フィリップ・グラス Philip Glassは、1937年生まれのアメリカの作曲家。主にミニマル・ミュージックに傾倒し(ライヒ、ライリーと並び、ミニマル三羽鳥の一人とも評される)、室内楽から映画音楽まで幅広い作品を手がけている。
「サクソフォーン四重奏のための協奏曲 Concerto for Saxophone Quartet and Orchestra」は、ラッシャー・サクソフォン四重奏団の委嘱により、1995年に完成した作品。その名のとおり、ソロ声部としてサクソフォーン四重奏を取り上げ、オーケストラを従える、協奏的な作品である。ラッシャー四重奏団とロイ・グッドマン指揮スウェーデン放送交響楽団により、ストックホルムで初演されて以来、主に同四重奏団の手により、世界各地でなんと100回以上の再演がなされているそうだ。
曲は、4つの楽章から成る。第1楽章は、オーケストラが奏でる三度跳躍の繰り返しに、どこからともなく被さるソプラノのメランコリーな旋律線が印象的。第2楽章はジャズのベースを思わせるバリトンのオスティナートが面白い。第3楽章でクールダウンした後、第4楽章は、変拍子を潜り抜けながらの、サクソフォーン四重奏とオーケストラの間での駆け引きが痛快。最後には今までの楽章を回顧するかのように、一気に走り去ってしまう。
音楽的な内容はともかく、面白い作品であることは間違いがない。幸いなことにラッシャー四重奏団とシュトゥットゥガルト室内管の組み合わせでレコーディングがなされており、「Philip Glass: Symphony No.2」というグラス作品集の中に入っている。また、YouTubeでラッシャー四重奏団の同曲の演奏風景&イメージビデオ?(第1楽章のみだが)を収めた動画が公開されており(→こちら)、その独特の音世界を楽しむことができる。
日本での初演は昨年2月。尚美学園大学芸術情報学部音楽表現学科の第3回定期演奏会において、雲井雅人サックス四重奏団と井崎正浩指揮の同校オーケストラが行った。私も遠く埼玉県の和光市まで出かけて聴いたが、雲カルの美音、さらに聴衆の異常なほどの集中力から、独特の空間が創り出されていたのを覚えている。また、実演で聴くとオーケストレーションの多彩さが際立っていたのも面白かった。
四重奏単独で演奏できるように編曲されたバージョンも存在し、こちらはやはり雲井雅人氏が主宰するコレジオ・サックス四重奏団が昨年に初演を行ったそうだ。楽譜も入手しやすい(Chester Music)ため、いつかやってみたいなあと目論んでいる。
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