インターネットを使って、シガード・ラッシャー Sigurd Rascher (1907 - 2001)に関する事柄をさまざまに調べている。ミュールに匹敵するとも言える多くの功績を残したにもかかわらず、はっきり言って日本では全くと言って良いほど見過ごされている感がある。日本語でラッシャーの功績について体系的に書かれた資料は皆無であり「私が作らなければいけないんじゃないか」との思いが日増しに強くなっているほど。
まずは、ラッシャーのあの特徴的な音色がどうやって生み出されるのか、ということを調べてみた。あのいぶし銀のような音色は、フレンチ・スタイルの流麗でやわらかく、明るいサウンドとは一線を画すものである。ちなみに、調べてみた、と言っても、英語版Wikipediaのラッシャーの項の一節を日本語へと訳しただけだが。以下が、日本語訳(間違いがあったら指摘してください)。
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ラッシャー周辺で特筆すべき事柄の一つに、彼が考えるサクソフォンの音色のコンセプト、というものがある。ラッシャーは、クラシック音楽においてサクソフォンは「アドルフ・サックスが意図した音色を出すべきだ」と考えてたのだ。サクソフォンが発明された当初は、マウスピース内の空間(チェンバー)を円形に広く作るのが普通であった。1930年代まではその形が主流であったが、ビッグバンド・ジャズ等にサクソフォンが導入されるにしたがって、大きな音&シャープな音を獲得するために、徐々にチェンバーの形を変えていこうとする動きが現れたのだ。
1940年代から1960年代にかけて、クラシック・サクソフォン奏者の間でも、輝かしくエッジの利いたサウンドを出すために、チェンバーが狭いマウスピースを使用するのが主流となっていった。ラッシャーは、後進の指導を行うたびに、こんなことを強調したという:今のマウスピースは、アドルフ・サックスが意図したサウンドを出すことはできない!大きい音が必要とされるジャズではそれでも良かろうが、クラシックを演奏するとき際には、今のマウスピースは適していない!。…ラッシャーの教えを受けた者は皆、クラシック・サクソフォンの音色は丸く、ソフトでなければいけない、と感じるようになった。そしてこの音は、チェンバーが大きいマウスピースによってのみ、生み出されるものであったのだ。しかし、世界中のほとんどのサクソフォン奏者は狭いチェンバーのマウスピースへと移行してしまった(同時に、円錐管から直管へのシフトも進んだ)。ラッシャーの、音色に対するこだわり…いや、不動の信念とか、あるいは怒りとも取れるほどのもの…は、論争・対立をも生むこととなり、結果として多くのクラシック・サクソフォンからは疎外される存在となってしまったのだ(演奏において、スラップ・タンギングを使用してみたり、フラッター・タンギングを使用してみたりと、ラッシャー派の演奏には、音色以外にも特徴的な事柄がいくつか存在する)。
1970年までに、世界のマウスピース製造の主流はチェンバーの狭いものになり、各マウスピースメーカーはチェンバーの広いマウスピースの製造を続々と止めていった。チェンバーの広いマウスピースの不足は重要な問題となり、ラッシャー派のサクソフォニストたちは質屋や中古屋を巡っては、1920年代から1930年代にかけて製造されたマウスピースを確保せざるをえなくなったのである…(以下略)
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というわけで、どうやらマウスピースの内部形状に秘密があったようだ。また、それと同時に楽器の内径の拡大率(って言うのか?)が急激なカーブを描いているのも、あのソフトな音色の一因となっていたのか。
ところで、かつてのマウスピース形状をコピーしたものがラッシャーモデルとして製造されており、容易に入手することができるのだとか(下記リンク)。インターネット経由でも、簡単に買うことができる。この太い外観形状は、きっとチェンバーを広く取るために必然的な大きさなのだろう。…ふーん、ちょっと興味あるな。いつか、一本くらい試しに吹いてみたいかも。
http://shop.classicsax.com/tek9.asp?pg=products&specific=jplpdoioo
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