2007/08/30

【募集】Kientzy著"Saxology"一緒に買いませんか?

ケンジー氏の「Saxology」買いたい方、いらっしゃいますか?

「Saxology」は、ダニエル・ケンジー氏が著した有名な論文で、サクソフォーンのための特殊奏法を網羅した、おそらく世界最高レベルのもの。入手すべく四方八方手を尽くしていたのだが、ようやく入手の目処が立った。なかなか流通には乗らない書籍であり、しかも時々販売しているのを見かけたとしても、ベラボウに高かったりと、いままで指をくわえて見ていただけっだのだが…。

しかし最近、Adolphesax.com経由だと、いくらか安く入手できるということを知ったのだ(送料コミで60ユーロ)。さらに、本来ならば支払い方法として銀行送金しか受け付けていないようなのだが(手数料が30ユーロを超える)、交渉の末なんとか別の支払い方法を搾り出してもらったのだ。この方法だと、手数料0円。いやあ、ありがたい…すみません、デュランさん。

で、本題。

私はもちろん買うつもりなのだが、もしかしたらこのブログをご覧になっている方の中には「Saxology」欲しい方がいらっしゃるかもしれない…(一人もいない可能性のほうが高いけど)。せっかくの機会なので、一緒に買う方がいないかなあと。デュランさんからも、「3冊くらいまでは在庫もあるし、すぐ発送できるよー」との返事をすでに頂戴してある。

というわけで、同時購入者を募集。要項は、以下。
※終了しました

・一冊あたり、送料コミで60ユーロです。
・Adolphesax.comのスタッフに、私と同時購入者の住所をメールします。直接それらの住所に同時発送してもらいます。
・Adolphesax.comに対する支払いはまとめて私が行い、書籍到着後に私のほうに送金をお願いすることになります。為替レートはこちらで把握していますので、日本円にてお知らせします。
・安全性と私の扱える金額を考慮した上で、先着2名様ということで。
・返事を待たせているので、2007/8/31 24:00までにメールをください。

以上、もし万が一ここをご覧になっている方の中に、「Saxology」購入されたいという奇特な方がいらっしゃいましたら、以下のメールアドレスまで住所とお名前を書いてメールしてください。

kuri_saxo@yahoo.co.jp

肝心の内容に関しては、こちらのウェブページをご覧ください。特殊奏法を扱った書籍としては、世界随一のボリューム(ちなみに600ページ)を誇るものかと思われます。
http://www.kientzy.org/fr/a-sax.html

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まーたぶん一人もいらっしゃらないと思うけれど、いちおう、ね。うん、いちおう。しかし、あの国立音楽大学図書館すら持っていないとは…どれだけ流通していないというのだ。

栃尾克樹氏の公式サイト

プロ・サクソフォーン奏者の栃尾克樹氏のウェブサイト。ウェブ上を散策していたら、偶然見つけた。それにしても、いつの間にできていたんだ。

http://ktochio.com/

内容は、プロフィール、演奏会情報、ディスコグラフィなどと、オーソドックス。ん…?何気にブログもあるー!おぉ、CD発売が告知されてるー!

http://blog.ktochio.com/

2007/08/29

こんなものが…

ebayをふらついていたら、あの発明王エジソンが設立したレコード会社が録音した、ルディ・ヴィードーフ(ウィードフト) Rudy Wiedoeftの78回転レコードとか、Six Brown Brothersのオリジナルレコード、なんてものが出品されていた。驚き…。

誰か買いませんかー。いえいえ、冗談です。

2007/08/28

Todd Oxford「Finesse」

私は中学~高校~大学1年と、吹奏楽の中でずっとバリトン吹きであった。いっぱい練習したけれど、ヘタクソもヘタクソで、音色はひどいわ、さらに音程に関しては今思い返してみても顔を覆い隠してしまうほど恥ずかしいわで、自分の演奏に関しては何ともな思い出しか残っていない(笑)。が、バリトンサックスの持つ独特の中低音域サウンドは、アルトやテナーよりもなんとなく魅力的に思えたし、コントロールも楽だったしで、楽器そのものは好きだったっけな。

そんな経歴もあり、バリトンサックスのことはけっこう身近に感じている。バリトンサックスによる以前ドルチェ楽器に立ち寄って倉田さんと話したときに、話題になった(というか、こちらから話題に出した)CD。トッド・オックスフォード Todd Oxford氏のアルバム、「Finesse(Equilibrium EQ 22)」。私が初めて手に入れた、全編バリトンのアルバム。久々に引っ張り出して聴いている。

・フランク「ソナタ」
・バッハ「無伴奏チェロ組曲第一番」
・ボザ「即興とカプリス」
・ボノー「ワルツ形式によるカプリス」

特別にヘンな委嘱現代作品があるわけではなく、弦楽器からの改作(どちらも大曲!)と、アルトのために書かれた超有名無伴奏曲を、バリトンで演奏してしまったというもの。下手に取り組むとただのキワモノにしかならないであろうが、この録音は凄いのですよ!どこまでも隙のない音楽作りが好感度高し。

たとえばフランク。実は、この録音で初めてこの作品に触れたせいか、もうヴァイオリンによる演奏は軽すぎてしまってなかなか聴けないほど。深いヴィブラートを伴う暑苦しく太い音色で、ピアノパートもソロパートと一緒に高潮してゆくさまは、眼前でライヴが繰り広げられているかのよう。しかし音程や音色が崩れるわけでないのも立派。第3楽章で第2主題が回帰したときの強靭な慈しみさはどうだろう?第4楽章の、まるで一編のドラマを見ているかのような構造等々、挙げていけばきりがない。

後に続く無伴奏作品も、バリトンサクソフォンならではの音量・音色の変化と、バリトンサクソフォンならざる超高運動性能(!)を発揮しつつ、最後までまったく飽きさせずに聴かせてくれる。やや濃厚すぎるきらいもあるが、技術的に完成された上にさらに、オリジナリティ溢れる解釈(ヴィブラートの位置が特徴的)を付加した「無伴奏チェロ組曲」。そして、お相撲さんが体格に似合わずクラシック・バレエを見事に踊っているかのような、「ワルツ形式のカプリス」…唖然、次の瞬間には拍手喝采。いやはや、単なるネタCDでは、全くもってない!

オックスフォード氏のオフィシャルサイトで、一部が試聴できるようだ。フランク「ソナタより第4楽章」、バッハ「無伴奏チェロ組曲よりプレリュード」、ボザの「カプリス」、ボノー「ワルツ形式のカプリス」他。

バリトン・サックスのCDと言えば…栃尾氏の「影の庭(Meister Music)」、ライリーのサクソフォン作品集と一緒に、ようやくゲットした。そのうちレビューします。

2007/08/27

The Devil's Horn

Michael Segell著「The Devil's Horn」。ビクトリア大学の書籍売り場で見つけた本。タイトルにしろカバーにしろ、一見したところジャズ関係の本にも思えるのだが、中を見て驚き。クラシックのことがたくさん書いてある!ということで、迷わず20CA$で購入。結局自分用のお土産は、これしか買わなかったなあ。

さてさて、掘り出し物を見つけた気持ちで、日本に帰ってきてamazon.co.jpで検索してみたら、なーんだ、たくさん売っているじゃないか。しかしまあ、中を見ないことには決して買わなかっただろうし、この本のおかげで帰りの飛行機で退屈しなかったし、良いとしましょう。

中身は、サクソフォンに関するエッセイ。著者のセーゲル氏がこれまで経験してきた、あまたのサクソフォン奏者との談話から、サクソフォンの歴史・奏者・演奏スタイルなどについて、無節操に綴っていくというもの。たとえば第2章の書き出しは、こんなくだりから始まる。

ミュルハウス通りにあるメゾネットのドアが開くと、大きく腕を広げまるで久々に会う旧友を歓迎するようなふうに、ロンデックスが姿を現した。「ボンジュール、ボルドーへようこそ」と言いながら、彼は満面の笑みで私を暖かく迎えてくれた。…

プロのサックス吹きの方と酒の席を共にしたときなどに、談笑の中からふと現れては消える、トリビアルなエピソード…そんな話をたっぷりと集めたような印象を受ける(って、そもそもエッセイって、そんなものか)。

サクソフォン発明者のアドルフ・サックスが、2歳のときに階段から落っこちて岩に頭をぶつけて、一週間寝込んだ(笑)という話とか。ヘムケ氏が、ラーション本人から協奏曲の演奏依頼を受けたときに、オーバートーンを練習しまくった話とか。戦時中のこと、ニューヨークフィルの演奏会でクレストンの協奏曲初演目前に、客演予定だったマルセル・ミュール戦死の誤報がオケの事務局に伝わり、代わりにジミー・アバトが吹いたというエピソードとか。…ちょっとここには書ききれないほどに、この本は面白い話の宝庫だ。

あと、諸所で述べられているラッシャー派とミュール派の対立?エピソードの多さが、印象に残った。日本のサクソフォン界で認知されているよりも、この二派の溝というのは、実に深いものであるようだ。たとえば、パリでのラッシャー四重奏団のコンサートの後、クロード・ドゥラングル氏が、楽屋へジョン=エドワルド・ケリー氏を訪ねたときのくだり。

Claude says, "Mr. Kelly refused to shake with my hand. He said we have nothing to talk about."

何という過激な突っぱね方。ラッシャー派の強靭な精神というか、そんなものまでも感じてしまう。この本で述べられている二派間のエピソードは、かなりに読む価値があると感じた。…その関連にとどまらず、ともかくサクソフォンに興味のある方ならば、手元に置いておいて損はない書籍だと思う。全て英語であるため(当たり前か)読みづらいが、私のほうはなんとか最後まで消化していこうと思っている。

2007/08/26

ただいま!

カナダのビクトリアから帰国。

ビクトリア、私が今まで一生のうちで訪れたことのある、どんな土地よりも素敵なところだった。それは、景色であったり、空気であったり、気候であったり、人の温かさであったり。生きているうちに、もう一度かならず訪れようと心に誓ったのだった。

向こうで撮った写真を、オンライン上のアルバムにアップロード&公開してみた。使ったデジカメは5年ほど前のものなので、ちょっと画質が良くないのが残念。
http://picasaweb.google.com/kuri.saxo/

本目的の発表は、意外と上手くいった。暗記するまでがんばった甲斐もあり…あ、私、専門はコンピュータ・サイエンスです(サックス吹きに限らずアマチュアの楽器人て、本職の想像がまったくつかないのが常だからな)。

サックス的ネタとしては(さすがにCDのようなものはなかったのだが)、学会の会場であったビクトリア大学内の書籍売り場で、「The Devil's Horn」なる洋書をゲット。ジャズからクラシックまでの、楽器そのものや奏者に関するエッセイのようなものなのだが、これ、なかなか面白い。また詳しくレビューします。

2007/08/21

カナダへ

学会での発表のため、カナダのビクトリアへ行ってきます。帰国予定は8/26。

ほぼ初海外、おまけに単独渡航という無謀な挑戦。大丈夫なのか…?帰りのAKAL(市内→ビクトリア空港シャトルバス)を捕まえられるかどうかが今のところ一番心配。

向こうにネット環境があったら、更新してみます。

2007/08/20

佐藤渉氏のリサイタル情報

来月22日に、埼玉県で活躍されている佐藤渉氏のサクソフォーンリサイタルが行われるそうだ。先日伺ったドルチェ楽器で、チラシをゲットしてきた。雲井雅人サックス四重奏団のアルト奏者としても有名な佐藤氏、ソロリサイタルとの事で、どんな演奏を繰り広げるのだろうか。

残念ながら、この日は福島県のほうで自分自身の本番があるため、聴きに行くことができないのだ。ベネットの小品など、イギリスのサクソフォン界的興味からしても面白そうなのに…残念。

・佐藤渉サクソフォーンリサイタル
出演:佐藤渉(sax)、川岸麻理(pf)
日時:2007/9/22(金・祝)17:30開場18:00開演
場所:音楽の友ホール(地下鉄東西線、神楽坂駅徒歩2分)
入場料:2500円
プログラム:
- ケックラン「エチュード」より
- ネルソン「ソナタ」
- デュボワ「協奏曲」
- ベネット「3つの小品による組曲」
- 吉松隆「ファジイバード・ソナタ」
その他
問合せ:
042-222-1980(レックス)
info@concertrex.jp
http://www.concertrex.jp/
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ジャズ・ミュージシャンである、オリヴァー・ネルソン Oliver Nelsonの「ソナタ」という曲は、恥ずかしながら初めて聞いた。ネルソンと言えば、言わずと知れたジャズ・スタンダードの名曲「ストールン・モーメンツ」の作曲者だが、どうやら彼は、エリオット・カーターに作曲を師事したことがあるようで、クラシカルな曲の作曲もなさっていたとの事。アメリカでサクソフォンを学んだ事のある、佐藤氏ならではの選曲といったところだろうか。日本初演というわけではないのかな。

チラシにはO.Nelson Sonataとしか書いていないので、私がたいそうな勘違いをしている可能性もあり(笑)実は違うネルソンさんだったりして…。ともかく、ベネットの曲と並んで、日本で演奏されることは稀な曲目であることは間違いない。

2007/08/19

クラシック・サクソフォン・レパートリー100曲 version 0.1

「クラシックサクソフォンの世界から代表的な100曲を挙げたら、どんなリストになるだろう」とふと思い立ち、ざーっと挙げてみた。

さて、ただ挙げただけでは何とも面白くないので、このリストを今後時間をかけて改訂していくことにする。実は、ウェブページkuri_saxoのほうに、サクソフォンのための主要作品リストを作るという妄想があるのだが、その前段階としての試み。また、改訂を繰り返すごとに個人的に好きな作品が排除されていく可能性があるので、ある程度こちらのリストが固まったところで、「独断100曲リスト」を作るつもり。うーん、ジョドロフスキとフェルドハウスは追い出された瞬間にぜひ独断リストのほうで挙げよう(笑)。

※ちなみに、アマチュアのサクソフォン奏者であり、クラシック・サクソフォンCDの世界有数のコレクターであるmckenさんも、100のリストを挙げています。こちらもぜひご参照ください。
http://mcken.blog1.fc2.com/blog-entry-1010.html

・サクソフォン独奏、アンサンブル、室内楽のための代表的なオリジナル作品、100曲を挙げる。
・オーケストラの編成としてサクソフォンが乗っている作品は、含めない(今後方向性が変わる可能性もある)。
・意見を取り入れつつ積極的に改訂を行い、できる限り"General"なリストを目指す。改訂ごとに、このブログ上で最新バージョンを公開。

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クラシック・サクソフォン100曲(Version 0.1: 初稿)

※今回のリストは資料を参照せずに挙げた草稿です。うっかり重要な作品が抜けているかもしれません。改訂前にコメント欄にてお知らせいただければ幸いです。

アイシェンヌ「カンティレナとダンス」
アブシル「ソナタ」
伊藤康英「協奏曲」
伊藤康英「協奏的幻想曲」
イトゥラルデ「小さなチャルダッシュ」
イベール「室内小協奏曲」
ヴィラ=ロボス「ファンタジア」
ヴェーベルン「四重奏曲」
ウッズ「ソナタ」
ウッズ「3つの即興曲」
オルブライト「ソナタ」
カプレ「伝説」
カルメル「四重奏とオーケストラのためのコンチェルト・グロッソ」
ガロワ=モンブラン「音楽的練習曲」
クセナキス「XAS」
グラス「四重奏のための協奏曲」
グラズノフ「協奏曲」
グラズノフ「四重奏曲」
クレストン「協奏曲」
クレストン「ソナタ」
ケックラン「練習曲」
ゴトコフスキー「四重奏曲」
ゴトコフスキー「ブリヤンス」
コンスタン「ムジーク・ドゥ・コンセール」
サンカン「ラメントとロンド」
サンジュレ「四重奏曲第一番」
ジャンジャン「四重奏曲」
シュミット「四重奏曲」
シュミット「伝説」
シュトックハウゼン「友情に」
シュルホフ「ホットソナタ」
ジョドロフスキ「Mixtion」
ショルティーノ「異教徒の踊り」
スウェルツ「ウズメの踊り」
スミス「ファンタジア」
ダール「協奏曲」
ダンディ「コラール・ヴァリエ」
チェレプニン「ソナティネ・スポルティヴ」
デクリュック「ソナタ」
ティスネ「アリアージュ」
デザンクロ「四重奏曲」
デザンクロ「プレリュードとカデンツ、フィナーレ」
デニゾフ「五重奏曲」
デニゾフ「ソナタ」
デュボワ「協奏曲」
デュボワ「四重奏曲」
ドーク「協奏曲」
トーク「July」
ドビュッシー「ラプソディ」
トマジ「協奏曲」
トマジ「バラード」
ナイマン「トニーへの歌」
ナイマン「蜜蜂が踊る場所」
野田燎「即興曲」
ハイデン「協奏的幻想曲」
ハイデン「ソナタ」
パスカル「四重奏曲」
パスカル「ソナティネ」
ヒース「アウト・オブ・ザ・クール」
ピエルネ「民謡風ロンドの主題による序奏と変奏」
ヒンデミット「コンチェルトシュトゥック」
フィトキン「STUB」
フィトキン「ハードな妖精」
ブートリー「セレナーデ」
ブートリー「ディヴェルティメント」
フェルド「ソナタ」
フェルドハウス「Grab It!」
フサ「協奏曲」
プラネル「ロマンティック組曲」
フランセ「小四重奏曲」
ボザ「アリア」
ボザ「アンダンテとスケルツォ」
ボザ「コンチェルティーノ」
ボノー「ワルツ形式によるカプリス」
ペック「上昇気流」
ベネット「四重奏曲」
ベネット「スタン・ゲッツのための協奏曲」
ベリオ「セクエンツァIXb」
ベリオ「セクエンツァVIIb」
ベルノー「四重奏曲」
マスランカ「ソナタ」
マスランカ「マウンテン・ロード」
マルタン「バラード」
マルティノン「四重奏とオーケストラのための協奏曲」
ミヨー「スカラムーシュ」
ムチンスキー「ソナタ」
モーリス「プロヴァンスの風景」
吉松隆「サイバーバード協奏曲」
吉松隆「ファジイバード・ソナタ」
ラーション「協奏曲」
ランティエ「アンダンテとスケルツェット」
ランティエ「ユースカルデュナーク」
リヴィエ「グラーヴェとプレスト」
リュエフ「四重奏のためのコンセール」
リュエフ「シャンソンとパスピエ」
リュエフ「ソナタ」
ラクール「四重奏曲」
ロバ「9つのエチュード」
ロバ「ハード」
ロベール「カデンツァ」

今日のN響アワーは、ボレロ

タイトルどおり。「楽器の名前がわからない」という投書があり、それに合わせた選曲をした云々という由。私も中学ではじめて部活見学に行った時は、ユーフォニアムとかトロンボーンとか、名前は全く分からなかった…こういうささやかな心遣いは、歓迎するべきであろう。楽器のソロに合わせて、楽器名のテロップが表示されるというのもよく考えれば珍しい。

サクソフォーンは、テナー國末貞仁さん、ソプラノ小山弦太郎さん。お二人とも現代風の、ヴィブラートを控えめにした、しかし良く通る音の見事なソロだった。

N響のサックス担当って、どうやって演奏者が選ばれているのか興味あるところだ。やっぱあれかな。師匠からの紹介で、代々受け継がれていくものなのだろうか。在京オケでのエキストラに選ばれるのって、ある意味サクソフォン吹きとしての一つのステータスなのだろうからなあ。

2007/08/18

ヤマハ管楽器「音のカタログ」

実家に帰ってきた。わたしゃ長野県の伊那あたりの出身なのだが、やはりというか何というか、つくばに比べて涼しいこと!「クーラーがなくても眠る事が出来る」というのは、こちらならでは。つくばでは絶対に無理ですからねえ。

…実家にこんなCDがあった。兄弟は妹が二人いてオーボエとフルートを吹いているのだが、そのフルートを吹いている妹が、高校の吹奏楽部の先生からもらったという、「~ヤマハ使用アーティストによる~ヤマハ管楽器『音のカタログ』」なる非売品のディスク。

内容はタイトルどおりで、ヤマハユーザーの国内アーティストが、一曲か二曲ずつ管楽器の演奏を収録したもの。詳細を見て驚いた!なんと、サクソフォーンを雲井雅人氏が担当しているのだ。曲は、バッハの「イタリア協奏曲」から第2楽章をテナーサックス。「Simple Songs(Cafua)」にも収録されていたが、ここで聴けるのは全く別のテイクだ。ピアノは猪俣淳子さん(「Simple Songs」では、藤井亜紀さんが担当)。思いがけないところで、雲井氏の演奏を聴く事ができて、嬉しくなってしまった。

「Simple Songs」でも、その高くそびえ立つ壁のような(?)演奏に心打たれたが、こちらで聴ける演奏も良いですね!録音時期の前後は良く分からないが、こちらのほうが先なのだろうか。私たちの生活の中に溶け込んでいるような、自然体・等身大のバッハ。そして、相変わらずの美音、見事なまでのフレージング…。

他の参加アーティストも豪華で(以下敬称略)、私が知っているだけでも、フルートの立花千春、前田綾子、クラリネットの小倉清澄、オーボエの宮村和宏、ホルンの丸山勉、ユーフォの外囿祥一郎、ピアノ山田武彦、長尾洋史、加養浩幸指揮土気シビックウィンド…その他。プログラムは基本的に軽めの曲ばかりだが、ふとした時に聴きたくなる、音楽の喜びに満ち溢れた演奏ばかりだ。こんなステキなCDならば、販売すれば良いのに。

2007/08/17

はにわオールスターズ on YouTube

という名前のバンドをご存知だろうか。パーカッショニストである仙波清彦が、日本の腕利きミュージシャンを集めて結成した大編成バンド。

そもそも仙波清彦って何者だ?実は、邦楽仙波流の継承者と言える人物。家元の子として生まれ、幼いころから邦楽器に触れながら才能を伸ばす。東京藝術大学を卒業後、多方面にわたる分野のミュージシャンと様々なジャンルの音楽での共演を行っている、スーパー・パーカッショニスト。

で、その仙波氏が共演したことのあるジャズミュージシャン、邦楽器の奏者、ヴォーカリスト達を一同に集めたのが、はにわオールスターズというバンドであるのだ。彼らが奏でる無節操(ノンジャンル)音楽大会のあまりの凄みに、観客がぽかんと口を開けながら聴いていたことから、「はにわ」の名前がついたのだと言う。数年前に友人に観せてもらった「In Concert」という映像で、はにわオールスターズの音楽を初めて知ったのだが…もう、一回観ただけでまさに"はにわ状態"!ホント、凄いという言葉しか出てこないのですよ。

「百聞は一見にしかず」というわけで、観ていただくのが早いかも…。YouTubeに映像があったので、どうぞ。曲は、小川美潮(曲中で歌っている女性ヴォーカリスト)の作曲・作詞による「水」。

…あ、サックス的興味としてもですね、中間部にはさまれた坂田明の4コーラスに及ぶ超々々絶フリー・ソロは、観ておいて損はないと思われます。



どうです?この無節操っぷり!6/8でドライヴするあまりに楽しい音楽!鳥肌立ちっぱなし。編成は、ホーンセクション、ドラム4台、キーボード2台、ベース3台、ギター2台、それに琴、鼓、三味線、笛…もうカオスもカオス、訳が分らない(笑)。音楽に輪をかけておかしな衣装:ドクター、ナース、ウシなど、ツッコミどころも満載。

参加ミュージシャンのあまりの豪華さ、ちょっと日本のジャズやポップスシーンをかじったことのある方ならば、驚くのではないだろうか。ちょっとイってしまっているヴォーカルが小川美潮、クラリネットを吹いているのは東響の十亀氏、アコーディオンはKOBA(この頃は小林靖宏という名前で活動していた)、サックスは言わずと知れたミジンコ研究家の坂田明、ギターは渡辺香津美(ソロでのぶっ壊れ方が凄い)、ヴァイオリンは"ネコかる"の斉藤ネコ!ドラムの一人は、村上"PONTA"秀一。

はあぁ、楽しい。ガチガチのクラシックも良いが、こういうの聴くとちょっとうらやましくも思うのは確か。ちなみに、はにわオールスターズが"閣下"ことデーモン小暮と共演した映像もYouTube上にあるので、興味ある方は探してみてください。

2007/08/15

マイノリティの愉しみ

はっきり言って、クラシック・サクソフォンという分野に身を置いているということは、音楽ジャンル全体から見れば少数派である、ということに他ならない。毎月国内で発売されるクラシック・サックスのCDは、せいぜい一枚。コンサートは、多くて月に三回程度。

関わっている人数自体は、アマチュアを含めれば相当な数に上るはずなのだが、うーん、たとえば吹奏楽の中でサックスを吹いている限りは、クラシック・サックスという分野へ足を踏み出しているというわけではないからなあ。まあ、とにかく世間的な認知度は低い。

クラシック・サックスというジャンルの少数派っぷりも見事なものだが、自分が興味の対象としているのは、その分野の中でもさらにマイノリティと言える、「イギリスのクラシック・サクソフォン」「現代音楽におけるサクソフォン」のふたつ。あと「サクソフォンの歴史上重要と思われる奏者・録音・作品」あたりか(この分野の探求に関しては、すでにアマ・プロ問わずパイオニア的存在がたくさんいらっしゃるため、大っぴらに手を出すのはちょっと恐れ多い)。

時々、なんでこんなマイナー漁りをしているのかね、と自問自答することもある。資料を発見するのにも苦労するし、見つけたとしても高価だったり、すでに入手不可能になっていたり。日本では、コンサートや録音で取り上げられる機会も少なく、生で体感したかったら外国に出かけるしかない、ということもある…さすがにそこまでする気はないが。むなしい…。これらの話題を濃ゆーく共有できる方があまりいらっしゃらない、というのも、少し寂しい。例えばmi○iに、「サイモン・ハラーム」や「ダニエル・ケンジー」というコミュニティを作成したとして、いったい何人の方が参加してくれるのだろう(苦笑)。「サックス吹きの会」の「どの曲が好き?」スレッドに、「Grab It!」や「Mixtion」と書き込んだとして、何か反応があるはずもない(苦笑)。あったら驚くって。

しかし、この分野に興味を持ち続けていたことは、今まで数々の愉しみをもたらしてくれた。玉石混交とも言える混沌からのすばらしい作品の発見、聴いたことのないスタイルの録音、様々な奏者との出会いやコミュニケーション…。普段報われないだけに、そういったブレイクスルーがあると、とても嬉しいのだ。ワケのわからない曲ばかりが収録されたCDの中から、「これは!」という演奏や作品を発見したときの喜びと言ったら!世界初演、日本初演や世界初演のプログラミングから、名曲が生まれる瞬間を共有したときの充実さと言ったら!の別に誰かと競争しているわけでもないのに、なぜか感じる不思議な優越感。

まあ、トレジャー・ハンティングみたいなものだ。また、そうして得られたお宝は、できるだけ外へ情報を公開していくべきだと考えている。その結果が、トップページの「イギリスのサクソフォン」コーナーだったり、このブログに書き付ける内容だったりするわけで。玉も石も掴まされた中から、主観評価とはいえ、できるだけ純度の高いオブジェクトの情報を公開しているつもりなのだ。極々稀に、コメントやメールで反応があると、かなり嬉しかったりする。

そういった、個人的な愉しみ、そして外へ情報を公開していくという愉しみは、不思議と面白いのですよ。手間はかかるが、多数派ばかりを追いかけるのだけでは、私にとってはやはり何かが物足りないのだ。

2007/08/13

Saxophone Soloists and Their Music, 1844 - 1985

Harry R. Gee氏による「Saxophone Soloists and Their Music, 1844 - 1985」は、タイトル通り、主なサクソフォンの演奏家のバイオグラフィと、各演奏家に献呈された作品、レコーディング等のデータを収録した書籍である。そのあまりのデータ量の多さから、クラシック・サクソフォンの歴史上の事柄に触れる際には、参照されるのが常。

サクソフォン黎明期の演奏家・作品について、主なジャズサクソフォン奏者について、アメリカのサクソフォン演奏家に関する資料、ヨーロッパのサクソフォン演奏家に関する資料、日本・オーストラリアのサクソフォン演奏家に関する資料。全300ページ。

1985年のデータで止まってしまっているのが玉に傷だが、そこに目をつぶりさえすれば、それまでに活躍した演奏家のほとんどすべてのデータを見ることができる。個人的には、マイケル・クラインやウオルター・リア他、イギリスのサクソフォン黎明期における奏者のプロフィールを見ることができて、楽しい。…って、「The Histroy of the Saxophone(Clarinet Classics)」は、ほとんどこの本の焼き直しじゃないかー。

ミュール、デファイエ、ラッシャー、ロンデックス等、歴史上の稀な名手と呼ばれるかたがたに関しては、たっぷり数ページ分を割いてあり、かなりの見ごたえが…。例えば、デファイエ氏が教授を務めたパリ音楽院の各年度の課題曲リストなんかなかなか面白い。リストに挙がっているのは、ゴトコフスキーの「悲愴的変奏曲」、サンカン「ラメントとロンド」など。1971年の課題曲はパリ警視庁音楽隊指揮者のデジレ・ドンディーヌ氏の手によるものですかい。へえぇ。作曲をなさるとは知らなかった。

日本の奏者に関しては、市川豊氏、大室勇一氏、阪口新氏、佐々木雄二氏、下地啓二氏、上田啓二氏の名前を見ることができる。ボルドーやノースウェスタンなど、欧米に留学したことのある奏者が主ですね、やはり。

中古品くらいしか出回っていないようだが、サクソフォンの世界に興味がある方ならば、入手しておいて損はないと思う。

2007/08/11

Jean-Marie Londeix「Portrait」

ここ数年来で世に出たクラシック・サックスのCDのうち、最も注目すべきディスクが発売された。その名も、「Jean-Marie Londeix - Portrait(MDG 642 1416-2)」。いろいろ御託を書き並べる前に断言しておこう。このCD、クラシックサックスの世界に身を置くものならば、必携!!4枚組ながらお値段も2500円程度とお安いので、ぜひ明日にでもCDショップへ!ちなみにamazonでも買える

ジャン=マリー・ロンデックス氏は、パリ国立高等音楽院のマルセル・ミュールクラスを1952年に一等賞で卒業し、その後、長きに渡り、演奏家として・教育者として・研究家としてサクソフォンの世界に絶大な影響力を及ぼしてきた人物。ミュール・デファイエ・ドゥラングルとともに、フランスを中心に発達したサクソフォンの歴史上、最も偉大なサクソフォニストの一人に挙げられよう。

開いたコンサートは600回、献呈を受けた作品は250以上、30タイトル以上のソロ・レコーディング、著名なオーケストラとの共演(マルティノンとの共演によるドビュッシーは、絶品)、ボルドー音楽院で教えた生徒は100人以上、350作品以上の編曲、エチュードや研究書の執筆、As.Sa.Fraの設立、ボルドー・インターナショナル・サックスアンサンブルの主宰…等々、こんなところには一日二日では書ききれないほどの輝かしい実績を残した。

まあ、ロンデックス氏はそれほどまでに凄い人物なのだが、最も活躍した年代が1970年代であったということもあり、出版された録音物がほとんど入手不可能な状態になっている。LPなのだからある意味当然と言えば当然。ようやく1990年代後半に入って、EMI Franceから待望の復刻版「Le saxophone francais」が発売され、そのすばらしい演奏を気軽に楽しむことができるようになった。

そして、今回発売された「Portrait」は、今まで復刻されたことのなかった、Crest盤や私家録音を、大量に再発したものなのだ!総計の再生時間は、なんと4時間30分を越え、編成も、協奏曲、ピアノとのデュオ、無伴奏、室内楽との共演などなどさまざま。録音年代も1950年代から1980年代までと、実に長いスパンを誇る。

録音状態にばらつきはあるものの、演奏は見事と言うほかない。自由自在に楽器をコントロールするテクニック、深いヴィブラートを伴うキラキラした音色。そして、オーケストラを従えようと、無伴奏であろうと、スピーカーを通して伝わってくる圧倒的な存在感は、なかなか他のプレイヤーの録音では聴けないものだ。

大曲が目立つ一方、4枚目に収録された小品たちも、なかなか良い。デュボワの「りす」の愛らしさ、ボノー「ワルツ形式のカプリス」での自在さ、フローラン・シュミットの「コッペリウスの歌」では、ロンデックス氏の見事なテナーの演奏を聴くことができる。

作品も興味深いものばかり。個人的に特に面白かったのが、マリウス・コンスタン Marius Constantの筆による「コンチェルタンテ Concertante」。「ムジク・ドゥ・コンセール Musique de concert」辺りを想像しながら聴き始めると、腰を抜かすほどの強烈な印象を残す音楽で、あわてて解説を見てみると、なんと1978年のギャップ国際コンクールの本選曲だったそうだ。…このコンクール、優勝が現パリ音教授のドゥラングル氏で、二位がセルジー音楽院教授のフルモー氏だったはずだ。そんな感じで、サクソフォンの歴史上のマイルストーンとなるような作品が数多く収録されている。

今まで分かってはいたつもりだけれど、ロンデックス氏の偉大さを再認識させられた感じだ…。サクソフォン界にはこんな凄い人物がいるんですなあ。ちなみにまだお元気だとのこと。うーん、恐れ多いが、会っていろいろ話してみたいぞ。氏の評伝「Master of the Saxophone」買ってみようかな。

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(付録:収録曲目詳細)

> Jacques Murgier - Concerto (Dir: J.Murgier, Orch: Ensemble de chambre)
> Marius Constant - Concertante (Dir: M.Constant, Orch: Prchestre philharmonique)
> Paule Maurice - Tableaux de Provence (Dir: E.Ciavane, Orch: Orchestre de Provence)
> Andre Ameller - Concertino op.125 (Dir: A.Ameller, Orch: Orchetre de chambre)
> Rene Bernier - Hommages a Sax (Dir: M.Boneur, Orch: Orchestre de solistes)
> Pierre-Max Dubois - Concerto (Dir: P.M.Dubois, Orch: ?)
> Pierre-Philippe Bauzin - Poeme op.20 (Dir: P.P.Bauzin, Orch: Orchestre symphonique)
> Pierre-Philippe Bauzin - Sonate op.15 (Pf: P.P.Bauzin)
> Charles Koechlin - Etudes op.188 (Pf: L.Robert)
> Alfred Desenclos - Prelude, cadence et finale (Pf: A.M.Schielin)
> Paul Hindemith - Sonate (Pf: C.Picard)
> Edison Denisov - Sonate (Pf: C.Picard)
> Ida Gotkovsky - Brillance (Pf: C.Picard)
> Lucie Robert-Diessel - Cadenza (Pf: A.M.Schielin)
> Marc Eychenne - Cantilene et Danse (Vn: M.Eychenne, Pf: M.Chancelade)
> Thierry Alla - Polychrome (Dir: J.M.Londeix, Ensemble International de Sax)
> Ivan Markovitch - Complainte et Danse (Pf: A.M.Schielin)
> Guy Lacour - Diertissement (Ens: Ensemble Jean Coutioux)
> Pierre-Max Dubois - Le Lievre et la Tourne (Dir: A.Ameller, ?)
> Claude Delvincourt - Croquembouches (Pf: A.M.Schielin)
> Darius Milhaud - Scaramouche (Pf: A.M.Schielin)
> Rene Bernier - Capriccio (Pf: F.Jenicot)
> Paul Creston - Toccata (Pf: F.Jenicot)
> Jeanine Rueff - Chanson et Passepied (Pf: A.M.Schielin)
> Pierre Auclert - Comme un vieux Noel (Pf: A.M.Schielin)
> Pierre-Max Dubois - Les Ecureuils (Pf: A.M.Schielin)
> Florent Schmitt - Songe de Coppelius (Pf: A.M.Schielin)
> Jacques Ibert - L'Age d'Or (Pf: A.M.Schielin)
> Paul Bonneau - Caprice en forme de valse
> Claude Debussy - Syrinx

2007/08/10

Electric Kompany plays 「Grab It!」

エレクトリック・カンパニー Electric Kompanyは、ニューヨークを拠点に活躍するギター+ベース+キーボード+ドラムスという編成のロック・グループ。この編成へ作品をアレンジ、または新作を若手の作曲家に委嘱し、初演を繰り返しているという。普通のロック・グループと少し毛色が違った面白い団体だ。

一方ヤコブ=テル・フェルドハウス Jacob ter Veldhuisの「Grab It!」は、こちらのブログをご覧の方ならば、まあ名前くらいは聞いたことがあるであろう(笑)、テナーサックスとゲットブラスター(テープ)のためのソロ作品。個人的には、最も優れたテナーサクソフォン独奏のための作品の一つだと考えている。ちなみにこんな感じの曲。

で、もともとはテナーサックスのための曲である「Grab It!」を、エレクトリック・カンパニーの編成に改作したバージョンが存在するのだ。しかも、なんと同グループのウェブサイト上でフルバージョンが聴ける!のです。リンクは、以下。

http://www.electrickompany.com/mp3s.htm

もともとカッコイイ「Grab It!」が、さらにパワーアップ。大胆にも、原曲では控えめなコードを前面に押し出して、かなり聴き応えある仕上がりとなっている。オリジナルバージョンとは甲乙つけがたいが、やっぱりオリジナルのStudy Track5からの部分で突然伴奏がつくことのインパクトこそ、面白いと思うのだ。常に厚いエレクトリック・カンパニー・バージョンの響きは、個人的には最後まで聴くとやや胃がもたれてしまうかな。

エレクトリック・カンパニーは、その他のフェルドハウス作品も積極的に取り上げており、YouTubeでもその演奏の一部を観ることができる。作品は、フェルドハウス氏が作曲した"反戦歌"である「The White Flag」。

2007/08/09

大阪国際室内楽コンクールのプログラム

2005年に行われた第5回大阪国際室内楽コンクールでは、第2部門においてハバネラ・サクソフォン四重奏団が劇的な優勝を果たした。そのすばらしい演奏は、ライヴ録音としても参照でき、初めて聴いたとき腰を抜かしたものだ。

今回は、録音などではなく、その大阪国際室内楽コンクールのプログラム(冊子)の話題。Googleで調べ物をしていたところ、コンクール全体のプログラムの電子版が引っかかってきたのだ。日本財団が資金援助を行った事業の、成果物を広く公開している日本財団図書館内の電子コンテンツで、URLはこちら。

http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2005/00357/mokuji.htm

出場チームの紹介は、「第2部門出場団体」というリンクから辿ることができる。もちろん、ハバネラ四重奏団だけではなく、ヴァンサン・ダヴィッド率いるアルカン四重奏団や、日本のカルテット・スピリタスの紹介も確認することができる。しかし、ハバネラの「3時のおやつ」的雰囲気が漂ってくる写真は良いですね。

第3回の大阪国際室内楽フェスタ(室内楽編成全般が対象の競演会)のプログラムでも、ハバネラ四重奏団の紹介を見ることができる。曲目が笑っちゃうくらい凄い。…って、あのブルーノ・マントヴァーニ Bruno Mantovani氏がサックスのために四重奏曲を書いているんですかぁ!これは聴いてみたいかも。

http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/1999/00559/contents/077.htm

この第3回のフェスタには、ブダペスト・サクソフォーン四重奏団なんていう団体も参加していたようだ。知らなかった。こちらの曲目はハバネラと違って対照的でのどかで、なんだか良いです。

http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/1999/00559/contents/075.htm

2007/08/08

これから発売されるCD

アメリカのサックス四重奏団、Prism Quartetの新しいCDの内容が面白い。ヤコブ=テル・フェルドハウス Jacob ter Veldhuisの作品集だそうだ。リリース元はInnova。奏者の一人である、Taimur Sullivanのサイトで確認できる。

「Pitch Black: The Music of Jacob ter Veldhuis」
プログラムは、Pitch Black, Jesus is Coming, Postnuclear Winter Scenario, Billie, Grab It, The Garden of Love。そういえば、JacobTVの発売と同時にアメリカで行われていたコンサートでは、プリズム四重奏団が演奏を担当していたと記憶する。が、まさかプリズム四重奏団から録音のリリースがなされるとは予期できなかった。

…最近フェルドハウスの作品の録音が増えてきて、うれしい限り。ただ輸入版しか存在しないのがちょっと心苦しいところで、国内版がリリースされさえすれば、日本でもブームがめぐってくると思うのだが。演奏会では聴く機会が増えてきたが、どなたかまとめて録音&演奏しませんかね。

ここをご覧になっている方も、「Grab It!」あたりは聴いておいて損はないですぞ。ぜひ。←いつの間にか話が変わっている…。

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雲井雅人サックス四重奏団のCDのレコーディングが、少し前に行われていたようだ。5月に行われた定期演奏会のプログラムから、3曲を抜粋している。あのすばらしいリサイタルが、お家で楽しめるようになるのか!発売予定は9月とのこと、今から待ち遠しい。

・バッハ/北方寛丈編「無伴奏ヴァイオリンパルティータ第3番」
・アレクサンドル・グラズノフ「四重奏曲作品109」
・ディヴィッド・マスランカ「レシテーション・ブック」

「レシテーション・ブック」早く聴きたい!…というか、生演奏でも、また聴きたいなあ。そういえば仙台サクソフォンアンサンブルクラブさんの20周年記念演奏会へ、雲井雅人サクソフォン四重奏団が「レシテーション・ブック」で客演するそうで、時間とお金さえあれば聴きにいってしまいたいくらいなのだ。

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(追記)

2007年、ニューヨークにおけるJacobTV発売記念コンサートのショート・ドキュメンタリーがYouTubeにアップされていた、載せておこう。Prism Quartetが演奏しているのは「Pitch Black」「Jesus is Coming」からの抜粋、そしてアルトソロ作品の「Billie」。そして、「Heartbreakers」のサックス四重奏バージョンを演奏するは、なんとニュー・センチュリー・サックス四重奏団 New Century Saxophone Quartetだ!

2007/08/07

ヴァカンス

Vandoren.comで通販しようとウェブサイトに行ってみたら、これですよ。あらら。そういえば、ヴァンドレンのリードやセルマーそのほかフランス製のサックスも、ヴァカンス時期になると、とたんに入荷が鈍くなると聞く。

こちらからすればもちろん不便ではあるのだが、なんだか大らかでいいなあ。こういう土壌でなければ、ダマーズの「ヴァカンス」というタイトル(名付け親はフルモー氏)は生まれ得なかったのではないかな、と思う今日この頃。

2007/08/05

吹奏楽コンクールを聴きながら

今日は、後輩たちが出場している吹奏楽コンクール茨城県大会を聴きに行ってきた。途中で出てきてしまったが、結果はどうだったんだろう。各団体の評をザクザクと書いてもいいのだが(良くないって)、ちょっと視点を変えて、特に、課題曲・自由曲に関して思ったこと。

端的に言ってしまえば、変な作品の連続だなあ…と。課題曲は、うーん「マーチの年ならばこんなもんかなあ(--;」と感じた曲すら、一つしかなかった…。自由曲は「起承転結のドラマがあって」+「打楽がド派手で」+「最後がフォルテシモの伸ばしで終わる」という3つの条件を満たすワンパターンさに、途中から飽き飽き。どこがどう曲に結びついているのかわからない、タイトルの意味不明さも然り。

ところどころで聴けたアルフレッド・リード博士の作品は、混沌としたプログラムなかの、まさにオアシスのようだった。この上なく単純で、明晰、しかし深い音楽。中橋愛生氏の作品は、複雑な構造の中に才気が見られて、興味深い作品だと思った…一般的なバンドでは取り上げづらいほどの難易度の高さではあったが。

この吹奏楽分野における現代音楽(ここでは"同時代の作品"という意味で使う)は、吹奏楽連盟のコンクールのおかげで大変な隆盛を誇っている。演奏者・作曲者・聴衆の間で、強力な循環が生まれ、毎年の次々の新作の発表、初演・再演が繰り返されているのだ。クラシックにおける現代作品が商業的に成功しているのって、たとえばクラシックのほかの分野…オーケストラや室内楽では考えられないことではないか。

こういった正の側面だけを見ると、確かにある意味すべてが上手くいっているようにも見えるが、一方で功罪もあるということだ。音楽的に優れた内容の作品が無視されて、演奏効果が高くて内容の無い作品ばかりがプログラムに名を連ねるという状況…。コンクールという場で勝つためには、仕方のないことのなのか?

ここまで書いたことは、すでにコンクールに対する批判の一つとして一般的なものとなりつつある(たぶん)。

…自由曲を、選択性にしたらどうだろう。研究家・評論家が選ぶ音楽的に優れた作品を20~30作品収集して、そこから選ばせるというのは?その時点ですでに自由曲ではないが、実現したら面白そうだ。課題曲は、残念ながら「新作を課題曲とする」という現状を維持してもらうしかない。それがないと、吹奏楽連盟は運営していけないだろうから。ただ、もうちょっとマシな曲が提出されてきていると思うのだが…一体全体どんな選び方をしているんだろう。

と、めずらしく批判一直線で書いてみた。なんにせよ、今のまま中身が空っぽの音楽ばかりをやっていれば、演奏者たちにとってはつまらないし、聴くほうもつまらないし、クラシック界から見たとき吹奏楽というジャンルの地位が上がることはない…のだろう。

2007/08/04

サクソフォーン協会会報が到着

京青さんがブログでも触れられていたが、サクソフォーン協会会報「Saxophonist」第19号が到着。年末のサクソフォーンフェスティバルで、余りを手に入れることはあったが、(私が協会に加入したのは今年のことなので)最新の会報をリアルタイムで受け取るのは初めてのこと。

これでVol.17, 18, 19が手元にあることになるのだが…毎度のことながら、ものすごーく内容が濃いんですよ。「う~ん」と唸ってしまうくらい。目次を以下に挙げておこう(著者の敬称略)。

・大石将紀 - 研究論文「クリスチャン・ロバ」
・安井寛絵 - パリ留学日記
・ルマリエ千春 - パリからの情報便
・貝沼拓実 - 第4回アドルフ・サックス国際コンクール回想記
・石渡悠史 - 第14回ワールドサクソフォンコングレス
・林田祐和 - 2006年クロアチア・ザグレブ演奏会終了報告
・有村純親 - サクソフォーン特殊奏法講座(前編)

・滝上典彦 - 第26回サクソフォーンフェスティバル報告
・波多江史郎 - ジュニアサクソフォーンコンクールレポート
・板倉康明 - サクソフォーンと室内アンサンブルのための音楽的価値
・服部吉之 - 第4回サクソフォーン新人演奏会報告
・服部吉之 - 音大生によるサクソフォーン四重奏の夕べ2007報告
・大城正司 - 第4回アンサンブル・コンクール
・長瀬敏和 - 大阪支部第16回サクソフォーンフェスティバル報告
・コラム - 町工場から響くサックス
・コラム - カルテットが2つデビュー

巻頭カラー写真付(貝沼さんのディナン写真とか、プロスト氏&ララン氏ソロのサックスラージ版のヴィヴァルディ"四季"演奏風景とか、いろいろ)、実に全80ページ。ありがたいと思うと同時に、私のようないちアマチュアにとっては、なんだか勿体無いとすら思ってしまうほどだ。なかなか消化に時間がかかるが、ゆっくり読み進めていこうと思う。

どの記事も面白いのだが、ちょっとしたケイロの違いを興味深く感じたのが板倉氏の記事。この方はサクソフォーン奏者ではなく、現代音楽専門集団:東京シンフォニエッタの指揮者であり、またクラリネット奏者としても著名な方。昨年のフェスティバルにおけるメインで演奏された作品(カプレ、コンスタン、ドナトーニ、ディアナ・ロタル、ミヨー)に関して言及しているのだが、外部からサックス界のレパートリーを俯瞰したときの、冷静な評が面白い。

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そういえば、今年のサクソフォーンフェスティバルの概観が決まりつつあるとの旨がお知らせとして入っていたが、目を遣ると…「23日(日)は、ライブエレクトロニクスとSaxのコラボレーション…」って、えー!!こ、これは本当に実現してしまうのであれば、個人的にとても楽しみですなあ(笑)。やはりU氏あたりが一枚噛んでいるのだろうか。フェスティバルはここ3年連続で聴いているが、毎回毎回の魅力的なプログラムが楽しい。

そのほか、「アドルフ・サックスが作ったヴィンテージ楽器の魅力に迫る企画」「フェスティバルオケとソロSaxのコンチェルト」等々。22日(土)は、アマチュアの演奏企画もあるそうで、こちらもぜひ参加してみたい。

2007/08/03

ブートリー「ディヴェルティメント」 オケ版 on YouTube

ロジェ・ブートリー Roger Boutry氏が作曲した「ディヴェルティメント Divertimento」オーケストラ版の演奏映像。演奏はDavid Matthies指揮ミシガン州立大学オーケストラ。サクソフォーンソリストは…誰だろう。

指揮者ご自身によるアップロードであるため、指揮者を映す形でカメラアングルが固定されているのがやや残念。演奏は、ちょっと苦しいところがあるもののまずまず(サックスを吹いているのも、学生なのだろうか)。

オーケストラ伴奏のバージョンって、実は初めて聴いたのだが(CDはたった一枚だけ出ているのだが、ずっと探し続けて見つからない)、なかなか魅力的。ふと飛び出す旋律が、ヴァイオリンのソロになっていたりして、とっても新鮮。アドルフ・サックス国際コンクールでアレクサンドル・ドワジー Alexandre Doisy氏が本選で演奏&優勝したという録音、聴いてみたいなあ。

2007/08/02

Daniel Kientzy「L'art du saxophone」

まだブログに移行する前のことだが、このCDについて触れたことが少しあったっけ。ダニエル・ケンジー氏の「L'art du saxophone(Nova Musica NMCD 5101)」。

ケンジー氏と言えば、このブログでも度々話題として取り上げる、フランス出身の現代音楽専門サクソフォーン奏者。サクソフォーン作品の新作の委嘱・初演にかける情熱は並々ならぬものがあり、世界中の作曲家から300作品以上の献呈を受け、これまでにレコーディングしたアルバムは72枚…等々、ある意味世界でもっともアクティブなサクソフォニストとも言えるだろう。

本アルバム「L'art du saxophone」は、ケンジー氏が主宰するNova Musicaから出版されたブックレット付のアルバム。見てのとおりの鮮烈な印象を残すジャケット(赤地に金文字!)だが、中身も外見に劣らず強烈。最初の7トラックには、それぞれソプラニーノからコントラバスまでの7種のサクソフォン・ソロ曲の抜粋録音が収録され、続いて、7種のサクソフォンを使いながら、100種類に及ぶサックスの特殊奏法(!)をレクチュアしたトラックが続く、というもの。さらに120ページに及ぶブックレットには、ソロ曲のソロパート譜と、特殊奏法の譜例+英語/フランス語による簡単な説明が書かれている。

1. クルターグ「ブカレストの叔父を訪ねて(snsax, synthesizer)」
2. テルッギ「Xatys(ssax, mix)」
3. ヴィエルゥ「メタクサクス(asax, electronics)」
4. ニクレスク「カントス(tsax, orch)」
5. マルベ「ダニエル・ケンジー協奏曲(bsax, orch)」
6. ミエレアヌ「Aksax(bssax)」
7. デ・パブロ「Une couleur...(cbssax, orch)」
8. サクソフォンによる100の特殊奏法~譜例を交えながら

ソプラニーノサックスやコントラバスサックスのソロ音を聴くことができるのも、実は結構珍しいのではないか?デ・パブロのコントラバスサックス協奏曲なんて、思わず笑っちゃうくらい凄い(ゴォーッと、とにかく凄い音がする!)。これらのサックスの音を、各楽器の標準的な音と捉えるのはどうかなあ、一歩間違えれば、ほとんどネタの世界だ。

サクソフォンの特殊奏法は、次々現れる奇抜な音に、爆笑の連続間違いなし。普通の音から、いくつもの繊細なアーティキュレーション(スタッカート一つとっても、さまざまな種類があるのだ!)、リードを打楽器的に鳴らすもの、マウスピースのみでの発音、声を使った発音、マウスピースを外した状態での発音~トランペット的な鳴らし方と、フルート的な鳴らし方に分別される~、2本同時に吹く、等々。まあ、実際手にとって見ていただくのが良いだろう。

サクソフォンの楽器の特性・特殊奏法を体系的に解説したメディアって、意外と存在しないため、現代作品の演奏・作曲には欠かせない資料だと思う。やや手に入れづらいのが難点だが、現代音楽におけるサクソフォンに興味がある向きには、ぜひ探してみることをオススメ。

2007/08/01

編曲譜の音出し

夏休み最後の四重奏練習。週末にサクソフォーン四重奏用に編曲したモーリス・ラヴェルの「弦楽四重奏曲ヘ長調」から第1楽章、第2楽章、第4楽章を音だし。第3楽章は、時間がなくて編曲には着手していない。

ちなみに、第1楽章のスコアは、こんな感じ(ド素人の仕事なので、やや公開は恥ずかしい)。アーティキュレーションとダイナミクスに関して不完全であるため、しばらくしたら消します。楽譜をきちんと整備して、いつか全楽章公開できたら良いなあ。
http://www.geocities.jp/kuri_saxo/notes/ravel.html

第1楽章の冒頭は、ソプラノサクソフォン=第1ヴァイオリンの牧歌的なテーマと伴奏の上昇音形が交錯する、単旋律の美しいフレーズ。意外にも!管楽器で吹いても違和感がないのが面白かった。むしろ、より素朴さが強調されて魅力が増しているようにも感じる。さすがに16分音符で動く部分は、弦楽器のほうが良さそうだ。サックスだと指使いがかなり難しくなってしまう上、音質も繋がらない。

原調で編曲してしまったので、全ての楽器がフラジオ連発になってしまう。調は変えたくないので、適宜オクターブ下げよう…どこぞのCDみたいに、全てフラジオなんて、無理。

第2楽章、第4楽章は、初見ではほとんど無理だった。拍子がコロコロ変わって取り辛いので、無理もない。

高橋悠治作品の楽譜

高橋悠治氏は、いわずと知れた日本を代表するピアニスト・作曲家。ベルリンでクセナキスに協力し、帰国後はやや音楽集団「水牛集団」を結成するなど話題を呼んだ。現代音楽への(演奏・作曲両面からの)積極的アプローチ、数々の著作の発表(特に政治に絡んだものが多い)、など、ほかの日本の作曲家とは一線を画すユニークな活動を続けている。右的発言をまったく厭わないその姿は、ちょっと驚くほどのものもあり。

その高橋氏、2006年にサクソフォン奏者の栃尾克樹との作曲・ピアノでの共演をしている。シューマンやフォーレの作品でピアノを弾いたほか、シューベルトの歌曲「民衆に訴える」のバリトンサックス+ピアノ版への編曲、そして栃尾氏からの委嘱作品「影の庭」の作曲も行った。私自身は聴きに行けず悔しい思いをしたのだが、大学の知人から話を聞くに、なかなかすばらしいリサイタルだったようだ。

最近では、マイスター・ミュージックから「影の庭」としてアルバムが発売され、その2006年のリサイタルを思い起こさせるようなプログラムをCDで聴くことができるようになったのがうれしいところ。…買わなきゃ!

で、本題。高橋悠治氏の作品、自身のサイトでほとんどの作品の楽譜が公開されているのだが、バリトンサックスのための「民衆に訴える」「影の庭」も、ご多分に漏れずしっかりとリストにあがっているのだ。下記URLから、[japanese]→[作品・楽譜]と辿ることで、PDFファイルをダウンロードできるサイトに飛ぶことができる。

http://www.suigyu.com/yuji/

ここでは「影の庭」楽譜に記された序文を引用しておこう:

旋律素材はマーラーの「少年の不思議な角笛」より
「この世の暮らし」そのほかの
飢えた子供、政治犯、死んだ兵士の歌

沈黙を聴く
周りの音を意識する
区切り、強弱、音色のしなやかな変化

栃尾克樹の委嘱による

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というように、テーマとしてはかなりに民衆寄りな意味合いをもつ作品だが、音楽として純粋に見ると、大変に面白いものとなっている。楽譜が公開されていることもあって、これから演奏機会が増えれば良いなあ、と。

ちなみにピアニストとしての高橋悠治氏は、以下のYouTubeのムービーを観ていただくのが良いかと。クセナキス「ヘルマ」の演奏映像(強烈!!)。実はまだ生で聴いたことがないので、いつかコンサートに行ってみたいと思いつつ、先延ばしになっている。

http://www.youtube.com/watch?v=fKu4MJNbsfI