ずいぶん前に入手したCDだが、久しぶりに引っ張り出して聴いている。大阪市音楽団のテナー・サクソフォン奏者、青木健氏のアルバム「Ballade(TOMO-2003)」。大阪市音楽団友の会の自主製作による、なんと全編テナーサックスで収録されたアルバムだ。
・フランク・マルタン - バラード
・フィリップ・スパーク - パントマイム
・ディルク・ブロッセ - エレジー
・エクトル・ヴィラ=ロボス - ファンタジア
・ジャン=バプティスト・サンジュレ - コンチェルト
テナーサクソフォンのアルバムというと、どうしても新井さんの「ファンタジア」を真っ先に思い浮かべてしまい、それ以降が続かない…というのが普通だが、このCDはまさにテナーサックスの隠れた名盤というかなんというか、大変充実した内容のもの。
まず、プログラム。前半に置かれた3曲は、他楽器のソロ曲からの改作だ。テナーサクソフォンのための「バラード」は、もとはトロンボーンの曲だし(後にマルタン自身により改作)、スパークの「パントマイム」はユーフォニアムの世界ではスタンダードなレパートリー。ブロッセは、吹奏楽世界で良く知られた作曲家だが、この「エレジー」はなんとバス・クラリネットのヤン・ギュンスに捧げられた曲なのだそうだ。
サクソフォンだけではなくて、ほかの管楽器も良く知っているような向きには、これらトランス物がなかなか魅力的なのだ。かく言う私も、スパークの「パントマイム」という曲は、ユーフォニアムの演奏でかなり聴きこんだ作品であるので、テナーサクソフォンで聴けるということが、とても楽しかったりする。解説を読むと、ユーフォニアム版からテナーサックス版へのトランスクリプションの際に、あの樋口幸弘氏が一枚噛んでいるのだとか。わお。
後半はソプラノサクソフォンがオリジナルの、おなじみヴィラ=ロボス「ファンタジア」に、サンジュレの「コンチェルト」。「ファンタジア」は新井さんのアルバムを意識してのことだろうか。
演奏も素敵。技術的には素晴らしいレベルであり、ゆっくりなフレーズも、高速なパッセージの軽々と吹きこなしていく青木氏。しかも、様々な技巧が繰り出されようとも、聴いていてまったく疲れないのは、音色がやわらかいテナーサックスならではの特色だろう。前半のトランス物は、テナーサクソフォンオリジナルとして聴かされても、何の違和感も感じない。「ファンタジア」は、さすがに新井×小柳ペアのどこまでも軽やかな録音と比べて聴いてしまうと酷だが、聴きこんでみると独自の良さが感じられて、これはこれで良いかも。サンジュレは世界初録音とのことだが、後に出版されたドゥラングル教授の演奏と比較すると、解釈の違いが面白い。
ここで買える(大阪市音楽団友の会内のページ→http://www.shion.jp/friend/cd.html)。お値段も、一枚1000円と、良心的なのことこの上ない。特にテナーサクソフォンにかかわっている方々、ぜひご一聴のほど。
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