まだブログに移行する前のことだが、このCDについて触れたことが少しあったっけ。ダニエル・ケンジー氏の「L'art du saxophone(Nova Musica NMCD 5101)」。
ケンジー氏と言えば、このブログでも度々話題として取り上げる、フランス出身の現代音楽専門サクソフォーン奏者。サクソフォーン作品の新作の委嘱・初演にかける情熱は並々ならぬものがあり、世界中の作曲家から300作品以上の献呈を受け、これまでにレコーディングしたアルバムは72枚…等々、ある意味世界でもっともアクティブなサクソフォニストとも言えるだろう。
本アルバム「L'art du saxophone」は、ケンジー氏が主宰するNova Musicaから出版されたブックレット付のアルバム。見てのとおりの鮮烈な印象を残すジャケット(赤地に金文字!)だが、中身も外見に劣らず強烈。最初の7トラックには、それぞれソプラニーノからコントラバスまでの7種のサクソフォン・ソロ曲の抜粋録音が収録され、続いて、7種のサクソフォンを使いながら、100種類に及ぶサックスの特殊奏法(!)をレクチュアしたトラックが続く、というもの。さらに120ページに及ぶブックレットには、ソロ曲のソロパート譜と、特殊奏法の譜例+英語/フランス語による簡単な説明が書かれている。
1. クルターグ「ブカレストの叔父を訪ねて(snsax, synthesizer)」
2. テルッギ「Xatys(ssax, mix)」
3. ヴィエルゥ「メタクサクス(asax, electronics)」
4. ニクレスク「カントス(tsax, orch)」
5. マルベ「ダニエル・ケンジー協奏曲(bsax, orch)」
6. ミエレアヌ「Aksax(bssax)」
7. デ・パブロ「Une couleur...(cbssax, orch)」
8. サクソフォンによる100の特殊奏法~譜例を交えながら
ソプラニーノサックスやコントラバスサックスのソロ音を聴くことができるのも、実は結構珍しいのではないか?デ・パブロのコントラバスサックス協奏曲なんて、思わず笑っちゃうくらい凄い(ゴォーッと、とにかく凄い音がする!)。これらのサックスの音を、各楽器の標準的な音と捉えるのはどうかなあ、一歩間違えれば、ほとんどネタの世界だ。
サクソフォンの特殊奏法は、次々現れる奇抜な音に、爆笑の連続間違いなし。普通の音から、いくつもの繊細なアーティキュレーション(スタッカート一つとっても、さまざまな種類があるのだ!)、リードを打楽器的に鳴らすもの、マウスピースのみでの発音、声を使った発音、マウスピースを外した状態での発音~トランペット的な鳴らし方と、フルート的な鳴らし方に分別される~、2本同時に吹く、等々。まあ、実際手にとって見ていただくのが良いだろう。
サクソフォンの楽器の特性・特殊奏法を体系的に解説したメディアって、意外と存在しないため、現代作品の演奏・作曲には欠かせない資料だと思う。やや手に入れづらいのが難点だが、現代音楽におけるサクソフォンに興味がある向きには、ぜひ探してみることをオススメ。
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