由があったからだ。ひとつは、今回審査員を務められる原さん自身から、楽曲に対してどんなコメントがなされるかに興味があったから。次に、ほぼ音大生を対象としてレクチャー演奏会が、どういった形式のものなのかに興味があったから。最後に、原さんの演奏によるリュエフやトマジを聴いてみたかったから…というところだ。

前半が、コンクールや課題曲に対してのレクチャー、後半が、実際の演奏という流れ。

J.Rueff - Sonate seul
J.S.Bach - Suite No.1
H.Tomasi - Concerto

レクチャーが100分近くあったのは驚いたが(^^;いろいろと面白い話があった。プラクティカルなところでは楽譜のミスという話が出たが、楽譜自体を持っていないので具体的な話はまったくわからず。

リュエフでは、デファイエのLP演奏について触れられていた。第2楽章冒頭、サイドキーを利用したレ#→ラ#のつなぎに関する部分は面白かったなあ。デファイエの演奏は何度も聴いたけれど、サイドキーであの魅力的な響きを出していのか。あと、リュエフに限らないが楽曲の二面性、という話も興味深い。バッハは、バロックの舞曲のスタイルについて言及されていた。

後半の演奏は、実際の課題曲の楽章カットに従って演奏されていたようだ。リュエフは第2楽章と第3楽章だけだったし、バッハも4つの曲の抜粋だった。リュエフの第3楽章における無窮動のフレーズ、畳み掛けるような、しかしあくまでもしなやかな音符の羅列に驚く。トマジのピアノ版は初めて聴いたけれど、バス・オスティナートが強調される部分なんかは、ピアノならではの響きがして面白かった。

----------

そういえば、思いがけず?佐藤淳一さんと伊藤あさぎさんにお会いしたのだが、ブーレーズの「二重の影の対話」サクソフォン版の楽譜を見せていただいた。サクソフォンにはありえないほどの跳躍の連続。アレンジャーのクレジットに、ドゥラングル教授とハバネラ四重奏団のアルトサックス奏者、シルヴァン・マレズュー氏の名前があった。この超至難な作品も、徐々にスタンダードなレパートリーとして確立されていくのだろうなあ。サクソフォンの進化はすごい!

2008/09/18

【復刻記事】「私ではなく、風が…」から見たヴィブラート

2年ほど前に書いた記事に、コメントを頂戴した。久々に読み返してみたら、我ながら?なかなか面白い記事であったので、少し内容を変えて新たに掲載しておく。

----------

湯浅譲二氏の「私ではなく、風が…」の楽譜を入手して、眺めている。まさか、吹くということではないのだが。

実演に接したのは2006/7/19のジェローム・ララン氏のリサイタルの時だが、演奏に際し、臨席していた湯浅氏が興味深いエピソードをいくつか話された。その中の委嘱時のエピソード、「僕はもともとサックスの豊潤な音が嫌いで、野田君から委嘱されたときも断ろうと思っていたのだが、野田君にそう話したところ『僕もサックスの音が嫌いです』と言われ、断る理由が無くなってしまった」との話がずいぶんと頭の中に強烈に残っていて、楽譜も見てみたいなー、と思っていたところだったのだ。

マイクを譜面台の近くに二本並べて、片方は増幅、片方はエコーとし、サックスのベルはその間を行ったり来たりしながら独特の響きを作り出していく。サックスの譜面はほとんどが無声音やキーノイズで、意図的に大音量を抑えているような印象を受ける。現代の楽器「サクソフォン」のための曲と言うよりも、なんだかクラリネットのためのような楽譜だ。

面白かったのがヴィブラート。上に載せたのは楽譜の一部だが、全曲を通してヴィブラートの指示がここにしかないのだ(写真参照)!フツーのフランス・アカデミズムに則った作品の演奏では考えられませんなあ。

でもよくよく考えてみたら、そういえばヴィブラートをかけるべき音は、指示が無い場合はほとんど奏者の裁量に任されている部分がある。楽器の響きを明確に指定したい作曲者からすれば「ヴィブラート」って邪魔なものなのかもしれないな。ベリオ「セクエンツァIXb」の楽譜を見せてもらった事があるのだが、冒頭にはっきり「sans vibrer」の文字、そして曲中には適宜ヴィブラートの指示が。

響きにこだわりをみせたい作曲家ほどに、サクソフォン=ヴィブラートを伴った音、という固定観念を持っている作曲家達はサクソフォンから離れていく傾向があるということか。サクソフォンで作品を書くということはすなわち、自分の想定する響きを作り出すのが難しいことにつながってしまう場面もあるのだ。

サクソフォンの歴史を俯瞰すれば、軍楽隊の中での木管と金管を合わせたような素朴な響き→現代のコンサートホールに適した豊潤で大音量のソロ楽器、ソロとしての響きを生み出そうとする課程でヴィブラートを獲得、という変遷を経てきたと言うことだが、こうして得たサクソフォンならではのアイデンティティが負の方向に働いてしまう状況も、(特に作曲家によっては)あるにはある、のだろう。サクソフォンのそういうところに惹かれている自分にとっては、なんだか不思議な感じだ。

プログラム冊子草稿

9/28の演奏会のプログラム冊子の草稿が完成した。前回演奏会のアンケートで文字ばっかりで読みづらいと指摘されたので、ウィキメディア・コモンズを検索して、なんとなく作曲家の写真を載せてみた。

あとは、告を貼り込むだけか。前回に比べれば、余裕を持って印刷することができそうだ。今回は部数が多いから、一週間以上余裕があるだけで、かなり気が楽だ。

そういえば、演奏会とは関係ない別件のやり取りで、上田卓さんより野原みどりさんの「ラヴェル作品集II(Aurora Classical)」を頂戴したのだが、そのライナーの曲目解説にしびれた。上田卓さん、木幡一誠さんあたりの書く文章は、私にとっての理想である。

2008/09/16

最近のティエス・メレマ on YouTube

オランダのサクソフォン奏者、ティエス・メレマ Ties Mellema氏。右腕を負傷して以来、しばらく演奏活動から離れると思いきや、その活動力たるや相当なもの。右腕に負担をかけずに左腕だけでも演奏できるような作品を大量に委嘱し、自身の演奏会で取り上げるなどしているそうだ。

Hans Eijsackersの「Strong Ties」。高速なパッセージに関しては、ほとんどが左手の動きにゆだねられており、右手は副次的に扱われている。しかし、このカッコよさはどうだろう!さらに最終部では、メレマ氏の圧倒的な即興をも堪能することができる。



その他、メレマ氏の公式サイトから、「on the other hand」というコンサートで演奏された録音を聴くことができる。直接のリンクはこちら

2008/09/15

合わせるの難しい

およそ2週間後に迫ったTsukuba Saxophone Quartet演奏会の練習。

今日は、松雪先生をお迎えして、グラズノフ「サクソフォン協奏曲」の初合わせ。練習&本番は指揮者をお願いしてあるが、今日に限って指揮者なしでの練習。最初と、カデンツァ以降(フガート~)はなんとかなるのだが、真ん中のゆっくりなところがどうもかみ合わせられない。拍子とリズムの異種擦り合わせが多く、中途半端にソロパートを知っているだけではどうも上手くいかないのだ。拍が出づらいリズムだし。バックのラージアンサンブルの出来ばかり気にしていたため、独奏に対する認識の甘さを思い知らされた。

独奏パートと、9人のバックラージアンサンブルと、それをまとめる指揮者ということだから、計11人がこのテンポの揺れの中を(ルバートを頻繁にかけながら)動いていくわけだ。難しい。とりあえず、パート譜へのガイド音符の追加と、ソロパートを改めて頭に叩き込むことを最優先に行う。合わせはあと2回。

サックス8重奏版の「セントポール組曲」と、アンコールも合わせた。こちらはなんとかなるか(?)。

んー、あと、フェルドとロジャースとフェルドハウスか。フェルドハウスはテンポも上がってきたし、そろそろ合わせ作業にかかろうかな。

2008/09/14

家族旅行

金曜日から地元に戻っている。私の両親が、今年結婚25周年(銀婚式)を迎えたのに合わせて、お祝いを兼ねた旅行に行ってきたのだ。宿泊場所は私と妹2人でプロデュース、料理がものすごく美味しかった。家族でどこかに泊まりがけで旅行に出かけるのって、何年ぶりだったのだろうか。

今度は、もっと時間を取って遠くまで行きたいなあ。

2008/09/13

シュトックハウゼン追悼演奏会を聴いた

昨年亡くなった作曲家、カールハインツ・シュトックハウゼン Karlheintz Stockhausenの、追悼演奏会を聴きに行ってきた。場所は、門前仲町の清澄通り沿いに位置する「門仲天井ホール」。日本国内におけるシュトックハウゼン作品演奏・研究の第一人者、声楽(バリトン)の松平敬氏が発起人となって開かれた演奏会。

シュトックハウゼンは生前、自身の活動の拠点としていたドイツの村、キュルテンにおいて、毎年シュトックハウゼン講習会なるイベントを開催していた。レクチャーやコンサート、マスタークラスから成るイベントで、シュトックハウゼンの音楽に興味を持つ音楽家たちが集まり、彼の音楽にどっぷりと浸かる催し。本日の演奏メンバーは、全員がその講習会への参加経験を持つ、いわばシュトックハウゼン作品演奏のスペシャリスト達であったと言える。

【シュトックハウゼン追悼演奏会】
出演:松平敬(bar.)、白井奈緒美(ssax.)、工藤あかね(sop.)、井原和子(picc.)、森川次朗(dance)、保都玲子(pf.)
日時:2008年9月12日(金曜日)
場所:門仲天井ホール
プログラム:
K.シュトックハウゼン - 7つの日の歌(日本初演)(bar.)
K.シュトックハウゼン - 友情に(ssax.)
K.シュトックハウゼン - 「ティアクライス」より"てんびん座"、"蟹座"、"いて座"(sop.)
K.シュトックハウゼン - 舌先の踊り(picc., dance)
K.シュトックハウゼン - シュピラール(bar., radio)
K.シュトックハウゼン - ピアノ曲X(pf.)

なんとなく高速バスを使用したら、首都高で大渋滞につかまってしまい、開演の1分前に会場へと飛び込んだ。50ほどの席が、ほぼ満員。どういった客層なんだろうか(シュトックハウゼンのファンとかですかね)。サックスの人はさすがにいないなー、と思っていたら、原博巳さんと佐藤淳一さんと伊藤あさぎさんに会った(^^;ああ、びっくりした。

超大作オペラ「Licht」の月曜日に歌われるという、「7つの日の歌」から始まる。私自身は、シュトックハウゼンの音楽についての知識は浅いもので、サクソフォン作品集を好んで聴いたり、「友情に」の分析公演資料を読んだことがあるくらい。そんな状態で聴き始めたのだが、これがまた面白いのだ。身体的動作を伴った7つの異なる小品が演奏され、たとえば回転しながら歌うことで音源位置の移動を表現したり、どの作品にも声楽で使われる極端な特殊奏法が使用されるなど、シュトックハウゼンが声楽で使用する要素の凝縮を見た感じだ。…いや、これでもまだ一部なのかもしれないが。声楽を聴いた、というよりも、何かひとつの舞台を見た、という印象を強くする。

2007年にパリ国立高等音楽院を卒業された白井奈緒美さんの演奏で「友情に」。今回はソプラノ・サクソフォン版の演奏。「友情に」を生で聴くこと自体初めてだったが、サクソフォンの超絶的なフレーズに加え、ほとんど極限的とも言っていいほどの身体動作による音源位置の移動。

プログラム冊子の解説を読んで知ったのだが、右下を向いて演奏されるフォーミュラの一部が低音部、前を向いて演奏されるフォーミュラの一部が中音域のトリル、真左を向いて演奏されるフォーミュラの高速な一部が高音部、という分け方で、その3つのフォーミュラが、真ん中に向かって収束していく、というしくみなのだそうだ。これには、なるほど!と思えた。Explosionあたりでの鬼気迫るテンションは、聴いてるこちらも圧倒されてしまうほど。今度はぜひ「誘拐」や、KLANGのサクソフォンのための新作あたりを聴いてみたい…。

ティアクライス。ソプラノ、と思いきやそれだけに終始せず、こちらもやはり舞台上を所狭しと動き回る。天秤座ならば、天秤をモチーフにした動きを(片足で両腕を拡げて立つ)、射手座ならば、弓を射る動きを…といった具合。もともとはオルゴールのための作品なのだそうだが、どうやったらオルゴールの作品がこんな動きのある作品に化けるんだろうか。すごかった。個人的には、本日最も印象に残った作品であり、演奏だったかもしれない。

ピッコロとダンサーのための「舌先の踊り」は、これもやはり「Licht」からの派生作品で、顔面状に並べられたオーケストラの口の部分付近で演奏されるので、「舌先の」踊りなのだそうで。この辺りまでくると、シュトックハウゼンの着想の次元が、私のような凡人とはずいぶんと違うことを感じさせる。ダンサーの筋のピンと張った動きと、ピッコロから発せられる音響が絶妙にリンクしていく。取り出してすらこんなにインパクトのあるダイナミックな作品なのだから、「Licht」の中で観ればさぞかしもっと面白いのだろう。

休憩をはさんで、短波ラジオとバリトンのための「シュピラール」。これも面白い作品だった!短波ラジオをチューニングしながら、その時々に入った音を決められて枠の中で即興的に加工して演奏するというもの。松平氏の演奏は、シュトックハウゼン講習会の演奏で、非常に高い評価を得たそうだ。まったく破綻なくして間断なく敷き詰められる音に、シュトックハウゼンのスペシャリストとしての貫録を見た。最後に演奏された「ピアノ曲X」、聴きたかったのだが帰省のバスの時間のためやむなく退散。扉の中から聴こえてきた音は、なんだか凄そうだった。25分以上に及ぶ作品を暗譜ってのもすごいなあ。

ふと思い立ってチケットを買った演奏会だが、聴くことができて良かった。シュトックハウゼンの音楽は、CDで聴くだけでなく、やはり現場で体感することが必要だと感じた。またこの手の企画があったら、積極的に足を運んでみよう。

2008/09/12

曲目解説執筆中

月末のTsukuba Saxophone Quartet演奏会のプログラムノートを書いている。意外と時間がかかり、一つの曲に関して解説を書くのに、集中した状態でもおよそ1時間以上かけてしまっている。

前回よりは、少し緩めの文体にしたい。これは、文章の句点位置における終わり方の調整や、取り上げる情報の収拾選択によって可能だ。頑張って目指すは、「読むと曲を聴くのが楽しみになるような」曲目解説。そして、プログラムだけなんとかなっていても、演奏がショボくてはどうしようもない。きちんとしているプログラムノートというものは、演奏に対する決意の表れとも言えるんじゃないか…と思っている。

とりあえず、サン=サーンス、ドビュッシー、フェルドハウスについては、初稿を書き下ろすことができた。フェルドハウスがやや長くなってしまったのは、しょうがないか。まだまだ先は長い。あとは、フェルド、グラズノフ、ホルストなど。

本番は、今月末の2008/9/28。19:30開演です。

2008/09/11

【演奏会情報】シュトックハウゼン追悼演奏会

日本国内におけるシュトックハウゼンのスペシャリスト、松平敬氏を中心としたメンバーが、今週末に門仲天井ホールでシュトックハウゼン作品を取り上げた演奏会を行うそうだ。詳細はこちらから。

サックス的興味としては、白井奈緒美さんが出演されるのが興味深い。個人的には「誘拐」も聴きたかったが、今回は「友情に」の演奏だそうだ。

話が飛ぶが、9/13と9/14は私の両親の結婚銀婚式記念家族旅行ということで、長野に帰省する。上記演奏会は9/12であるので、帰省の直前に門前仲町に寄って聴いていこうと思っている。バスの時間があるので、最後まで聴いていられなさそうなのは、少し残念なのだが。

2008/09/09

JacobTV「Pitch Black」&「Jesus is Coming」

今日、初めて原チャでつくば市を脱出した。408号をひたすら南下して、牛久の楽器屋さんまで往復60km(90分くらい)…つくば市って大きいんだな。

最近ずいぶんフェルドハウス付いている。次の演奏会で彼の作品「Grab It!」を演奏する予定だし、Prism SQのフェルドハウス作品集や、New Century SQの「On Track」を買ってフェルドハウスの作品をじっくりと堪能したりもしている。面白い音楽を発想できるもんだな、と関心しきりである。

"現代音楽"であるという印象はなく、ロックやジャズの影響を受けながらも楽譜上はまったくのクラシック。オランダの作曲家の中でも異端ではあるが、人気が高いのも頷ける話だ。"ポップ・アート"とか、"砂糖でスパイス付けされた音楽"と、評されることもある。日本ではいまだに普及が進んでいるとは言い難いが、少しずつ認知されていくと良いなー、と思っている。昨年のフェスは、その普及が進むきっかけになる機会と期待していたのだが、音響のために台無しになってしまったからなあ。

気を取り直して。そのヤコブ=テル・フェルドハウス Javob ter Veldhuisがサクソフォン四重奏のために書いた作品が、本記事のタイトルになっている「Pitch Black」と「Jesus is Coming」という作品。どちらも、サクソフォン四重奏とサウンドトラックのための作品。

「Pitch Black」は、ジャズ・トランペット奏者のチェット・ベイカーのインタビューを基にした作品。使用された音源のインタビューは1988年の死の直前に行われたもので、音楽家としての人生、拘留、チャーリー・パーカーのオーディション…が、ベイカーの口から語られている。そのインタビューを断片的にループバック、タイムライン変更しながら、音程を捉え、サクソフォン四重奏と絡めてある。四重奏パートは、基本的に変拍子を多用したジャズのリズムを基本に進行する。かなりにアドリブチックなフレーズの演奏を要求されるところもあるようだ。

オランダのサクソフォン四重奏団、アウレリア・カルテット Aurelia Saxophone Quartetによって初演され、当地のレパートリーとなっている。また、すでに日本国内でも2度ほど演奏されている。日本初演はAmstel Saxophone Quartetの来日演奏会。2度目の演奏は、昨年のフェスで、アルディSQが担当した。

「Jesus is Coming」では、街頭の宗教活動家、救世軍宗教合唱団(?)、そして赤ん坊の声を混ぜこぜにした音素材が散りばめられた作品。「Jesus!」「Armageddon!」「God says!」「God kills!」「Love, Evil, God」とかいう単語がリズミカルに叫ばれている中に、赤ちゃんの笑い声が重なるわけだ。ブキミな音楽だが、中間部と最終部に高速化する場所の煽りは、妙にかっこいい。ちょっと吹いてみたいかも。

Tribute to Rascher Video on YouTube

このブログではよくシガード・ラッシャー Sigurd Rascherのことを取り上げるけれど、じゃあ実際はどんな演奏をしたサクソフォニストか、ということはあまり知られていない。私の手元にはたくさん音源があるのだが、ネット上で公開されているものはないかと探したところ、「"ヴェニスの謝肉祭"変奏曲」の音源に載せてラッシャーのスライドショウが表示されるビデオが出てきた。



驚異的なフラジオと、ブレスコントロール(循環呼吸は使用していない)、音程の良さ、フィンガリング。この短い演奏を聴くだけでも、ラッシャーがいかに優れたサクソフォン奏者であったかが判ると思う。

2008/09/08

サックスの扱いがひどい(Pan the Piper)

先日、知り合いからレコードのトランスファーの依頼を受けていたのだが、その中に面白い作品が含まれていた。ジョージ・クラインシンガー George Kleinsingerという作曲家が、楽器紹介のために作曲した「笛吹きパンの音楽物語」と呼ばれる、ナレーションと吹奏楽のための作品だ。

羊飼いの"パン"が、仕事の合間に葦に息を吹き込むと、美しい音が出て、それが木管楽器の原型になって…といったところから始まり、ジャングルの仲間の太鼓叩き(打楽器)や、角笛吹き(金管楽器)が加わって、そして最終的には現在のバンドの形になりました…という感じに、ナレーションと短い楽器のフレーズが交互に演奏されていく、という趣。

実はもともとはオーケストラの成り立ちを示すためのもので、擦弦楽器(ヴァイオリンなど)、弾弦楽器(ギターやハープ)なども含まれているそうなのだが、カットされて吹奏楽の成り立ちを追うコンサート・ピースとしても演奏されるようである。オーケストラ版のフルバージョン音源は、このリンク先から無料でダウンロードできる。

で、当たり前のようにサックスは最後に出てくるのだが、そこのナレーションというかサックスの扱いがひどい…。まあ、まさに歴史そのままなのだが。

…こうして私たちは、完全なバンドを持つことができました。そしてこのバンドは、パンの簡単な葦の笛から出発したことを、もう一度思い出してください。
(フルートの調べ)
さあ、私たちはもう、このバンドに何も付け加えるものはありません。どの楽器も完全に思えます!まず、木管楽器!
(木管楽器のフレーズ)
金管楽器!
(金管楽器のフレーズ)
そして打楽器のグループ!
(打楽器のフレーズ)

…そうです。その後アドルフ・サックスという人が、サクソフォンという新しい楽器を発明するまで、バンドは完全のように思えました。
(サックスのフレーズ)
それは真鍮で造られていて、そして象の鼻のように曲がった管を持っていました。しかしそれは、ラッパのようなえぐれた吹き口は、持っていませんでした。その代わり、クラリネットに似た吹き口に、一枚のリードを付けて音を出しました。

しかし、木管楽器たちは言いました。「ふうん、お前は私たちと一緒に座っちゃ困るね。お前は真鍮で出来ているじゃないか!」
(木管楽器の荒々しいフレーズ)
そして金管楽器たちも言いました。「お前は俺たちと一緒になんか座れないぞ。お前はリードを持っているじゃないか!」
(金管楽器の荒々しいフレーズ)
打楽器たちも「そうだ、そうだ!」と返しました。
(打楽器の荒々しいフレーズ)

しかし、作曲家がサクソフォンのための音楽を書いてから、他の楽器たちは、サクソフォンのための席を作ってやりました。そして彼らは、力を合わせて音楽の発展に貢献したのです。
(サクソフォン四重奏AATBのフレーズ)

こうして今では私たちは、完全なバンドを持ちました。そして彼らは、それ以来いつまでも、互いに幸福に暮らしています!
(バンドのフレーズ)


なんというか、まあ最初に木管楽器と金管楽器と打楽器に突っぱねられるところもなんか寂しいのだが、その後に演奏されるAATBのフレーズはさらに物悲しい。中途半端に席を得ながら、完全にオーケストラ(吹奏楽)の楽器に成りきれないサクソフォンの憂鬱を表現しているかのようだ。

サックスセクションは、石渡悠史、須田寔、冨岡和男、池上政人、仲田守、服部吉之(以上敬称略)というメンバー。だからおそらく、最後のAATBのフレーズを吹いているのは、若き日のキャトル・ロゾーではないか、と思う。もし演奏しているのが本当にそのメンバーだとしたら、数ある録音の中でも最高の演奏の一つではないか。

2008/09/07

VandorenのFlashが素敵

朝起きて、授業の発表資料の準備を進めて、コートダジュールで演奏→ラージ練習という日曜日。話をしていても口から言葉が出てこないくらい、頭の回転が遅い日だった。

フランスVandorenのウェブサイトは、トップページにイントロのFlashが再生される。いつもはスキップしてしまうのだが、ちょっとじっくり観てみた。リードを作る過程がアニメーションになっているのだが、これがきちんとしたデザイナー/アニメーターが描いているらしくすごく素敵なのだ。手描き風のタッチと上質な音楽に乗せてリードの製造工程がわかりやすく示されている。

Felba Creationというデザイン会社が作っているらしい(→http://www.felbacrea.com/)。こちらのサイトからも、同じVandorenのムービーを観ることができる。

2008/09/06

名リサ聴いた

隙あらば入るノイズとの戦い?だったが、いやー良かった(ラジオのデジタル放送って、そのうち始まるんだっけ?)。録音していたので、早速トラック分割してCD-Rに焼いてみた。

F.クライスラー - 愛の喜び
G.ピエルネ - カンツォネッタ
鈴木純明 - スフルスティック
E.グリーグ - 叙情小曲集 第10集から"森の静けさ"
A.グラズノフ - サクソフォン協奏曲
原博巳(sax)、野原みどり(pf)
http://www.nhk.or.jp/meirisa/content/yotei/080906.html

グラズノフは、ラッシャー版のカデンツァが演奏されたほか、練習番号[23]~[24]もLeduc版ではなく自筆譜版が演奏されていた。

現場で聴いてみたかったなあと思わせる、充実した内容。たった40分程度だけれど、本当にリサイタルの一部だけとか二部だけを聴いているような感じだ。緩む部分など一切ナシの、真剣勝負。部屋の明かりを落としてぐっと集中して聴いていると、どんどんと原さんの音楽の世界に引き込まれてゆく。野原みどりさんのピアノも、素晴らしかった。なんですか、あのグラズノフのピアノは(連弾でもしているのかという錯覚に陥った)。

演奏も良かったけれど、曲中の司会者や演奏者によるトークも実に面白かった。なんというか、場内大爆笑の連続、って感じ。グラズノフあたりで、曲の解説がすっ飛ばされたのは、少々残念だったけれど。

面白かったといえば、前半の河合優子さんのショパンの演奏では、河合さんご自身の研究によって楽譜の見直しを行ったものとかで、現行の出版譜とは大きな差異が見られるものである、とのことだった。現代の出版譜がどんな演奏であるか、というのは良く知らないのだが、こんど何かCD買って聴き比べてみようかな。そして、ピアノ協奏曲のピアノソロ版とか…そんなんあるんだ。

2008/09/05

FM名曲リサイタル放送予定

明日9/6 19:20~21:00のNHK-FM名曲リサイタルに、原博巳さんが出演なさるとのこと。毎回2組の音楽家を迎えて演奏してもらうという試みだが、後半が原博巳さんと野原みどりさんの演奏であるのだ。放送予定のページに、プログラムが載っていた。

F.クライスラー - 愛の喜び
G.ピエルネ - カンツォネッタ
鈴木純明 - スフルスティック
E.グリーグ - 叙情小曲集 第10集から"森の静けさ"
A.グラズノフ - サクソフォン協奏曲

原さんも、ご自身のブログでこの番組のことを紹介されている。今回は、グラズノフの協奏曲シガード・ラッシャーが作曲したカデンツァを演奏しているそうだ。野原みどりさんのグラズノフ他のピアノも、もちろん楽しみであるし、前半ショパンのスペシャリスト、河合優子さんが出演するとのことで、そちらの演奏やトークも楽しみ。

つくば市で入りやすいNHK-FMの周波数は、水戸から1KWで発信されている83.2MHzだそうだ。ほおー。

ちょうどいまチューニングを合わせた時にやっていた、「U-18 ユーガタM塾」が面白すた。イエスの「ラウンドアバウト」に、ゴダイゴの「ガンダーラ」、ユニコーンの「大迷惑」、かと思えばバンプの「ギルド」だなんて…世代を超えた名曲の交流か。いいなあ。

2008/09/04

Claude Delangle Interview on YouTube

クロード・ドゥラングル教授が台湾に演奏旅行に行ったときの、インタビュー映像がYouTubeにアップされている。「薩克斯風大師(サクソフォンのヴィルトゥオーゾ)Claude Delangle」だって。カッコいいなあ。



インタビューは英語で行われている(ドゥラングル教授がしゃべる英語の、流暢であること!)。喋りがゆっくりなため、なんとか聞き取れなくもない。途中で切れてるのが、とても残念…。



インタビュワー:中国の作品は日本の作品とは違うのですか?
ドゥラングル教授:日本の作曲家は…私がかつて演奏したことのある作品の作曲家ですが、彼らはドイツやフランス、アメリカで学んだ人たちが多く、より強く西洋音楽の影響を受ける作品を書くように思います。しかし、中国の作曲家が作った作品からは、中国の伝統音楽への強いリンクを感じます。

2008/09/03

ミニマル・ミュージックへの憧れ(その2)

以前の記事の続き。

Philip Glass - Concerto for Saxophone Quartet
このブログでも度々話題にしている、ラッシャー四重奏団によって委嘱された、サクソフォン四重奏とオーケストラのための協奏曲。美しくクールな音世界が良い。全4楽章の緩急緩急という構成で、急速調の2楽章や4楽章では、プログレばりの複雑な変拍子も聴かれる。オーケストラ版のほか、四重奏のみで演奏可能なバージョンも存在している(実際に委嘱したラッシャーSQのテナーサクソフォン奏者、Bruce Weinbergerの依頼によるものなのだそうだ!)。日本での初演は3年前、雲井Qがおこなった。世界を見渡せば、数十回にわたる再演がされているようだが、充実した作品にも関わらず、国内での演奏回数は少ない。
第1楽章だけであれば、YouTubeで観られる(→こちら)。

オーケストラとの録音で言えば、ラッシャーSQとシュトゥットゥガルト室内管の共演盤が存在する(→こちら)。オーケストラは良いのだが、四重奏パートの音程感覚がすこし甘いのが難点か。四重奏版では、ラッシャーSQの旧録音ラッシャーSQの新録音、Tetraphonics Saxophonequartettの「The Invitation」というアルバム、オランダの四重奏団であるAmstel Saxophone Quartetのアルバムなどがある。

Michael Nyman - Songs for Tony
かつては秘曲中の秘曲という感じだったが、最近では有名になりすぎて「いまさら」という感じもするかな。私がイギリスのサクソフォンにはまるきっかけとなった曲だ。マイケル・ナイマンのマネージャーであり親友でもあるトニー・シモンズが1993年1月に癌で亡くなった際に、ナイマンが追悼の念を込めて書いた全四楽章の作品。友人を失ったやり場のない怒りから始まり、最後にはその死を現実として受け入れるまでの心情の変化が表現されているようにも思える。単純なモチーフの繰り返しの中に、強いメッセージ性を感じることができた。

なんと言っても、Apollo Saxophone Quartetの録音を第一に推す。これ以上の演奏は考えられない。ArgoというレーベルのCDで、手に入りづらい時期もあったが、最近は中古品が広く出回っているようだ。聴衆へのアピール度が高い第1楽章だけ録音されることも多いようであるが、やはり通して聴いてこそのこの作品であると思う。

Michael Nyman - Where the Bee Dances
ソプラノ・サクソフォンとオーケストラのための協奏曲。ミツバチの踊りからインスピレーションを得た、爽やかでスピード感のあるフレーズが折り重なる。単一楽章、17分ほどと長いが、次々に出現する主題が面白い。サックスとピアノのデュオ版も存在し、「Shaping the Curve」という名前が与えられている。

ナクソスから出版されているナイマン作品集。オケはまあ普通だが、ジョン・ハールの一番弟子とも言えるSimon Haramが演奏を担当していることもポイント高し。そしてなにより、安い!併録の「ピアノ協奏曲」は、ジェーン・カンピオン監督の映画「ピアノ・レッスン」の音楽を再構築したものだが、徐々に高ぶる感情が感動的である。

「Google Chrome」雑感

新しいもの好きなので、早速インストールして使ってみた。Googleがリリースしたブラウザ、「Google Chrome」。Firefox 3を使用していた私が、Google Chromeに対して感じたファースト・インプレッションと、目についた利点・欠点、そして今後の展望などについて簡単に書いておきたい。ダウンロードとインストールは、以下のリンクから可能である。

http://www.google.com/chrome/

ファースト・インプレッション
 まず驚いたのは、Firefoxから設定がインポートされたこと。新ブラウザ導入に当たって、ブックマークとパスワード認証が引き継がれるのはあり難い。GoogleはMozilla財団とも技術的な提携を行っているのだから、まあ考えれば自然なことか。
 起動し、いくつかのページを巡ってみる。速度的な問題は、ほとんど感じられない。インタフェースはβ版ながら洗練されており、随所に工夫が見られる。ブックマークバーは、Firefoxで慣れ親しんだものであるから、そのままの感覚で使用できた。マウスジェスチャはない…これは、今後に期待だろう。
 学校の研究室へでかけ、研究室のPCにもインストール。問題なくインストール終了&起動し、いくつかページを巡る。フォントは小さくなる傾向があるが、これはレンダラがWebKitであると聞いて予想できたことだ。Gearsの起動速度は驚異的だが、私のブラウザの使い方からすると不要かな。そしてここではたと気付く。起動がありえないほどに速いのだ!Firefox 3で不満であった点がそれであったのだから、この起動の速さは感動モノだった。
 研究を放り出して午前中をGoogle Chrome遊びに費やし、昼ごろにはおおかた快適に操作できるようになってきた。その後も、空いた時間にちょくちょくと触っていたのだが、特筆すべき点がもう2つ。
 「JavaScriptの実行速度がありえないほどに速い」:JavaScriptは、アセンブラにコンパイルされた後に実行されているらしい。そういうアイデアは思いつきはするけれど、実装したブラウザってなかったよなあ。iGoogleやGmail、Google Readerを使っている私には、かなり嬉しい。
 「テキストボックスを広げられる」:右下のつまみはなんだろうなー、と思いながら何気なくドラッグしたところ、テキストボックスが大きくなった!ブログを書いたり、コメントを書いたり、というときには、かなり重宝します。

利点だと感じたこと
・起動が速い
・HTMLレンダリングは十分ストレスフリーなレベル
・JavaScriptの実行が速すぎる。Googleのウェブアプリ利用時に威力を発揮
・インタフェースにあまり違和感がない
・テキストボックスを広げられる機能

欠点だと感じたこと
・マウスジェスチャがない
・AutoPagerizeが使えない→xAutoPagerizeが使えるみたい
・戻るボタンの履歴を表示させるための「長押し」という操作は、個人的には苦手です。プルダウンメニューをつけてほしい
・ブラウザに記憶されたパスワードが、簡単に見れてしまうのはちょっと…

展望
 さて、たった一日しか使っていないが、このブラウザが果たして今後どのような道を辿るのかを考えてみたい。
 中期的に考えれば、バージョンアップによってマウスジェスチャなどが導入されることは十分考えられる。だがマウスジェスチャだけでは不十分で、もし、Firefoxのアドオンのような仕組みを実装することが出来れば、大半のFirefoxユーザはGoogle Chromeに流れてくるのではないだろうか。IEとの戦いに関しては、数年のレベルでIEの牙城を切り崩せるかどうかは、ちょっとわからない。IEの足元をぐらつかせるには、一般ユーザへのアピールが重要となると思う。広告やテレビCMとかやったら、シェアは大きく変化すると思うのだが。
 そして、長期的に見た場合。Googleは、コンピュータ上で行っている作業の大部分をブラウザ上で行えるようにしようとしている。OSの世界には介入せず、あくまでもブラウザより上位のレイヤを手中に収めようとしているのだ。そしてajaxの普及により、JavaScriptによってローカルアプリと機能的に大差ないウェブアプリを作成することは可能となった(Google DocsやGoogle Spreadsheetsは、その代表格)。将来、ウェブアプリの普及が進んだ先で、もしビジネス向けのパソコンが単なるインターネット端末と化したときには、その上で動いているブラウザは、このGoogle Chromeをおいてほかにないのではないだろう…とも思う。

あなたはGoogle Chromeを使いますか?
 はい。しばらくはFirefox 3を離れて、Google Chromeを使ってみようと思います。欠点もありますが、このブラウザが気に入りました。

2008/09/02

デュオのレパートリー

ルクレールやヒンデミットやプーランクはたくさん演奏されるが、その次が続かない、というのがサクソフォン・デュオの現状。私が今まで聴いたり演奏したりしたなかで、際立っているなと感じたものをいくつか思い出して挙げてみたい。

Alain Bernaud - Sonate en duo (ssax, bsax)
フランスの作曲家、アラン・ベルノーと言えば「四重奏曲」あたりが有名だが、ソプラノサクソフォンとバリトンサクソフォンのために書かれた本作品も、見過ごしてはおけないと思う。もともとはデファイエとルデュー、という2人の伝説的名手らのために書かれた作品で、モチーフの鏡像進行に重きを置いた作品。第1, 3, 4楽章あたりなどオススメ。難しいのはもちろんだが、長いのもちょっと難点。
(楽譜:Editions Comble)

Ferrer Ferran - Sonatina ~PARSAX~ (asax, asax, pf.)
「キリストの受難」などの吹奏楽作品が有名なフェレール・フェランだが、こんな曲も書いているのですねえ。スリリングな第1楽章、美しい第2楽章、ジャズ風の第3楽章と、はっきりと性格が分かれており聴きやすく、全部通しても演奏時間は11分程度。Ensemble TXの演奏会でも取り上げたが、けっこう難しかった(もしかしてアマチュア初演!?)。吹いているほうも楽しいし、聴衆受けもかなり良い作品であることは間違いがない。
(楽譜:Editions Comble)

Andy Scott - Dark Rain (ssax, asax, winds or asax, tsax, winds)
音源が存在せず詳細が分からないのだが、ジョン・ハールとロブ・バックランドに捧げられた協奏曲、というだけで興味が引かれる。しかも、British Composer Awardsの吹奏楽&ブラス部門を受賞してしまったというのだから、なんだか凄いものであることは間違いなさそうだ。このリンク先から試聴できる。clip1とclip3とclip5がカッコよすぎる。ピアノリダクション版作ってくれ~。
(楽譜:Astute Music)

Guy Lacour - Suite en duo (asax, asax)
アルトサクソフォンのためのデュオ。第2楽章(だったかな…)のフーガに、バロック作品からの影響を感じ取ることができる。終楽章は、二本のサックスが濃密に絡み合いながら複雑なパッセージを吹き飛ばす。最後の飛ばしっぷりには、拍手喝采って感じです。
(楽譜:Billaudot)

江原大介 - Coloring time (ssax&asax, asax&tsax, pf.)
蓼沼雅紀さんと長澤範和さんのデュオ「阿吽」の演奏会に際して委嘱された新作。中間部にはジャズ風のフレーズが置かれ、そして両端にはゆったりとした美しい部分が奏でられる。この演奏会では3つの新作が披露されたが、トリを務めたこの作品に、観客席が大いに沸いていた。
(楽譜:未出版)

他に何か良い曲がありましたら、教えてくださいm(_ _)m…そういえば、フェルドハウスのライヴエレクトロニクス作品、「TATATATATA」ってテナーサクソフォンとバリトンサクソフォンのために編曲されているんだったか。

2008/09/01

Leon Kochnitzky - Adolphe Sax and His Saxophone

サクソフォンという楽器の黎明期について、かなり多くのエピソードが載せられた書籍、Leon Kochnitzky著「Adolphe Sax and His Saxophone」が、以下のリンクから無料でダウンロードできる。1949年の出版ということで、パブリック・ドメインとして公開されている。

http://www.archive.org/details/AdolpheSaxAndHisSaxophone
(リンク先のページの左隅に、"PDF"というリンクがある)

アメリカのBelgian Government Info Centerというところが出版したベルギーの文化を紹介するシリーズ「Art, Life and Science in Belgium」の一環で、その13巻目として、ベルギーの楽器発明家アドルフ・サックスと彼が発明した楽器についての書籍を作成した、ということのようだ。全50ページ弱。

ここで公開されているのは初版本のスキャン・イメージだが、最終改訂版として4th Editionまで出版されているらしい。4th Editionでは、表紙や装丁が変わっているほか、シガード・ラッシャーのコラムが付属している。しかし、中身としてはこの無料ダウンロード版でも十分すぎるくらいだ。

アドルフ・サックスの生い立ちから、楽器の発明、作曲家とのかかわりなどについて述べられており、特にサクソフォンの黎明期について知りたい向きには、必携の資料だと思う。随所に織り込まれた貴重なイラストや写真も、面白い。