2007/06/30

「Music Tomorrow 2007」予習

集中講義の「文化論特講I」絡みで聴きに行く予定の、Music Tomorrow 2007のプログラムから、ブルーノ・マントヴァーニ Bruno Mantovaniの「タイム・ストレッチ Time Stretch」と、パスカル・デュサパン Pascal Dusapin「エグゼオ Exeo」を予習中。

マントヴァーニの作品「タイム・ストレッチ」それ自体のレコーディングは存在しないようだ。しかしカルロ・ジェズアルドの5声のためのマドリガル第5巻から「S'io non miro non moro」を下敷きに構成した作品だ、との情報を知ったので、そのマドリガルをリピートで聴いて頭に刷り込んでいる。「タイム・ストレッチ」というタイトルから連想して、きっとこのマドリガルの主題を覚えておけば、時間軸方向変形後のフレーズも掴めるかなあ、というような淡い期待をしている。

「エグゼオ」の方は、リピートで何回か聴いてみたのだが…何かつまらない。リゲティの「アトモスフェール」やクセナキスの「ペルセポリス」あたりを、弦楽と管の響きだけで表現しようとしたような曲で、何かを水で薄めたような感じ。大きな起伏もなく13分間が終わってしまう。録音のせいもあるのだろうか、実際にホールに行ったときに、管楽器の色彩をもう少し感じられれば、退屈せずに聴けるかなあ。

金子仁美さんの作品、新実徳英さんの作品は、どんな音楽なんだろうか。

2007/06/29

MAX/MSPのお勉強

MAX/MSPの体験版をこのサイトからダウンロードしてきて、勉強中。

もともとは、IRCAMのコンピュータ4xをコントロールするために開発されたプログラミング言語を、グラフィカルに改良していったものが現行のMAX。MSPは、MAXに組み込まれている、コンピュータのサウンドデバイスをコントロールする機能。主にライヴ・エレクトロニクス系の作曲には、頻繁に使われているアプリケーションなのだそうだ。うまくオブジェクトを組み合わせてあげれば、世の中に存在するあらゆる音を、自由に生成できるようなソフトウェアとも言えるのだから、面白くないはずがない。ついつい、数時間ぶっ続けで遊んでしまった。

まあ、一応目的もあり、とりあえず、
Temps-reel : phaser : 0 OFF / sine : 1 doubler
Temps-reel : phaser : 4 random high / sine : 3 high freqs
なるエフェクタをMAX/MSP上で組むのが、目標だったりする。これだけならそれほど苦労はしなさそうだが、せっかくだからちょっとでもいろいろな機能を使いこなせるようになりたいのだ。

操作方法は英語のマニュアルしかないのだが、ネット上に日本語のチュートリアルがいくつか公開されており、
http://www.shonan.ne.jp/~hiro-s/
など、MAXを体系的に学んでいくことができ、わかりやすい。

うーん、製品版が欲しくなってきた…アカデミック版ですら40000円弱ですかい。ま、体験版も30日のリミット以外に機能制限はないし、気が済むまでこちらで遊ぼうっと。

2007/06/28

齋藤貴志「絶望の天使」

(以前別の場所にて掲載したCDレビューを、改訂・転載した記事です)

フランス・ボルドー音楽院にてジャン=マリー・ロンデックス Jean Marie Londeixに学んだ齋藤貴志氏が、同時代の邦人作曲家たちのサクソフォン作品に真っ向から取り組んで見せた強烈なアルバム。収録内容は以下のとおり。

・鈴木治行 - 句読点III for Sax Solo
・大村久美子 - イマージュの錯綜 for Sax & Computer
・後藤英 - タン・トレッセIII for Sax & Computer
・伊藤弘之 - 絶望の天使II for Sax Solo
・田中吉史 - Eco Iontanissima III for Sax Solo

収録されている作品は、サクソフォンの機能を(ほとんど限界まで)引き出す超絶技巧の嵐を要求されるような曲ばかりで、ともするとそういった側面ばかりに気を取られがち。しかし例えば、「イマージュの錯綜」で繰り返される微分音を切り抜けた先に、突如として邦楽音階が聴こえるなど、どこか日本人ならではの美意識が根付いているようで、不思議と共感を覚える。

3曲収められた無伴奏の作品では、まるで尺八を繰っているかのような飄々とした雰囲気が印象に残る。また、無音の空間を埋めるセンスに、齋藤氏の、技術だけではない、曲に対する親しみを感じ取ることができる。「日本人が日本人の曲を演奏して日本人が聴く」って、考えてみれば昔からあったごく自然な音楽の在り方の一つだよなあ。ま、楽器はヨーロッパ産だが。

収録タイトルの中には"computer"とのアンサンブル作品も含まれているが、サクソフォンと共演するコンピューターは、自在な音色のパレットを生かして曲の持つ表情を効果的に引き出していると感じる。特にIRCAM(イルカム)で研鑽を積んだ大村久美子氏の、MAX/MSPシステムが生み出す音世界は、一聴の価値あり。

かなり聴き手を限定するが、全体を通して作品の底抜けた面白さ、また演奏内容は驚異的なレベルだ。現代のサクソフォンを知りたい方にぜひ一度は聴いてほしいアルバム。

Vandorenでお買い物

ヴァンドレン(バンドレン?)と言えば、クラリネット&サックスをやっている向きなら知らぬはずがないメーカー。フランス本部のWebサイトはこちら(→http://www.vandoren.com)だが、Webサイトから楽譜とCDの通販ができるということをご存知だろうか。

上記のヴァンドレンWebページに飛んだのち、メニューから「Sheet Music & CDs」を選択すると、ヴァンドレン直営のオンラインショップのサイトに飛ぶことができる。リストを眺めると、出てくるわ出てくるわ、日本では購入が難しい楽譜やディスクのオンパレード。

実は私自身頻繁に利用しているのだが、このヴァンドレンの通販サイトを好む理由はいくつかある。
1.日本では購入が難しい楽譜・CDを買えるから。
2.リストされている多くのCDの在庫がある(In stock)。
3.送料が、他の通販サイトに比べて割安。
4.サポートが丁寧

1.と2.は、ダニエル・ケンジー Daniel Kientzy氏のミニアルバムを買うときに感じた。そもそもケンジー氏のCDを扱っているショップが稀であるのに、在庫を持っているとは。

3.に関してだが、例えばalapagefnacの送料と比べると、かなり割安な感がある。数点まとめて購入したところで、10ユーロ前後で収まる、というのは魅力的。

4.に関しては最近知った。6/22に書いた記事の後日談として、「Mi○○○○○」の楽譜に、エレクトロ・アコースティックのCDが付属しておらず、CDだけ別個に取り扱っているかどうか…という旨を、ヴァンドレンにメールで送っていたのだった。そしてなんと「出版社に付属CDについてコンタクトを取っている最中で、入荷次第発送します」との返事を頂いたのだ。まさかそういった形で対応してもらえるとは思っていなかったので、正直驚いたのだ。この間のメールのやり取りは、フランス語ではなく英語だったが、その点も、私のようなフランス語を知らない者には有難い。

時々サーバにつながらないことがある(もしかして夜間は電源を落としているんじゃないか)こと、フォーム通信の際にlocalhost証明書のエラーが出ること、名前と住所は暗号化されて送られないこと、そしてなにより最近のユーロ高…など、不満を挙げていけばきりが無いのは確かだが、数ある海外の通販サイトとしては、個人的にオススメできるところの一つだ。

2007/06/27

SaxAssault on YouTube

テスト期間中のため、お気楽YouTubeモード。先ほど一つ大物を終えたが、まだ2つほど大変なテストが控えている。

SaxAssaultをご存知だろうか。イギリスのクラシック・サックス吹き、アンディ・スコット Andy Scott氏が主宰するポップス集団。ジャズ&クラシックサックス奏者によるラージアンサンブル+ドラム+パーカッション+キーボード+ベース、という編成で、オリジナル曲やアレンジ物を中心に演奏しているのだとか。

クリス・カルドウェル Chris Caldwell氏が主宰していたロンドン・サクソフォニック London Saxophonicをやや想起させるが、ロンドン・サクソフォニックがナイマンやムーンドッグなど、限定的な領域に対する取り組みのみを行っていたのに対し、サックス・アサルトは完全にポップスの領域に踏み込んだ団体だ。ジャズ奏者が加わることでサウンドに更なるエッジを持たせ、さらにアドリブプレイを積極的に取り入れるなど、全く別の団体だと言える。

すでに2枚のアルバム「Bang!」「Sax of Gold」を発表したり、国内外でツアーを行ったりするなど、頻繁な活動を行っているそうだ。

YouTubeにアップされていたのは、プローモーション目的の2つのムービー。クラシックサックスという枠からは外れてしまうが、とてもかっこよく、かつ楽しい演奏だ。ムービーを観ていると…んん、トップの2人はアポロ・サクソフォン四重奏団のロブ・バックランド Rob Bucklandとティム・レッドパス Tim Redpathじゃないか!アンディ・スコット自身は、テナーを吹いている。

・アンディ・スコットがサックス・アサルトのために書き下ろしたオリジナル曲「Lip Service」


・こちらもアンディ・スコットのオリジナル「Sax of Gold」。ゲストにあの御大ボブ・ミンツァー氏(!)を迎えての演奏。


(追記)

公式ページでメンバー表を見つけた。
Andy Scott [asax, tsax]
John Helliwell [tsax]
Simon Willescroft [ssax, asax]
Andy Morel [bsax]
Rob Buckland [ssax]
Jim Fieldhouse [bsax, bs.sax]
Mike Hall [tsax]
Tim Redpath [sn.sax, ssax]
Jim Muirhead [asax]

Paul Kilvington [key]
Elliott Henshaw [dr]
Ollie Collins [bass]
Steve Gilbert [perc]

クラシック奏者は良く分かるが、ジャズの人は聞いたことのない名前ばかりだ。が、プロフィールを見てみると、なかなか著名な奏者のよう。例えば、Mike Hallという方は、あの王立北部音楽院のジャズ科講師なんだとか。びっくり。

2007/06/25

大学だから、できること

音楽大学に限ったことではないが、利潤の追求が第一なのではなく、特定分野に対して(利益率を無視して)深い研究を行う…というのは、「大学」という場ならではの特徴だ。厳しい競争を勝ち抜いてきた学生が、最高の先生方の下でプロとなるための教育を受け、学問(音楽)に対する深い追求を行う。そこには、若さならではの挑戦意欲、実験的要素といったものが溢れ、頭の固い大人が思いつかないような革新的な試みが、生まれては消えていく。

そういった、学究の場としての音楽大学から、もっと世間に向けて、情報を積極的に発信していって欲しい、という願いがある。

そんなことを考えたのは、原博巳さんのブログ経由でShobi Net-TVという試みを知ったからだ。これは、東京ミュージック&ビデオアーツ尚美で学ぶ学生、卒業生、そして講師陣が、世界へ向けて情報発信する場としての、ストリーミング形式のビデオサイト。まだまだリニューアルして日が浅いが、すでに様々なコンテンツがアップロードされており、同校の内部で行われているコンサートやライヴ、ビデオ作品などを楽しむことができる。

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ちなみにサックス的興味としては、講師の原博巳氏によるサン=サーンス「白鳥」、バッハ「無伴奏ヴァイオリンパルティータ抜粋」、中村均一氏によるバッハ「ソナタハ短調」、シューベルト「アヴェ・マリア」などの演奏が、大変興味深い(こちらから辿れる)。ちなみに、いずれもオープンカレッジ行事の一環として行われたものだとのこと。いずれも大変素晴らしい演奏!

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さて、音楽大学で行われる行事をこのような形でネット配信する、ということは、実に素晴らしいことではないか、と思うのだ。外部からしても、プロの卵がどのような活動をしているのかということは興味あるものだし、普段のコンサートでは聴けない(やや実験的要素を含む)試みを聴ける、というのも、貴重。情報を発信する大学側としても、学生のうちから世界へ向けて情報を発信できる、ということは大変な経験であるし(人に見せるコンテンツを作成するわけだから、クオリティを一定水準まで上げてくるのは当然といえば当然か)、さらに視聴者からのフィードバックなどを受けられるようになれば、など様々に良い点を挙げることができる。

Shobi Net-TVはまだまだ半分はテスト運用段階のようなイメージもあるが、例えば学内試験・卒業演奏会・学園祭コンサート・学生の自主企画コンサートなどを配信してくれるようになったら、とても面白いだろうなあ…と想像する。また、メディアアーツ尚美だけではなくて、他の大学でも積極的に同じような試みが始まれば、良いなあと。

ま、とにかく音楽大学からの情報発信の形式として、Shobi Net-TVはひとつの面白い試みだと思う。様々なレイヤにおいて何かのきっかけを生み出すような、理想が膨らむプロジェクトであることは、間違いがない。これからにも期待しましょう。

週末

日曜は、天久保オールスターズバンド。12:00~はなんとか演奏できた(後半ステージは雨に降られてしまった)。人通りは少なかったけれど、最後のほうになると、たくさんお客さんが集まってきてくれて、演奏している側としてもテンションが上がる。みなさんもいっしょにやりませんか?楽しいですよー。固定メンバーではなく、門戸が開かれていることって、結構珍しいことかもしれない。

雨に降られながらなんとか練習室に戻り、憂さ晴らし大セッション大会。もちろんデタラメなのだが、それもまた面白い!

と、もちろん丁寧な奏法も忘れないように、四重奏用のリードをいくつか選んでみた。いま四重奏でさらっている曲は、豊潤な音色と軽さが同時に求められるため、難しい。いままでこういうタイプの曲は、やったことなかったからなあ。もうちょっときちんと練習しないと。

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(別件)

残念すぎる(T_T)…学会さえなければ…。万が一、お話を受けることができていれば、人生最大の挑戦&本番になっていたことは間違いなし。あー。

2007/06/23

今週末もあまスタ

先週末に引き続いて、屋外で本番がある。さわやかに晴れた梅雨の中日、お出かけついでにぜひお越しください。

天久保オールスターズバンド
2007/6/24(日)12:00~&14:00~
つくばセンター石の広場周辺
プログラム:あまスタのテーマ、スペイン、ブルースブラザーズ・テーマ他

2007/06/22

フランスより

楽譜やCDの場合も、直輸入って言うのかしらん。フランスのバンドレン社にいくつか注文していたCDやら楽譜やらが、まとめて届いた。注文したのが4/20だったはずだから、これまたずいぶんと時間がかかったものだ。

某「○○○○ ○○!」もとりあえず通せるようにはなったし、もうひとつサックスとテープっぽい曲の楽譜買ってみようかなー、と安易に注文してみたのがこの楽譜。なんだか恥ずかしいので、わかる人にはわかる程度に、タイトルはCDで隠してあるが(笑)。CDと比較すると…デカい!!見開くと、なんとA2サイズ。



かなりショックだったのは、サックス+テープの曲の楽譜なのに、肝心のテープ(ソフトウェア?)が付属していなかったこと。確か販売リストには、CDの付属あるなしに関しては明記されていなかったはずだが(てっきり、付属しているものだと思った)…先ほど販売楽譜のリストを改めて見に行ったところ「Only Score」の記述が追加されていた…あらま。まあ、パート譜部分だけ取り出して練習してみて、もしなんとかなりそうだったら改めて注文すれば良いか。…手も足も出ない可能性のほうが大。

テープ?ソフトウェア?の部分だけバラ売りしていたりしないのかな。それだったらば、安く手に入りそうで、けっこう便利なのだが。どなたか情報お持ちでしたらご教示願いますm(_ _)mこのままだと、また楽譜だけのバージョンを買ってしまいそうで、やや怖い。

楽譜の中身はこんな感じだった。なんだかとっても図形楽譜。うーん、どこから手をつければいいのやら。



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あと、某四重奏曲のスコアも同時到着。こちらはパート譜を作成して、とりあえずさらってみるしかない。ジョエル・ヴェルサヴォー Joel Versavaudの演奏による、クリスチャン・ローバのエチュード集CD「Christian Lauba - Neuf etudes pour saxophones 1992 1994」と、4uatreのナントカというCDも買ったので、聴いたらレビューしてみます。

青木健「Ballade」

ずいぶん前に入手したCDだが、久しぶりに引っ張り出して聴いている。大阪市音楽団のテナー・サクソフォン奏者、青木健氏のアルバム「Ballade(TOMO-2003)」。大阪市音楽団友の会の自主製作による、なんと全編テナーサックスで収録されたアルバムだ。

・フランク・マルタン - バラード
・フィリップ・スパーク - パントマイム
・ディルク・ブロッセ - エレジー
・エクトル・ヴィラ=ロボス - ファンタジア
・ジャン=バプティスト・サンジュレ - コンチェルト

テナーサクソフォンのアルバムというと、どうしても新井さんの「ファンタジア」を真っ先に思い浮かべてしまい、それ以降が続かない…というのが普通だが、このCDはまさにテナーサックスの隠れた名盤というかなんというか、大変充実した内容のもの。

まず、プログラム。前半に置かれた3曲は、他楽器のソロ曲からの改作だ。テナーサクソフォンのための「バラード」は、もとはトロンボーンの曲だし(後にマルタン自身により改作)、スパークの「パントマイム」はユーフォニアムの世界ではスタンダードなレパートリー。ブロッセは、吹奏楽世界で良く知られた作曲家だが、この「エレジー」はなんとバス・クラリネットのヤン・ギュンスに捧げられた曲なのだそうだ。

サクソフォンだけではなくて、ほかの管楽器も良く知っているような向きには、これらトランス物がなかなか魅力的なのだ。かく言う私も、スパークの「パントマイム」という曲は、ユーフォニアムの演奏でかなり聴きこんだ作品であるので、テナーサクソフォンで聴けるということが、とても楽しかったりする。解説を読むと、ユーフォニアム版からテナーサックス版へのトランスクリプションの際に、あの樋口幸弘氏が一枚噛んでいるのだとか。わお。

後半はソプラノサクソフォンがオリジナルの、おなじみヴィラ=ロボス「ファンタジア」に、サンジュレの「コンチェルト」。「ファンタジア」は新井さんのアルバムを意識してのことだろうか。

演奏も素敵。技術的には素晴らしいレベルであり、ゆっくりなフレーズも、高速なパッセージの軽々と吹きこなしていく青木氏。しかも、様々な技巧が繰り出されようとも、聴いていてまったく疲れないのは、音色がやわらかいテナーサックスならではの特色だろう。前半のトランス物は、テナーサクソフォンオリジナルとして聴かされても、何の違和感も感じない。「ファンタジア」は、さすがに新井×小柳ペアのどこまでも軽やかな録音と比べて聴いてしまうと酷だが、聴きこんでみると独自の良さが感じられて、これはこれで良いかも。サンジュレは世界初録音とのことだが、後に出版されたドゥラングル教授の演奏と比較すると、解釈の違いが面白い。

ここで買える(大阪市音楽団友の会内のページ→http://www.shion.jp/friend/cd.html)。お値段も、一枚1000円と、良心的なのことこの上ない。特にテナーサクソフォンにかかわっている方々、ぜひご一聴のほど。

2007/06/20

クセナキス「XAS」

数あるサクソフォン四重奏曲のなかで、最も美しい形をもつ作品といえば、ヤニス・クセナキス Iannis Xenakisの「XAS(ザス)」に他ならないだろう。そして、完璧な美しさと同時に、最も演奏困難な作品であり、さらに最も不安定な響きをも併せ持つ。

楽譜上の各所に現れる対称性、厳密に計算されつくされた音の配置、サクソフォンの限界を突破する幅広い音域、などなど、半端ではない遠慮無さ。まるでサクソフォンのために書かれたとは思えず、機能的制約がない4声の電子音によってしか演奏できないのではないか、とも思わせる強烈なスコアは、他の作曲家のどの作品でも見ることができないものだ。

そもそもクセナキスは、数学を音楽に取り入れることに傾倒した作曲家の一人なのであった。確率論やら集合論的やらを作曲に取り入れては、計算され尽くされた演奏困難な作品を生み出し、計算機の進化とともにコンピュータ・ミュージックにも傾倒し、ソフトウェアを使った自動作曲のようなこともやっていたのだ。そんなクセナキスなのだから、サクソフォーン四重奏のために作品を書いたところで、それが「クラシカル・サクソフォーンならでは」のものになる、というはずは無かったのだが、それにしてもお洒落なフランス曲を聴きなれた耳には、かなりインパクトを持つ作品であることは、疑いようがない。

楽譜上の美しさと響きの不安定さは、比例する。(実はスコアを眺めたことはないのだが)聴き進めていくだけで、楽譜の構造が手に取るように分かるほどの、見事なまでの対称性。そして耳あたりの強烈さ。微分音の多用は、不安定さを押し出しながらも、曲の構造の完璧さを深めているようにも思える。

私にとっては、なんと言ってもハバネラ・サクソフォン四重奏団のライヴ盤の印象が強い。聴くその時までは見過ごしていた、この曲の美しさと面白さ、カッコよさを私に気付かせてくれた録音だ。、世界最高レベルのテクニックとアンサンブルの有機性、熱くなろうとも常にストレスフリーな音色、そして何より、ライヴならではの圧倒的なパワー&テンション…クライマックスのフラジオは、圧巻。「XAS」の演奏に関しては、この録音が他のものに比べて頭3つ分ほど飛び抜けている、と思う。

2007/06/19

Andre Arends on YouTube

アンドレ・アレンズ Andre Arendsという名前を知らなくとも、アウレリア(オーレリア)サクソフォン四重奏団 Aurelia Saxophone Quartetの以前のアルトサックス奏者、と言えば分かる人は分かるのではないだろうか(現在は、Niels Bijl氏)。

アウレリア四重奏団の演奏メンバーとして、またアレンジャーとして、、刺激的なアルバムを何枚も発表してきたアレンズ氏だが、スカルラッティのソナタ集を最後に同四重奏団を脱退し、現在は作曲と自作の演奏活動に専念しているそうだ。脱退後の様子は、日本には特に活動の様子が伝わってこなかったのだが、ごく最近YouTubeに投稿されたビデオの中に、アレンズ氏のパフォーマンス風景を収めたものを発見した。

サクソフォニストとダンサーのための、自作の舞台作品の抜粋だそうだ。画質も音質も悪いが、なかなか興味深い内容となっている。

2007/06/18

声とサクソフォン

サクソフォンは、その円錐管という構造的特徴から、人の肉声に近い音色を奏でることができるという。アルトサックスのヴィブラートを伴う長音は、まるで歌手のカンタービレの様だし、バリトンサックスの低音は、まるで男性の野太い声のようだ…というのは、大方には認識されていることだ。

そのサクソフォンが、声とアンサンブルをするとどうなるのか。しかも、歌謡曲の裏でサックスが鳴り立てるような状況ではなくて、コテコテのクラシック作品でのアンサンブル。クラシック・サクソフォンの世界には、こういった声とのアンサンブル曲がいくつか存在しているのだ。

有名なところでは、ホアキン・ニン「夜警の歌」。もともとピアノと女声のための作品だったというが、後にサクソフォンがオブリガート的なパートとしてあてがわれた。ピアノの上に、女声とアルトサクソフォンが濃密に絡む様子は、実に美しい(ロンデックスが参加した演奏が、絶品)。伊藤康英先生が編曲したシューベルト「冬の旅」も、ピアノ・語り(テノール)・サクソフォンという編成で、新たなクラシック分野の一面を切り開いた、という感がある。演奏は至難であろうが、聴き手からすれば、実に贅沢な響きを聴くことができる。

まあ、こういったクラシカルな作品も良いのだが、個人的に声とサクソフォンのアンサンブルは、響きそのものを楽しむ現代音楽の分野でこそ、さらに素晴らしいアンサンブルを繰り広げると思うのだ。

有名なところでは、ラスカトフの「パ・ドゥ・ドゥ」とか?テナーサクソフォン&ソプラノサクソフォン持ち替え+ソプラノ+チャイムという編成だが、微分音を伴う怪しい響き(それは、冒頭の数秒を聴いただけで判る)は、サクソフォンと声のユニゾンでこそ成し得るものなのでは?と思う。北欧の作曲家、レンクウィストの「穢れを清めたまえ」は、ソプラノとアルトサクソフォンの二重奏。脳天に細い針が突き刺さるような、細いながらも密度の高い音世界が構築されてゆくさまは、圧巻。

野平一郎氏の「舵手の書」もサクソフォンとメゾ・ソプラノ、ピアノのための曲で、以前から聴いてみたいと思っていた作品のひとつ。クロード・ドゥラングル教授のために書かれた曲だが、果たしてこの作品においては声はどのように使われているのだろうか。

声とサクソフォンという編成は、たとえ作品が生まれたとしても、演奏困難なせいかほとんど演奏されずに埋もれてしまう、というのが常であると思うのだが、積極的に良い作品はスタンダードなレパートリーとして定着していけば良いな…という密かな願いがある。…まあ、この声とサクソフォン世界を楽しむ、という意味において、次回のジェローム・ラランさんのリサイタルはとにかく楽しみでしょうがない。

不思議なサクソフォンの世界を覗いてみたい方は、ぜひ行くと良いと思います(私も行きます)。ラランさんの、こういったサクソフォン分野の開拓心の旺盛さには、本当に頭が下がる思いだ。

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・声とサクソフォーン、ピアノ「息の横断」(東京の夏音楽祭2007)
出演:ジェローム・ララン(sax)、メニッシュ純子(mezzo-sop)、杉崎幸恵(pf)
2007/7/20(金)19:00開演
大田区民ホール・アプリコ 小ホール
入場料:前売り2000円、当日2500円
プログラム:野平一郎「舵手の書(日本初演)」、イェスパー・ノーディン「火から生まれる夢(世界初演)」他
問い合わせ:090-8053-7070(ヌオヴォ・ヴィルトゥオーゾ事務局)
http://www.arion-edo.org/tsf/2007/program/concert.jsp?year=2007&lang=ja&concertId=s03

今さら校正ミス

定期演奏会のパンフレットの余りを頂戴してきた…ん、んんん?

寄稿した部分に、なんとも盛大な校正ミスを発見…「アウェイデー」の主題譜例が入れ替わっている!!



(今さらではありますが)ややヘコみました。あー…自分でゲラ刷りに手を入れたときは、問題なかったはずなのだが、最終稿の段階でおかしくなってしまったのか。というか、2カラムで原稿を仕上げたのがマズかったという話もあり。

最初から1カラムでレイアウトしておけば、何も不整合が生じなかったはずだ…自業自得です。

2007/06/17

Sax on the Web Forum

英語圏で、おそらくもっとも活発なサクソフォン関連のサイトのひとつとして、「Sax on the Web」が挙げられるだろう。特に同サイトの「フォーラム」では、軽い雑談からかなりマニアックな話題まで、驚くほどの量の投稿がなされている。英語であることを我慢すれば、かなり使えるウェブサイトであることは、間違いがない。

クラシカルサクソフォーンに関するスレッドを集めたカテゴリは、こちら(→http://forum.saxontheweb.net/forumdisplay.php?f=72)。最新の投稿順に上から表示され、スレッドタイトルをクリックすると内容を読むことができる…というのは某SNSのコミュニティと同じ。ちょっといじっていれば、すぐに慣れてくる。

話されている内容の濃さは特筆すべきもので、「rui noda mai recording」「Jacob ter Veldhuis」「New Recentry Work for Tenor Saxophone」「Vandoren A28」「Minimalism」…タイトルだけ読んだだけでは内容が少々わかりづらいが(世界共通のことらしい…)、中では何気に高レベルかつマニアックな会話が繰り広げられていて、驚かされるのだ。ナントカ大学のサクソフォン科教授や、プロフェッショナル奏者のレスもたまにあり、彼らの発言内容も興味深いことこの上ない。

例えば、「Sequenza IXb」のエディションの話題。実は、ジョン・ハールが監修したものと、イワン・ロスが監修したものの二つのバージョンがある、という示唆。どこからどこまでが正しい情報か、ということはイマイチ判りかねるが、調査のきっかけにはなるのだろう。

例えば、ラッシャー派の人たちと世界サクソフォンコングレスという話題。意外にも、アメリカではこの話題は一般的であるようだ。途中からやや話題が逸れたりするものの…。

ほかにも、面白いスレッドがたくさんある。お時間があるときのご一読をオススメしたい。

日本では、こういったコミュニティはなさそうだなあ。某SNS内のサックスコミュニティも、上記のフォーラムカテゴリと比較すると、取り上げられる話題はヘンなものばかりだし。多人数が参加するオンライン・フォーラムは、サックスの話題を醸成する場として良いものであるとも思うのだが、なかなか濃い話題を話し合える場所、というのは日本語圏には今のところないようで。

今日はあまスタ

本日のライヴ聴いてくださった皆様方、どうもありがとうございました(意外にもたくさんの方が足を止めてくださるのには、びっくり)。私個人としても、メンバーのテンションに煽られて、楽しく吹けました。ちょっと疲れたので今日は早めに寝ます。

まあ、なんかひとつくらいクラシック・サックスっぽい記事を書くかもしれませんが。

四重奏リハビリ開始

やはり、一人で基礎練なりソロなりをさらっているのと、4人集まって練習するのでは、わけが違う。最後に四重奏を吹いたのが3月の協会コンクールだから、実に3ヶ月ぶり、ということになるのか。バランス・音色などを調整していくのに、耳と頭をフル稼働。感覚を取り戻すために、少しずつリハビリをしなければ。

それにしても、サンジュレやジャンジャンを軽~く合わせてみるのは、やはり楽しかったのです。

…私信:あれはとりあえずやるとして、ラヴェルじゃなくてグラスも良いかも。一応楽譜買います。

どうでも良いのだが、練習室の隅からアンリ・プッスール Henri Pousseurの「禁断の園への眼差し(禁じられた園の眺め)Vue sur les jardins interdits」のスコアが出てきた!!数年前のサックス・フェスティバルで、トラクシォン・アヴァンの演奏を聴いて以来、とても興味のあった曲なのだが、なぜこんなところに楽譜が転がっていたのだろうか…。

2007/06/16

あまスタ宣伝

(梅雨に入ったはずだが)空を見上げれば、思わず笑みがこぼれるほどの快晴。明日はつくばセンター付近で屋外本番がある。

天久保オールスターズバンド
2007/6/17(日)12:00~&14:00~
つくばセンターRight-Onビル横
プログラム:宝島、ラ・バンバ・ブルースブラザーズ・テーマ他

お暇な方もそうでない方も、ぜひお越しくださいませ(^^)

2007/06/15

ラッシャー生誕百周年イベント

2007年は、シーグルト・ラッシャー Sigurd Rascherの生誕百周年だ。マルセル・ミュールと同時代に活躍し、クラシカル・サクソフォーン界の演奏・教育の両面に絶大な影響力を及ぼした、ドイツ生まれのサクソフォニスト。グラズノフ、イベール等の協奏曲は、彼がいなければ生まれ得なかったし、サクソフォーンの音域開拓においても大変な成果を遺したということは、比較的良く知られている(著書「Top Tones of the Saxophone」はフラジオ音域の練習法を記したベストセラー)。

残念ながらミュールとほぼ同時期(2001年)に鬼籍に入ってしまったのだが、ラッシャーの教えを受けた奏者たちは、今なお世界中で活躍しているという。ジョン=エドワルド・ケリー John-Edward Kellyや、ラッシャー四重奏団なんて、ちょっとクラシックサックスにはまった方ならば、名前だけでも耳にしたことがあるのではないだろうか。

なぜ突然ラッシャーのことを思い出したかというと、こんなイベント情報を発見したからだ(→Rascher Centennial Celebrationの告知)。ニューヨーク州立大学フレドニア校で、11月に行われるラッシャー生誕百周年イベント。ラッシャーに教えを受けた奏者が一同に会し、氏の功績を振り返る意味をこめて、ディスカッションをおこなったり、氏ゆかりの作品を演奏を披露したりするというもの。特に初日の夜に予定されたコンチェルト・コンサートは大変豪華なもので、こんな感じ(サイトよりコピペ)。

The Western New York Chamber Orchestra, Steven Jarvi - Conductor
・Edmund von Borck - Concerto, Op 6 (1932), Wildy Zumwalt
・Alexandre Glazunov - Concerto in Eb (1934), Lawrence Gwozdz
・Lars-Erik Larsson - Concerto, Op 14 (1934), Harry White
・Jacques Ibert - Concertino da Camera (1935), Patrick Meighan
・Frank Martin - Ballade (1938), John-Edward Kelly

うーん、聴いてみたいぞ。ちなみに、2日目の午前中には、ラッシャー四重奏団の演奏も予定されているとか(これでグラスをやってくれたら、言うことなしなのだが…ブツブツ)。さすがに行くことはできないが、こういった催しは大変興味深い。ラッシャーにゆかりの奏者たちが、いかに自分たちの流派を、そして師匠の存在を大切にしてきたか、ということが垣間見えるようだ。

ラッシャー派の演奏は、伝統的なフレンチスタイル、イギリス、アメリカ、いずれのスタイルともかけ離れたもの。現在では淘汰されるような傾向にあることは否めないが、ラッシャー本人の数々の功績については、もっと多くの人が知っていても良いことだと思う。

参考:
雲井雅人氏による記事「ラッシャーとミュール
Thunder氏による記事「もうひとつラーション…そしてラッシャーのこと

オマケ画像:
この写真、見たことある方は結構いるんじゃないかしらん。写っているのは、ラッシャーと2本のサックスだが、よく見ると…(写真はクリックで拡大できます)。


…片方は、アドルフ・サックス自身の製作によるヴィンテージ楽器。もう片方は、サックスメーカーのブッシャーが特別に製作した、倍音デモンストレーション用ホールなし楽器、だそうで。

2007/06/14

楽譜の山をひっくり返す

必要があって、溜め込んであるサクソフォン関連の楽譜の束をひっくり返してみた。するとまあ、出てくるわ出てくるわ、懐かしい楽譜のオンパレード。

マイケル・トークの「July」なんて曲の楽譜、持っている人いるのかしらん。4年前に買った楽譜だが、いまだ演奏機会は訪れず、腐らせてしまっている。ベルノーは「四重奏曲」だけじゃなく、なんと「デュオ・ソナタ」の楽譜まで出てきた(たしか8000円以上した覚えがある)。ウッズの「三つの即興曲」…それだけなら珍しくもないが、なんとKendor Music版。高校生のときに、地元の楽器屋さんで保護したもの。第1楽章はなんども演奏したっけ。

バッハの「シャコンヌ」サクソフォーン四重奏版!伊藤康英先生編。雲カルの演奏会で初演を聴いて感動して、即座にイトーミュージックの鈴木さんに早期の出版を懇願したのだった。一年ちょっと前に音を少し出したが、それ以来本番の機会は巡ってこない。バッハ「イタリア協奏曲」やイトゥラルデ「ギリシャ組曲」など、せっかく買った楽譜も、楽章ひとつ演奏して終わり、ということが少なくない。もったいないなあ。

ソロ曲はほとんど持っていないが、なぜかクリスチャン・ローバの「9つのエチュード(アルト)」が出てきた。これは主に音源との対参照用で、「バラフォン」をかろうじて遊びでさらったことがあるくらい、しかもほとんど吹けなかった。そして「Grab It!」。フツーのソロ曲はないのか(笑)。…え?ラーションのオケスコアぁ??

ちなみにサックス関連以外だと、伊藤康英先生の「交響詩『時の逝く』」、クセナキスの「ST/4-080262」のスコア、デザンクロ「レクイエム」のスコアなど…いったい何を考えて集めていたというのだ。

全ての楽譜を積み上げてみると、厚みは約60センチ。さすがに所有楽譜のリストを作らないと、どこに何があるのかわからなくなってしまう。一度しまいこんでしまうと、取り出す機会がほとんどないため、余計に記憶が薄れていってしまうのだ。

少し考えていること:楽譜を全部スキャンしてPCに保存しておく、ってのはどうだろう。スキャニングの手間はかかるけれど、ずいぶんと扱いが便利になりそうだ。デジタルデータにしておけば、劣化の心配もないことだし。

2007/06/13

欲求

夏だけれど、なんだかとっても四重奏をやりたくなった。軽めの曲も、とびきり難しい曲も。

2007/06/12

7月は、またラッシュ

昨年同様、7月はサクソフォーン関連のイベントが目白押し。

※二次掲載のため、正しい情報はそれぞれのリンク先をご覧ください。

・クラウス・ウールセン サクソフォーンリサイタル
出演:クラウス・ウールセン(sax)、荘村清志(gt)、富永綾(pf)
2007/7/8(日)14:00開演
Hakujyu Hall
入場料:5000円
プログラム:モーリス「プロヴァンスの風景」、カルコフ「組曲」、サン=サーンス「ソナタ」、久田典子「委嘱作品」、ロレンツエン「ラウンド」、ピアソラ「タンゴの歴史」、ビゼー/ボルン編「カルメン幻想曲」
問い合わせ:03-3481-8636(ユーラシック事務局)

誰だろう?と思って調べてみたら、数年前に来日したジョットランディア・サクソフォン四重奏団のソプラノ奏者の方だそうだ。ギターとの共演もあり、なかなか面白そうだが、おそらくこの日は同一時刻にN響の「Music Tomorrow 2007」を聴いているため、残念ながら聴きにいけない。

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・原博巳&ジェローム・ララン&大石将紀ジョイントコンサート
出演:原博巳、ジェローム・ララン、大石将紀(以上sax)、原田恭子(pf)
2007/7/14(土)17:00開演
アクタス・ノナカアンナホール
入場料:3000円(要予約)
プログラム:スウェルツ「ウズメの踊り」、カプレ「伝説」、デザンクロ「PCF」、ヒンデミット「コンチェルト・シュトゥック」他
問い合わせ:http://www.nonaka.com/actus/selmer/(セルマージャパン)
http://www.nonaka.com/actus/selmer/event/eventinfo/070714/

なんだか、もの凄いメンバーが集結したジョイントコンサートだ。聴きに行くかも(すぐ埋まりそうだから、早めにチケット取らないとな)。…あっ、そうか。大石さんて、今年6月いっぱいでパリ・コンセルヴァトワールを卒業されるんだ。帰国後第1回目のコンサートということになるのかな。

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・サクソフォン&ストリングス
出演:ロバート・ライカー指揮東京シンフォニア、*オーティス・マーフィ(sax)
2007/7/17(火)19:00開演
銀座王子ホール
入場料:6000円(ペア券10000円)
プログラム:チャイコフスキー「四季」、*グラズノフ「サクソフォーン協奏曲作品109」、ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」、*イベール「室内小協奏曲」
問い合わせ:tokyosinfonia@gol.com(東京シンフォニア)
http://www.bto21.com/rr/korekarajp.html

おーっと、マーフィ氏がグラズノフとイベールをやるのかあ。しかし、東京シンフォニアって弦楽器だけの団体のはずだが…イベールはどうするんだろう。聴いてみたいが、それにしてもチケットが高い!

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・声とサクソフォーン、ピアノ「息の横断」(東京の夏音楽祭2007)
出演:ジェローム・ララン(sax)、メニッシュ純子(mezzo-sop)、杉崎幸恵(pf)
2007/7/20(金)19:00開演
大田区民ホール・アプリコ 小ホール
入場料:前売り2000円、当日2500円
プログラム:野平一郎「舵手の書(日本初演)」、イェスパー・ノーディン「火から生まれる夢(世界初演)」他
問い合わせ:090-8053-7070(ヌオヴォ・ヴィルトゥオーゾ事務局)
http://www.arion-edo.org/tsf/2007/program/concert.jsp?year=2007&lang=ja&concertId=s03

ほぼ行くことは決定。チケット買わないとなー。野平氏の「舵手の書」は、前々から聴いてみたかった曲の一つなので、楽しみ。果たして開演に間に合うかどうか、というのは、割と切実。

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・クァルテット・スピリタス~サクソフォーン四重奏の新世紀
出演:松原孝政(ssax)、波多江史郎(asax)、松井宏幸(tsax)、東涼太(bsax)
2007/7/20(金)19:00開演
津田ホール
入場料:一般4000円、学生2000円
プログラム:デザンクロ「サクソフォーン四重奏曲」、リヴィエ「グラーヴェとプレスト」、ローバ「ルフレ(輝き)」、中島ノブユキ「フラグメンツ#1~ショパンの旋律が変容する」他
問い合わせ:03-3402-1851(津田ホール)
http://www.arion-edo.org/tsf/2007/program/concert.jsp?year=2007&lang=ja&concertId=k05

上記のジェローム・ララン氏のリサイタルと同一時刻、別会場のため、聴けない。デザンクロやグラプレやるし、何よりクリスチャン・ローバの「ルフレ」をやるし…聴きたかったなあ。中島ノブユキ氏の新作も、面白そうだ。

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・オーティス・マーフィSAX公開マスタークラス&ミニコンサート
出演:オーティス・マーフィ(sax)、晴子・マーフィ(pf)
2007/7/21(土)18:00開演
管楽器アヴェニュー東京アーティストサロン"DOLCE"
入場料:2500円(DMC会員1500円)
プログラム:バッハ「無伴奏チェロ組曲第1番BMV1007」、デザンクロ「PCF」、ハチャトゥリアン「剣の舞」他
問い合わせ:03-5909-1771(管楽器アヴェニュー東京)
http://www.dolce.co.jp/concert_tokyo.html#sax_murphy

昨年と同じく、ドルチェでのマスタークラス&コンサート。昨日ドルチェ楽器を訪ねたときに、チラシを仕入れてきた。バッハ聴いてみたい。

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とまあ、昨年の雲カル2days&ラランさん&マーフィさん&雲井さんソロ&チェ・ジン・ソブさん、を思い起こさせるようなサックス関連コンサートのラッシュ。お財布と相談しながら、じっくり決めようと思う。

M.T. with T-FORCE

大学の吹奏楽団時代にお世話になったトランペッター、M先生のライヴを観に、友人たちと西武池袋線沿いのライヴハウス、Buddyへ。きちんとしたジャズのライヴを観るのは、Charitoのインストア・イベント以来かも。

Tp, Gt, Dr, Bs, Keyという編成のスタンダードなジャズクインテット。M先生のトランペットを聴く機会は今までもあったけれど、ここまできちんとまとめて聴くのは初めてだったが、いやあ、すごかった!フリューゲルの暖かい音色、脳天を突くようなハイトーンに、2セット、計3時間に及ぶ長丁場だったが、最後までテンションは衰えず、むしろ果てしなく高潮するのみ、といった趣。なんつーか、改めてM先生の凄さを思い知らされました、いやはや。

ついつい体を動かしたくなるようなゴキゲンなナンバーから、観客を縛り付けるような集中力の高い曲、そして優しさ溢れるバラードまで、プログラムも多彩。家から駅までは原チャで行ってしまったため、お酒を飲めなかったのは残念だったかなあ(笑)。

わずか数メートル先で繰り広げられる、怒涛のインプロヴィゼイションの応酬。誰かが仕掛ければ途端に全体の進行が変わり、ギリギリの体制を保ちながら「ここぞ!」という瞬間に元の場所に戻る。…ジャズの面白さは、ライヴで体感してこそだ、とも思った。

2007/06/10

フィリップ・グラス「サクソフォーン四重奏のための協奏曲」

フィリップ・グラス Philip Glassは、1937年生まれのアメリカの作曲家。主にミニマル・ミュージックに傾倒し(ライヒ、ライリーと並び、ミニマル三羽鳥の一人とも評される)、室内楽から映画音楽まで幅広い作品を手がけている。

「サクソフォーン四重奏のための協奏曲 Concerto for Saxophone Quartet and Orchestra」は、ラッシャー・サクソフォン四重奏団の委嘱により、1995年に完成した作品。その名のとおり、ソロ声部としてサクソフォーン四重奏を取り上げ、オーケストラを従える、協奏的な作品である。ラッシャー四重奏団とロイ・グッドマン指揮スウェーデン放送交響楽団により、ストックホルムで初演されて以来、主に同四重奏団の手により、世界各地でなんと100回以上の再演がなされているそうだ。

曲は、4つの楽章から成る。第1楽章は、オーケストラが奏でる三度跳躍の繰り返しに、どこからともなく被さるソプラノのメランコリーな旋律線が印象的。第2楽章はジャズのベースを思わせるバリトンのオスティナートが面白い。第3楽章でクールダウンした後、第4楽章は、変拍子を潜り抜けながらの、サクソフォーン四重奏とオーケストラの間での駆け引きが痛快。最後には今までの楽章を回顧するかのように、一気に走り去ってしまう。

音楽的な内容はともかく、面白い作品であることは間違いがない。幸いなことにラッシャー四重奏団とシュトゥットゥガルト室内管の組み合わせでレコーディングがなされており、「Philip Glass: Symphony No.2」というグラス作品集の中に入っている。また、YouTubeでラッシャー四重奏団の同曲の演奏風景&イメージビデオ?(第1楽章のみだが)を収めた動画が公開されており(→こちら)、その独特の音世界を楽しむことができる。

日本での初演は昨年2月。尚美学園大学芸術情報学部音楽表現学科の第3回定期演奏会において、雲井雅人サックス四重奏団と井崎正浩指揮の同校オーケストラが行った。私も遠く埼玉県の和光市まで出かけて聴いたが、雲カルの美音、さらに聴衆の異常なほどの集中力から、独特の空間が創り出されていたのを覚えている。また、実演で聴くとオーケストレーションの多彩さが際立っていたのも面白かった。

四重奏単独で演奏できるように編曲されたバージョンも存在し、こちらはやはり雲井雅人氏が主宰するコレジオ・サックス四重奏団が昨年に初演を行ったそうだ。楽譜も入手しやすい(Chester Music)ため、いつかやってみたいなあと目論んでいる。

2007/06/09

筑波大学吹奏楽団第57回定期演奏会

今日は筑吹の57定。心配されていた雨も終演まで降らず、客足も上々。大変良い演奏会となった。第2部の司会を仰せつかっていたこともあり、袖から全てのプログラムを聴いた。

・筑波大学吹奏楽団第57回定期演奏会
2007/6/9(土)13:30~
於 つくば市ノバホール

第1部~劇場音楽特集
シャル・ウィ・ダンス?
交響詩「もののけ姫」
リバーダンス
サンチェスの子供たち
オペラ座の怪人

第2部~Symphonic Wind meets Jazz
アダム・ゴーブ - アウェイデー
ジョージ・ガーシュウィン - ラプソディ・イン・ブルー
ジョナサン・ニューマン - チャンク
エリック・ウィッテカー - ゴースト・トレイン・トリロジー

アンコール
エル・クンバンチェロ
舞子スプリングマーチ

さて、あえて身内であるということを抜きにして考えても、今回の演奏会には実に感銘を受けた。うーん、もう少し砕いて言うと「ぶらぼー!」。

第1部は、素晴らしい音のうねり。そして効果的なライティング。まるで、音楽から各作品のストーリーが伝わってくるかのようだ。第2部は、どの曲も難易度が高いはずだが、見事なまでの消化っぷり。特に、「チャンク」と「ゴースト・トレイン」は本日の演奏会の白眉だ(客席も大いに沸いていた)!このレベルまで持ってくるには、相当な苦労があったと思われるが、どうだったのだろうか。

アンコールも最高!ゴースト・トレインから、エル・クンバンチェロ~舞子スプリングマーチへの、客席と一体化したようなハイテンションぶりは、なかなか他の演奏会ではお目にかかれないだろうな。一方的な煽りではなく、奏者と聴衆の"濃い"空間共有を、確かに見た。

楽しい時間をありがとうございました(^^)>演奏者、スタッフの皆様。次の定期演奏会も楽しみです。

しかしこういうの聴くと、やっぱり吹奏楽って良いなあ、と心から思う。現役のときにだって、いろいろな楽しさを感じてはいたけれど、なくなってから初めて気付くもののほうが、多すぎるのだ。…例えば現役さんにひとつメッセージを送ることをお許しいただくならば、この話題に尽きるだろうな。

2007/06/08

アンコンレパートリー雑考

全日本吹奏楽連盟主催のアンサンブルコンテスト(通称アンコン)と言えば、多くの吹奏楽経験者にとってはおなじみの名前だろう。加盟団体のメンバーの管楽器による3重奏~8重奏、中学・高校・大学・一般・職場の部門別に分かれ、5分の制限時間内で技術力・表現力を競う場だ。私もかつては、中学時代に一回、高校時代に一回、大学時代に三回、エントリーし演奏した経験がある。

演奏した曲目はそれぞれ、中学のときは誰の作曲かわからない「夢」とかいう簡単な曲(バリトン)、高校ではデザンクロ「四重奏曲」の第3楽章(バリトン)、大学ではショルティーノ「異教徒の踊り」(バリトン)と、デザンクロ「四重奏曲」の第1楽章、第3楽章(いずれもテナー)。…改めて並べてみても、ベタベタな選曲だなあと思うのだが(デザンクロとかショルティーノとか、いかにもという感じだ)、今回はこのアンコンにおけるレパートリーについて考えてみたい。ただし、サクソフォーン四重奏限定で。

アンコンにおける、サクソフォーン四重奏のレパートリーと言うと、何が思いつくだろうか。デザンクロ「四重奏曲」、リヴィエ「グラーヴェとプレスト」、ピエルネ「民謡風ロンドの主題による序奏と変奏」なんかは、名曲中の名曲として、演奏していて楽しい曲、そして何より"勝てる"曲目として、大変演奏頻度が高い。さらに、リュエフ「四重奏のためのコンセール」、ボザ「アンダンテとスケルツォ」、ベルノー「四重奏曲」あたりが、それらに続いていると言えるか。

また、ショルティーノ「異教徒の踊り」やサンジュレ「四重奏曲第一番」、ジャンジャン「四重奏曲」は、前述の曲に比べて難易度が抑えられているということもあり、中学生~高校生での取り組みが多く見られる。これらの曲目で勝ち上がってくる団体も、中にはある。

…このくらいか?きちんと統計を取ったわけではないが、全国的に眺めてみると、上記の曲目の割合が突出しているのではないかと思う。

最近では、イトゥラルデ「ギリシャ組曲」や長生淳「トルヴェールの彗星」、マスランカ「マウンテン・ロード」などが新たに取り上げられるようにはなってきたものの、良く取り上げられるレパートリー、また近年開拓されてきたレパートリーというのも、サクソフォーン四重奏の世界全体を見渡して考えると、いかに限定的であるかということがわかる。

「デザンクロの第3楽章ならば勝てる」という思い込み&5分の制限時間、による、ただならぬ悪循環が構築されてしまっているのか。限定され過ぎて、なんだかつまらないんだよなー。たまにポップスっぽい曲も聴くが(スペインとか、セカンドバトルとか)、個人的にはコテコテのクラシック分野におけるオリジナル曲こそ聴いてみたい。しかも、5分じゃなくせめて10分。

デュボワの「変奏曲」とか、シュミット「四重奏曲」、ラクール「四重奏曲」、フィトキン「STUB」、ドナトーニ「ラッシュ」、トーク「ジュライ」、ベネット「四重奏曲」、ゴトコフスキー「四重奏曲」、ロベール「テトラフォーン」、ロバ「ルフレ」、ティスネ「錬金術」、…む、まにあくー&プロ仕様になりすぎたが、このような曲が入り乱れるアンコン…面白そう(妄想)。いっそのこと、20~30曲程度の曲目の中からの、選択制にしてみるとか(絶対無理)!

また、レパートリーに対して影響力を持つ5分の制限時間に関してだが、県予選レベルからステージ審査にしなくとも、たとえば最初は録音審査にしてみるとか、いくらでも改善の余地はあると思うのだがなあ。大きな会場を押さえるのだって、毎年けっこう大変なんじゃなかろうかと思うが。

レパートリー(と、制限時間)については、思うところが多すぎる。今回は「雑考」レベルに留めておくが、私が考える理想のアンコンについて、時間があったらまとめるかも。…あくまで私が考える、というところがポイント(笑)。

2007/06/05

ディアステマQのCD二題

久々のサクソフォーンCDのレビュー。けっこう前に買ったものだが、フランスのサクソフォーン四重奏団であるディアステマ・サクソフォーン四重奏団 Quatuor Diastemaのアルバムから二つほど。

この四重奏団の存在を知ったきっかけは、mckenさんのところ。1986年に結成されたということで、既に長い活動暦を持っているはずだが、日本へはあまり活動の様子が伝わってきていなかった。ところが、NAXOSから「Saxophone Classics」と「French Saxophone Quartets」というアルバムを発売したのを皮切りに、急速に認知されるようになった感がある。メンバーは、ダニエル・デファイエ教授時代にパリ音楽院のサクソフォーン科を卒業した奏者たちで構成される。

フィリップ・ルコック Philippe Lecocq, Soprano Saxophone
クリストフ・ボワ Christophe Bois, Alto Saxophone
フィリップ・ブラキャール Philippe Braquart, Tenor Saxophone
エリック・ドゥヴァロン Eric Devalon, Baritone Saxophone

フィリップ・ブラキャール氏の名前は、日本からフランスのモンペリエ音楽院に留学したサクソフォニスト(大栗司麻さん、西本淳さんなど)の経歴で目にすることがある。前回のパリ管弦楽団来日のときに、ラヴェル「ボレロ」のサクソフォーンソリストとして来日していたのも、ブラキャール氏(と、クリストフ・ボワ氏)だったという。また、ソプラノのルコック氏はトゥールーズ音楽院のサクソフォン科教授で、あのトゥールーズ・キャピトル管弦楽団のソリストを恒常的に務めているそうな。バリトンのドゥヴァロン氏は、Bayonne côte Basque音楽院のサクソフォン科教授だとのこと。

さて、そのディアステマQが発表したアルバムのうち、私が持っている二枚を取り上げてみよう。一つ目はNAXOSからの出版によるもので、フランスのアカデミズム作品を取り上げた「French Saxophone Quartets(Naxos 8.554307)」。


・ガブリエル・ピエルネ「民謡風ロンドの主題による序奏と変奏」
・アルフレッド・デザンクロ「サクソフォーン四重奏曲」
・フローラン・シュミット「サクソフォーン四重奏曲作品102」
・ジャン・リヴィエ「グラーヴェとプレスト」
・ジェラール・ガスティネル「ガンマ415」

デファイエ四重奏団がかつてEMIから出していたLPを思い起こさせる収録内容。というか、最初の4曲は完全にダブっているじゃないか。ガスティネルの作品が異質ではあるが、実際聴いてみると、不思議と受け入れやすい響きだ。

(録音が微妙なのは置いておくとして)軽めの音色に高いテクニックと、どれも名演奏。この時代にあっては、こういったフランスアカデミズムの潮流を汲む作品のレコーディングをするのって、かなり勇気がいることではないか、とも思うのだが(デファイエ四重奏団の録音が、完全にトドメを刺してしまっているというのは、周知の事実)、古きに惑わされず、しかし奇をてらわず、これらの名曲を現代にきっちりと再構築している。

ピエルネ、デザンクロ、リヴィエなんか、アンサンブルコンテストでも取り上げられる機会は多いのだから、ぜひ日本でも知られてほしい録音だ。変な解釈をせずとも、音色の美しさとスタンダードな解釈で、ここまで説得力ある演奏を創り出せるのか、と感心すること受けあい。そんな理由から、参考演奏としても聴きやすい。

一方、こちらは比較的最近発売されたアルバムで、弦楽四重奏曲のトランスクリプションとグラズノフの「四重奏曲」を取り上げた「D'OUEST en EST(label AMES AM 3004)」。(…気のせいかハバネラの「Grieg, Glazounov, Dovrak(alpha)」に、コンセプトがダブって見えるような…)


・サミュエル・バーバー「弦楽四重奏曲作品11」
・アレクサンドル・グラズノフ「サクソフォーン四重奏曲作品109」
・ドミトリ・ショスタコーヴィチ「弦楽四重奏曲第7番作品108」

録音媒体として聴けるグラズノフにまたひとつの名演が生まれた。奇をてらわない素直な解釈で、不自然にテクニックを見せ付けることもない。「グラズノフはこう自然体であるべきでしょ」というメンバーの主張が、スピーカーを通して伝わってくるような気がする。良く練られた安定したアンサンブル(ハバネラのライヴ盤とは対極)と、山間の湧き水を思い起こさせるような透き通った音色が、耳に心地よい。

ショスタコーヴィチでの、テンションが上がるような場所でも音色は均整を保ったままだ。個人的な趣味の範囲ではあるが、もう少し音色的にもテンション的にも、リミッターが外れたような演奏でも良いんじゃないかと(ショスタコだし)。とは言え、この黒々としたスコアをさらりと吹きこなしてしまうのって、良く考えたら驚異的な技術レベルことじゃないか。これ以上の要求は、贅沢な注文というものだ。

ちなみに、以上二点のCDの入手先はというと…。「French Saxophone Quartets」は、eBayから。送料込みで、日本円にして約1500円くらいだったか(CDが700円、送料が800円)。「D'OUEST en EST」は、フランスのアマゾンから。送料込みで、3500円(泣)。どちらも日本で流通すれば良いのにー。

2007/06/04

文化論特講I

某Sさん(Cさん)から教えていただいた情報:日本語日本文化学類開講の集中講義「文化論特講I(AE12211, J124101)」が凄い!なんと、講師に武蔵野美術大の白石美雪さんを迎えて、日本文化と音楽を絡めた講義を開くというのだ。音楽関連の講義が全く無い我が大学としては、珍しいことこの上ない。

白石さんと言えば、音楽研究家・評論家としては世界的に有名な方だ。私としては、須川さんのアルバム「Made in Japan(EMI)」で曲目解説を担当していたことをとっさに思い出す。そんな大御所がいらっしゃるとは…本当に稀な機会だ。

講義の内容は大変豪華なもので、こんな感じ(うろおぼえ)。

7/3(火)日本文化と音楽
7/8(日)NHK交響楽団コンサート「Music Tomorrow 2007」を聴く
7/9(月)日本における西洋音楽史(前半)
7/10(火)日本における西洋音楽史(後半)

コンサートつき!なんて面白そうな講義なんだろう。インターンの予定とぶつかりさえしなければ、履修申請しようかと考えている。

「Music Tomorrow 2007」の内容をちょっと先取りしておくと、

パスカル・ロフェ指揮NHK交響楽団
・新実徳英「協奏的交響曲 エラン・ヴィタール(2006)(第55回尾高賞受賞作品) 独奏:木村かをり(pf.)」
・ブルーノ・マントヴァーニ Bruno Mantovani「タイム・ストレッチ ~ジェズアルドの作品を下地に(2006)」
・金子仁美「Nの二乗(自然・数)(2006)」
・パスカル・デュサパン Pascal Dusapin「エグゼオ Exeo(2002)」

あのマントヴァーニのオーケストラ作品をやるのか!サクソフォーンと器楽アンサンブルのための「第3ラウンド Troisieme Round」を聴いたことがあるが、この「タイム・ストレッチ」はジェズアルドのマドリガルを発展させた管弦楽作品ということで、いったいどんな響きがするんだろう。興味津々。

(サクソフォンとピアノのための「気泡」でも有名?な)金子仁美さんのオーケストラ作品、(サクソフォンとチェロのための「風韻I」を聴いたことがある)新実徳英さんのピアノ協奏曲作品など、しかもそれが講義つきで聴けるというのだから、これは履修するでしょう。…ところで、大学院生はどうやったら学群の講義を履修申請できるんだっけ。

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少し話題が逸れるが、今年のN響ほっとコンサートも、山下一史指揮で吹奏楽編成を含むコンサートだそうだ!プログラムには、名曲、ホルストの「第一組曲」が含まれている。予定が合えば聴きに行きたいなあ。

羽田健太郎氏逝去

お昼休みの最中にニュースサイトを見ていたら飛び込んできた羽田健太郎氏逝去のニュース。あまりにも突然のことで、唖然とした。まだかなりお若かったはずだが…。

テレビ朝日の「題名のない音楽会」でも有名だが、私にとってはやはり、小出郷文化会館で目にした「ヤング・ピープル・コンサート」のパネルが印象深い。このコンサートの存在を知ったのはだいぶ後になってからだったが、小学生に上質のオーケストラを聴かせたい、というハネケンさんの考え、そして一緒にコンサートを作り上げた新星交響楽団、小出郷文化会館のスタッフたち…のさまざまなエピソードに、感銘を受け、共感したものだ(そのへんの事情は、こちらの本に詳しい)。

ちょっと話がそれたが、何はともあれご冥福をお祈りします。

2007/06/03

「FZ for Alex(ザッパ・フランク小惑星3834)」 on YouTube

以前このブログでトンでもないCDとして紹介した、高名なクラリネット奏者であるアレッサンドロ・カルボナーレ Alessandro Carbonare氏のアルバム「No Man's Land」。ウッズ「アルトサクソフォン・ソナタ」や吉松隆「ファジイバード・ソナタ」をBbクラリネットで演奏してしまったアルバムとして、サックス吹き&クラリネット吹き必携のアルバムだ。

さて、そのCDの最初のトラック「FZ for Alex」は、アンドレア・シェンナ編曲によるフランク・ザッパ Frank Zappaの楽曲のメドレー。ザッパ独特のけだるいメロディと超絶旋律線、そして演奏者のノリっぷりがたのしい録音なのだが、なんとYouTubeにてその「FZ for Alex」の演奏ムービーを発見。演奏者自身、もしくはマンジメントが、プロモーション目的でアップロードしたもののようだ。

うわー、これ実際に映像で観ると、さらに面白い。超絶技巧と底抜けの楽しさの見事な融合だ。詳しくは見てもらうとして、演奏の随所に仕掛けられた遊び心とパフォーマンスに、思わず爆笑してしまった。クラリネット吹きの方、カルボナーレファンの方、ザッパ好きの方、ぜひご覧ください。氏の来日プログラムに組み込まれている「ザッパフランク小惑星3834」もこんな感じなのかな。生で聴いてみたいなあ。

カルボナーレさんてダブルリップ奏法なのだっけ。こんなに激しく動いて、よくアンブシュアが崩れないなと、(クラリネット素人ながら)思う。

2007/06/02

パソコン復活&ネタ探し

パソコンが復活。壊れたHDDを換装したら、あっさりと起動(当たり前か)。ついでに容量がアップ(40Gbytes→80Gbytes)。回転数もアップ(4200rpm→5400rpm)。体感速度もアップ。OSのインストールを先ほど終えたが、ネットワークの設定をして更新をインストールして必要なソフトを入れて…とやっていると、おそらく明日一日は終わってしまうのだろう。

これで楽譜も書けるようになるので、Earth Wind & Fireを流し聴く。High-Jinks Wind Orchestra用やあまスタ用のネタ探しだ。それにしても、改めて「September」や「Let's Groove」始め、名曲ばかりだなー、と思う。

ハイジンクス用には、「Sing a Song」あたりをアダプテーションできたら良いなあ。あと、ハービー・ハンコックの「Cantaloupe Island」という曲が、ユニゾンメロディ&単一コード進行&バッキング絡みという感じの曲で、あまスタっぽくて良いかも、と思った。

(追記)
PCですが、Ethernetモジュールののドライバがネット上から探しきれず、苦労してます。完全復活はまだ先か…。ドライバCDどこにしまったっけなあ。

(さらに追記)
ドライバが入ったCDは、某CEKさん邸にあった。思い出したのが奇跡!おかげで、なんとか完全復活に向かっています。

2007/06/01

WSC2006ハイライト on YouTube

2006年にスロヴェニアのリュブリャナで開催された、第14回世界サクソフォーンコングレスのハイライト動画を、YouTubeで楽しむことができる。地元のTVで放映されたものを、どなたかがアップロードしてくれた…のだろうか。

サクソフォーンコングレスの様子を収録したものは、今までもAdolphesax.comからたどれるムービーがあったが、今回紹介するものは、画質・音質の点でかなり優秀だ。

・とりあえずこれ見てぶっ飛んでくださいませ。ヴァンサン・ダヴィッド Vincent David氏の演奏で、ブーレーズ「二重の影の対話」サクソフォーン版。開いた口が塞がらないほどの超絶技巧の応酬。


・U.Pompeの作による、2本のテナーサクソフォーンとオーケストラのための「Blizu」。こちらもなんだか凄い。独奏はミハ・ロギーナ Miha Rogina氏とベトゥカ・ビジャック・コトニック Betka Bizjak Kotnik女史。ロギーナ氏の名前は、日本でもけっこう有名なんじゃないだろうか。


・マルカス・ワイス Marcus Weiss氏の独奏による、Johannes Maria Staudの「Violent Incidents」。名前そのままの爆発系音楽(笑)。しかし、高レベルの演奏であることは間違いない。


・現代作品が続いたので、このムービーでクールダウンすることをおすすめ。カナダ出身で、現在はドイツで活躍するダニエル・ゴーティエ Daniel Gauthier氏を独奏とする協奏曲、 Pierre-Philippe Bauzinの「Poeme」。それにしても、なんて優しい音色だ。


他の奏者の演奏もアップされないかなあ。

工事中?

アポロ・サクソフォン四重奏団のWebページ(→http://www.apollosaxophonequartet.com/)を訪ねてみたところ、なぜか工事中になっている…。一体全体どうしたのだろうか。

知らなかった…

イダ・ゴトコフスキー Ida Gotkovskyのサクソフォーン四重奏曲って、楽章が5つあるバージョンと6つあるバージョンがあるんですかー!

いや、あのですね、昨日このサクソフォン・コンセンタス Saxofon ConcentusのCDを聴きながら、「楽譜でも見ながら追ってみるかー」と持っている楽譜を開いたところ、なぜか楽章が一つ足りなくて愕然としたものですから。昔から知っていた曲ではあったけど、なぜ今まで気づかなかったんだろう。

全5楽章バージョンの、楽章構成はこんな感じ。持っている楽譜はこれ。
1. Mysterioso
2. Lent
3. Lineaire
4. Cantilene
5. Final

6楽章のバージョンは、Saltarelleが加わって、このようになる。コンセンタスの演奏は、こんな構成だった。(追記:情報ありがとうございます。)Coreliaから出版されているディアステマSQのゴトコフスキー作品集も、このような構成なのだそうだ。
1. Mysterioso
2. Lent
3. Lineaire
4. Saltarelle
5. Cantilene
6. Final

雲井雅人サックス四重奏団の第2回定期演奏会は5楽章のバージョンだし、先のコンクールで聴いたIBCサクソフォーンアンサンブルさんが取り上げていたのも5楽章のバージョンだった。協会報「サクソフォニスト」にある音大四重奏団の演奏レポートでも、5楽章までの演奏のようだ。うーん、こうなってくると、そもそも6楽章のバージョンって、出版されているのかどうか怪しいぞ。…ととと、長野サクソフォーンクヮルテットさんが取り組んでいたのは6楽章のバージョンなのか…謎は深まるばかり。今現在Editions Billaudotのサイトにリストされている、GB4364というのは、5つの楽章のバージョンのようだし。

レコーディングの世界でメジャーなのは6楽章バージョン、楽譜として普及しているのは5楽章バージョン、という妙な逆転現象が、事態を余計に困惑させているような。

ゴトコフスキー女史のオフィシャルサイトを見ると、現在は6楽章のバージョンが正式なもののようだ。断片的な情報から推測するに、1983年の時点では最初の4つの遅い楽章+最終楽章が作曲され、その後おそらく1988年に改訂が発生したのだろうが…どうやら初期バージョンの楽譜が随分と普及してしまっているのか。