まず、フレデリック・ヘムケ Frederick Hemke氏ソロの3枚のLP「Contest Music for Saxophone(Lapider Records)」「The American Saxophone(Brewster Records)」「Music for Tenor Saxophone(Brewster Records)」に関しては、kuri_saxoのトップページ→[クラシック・サクソフォンのレコード]に記述を追加したので、よろしければご覧ください。なぜか解らないけれど、HTMLを書くのって、ブログに記事を作るのよりずっと疲れる。たいしたタグは書いていないのだが。
CDに関してはこちらで書いておこう。アラン・ペッテション Allan Petterssonの交響曲第7番と交響曲第16番が入ったCD「ALLAN PETTERSSON - SYMPHONY No.7 & No.16(Swedish Society SCD 1002)」。ヘムケ氏とオーケストラの共演と言えば、シカゴ響との共演によるアルルや展覧会の絵といったところが有名だろうが(→レコーディングのリスト)、個人的にはオーケストラとの共演モノで最強ではないかと思っているのが、本CDである。
ヘムケ氏が参加しているのは「交響曲第16番」のほうなのだが、まずは作品の成立経緯についておさらいしておこう。みておこう。1979年、ヘムケ氏はペッテションに向けてサクソフォン作品委嘱の手紙を書くが、ペッテションは数ヶ月の後になんと20分に及ぶ単一楽章の交響曲を一曲、ヘムケ氏に送り返してしまったのだ。そうして完成した作品は、なんとオーケストラを従えてサクソフォンが延々と高難易度のソロを取り続けるというものなのであった。
作曲者は作品完成の1年後に死去。初演は1984年にユーリ・アロノヴィッチ指揮ストックホルム・フィルとサクソフォン独奏フレデリック・ヘムケ氏というコンビにて行われたが、さらにその初演クレジットのまま、同年のうちにレコーディングが行われた。オリジナル版のほか、ジョン=エドワルド・ケリー John Edward Kelly氏の手によって補筆がなされた版の録音も存在する。
さてその「交響曲第16番」ある時にはオーケストラと共に、またある時にはオーケストラに対抗しながら、孤高に吼え続けるサクソフォンは、実に強烈な印象を残すものである。20分にわたって超絶技巧を繰り返しながら、オーケストラの音の波に決して屈せず、(中間部ではいったん落ち着くけれど)勢いが戻った後半の最後までテンションを保持するのだ。真剣に聴くと、ちょっと恐ろしいくらい。ペッテションは、作曲当時かなり重い病を患っていたというが、じっと耳を傾けていると彼の悲痛な叫びが湧き上がってくるようである。
かなりハードな内容であるが(無調というわけではない)、ヘムケ氏のあまりにも見事な演奏…いや、"演奏"というよりまるで"戦闘"だが…を聴いてみたい方は、ぜひどうぞ。
0 件のコメント:
コメントを投稿