2006/12/30

実家

年末年始にあわせて、実家に帰省中。つくばに戻るまでは、更新が滞りそう。あ、フェスティバルのレポートくらいは書かないと。

2006/12/28

On Site Labo

サクソフォーンフェスティバルのパンフレットに挟まっていたチラシをぱらぱらと見ていたら、大石将紀氏の面白そうなリサイタル情報を発見。大石氏はパリの国立高等音楽院に留学しており、U.F.A.M国際コンクールに入賞するなど、いくつか活動の様子が伝わってきていたが、もう卒業したのだろうか?

On Site Laboと題された、トーキョーワンダーサイト主催の若手音楽家支援プログラムシリーズ。「若手音楽家に現代音楽を演奏する機会を提供し、」だそうで、若手音楽家×同世代の音楽というのは、一聴の価値ありとみた!

とりあえず、ヤコブ=テル・フェルドハウス Jacob ter Veldhuisの「Grab It!」やるそうで、東京近郊のサックス吹きで、「Grab It!」聴いたことない方はぜひどうぞ。これ一曲のために行く価値はあると思います。そのほか、アレクサンドロ・マルケアスやブルーノ・マントヴァーニなど、フランスの若手作曲家の作品、鈴木純明氏の作品など、聴き所がたくさん。そういえば、大石氏の演奏をまとめて聴けるのも、もしかしたら日本では初めてのことではないだろうか。

あいにくこの日は、自分の本番があって聴きに行けない…残念。本番がなければ確実に出かけていると思うのだが。

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・「サクソフォーンのいま、Paris-Amsterdam-Tokyo」
出演:大石将紀(sax)
2007/1/27(日)15:00開演 トーキョーワンダーサイト本郷
入場料:1500円
曲目:
「サクソフォンのための現代奏法エチュードより(日本初演)」
馬場典子「ビスビグリアンドのためのエチュード」
S. Rohloff「ライトリズム」
鈴木純明「スラップスティック」
酒井健治「Between the wave and memories - in memoriam Ryoichi Yamamoto-side」
即興演奏
A. Markeas「リズムにのった3つのウィンク」
B. Mantovani「霧雨の狂」
P.V. Onna「クリスタルドリームズ」
J.T. Veldhuis「Grab It!」

ブラスパラダイス

下のサンドロフ「Eulogy」の記事に、なぜかこんな宣伝コメントがくっついていたので、記事として表に出しておきます。宣伝内容は記事と全く関係ないよなあ…まあいいか。表に出したので、コメントは削除してもいいかな…ポチっと。

----------引用ここから----------

検索で貴ブログを拝見致しました。大変失礼ながら「演奏会ご案内」をさせて頂きたいと思いますm(_)m「ブラパラ」ネット広報担当トロンボーン奏者のhigaと申します。

『ブラスパラダイス大阪(プロ奏者による吹奏楽団)』

2007年1月7日(日)
開場/13:00 開演13:30
場所/森ノ宮ピロティーホール
一般/2000円 大学生以下/1500円 全席自由(当日券500円増し)

曲目
・真島俊夫/Jacob's Ladder to a Band
・2007年度全日本吹奏楽コンクール課題曲より
・アルフレッド リード/アルメニアン ダンス パート1
・Jerome Naulais/Saxtory
【4Saxソリ/西本淳・井上麻子・山口裕佳理・吉岡一郎】
・スパーク/Music of the Spheres「宇宙の音楽」

※ 関西で一番早く2007年課題曲が聴けます!
※ 関西で滅多に聴く事の出来ない吹奏楽をバックにした「4サックス ソリ」
※ スパークの最高傑作作品☆

早い時期での『チケット売切』が予想されておりますのでお早めにご予約下さい!

チケットお問合せはBPO事務局 brass_paradise_osaka@yahoo.co.jp
又はhttp://8622.teacup.com/tbweekday/mbox

「トロンボーン吹きの平日」ブログ http://sun.ap.teacup.com/tbweekday/

貴重なスペースありがとうございました。

----------引用ここまで----------

ご覧のように、「ブラスパラダイス大阪」という大阪在住のプロ奏者による吹奏楽団のコンサート情報。サックス的興味としては、ジェローム・ノーレ Jerome Naulaisの「Saxtory」が気になるかな。吹奏楽を従えたサクソフォン四重奏の協奏曲だし、ノーレの筆によるもの、ということならばきっとポップス色の強い親しみやすいものなのでしょう。

サクソフォーンソリストも、先の演奏会で音を聴いたばかりの西本淳氏、ブログを時々拝見している井上麻子氏と、有名な方がたくさん。森ノ宮ピロティーホールが、いったい何県の何市にあるのかは良く分からないのだが(関西?)、お近くの吹奏楽愛好家、サクソフォーン愛好家の方はどうぞ。…って一緒になって何を宣伝しているんだ(笑)。

メインプロのフィリップ・スパーク Philip Sparkeの「宇宙の音楽」…実はあまり好きではない(笑)。吹奏楽やブラスバンドで有名なフィリップ・スパーク、私はやはり昔の作品が好きなのだ。「ドラゴンの年」とか「祝典のための音楽」とか「ジュビリー序曲」とか「パントマイム」とか「オリエント急行」とか。

ハワード・サンドロフ「Eulogy」

これは、サクソフォーン・フェスティバル会場の、大ホールロビーで無料配布されていたもの。日本サクソフォーン協会が1991年に発行した楽譜で、ホワード・サンドロフ Howard Sandroff氏の「Eulogy」という無伴奏アルトサクソフォン作品の楽譜。

何気なく手にとって持ち帰ってきたのだが、良く見るとタイトルの下には「to the memory of Yuichi Ohmuro(大室勇一の思い出に)」というサブタイトルが…なんで大室氏の名前が…?そしてさらに、委嘱者の但し書きには「commissioned by Frederick Hemke」とある。ヘムケ氏が委嘱…?。

作曲者のサンドロフの名前を見て突発的に思い出したのは、1988年8月12日の第9回世界サクソフォーン・コングレスの最終日のコンサート。”協奏曲の夕べ”と題されたガラ・コンサートでフレデリック・ヘムケ Frederick Hemke氏が吹いた「ウィンドシンセサイザー協奏曲」。当時コングレスが日本で開かれるのは初めてのことで、日本サクソフォーン協会が舵をとって実現に向けた努力を進めていた。

”協奏曲の夕べ”に限らず、各国奏者へのコングレス出演の打診は、主に大室氏が率先して行っていたとされる。大室勇一氏が、サクソフォーン協会の事務役としてコングレスの委員長を務めた、等の記録はこちらのページ(→http://homepage2.nifty.com/jsajsa/jsa20th.htm)から参照できるが、大室氏はコングレスの開催を待たずして亡くなっていたようなのだ…。

師弟としても親交が深かったであろうヘムケ氏と大室氏。最終日のメイン・コンサートを企画しながら、自身はその成功を見届けることなく逝った大室氏への、ヘムケ氏の思いの強さは想像に難くないだろう。ヘムケ氏がサンドロフ氏に「ウィンドシンセサイザー協奏曲」に含まれるサクソフォーン・カデンツァの拡張を依頼し、その音楽が一つの独立した作品として実を結んだのは、コングレスの一年後、1989年のことだった。タイトルは「Eulogy(弔辞)」である。

コングレスの”協奏曲の夕べ”のライヴ録音と比較しながら楽譜を追っていくと、確かにアコースティック楽器で演奏されるカデンツァの部分に数箇所の拡張が見られるのが分かる。重音、フラジオ等を挟みながら吼える孤高のサクソフォンが、集中力の高い音世界を作り出していく様は圧巻だ。

一つの作品の裏に、こんないろいろなエピソードがあるとは。様々な経緯を知ることで、作品の聴き方も変わってきた。

2006/12/27

たくさん吹いた

朝8時からバーバーのピアノ四重奏編曲の合わせ。あいにく一人体調不良で欠席してしまったが、第1楽章をむりやり通す。スコアからおこした楽譜に複合ミスがあり、なかなか効率が悪かった(スミマセン)。しかし、ピアノパートの方には負担をかけてしまって申し訳ないなあ。

10時過ぎからグラズノフの四重奏練習。練習場所を独り占めして吹くのは、なかなか快適。外は突き抜けるような快晴だった。12時頃にお昼ご飯を食べにちょっと外へ。自転車が吹き飛ばされそうなほど、強い風。

13時から、先生をお迎えして四重奏レッスン。思えば、最後に四重奏でみていただいたのが今年の2月末のことだったから、ずいぶん久しぶりになるんだな。こんな年の暮れにレッスンをお願いしちゃう私たちも私たちだが、喜んで引き受けてくれた先生には感謝。

とても充実したレッスンだった。いくら自分たちで考えながら曲作りをしたところで、さすがに専門家にはかなわない…。目から鱗な部分がたくさんだった。何気ないrubatoを一つ加えてみるだけで、突然曲のコントラストがはっきりしたり、簡単な和声のバランスを整えるだけで、初めて聴く響きが現れたり…。テンポ、和声感、クレシェンド、ニュアンス等々様々な観点からみていただいた。休憩を挟み、気付けば三時間半も…。

練習場所の関係でおそらく今日が吹き収めとなるが、とりあえず一月末の本番に向けて年明けから再スタート。がんばろうっと。

2006/12/26

サクソフォーン協会の会報

フェスティバル会場のロビーで、サクソフォーン協会の会報「Saxophonist」を無料配布していたので、ふーんという感じで頂戴してきた。置かれていたのは2005年版のVol.17、そして2006年版のVol.18。何が書いてあるんだろう…と何気なく中を見てびっくり!こ、こんな濃い内容の冊子が、協会員には送付されているのか。

Vol.17の内容は、なんと巻頭から前ボルドー音楽院サクソフォン科教授のマリー=ベルドナット・シャリエ女史のマスタークラスのレポート。続いて滝上氏によるサリュソフォンのレポートに、フェスティバル報告、宮崎真一氏による2004年ミネソタコングレスのレポート。さらに音大生アンサンブルのレポート、アンサンブルコンクールのレポート。

さらにパワーアップしたVol.18は、ディアナ・ロタル「シャクティ」×ダニエル・ケンジー氏来日のレポート(執筆は入野禮子氏!)、あのセルジュ・ベルトーキ氏に上田卓氏がインタビューしたサクソフォン版の武満徹「ディスタンス」誕生秘話、2005年管打入賞者コラム&審査員座談会レポート、そして、シュトックハウゼン「友情に」の聴き方・作曲技法を作曲家自らがレクチャーした講義の記録…すごい。

しかしなんとまあーマニアックな…(笑)

特に「芸術を聴く」と題された16ページに及ぶシュトックハウゼン「友情に In Freundschaft」の構成に関する分析は、ものすごく資料価値が高いものだと思った。単なる楽曲解説と異なり、「聴く側がいくつかの事項を意識することで、より作品の理解を深められる」という視点のもとに、譜例を数多く載せながら分かり易く曲の形式について述べている。ここまで気合いの入ったサクソフォン関連の資料は、今までほとんどお目にかかったことがなく、素直に感動してしまった。

シュトックハウゼンの記事はしっかり読み込んで、せっかくだからこの機会に「友情に」を「理解しながら」聴けるようになろうかな。もともと好きな曲だが、響きの面白さに触れるだけでなく、さらに突っ込んだ解釈を知ることで、さらに面白く聴けるようになるとは!

2006/12/25

ショスタコーヴィチ・イヤー

今年はドミトリ・ショスタコーヴィチ生誕100周年。2006年が終わる前に書いておかなければならんだろう、ということでお気に入りCDについて書きます(笑)。

ショスタコーヴィチの交響曲の中で、まともに聴いたことがあるのは第5番と第7番。一人の天才作曲家が、社会主義情勢の重圧の中で才能を花開かせたひとつのフォーマット。プロパガンダ的な要素はともかく、音楽的にも、聴覚効果的にも優れた両作品は、様々な演奏家の手によってレコーディングがなされている。以下に、よく聴く演奏をいくつか。

第5番「革命」。鋭い痛みが走る第1楽章冒頭のフレーズから、怒涛の!第4楽章まで、聴き手を捉えて離さない。メディアへの多くの露出によって、今ではかなりのポピュラリティを得た曲になったが、その本来の内容からすれば、ちょっと珍しいことだとも思う。

ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニーのライヴ盤。1982年11月18日録音。ムラヴィンスキーがこの曲を取り上げた録音は数え切れないほどに多いが、某所で薦められていたこの録音はなかなか。ライヴにもかかわらずキズはほとんどなく、むしろ臨場感のあるテンション、勢いといったものが怖いほど。

第7番「レニングラード」。レニングラード市への敵軍の進攻から、やがて訪れる輝かしい勝利への賛歌までを描写した大作。長すぎるんじゃないか、と思わせるほどにしつこいが、演奏効果は抜群。

スヴェトラーノフ指揮ソヴィエト国立交響楽団のライヴ盤。1978年2月28日録音。金管の暴力的なまでの鳴りっぷりが凄まじく、この曲の性格を最も良く表していると思う。バーンスタイン×シカゴ響のような知的な構成感を感じさせる演奏も良いが、このような血の通ったリアルな情景を思わせる録音はもっと好きだ。

2006/12/24

フェスティバル2006聴いてきた

で、今ようやく帰宅。帰りのバスで若干乗り物酔いをし、キモチワルイ。今日の16:00少し前からほぼずっと聴いたが、大変に充実したコンサートだった。Thunderさんもブログに書いていらしたが、演奏者のみならず運営側もそうとう大変なことだろうと思う。際立った試みが多かった今年はなおさら。

そういえば、来年も土日の二日間開催だそうです。アマチュア・ステージもまたあるのかな。今度はできれば、一日目のステージにも参加したい…。

会場でジェローム・ララン氏に会って、話せたのが嬉しかった。慌しかったが、7月ごろに送っていただいたCD「Paysages lointains」のお礼と、次回来日予定の話をちょこちょこと。フランス語は喋れないので、英語。突然「STARSAX」というCDをプレゼントされたのは驚いた(笑)。どうやら、国際コンクール入賞者によるオムニバス盤のよう。

さて、明日は朝から練習+授業+研究室なので、寝よう。いろいろ記録しておきたいことがあるので、年末年始にまとめて感想など書きます。

2006/12/23

指揮振った

まだ練習の段階ではあるけれど、本当にひさしぶりだ。振っているのは保科洋「風紋」(なんてベタな笑)。1977年の課題曲Aのはずだが、知っている人が多いのはなぜだろう。

今日のフェスティバルは、アマチュアの愛好家のステージと、サクスケルツェット Saxcherzet、そしてハッピーサクソフォンかぁ…行きたかったなあ。

2006/12/22

世界の創造

明日より2日に渡って、パルテノン多摩で開催されるサクソフォン・フェスティバル2006。あいにく様々な練習予定が重なって、23日は行けないのだが、24日は出かける予定。

トリを飾るフェスティバル・コンサートは、今年は東京シンフォニエッタとの協奏曲の演奏がメインだそうで。カプレ「伝説」、コンスタン「演奏会の音楽」、ドナトーニ「ホット」、ロタル「シャクティ」、ミヨー「世界の創造」なんだそうだ。選曲が渋い。

このうち、ミヨー「世界の創造」の演奏を務めるのは、自身も東京シンフォニエッタのメンバーである小串俊寿氏。実は、ライブ&録音ともども音を全く聴いたことがないだが、知人から聞く評判は「ありえないくらい美しい音色」とのことで、フェスティバル中でも、特に楽しみにしている演目なのだ。

「世界の創造」は、アメリカ周遊から戻ったミヨーが、黒人街にて接したジャズにインスピレーションを受けて書かれたバレエ音楽。混沌とした導入部から、生命が溢れかえるエネルギッシュなお祭り騒ぎまでを15分に凝縮し、序曲と5つの部に構成したミヨーの傑作。

ジャズからインスピレーションを受けたからといって、ジャズっぽいフレーズが使われていたりするわけではないのだが、そもそも室内楽編成にアルトサクソフォンを加えるアイデア自体、おそらくジャズへの接触がなければありえなかったことだろうし、その他曲を聴き進めていけば、随所で出現する快活なリズムや音が重なったときの響きに、ジャズの影を垣間見ることができる。

全体を通じてサクソフォンがかなり効果的に使われている、という意味で、サックスをやっている方ならば一度耳にしておい損はないと思う。有名なサクソフォニストが参加したCDも多い。例えばサイモン・ラトルがロンドン・シンフォニエッタを振った「The Jazz Album(EMI)」ではジョン・ハールが、バーンスタインがフランス国立放送管弦楽団を振った「ミヨー名管弦楽曲集(EMI)」ではダニエル・デファイエが、という具合。

特にバーンスタインのほうは、この曲の演奏の決定盤だと思っているのだが、いかがなものなんでしょうか。初めてこのCDを聴いたときは、冒頭のサックスと弦のアンサンブルの、響きの美しさに感動した…。デファイエの弟子だったあのファブリス・モレティ氏も、このCDが大好きなんだそうだ。

Blogger betaが昇格

ベータ版としてサービスが提供されていたBlogger betaが正式版に昇格し、Bloggerになったようだ。新たに変更された点は、フィード機能の充実、カスタマイズの柔軟性、など。RSS2.0に標準対応したのも嬉しい。

「フィード」については、ほとんど無知。Bloggerを使う以上はもう少し勉強しないと。

2006/12/21

第二回ジャン=マリー・ロンデックス国際コンクール

井上麻子さんのブログで知ったのだが、なんと、あのジャン=マリー・ロンデックス国際コンクールが、2008年に再び開催されるらしい。(→http://www.music.mahidol.ac.th/jml/)すでに公式ページが完成し、課題曲も指定されている。第1回が行われたのが1997年だから、実に10年ぶりの開催となる。開催地はタイ!(前回はフランス ボルドー)

コンクールの結果集計ページ作りました。

前回のソロ部門優勝者は平野公崇氏、四重奏部門優勝はハバネラ四重奏団だったようだ。当時は、私自身サクソフォンのことを全く知らなくて(小学生のころか)、リアルタイムで情報を得ることはできなかったが、特にソロ部門での平野氏の優勝は、日本人が初めて国際コンクールを制したとのことで、大変なセンセーションを巻き起こしたらしい。

平野さんのほかにも、ヴァンサン・ダヴィッド氏、オーティス・マーフィ氏が入賞しており、このコンクールから、大変なソリストが数多く見出されたようだ。今度は、いったい誰が栄冠を手にするのだろうか。ところで、本選のオーケストラはタイ交響楽団とのことだが…え、タイのオーケストラですか。聴いたことないや。ドナトーニの「Hot」とか、いったいどんな演奏をするんだろう。

大きな国際コンクールがひとたび開催されると、世界中からありとあらゆるサクソフォニストが集まってくる。互いに切磋琢磨し合い、予選が進むにつれて候補は絞られ…オーケストラを従えた本選を経て、遂に決定する優勝者。傍観者の身ではあるが、なんだかコンクールと聞いただけでこんな様子を想像し、ワクワクしてしまうではないか?

追記:前回ジャン=マリー・ロンデックス国際コンクールのライヴ盤「SAXOPHONE D'AUJOURD'HUI ET DE DEMAIN」持っている方がいらっしゃいましたら、ぜひお貸しくださいー!(涙)6年間探してます…。こんなジャケット。

2006/12/20

トルヴェールQのグラズノフ

来月の発表に向けて、グラズノフ「四重奏曲」の最終楽章をさらっていることは以前書いた。相変わらず難しくて、最近では「果たして間に合うのか!?」と不安になる。月末には四重奏のレッスンも控えているので、頑張ろうっと。

グラズノフ「四重奏曲」の演奏はいくつかCDで持っている。ざっと思いつくだけで、ハバネラQのセッション盤・ライヴ盤、アレクサンドルQ、オーレリアQ、トルヴェールQ、キャトル・ロゾー、ラッシャーQ…。たった一曲が20分以上になるため、他の曲(デザンクロとか)に比べれば取り組みづらいとも思うのだが、唯一のロマン派、そして大変な名曲ともあって、録音している団体は多い。

トルヴェール・クヮルテットが録音したアルバムで、グラズノフが収録された「マルセル・ミュールに捧ぐ(EMI TOCE-55284)」は、実は生まれて初めて自分で買ったCDだ。当時は須川さんやトルヴェールの名前すら知らない高校二年生…なぜ買ったかというと、アンコンの県大会のテープに収録されていたパスカル「四重奏曲」の第4楽章にはまっていたから(笑)。比較的ショップでも手に入れやすいCDであったし、「アンサンブルって面白いかも」と感じ始めた時期だったから、自然なことだったのかもな。

買った頃は、パスカル、フランセを良く聴いていた。フランス音楽のフの字も知らなかったが、パスカルの遊びゴコロだとか、フランセの第3楽章のやんちゃっぷりとか、そういったものをなんとなく感じていたのかもしれない。サックス関連のCDが増えていくにつれて、いつのまにか聴く機会は少なくなっていったが。

最近改めて聴きなおしている。グラズノフは惚れるわぁ!さすが日本を代表するソリストの集団だけある。実際自分たちで吹いた後に、この演奏を聴いてしまうといけませんね。最終楽章のAnimando~Prestoを、ここまでリラックスした雰囲気で聴かせられるのか。

もちろんグラズノフの一番のお気に入りはハバネラQのライヴ盤だと断言できるが、トルヴェールQの演奏は、ハバネラQの壮絶な集中力のカタマリとは、一線を画すものだと考えられる。それは、コンクール<->録音セッションという「場」の違い、解釈の違い等々、演奏者の国籍等々、様々な要因が挙げられるとは思うが、とにかくトルヴェールQの演奏も「一流の演奏」と言うことができるのは確かだ。

いろんな種類の演奏を聴くと、刺激受けますね。見過ごしていた録音が、ちょっと違った解釈のヒントを与えてくれるのは、新鮮だ。

2006/12/19

タワレコ感

あ、明日は雲井さんのアルバム発売日だなあ…。雲井さんの新譜は「THE SAX 特別号」の付録以来ということになるのだろうか。24日に東京へ出たついでに買おうかと目論んでいる。市内に大きなタワレコがあれば良いのに。

東京へ出たときに利用するCDショップは、大抵渋谷のタワーレコードなのだが、あの中途半端なアクセスの悪さ(アクタスとは反対方向だし、徒歩で5分以上はかかるし)がどうも気に食わない。しかしいざ到着してしまえば、日本最大級の品揃え!

生まれて初めて渋谷店の6階を見たときには、驚いた。広大なフロアの一辺をまるまる占める、吹奏楽+管楽器のCD、奥には現代音楽、中央には作曲家順に並べられたCDが山ほど。初訪問の時には、調子に乗って6枚くらい買い込んだ…。

タワレコ渋谷店は、オススメタグを読むのも面白い。きっと、管楽器好きの店員さんがいるんだろうなあ。「Le saxophone francaise(EMI France)」や「The Classical Saxophone(Brilliant)」が強烈に薦められているのを見ると、おもわず納得してしまう(笑)。

ここで果たして今までにいくらのお金を使ったというのか。あまり考えたくはない。

そういえば、以前店員さんに聞いてびっくりしたのだが、タワーレコードでは、なんとマイスター・ミュージックのCDを扱っていないらしいのだ。マイスター・ミュージックと言えば、良質な室内楽曲を数多く録音・出版しおり、アルモQ、アルディQ、彦坂さん、栃尾さん…など、注目すべきサックスのCDをいくつも録音しているのに。まさにこれを、玉にキズと言うのか。

2006/12/18

気になる曲たち

・Kees Van Unen「JOUNK」(asax, tape)
なんかすごそう。しかし、ネット上にCDや楽譜の情報は全くナシ!今いちばん気になっている作品。

・Werner Heider「Sonata in Jazz」(asax, pf)
音源も試聴できたし、楽譜も手に入れようと思えば手に入れられそうだし、まあ何とかなるだろう。普通にカッコよい。

・Jacob Ter Veldhuis「Grab It!」(tsax, tape)
音源も楽譜も実は持っているので、機会があったら演奏してみるか…(できるのか?)。譜面自体は意外なほどに難しくないのだが、表情を引き出すのが大変そう。テープと合わせるのも苦労しそうだ。

2006/12/17

蓼沼雅紀サクソフォンコンサート

ACTUS6Fのアンナホールでコンサートを聴くのは、これが3回目。ようやく、あの極端に狭い空間の音響にも慣れてきた。蓼沼雅紀氏のコンサート。ずいぶん前(9月ごろ)にご案内いただき、ずっと楽しみにしていたものだ。デニゾフ、イベールを中心に、3本のサクソフォンを駆使したプログラム。

マリー=ジョセフ・カントルーブ「オーヴェルニュの歌第一集より『3つのブーレ』」
ドゥニ・ベダール「幻想曲」
エディソン・デニゾフ「ソナタ」
ロベルト・シューマン「アダージョとアレグロ」
ウジェーヌ・ボザ「アリア」
ジャック・イベール「室内小協奏曲」

会場は、蓼沼氏の知り合いと思しき方がたくさん(自分もですが)。ほぼ満席の中、曲間に蓼沼氏自身の解説を交えつつ、和やかに進行した。知り合いが多かったならトークはあんなもんかなあ(笑)。

蓼沼氏の音は、いつ聴いても実に美しい。ソプラノサクソフォンの音色はまるで水面下を泳ぐ魚のように自在だし、テナーサクソフォンからは包み込むような暖かさを感じる。ベダールやボザのような何気ない小品こそ、このような音で聴きたい。

カントルーブ、ベダールはまさに本領発揮といったところ。ピアニストの方も実に上手く、ピアノとサックスのアンサンブルが心地よい。さらに続いて、高校生みたいな女の子たちに、デニゾフを聴かせてしまうというのも、また(笑)。アンナホールのような響かない空間では、「孤高の」第2楽章は、ちょいと聴かせるのが難しそうだったが、第3楽章のフリー・ジャズなんかは生々しい音で迫ってくる。

休憩を挟んだ第二部は、テナーサックスによるシューマンの演奏から。ふくよかで、均一な音色。なんで同じサックスからあんな音が出るんだろうか。テナーのサイドキーあたりまで、音色を崩さずにコントロールするとは…。原曲のホルンでも、ここまでの魅力は出せまい。ボザ「アリア」を歌い上げた後は、イベール。このイベールもなかなかの佳演だった!

アンコールは、ドゥラングル編によるピアソラ「タンゴ練習曲」より第3番、クリスマスソング・メドレー。最後まで楽しいコンサートだった(^^)そういえば、オーヴェルニュ地方って、あのミネラルウォーターVOLVICが採水されているところなんだとか、へえ。

あれから一年

今日は、そういえば「アンサンブルコンテスト茨城県大会・大学の部」。ウチの大学からも何チームか出場するようで。みなさま頑張ってください。吹奏楽連盟のアンサンブルコンテスト、思えば中学2年、高校2年、大学1~3年と律儀に?何回か出ている。(昨年、一昨年は、所沢や盛岡まで行った)。あれから一年ですか。果たして次、出ることになるのはいつのことか。

ん…神奈川県では、今年は神大が出るのかー。なんてこったい。

アンコンシーズンの集中した練習量は、学生にとってはけっこう重要なものだと思うんだけどねえ。大学って、あまりアンコンは流行らないものだが、もっとみんな積極的にアンサンブルコンテストに参加すればいいのに(なんて)。

話は変わるが、アドルフ・サックス国際コンクールやカサドコンクールではないけれど、支部大会、全国大会レベルはネット配信なんてやってくれないかなあ。映像は、後のDVDの売り上げに直結するだろうから厳しいと思うけれど、せめて音声だけでも、とか。ストリーム限定、64Kbps、22KHzぐらいだと、ちょうど良いんじゃないでしょうか。…これは、予算のことを考えたらキビシイのか。

2006/12/16

Musique francaise pour saxophones

パリ国立高等音楽院のサクソフォーン科教授であり、フランス・サクソフォーン協会の会長であり、壮絶なテクニックと高純度の音色を持つソリストでもあるクロード・ドゥラングル Claude Delangle氏。南仏ギャップで行われたコンクールで優勝して以来、世界的なサクソフォニストとして認識されているという。

ある意味では、現代のサックス吹き全員が彼の影響下にあるとも言えるだろう。Sequenza VIIbはドゥラングルがいなければ生まれ得なかったし、現代を代表する四重奏団も生まれなかったし、コンセルヴァトワールの数多い卒業生だって彼の指導がなければ…。ざっと門下生を追ってみても、ヴァンサン・ダヴィッド氏、ハバネラ四重奏団、平野公崇氏、アレクサンドル・ドワジー氏…なんとそうそうたる面々であることか。

世界最高という地位にあっても、既存の考えに捉われない新たなレパートリーの開拓、そして積極的な演奏活動&レコーディングなど、そのサクソフォン奏者としての歩みを止めないことは、サックス界から見れば賞賛に値するものだと思っている。

彼がパリ国立高等音楽院の教授職を得たのは、1988年のこと。1993年からはBISレーベルにおいて連続でアルバムを作成している。ドゥラングル氏が教授職に就くその2年前に録音されたCDを、最近良く聴いているのでご紹介したい。Chant du MondeからLDC 278 878という型番で出版されたが、現在はVandoren(あのリードメーカーのヴァンドレン)が販売している、ピアノ・デュオと四重奏が収録された盤だ。

アルバムタイトル「Musique francaise pour saxophones(Vandoren V 001)」。共演はオディール・ドゥラングル女史(pf)、ジャン=ポール・フーシェクール(asax)、ブルーノ・トタロ(tsax)、ジャック・バゲ(bsax)。収録曲目は以下のとおり。

ダリウス・ミヨー「スカラムーシュ」
アンドレ・ジョリヴェ「幻想即興曲」
フローラン・シュミット「伝説 作品66」
シャルル・ケックラン「練習曲より 抜粋」
シャルル・ケックラン「ジーン・ハーロウの墓標」
ガブリエル・ピエルネ「民謡風ロンドの主題による序奏と変奏」
フローラン・シュミット「四重奏曲 作品102」

なんと隙の無い演奏!控えめなヴィブラートで、ひたすらに丁寧に、丁寧に音楽を紡ぎ出す印象を受ける。隅から隅まで、全ての音を意識化でコントロールした結果がこれか…。しかもどうしたことか、聴き進んでいくうちに、曲の持つフレーズが生き生きと演奏されていることにも気付かされる。取り立ててスピードが速いわけではないのに、確かにそこでは、フレーズが生き生きと表現されているのだ。私感では、全てのフレーズの意味を解釈した上で、楽曲を完全に自らの血肉として取り込むことが、余計なハッタリをかまさずに説得力ある演奏をする要因となっているのだと感じる。

サックスに限らず楽器を演奏するときって、その場任せな部分が少なからずあるものだと思うのだが…。そういった即興的な要素を完全に排除しているのか!まさか!いや、それとも、その場で生まれたフレージングすらも、管理されたものに聴こえるほどに上手いというのか!

どちらにせよ、神懸かってます、クロード・ドゥラングル。

聴き所はそれだけにあらず、例えばケックランで聴かせる透明な叙情性の見事さしかり、シュミット「伝説」のテンションしかり、緻密なアンサンブルが聴ける四重奏しかり…。

現代において、モレティ氏のような伝統的フレンチ・スクールのスタイルを守り抜く難しさは窺い知れない…ようなことを以前書いたが、逆にデファイエ一派のような演奏スタイルの中から、このような新たなフォーマットを創り出すことも相当な苦労、紆余曲折のようなものがあったのではなかろうか。

こぼれネタ1:四重奏の曲目でアルトサックスを吹いているフーシェクールとは、実はあのオペラ歌手として有名なジャン=ポール・フーシェクールと同一人物なのだ!サックス科を出てオペラ歌手って…一体フランスの音楽教育って、どういうシステムなんだろうか。

こぼれネタ2:第一次世界大戦後のパリ国立高等音楽院の歴代教授は、マルセル・ミュール、ダニエル・デファイエ、クロード・ドゥラングルと続いているが、彼らがソプラノ・サックスで参加した団体で共通してレコーディングしている作品が、ピエルネ「民謡風ロンドの主題による序奏と変奏」、シュミット「四重奏曲 作品102」の二曲。この録音でプレイリスト作ると、サックスの歴史が一気に俯瞰できて面白いです(笑)。

2006/12/15

第一組曲

タイトルの「第一組曲」とはホルストの第一組曲のこと。一月のとある本番に向けて、ホルストの「第一組曲」テナーサックスパートに参加している。昔から好きな曲だったけれど、遂にここまでマトモに吹く機会がなかったため、ちょっと嬉しい。

「シャコンヌ」「間奏曲」「マーチ」から成るほんの10分ほどの小品。しかし、譜面を前にして、改めてこの曲の凄さを感じている。ここまで厳格に構成され、加えて音楽的にも優れ、さらにメロディアスで、感動的で、かつポピュラリティを確保したような吹奏楽曲って、ちょっと他には見当たらない。演奏効果と単位時間当たりの音符の数の比率を、むりやり定量的に表してみれば、どんなに大きな値をとるというのか。

ホルストがこの曲を吹奏楽(というか、Military Band)のために残してくれたのは、私たちにとって幸福なことだったと思う。いわゆる吹奏楽の「古典的」作品は、これとあとヴォーン=ウィリアムズの「イギリス民謡組曲」くらいか?こういった作品を取り上げ、こそ、真に意義のあるプログラムになる、とは思うのだが、世間のトレンドから言えば難しいのだろうか。いっそのこと、来年のコンクール課題曲を「第一組曲」にすれば(笑)。

現代に蔓延する吹奏楽曲は、ユニゾンをパリッと鳴らして、難しいフレーズの迫力にまかせて…そんな感じで客に聴かせてしまうのは簡単だろう。「第一組曲」はそういったゴマカシが効かないぶん、苦手意識はあるが、やりがいはあるというものだ。

2006/12/12

蓼沼雅紀氏、リサイタル情報

若手のサクソフォーン奏者で、埼玉や東京を中心に活躍している蓼沼雅紀氏というプレイヤーがいる。とある縁で知り合って以来、ちょくちょくお世話になっているのだが、この週末、渋谷アクタスのセルマー・ジャパンにてリサイタルを開く、との案内を頂いた。

テクニックも凄いのだが、特に蓼沼氏の「音」には生で聴くたびに驚かされる。現代のサックスの音色は、軽いほうへ、軽いほうへと向かっているのは周知の事実。この傾向は、サックス界の潮流からすればごく自然なことなのだろうが、曲によっては物足りない感じがしてしまうことはあるもの。

ところが蓼沼氏、若手のサックス吹きとしては珍しく、ずいぶんと輝かしく豊かな音色を持っているのだ。氏自身も、現代の「軽い音色」に何かの違和感を感じ、試行錯誤しながら自分なりの音色を作ってきたようである。今回のプログラムは、イベール、デニゾフ、シューマンなど、その豊かな音色が堪能できる作品ばかり。楽しみ。

・蓼沼雅紀 サクソフォン・コンサート
出演:蓼沼雅紀(sax)、遠藤直子(pf.)
2006/12/17(日)15:00開演 渋谷アクタス6F・アンナホール
入場料:2000円(全席自由・要予約)
曲目:カントルーブ「オーヴェルニュの歌」、デニゾフ「ソナタ」、シューマン「アダージョとアレグロ」、イベール「室内小協奏曲」
問い合わせ:株式会社アクタス セルマー・ジャパン(03-5458-1521)
http://www.nonaka.com/actus/selmer/news/concert.html

2006/12/11

ジェローム・ララン氏再来日(追記)

誰もが知っている吹奏楽情報誌「バンド・ジャーナル」の毎号の表紙は、著名な音楽家の写真によって飾られる…とは、以前の記事に書いた(→http://kurisaxo.blogspot.com/2006/06/8.html)。今月はなんとジェローム・ララン Jerome Laran氏!

そういえば、高校生だった頃に見たバンドジャーナルのとある号で、ソプラノサックスを吹いている若い外国人プレイヤーが表紙を飾ったときは、「これ誰?」と思ったものだった。サックス界の情報を知るにつれて、なんとその奏者はアレクサンドル・ドワジー Alexandre Doisy氏だということを知り、たまげたっけ。なぜか、そのことを思い出した。

ララン氏はサクソフォン・フェスティバル2006に合わせて来日し、原博巳氏とのデュオで鈴木純明「アンチエンヌ」、クリスチャン・ロバ「アルス」を演奏するとのこと。24日の「A協会員によるコンサート」のプログラムに組み込まれているのだろうか。この2人のデュオは今年7月の大泉学園の演奏会でも聴いたが、「アンチエンヌ」で息のあったソプラノサックスの二重奏を奏でていたのが印象的。

世界サクソフォン・コングレス、アンナホールでのリサイタル、大泉学園でのリサイタル、キャプヴェルン・レ・ヴァン国際音楽祭…誕生して間もないデュオだが、今度はどのような演奏を聴かせてくれるのだろう。再演を重ねたとされる「アンチエンヌ」、そして未だ冒頭の一分間しか聴く機会に恵まれない(→http://www.reedmusic.com/audioindex/l.html)クリスチャン・ロバの「アルス」。このデュオは聴き逃せない!

(デュオ名はDuo Laran-Haraだが、ある人曰く「はららんデュオ」に改名してほしい、とのこと(笑))

2006/12/09

オーヴェルニュの歌

民謡を題材にとった作品、もしくは民謡を模した作品は、サックスの世界にも数多く存在する。ピエルネ「民謡風ロンドの主題による序奏と変奏」、モーリス「プロヴァンスの風景」、ジャンジャン「四重奏曲」、プラネル「バーレスク」、アブシル「ルーマニア民謡の主題による組曲」…。

現代のサクソフォンの音色はどちらかと言えば雄弁で、コンサートホールのために大音量&豊潤な音色に向けた改良が加えられてきた事もあって、民謡の素朴な旋律を紡ぎ出すには適していないようにも思える。20世紀中期以降に作られた、ネオ・ロマンティック作品や、コンテンポラリー作品こそ、サクソフォンの音色、機動性などを十分に生かし、この楽器の性能を引き出してくれるものだと思い込んでいた。

ところが…「サックスで民謡」って意外なほどにマッチして聴こえるのだ!ちょっと鼻にかかったような高音、そしてサクソフォンが本来持つ「粗野」のような部分が、人間の営みから生まれた旋律を奏でるのに、ピタリと当てはまるように感じる。上に挙げた作品群を聴いてみると良い。サックスより「素朴な音色」をしていると思われるクラリネットやフルートで、これらの作品をやったとしても、サックスで演奏する以上の効果が上がるとは思えない。

前置きが長くなったが、タイトル「オーヴェルニュの歌」、伊藤康英先生の手によりサックス+ピアノ、またはサックス+ピアノ+弦楽四重奏のために編曲された作品。編曲委嘱は雲井雅人氏で、サックスはソプラノとアルトを持ち替えて演奏する。オリジナルではないのだが「サックスで民謡を演奏」というジャンルの中では、私見では最もツボにはまった作品の一つだと考える。

本作品は、もともとはソプラノ(声楽)とオーケストラのために書かれた。作曲家、音楽研究家であったジョセフ・カントルーブ Joseph Canteloube がフランス中央オーヴェルニュ地方の民謡を収集し、オーケストラと女声独唱の全四巻からなる曲集として出版し、人気を博したもの。あのキリテ・カナ・ワによる録音も存在する。

この響きに注目した雲井雅人氏の着眼点、そして伊藤康英先生の巧みなアレンジによって生まれ変わったこの作品。アルト・サクソフォンが憂いを帯びたフレーズを歌えば、ソプラノ・サクソフォンは楽しそうに牧歌的な風景の中を転げまわる。楽器をチェンジしてまで生み出される、この多彩な音色の変化。響きは華やかなのだけれど、同時に根底に流れている人間っぽさを感じさせるのは不思議だ。

雲井雅人氏のサックス、伊藤康英先生のピアノ、そしてムジクケラーの弦楽器奏者たちによるライヴ盤がこれ「The Dream Net(Cafua CACG-0022)」。目の前にぱあっとのどかな風景が広がるような、華やかな演奏。たった6人の編成は小さいけれど、オーケストラ的な色彩感をここまで再現していることに驚かされる。

雲井さんが最近この編成でコンサートをやった、という話を聞かないなあ。この響きにはライヴで溺れてみたいものだが、さて…。あ、12/20は新アルバムの発売日だ!楽しみなり。

2006/12/07

リードセール

昨日モレティ氏のコンサート前に立ち寄った西新宿のドルチェ楽器(→http://www.dolce.co.jp/tokyo/)で、いまリードが通常価格の30%オフ!や、安すぎないか?普段1700円くらいで買っているテナーサックスのリードが、1200円くらいで買える…と考えるとかなりのお得感が。12/29までとのことで、東京近辺の方はこの機会にまとめ買いをいかがでしょうか。

って、何を宣伝しているんだ、自分は(笑)。サクソフォーンフェスティバルの会場でもドルチェ楽器さんは出店するようで、もしかしたらそこでも安く買える…かも?

2006/12/06

ファブリス・モレティ リサイタル

旧東京音楽学校奏楽堂で開かれた、ファブリス・モレティ Fabrice Moretti氏のリサイタルに行ってきた。三年前にアルバム「SONATA!」を聴いたときから、ずっと「生で聴きたい!」と思っていたサクソフォン奏者。今日、ついにその機会がやってきた。

会場の奏楽堂は、重要文化財に指定されているレトロな雰囲気の建物。ちょっと昔にトリップしたような会場で、マルセル・ミュールの楽派を伝えると言われるモレティ氏の演奏を堪能できるなんて、素敵じゃないか!洗足の文化祭とぶつかって、客入りが心配されたようだが、意外にも会場は6、7割の席が埋まっていた。

クランポンの、赤色に輝くサックスを携えて現れたモレティ氏。なんと一曲目からリュエフの「無伴奏ソナタ」。いやー、凄いや。ごくごく自然なフレージングに、幅の広いダイナミクス、豊潤な音色、そしてヴィブラートと、Crest盤のLPで聴いたデファイエの演奏が、目前にリアルタイムでよみがえっているようにも感じた。しなやかに弧を描く第一楽章の第二主題、あまりの美しさについ涙が…(大げさ?)。

そうかと思えば、単純な模倣ではないことに気付かされる。ミュール~デファイエと続いたスタイルを、さらに洗練させ、現代の聴衆の嗜好にばっちり適合させているのだ。テクニックだけみても、遜色ないどころか世界レベルだぞ、これは。ドゥラングル派の勢力が強いフランス国内で、このスタイルを確立するのは並大抵のことではない…と推測するが、実際どんなもんなんだろうか。

もちろん演奏を聴いている最中はそんな思考を巡らせる暇もなく、素晴らしい音色に溺れた1時間40分。どの瞬間を切り取っても、隅から隅まで真の一流音楽家による演奏だ!聴きに行ってよかった…(泣)。せっかくの機会だし、できればクレストンも聴きたかったなあ。

・ジャニーヌ・リュエフ「ソナタ」
・ピエール・サンカン「ラメントとロンド」
・クロード・パスカル「ソナチネ」
 -休憩-
・ヨハン=セバスティアン・バッハ「ソナタBMV1035」
・ロベール・プラネル「プレリュードとサルタレロ」
・アンドレ・シャイユー「アンダンテとアレグロ」
・林光「もどってきた日付」(ピアノ・ソロ)
・ダリウス・ミヨー「スカラムーシュ」

リュエフ以降は、ピアノの服部真理子さんとのデュオ。二人並ぶと身体の大きさはぜんぜん違うが、服部真理子さんのピアノの力強いこと!ピアノ・ソロで演奏された林光氏の作品は、メロディアスで、かといってベタベタでもない、すっきりした音楽。ピアノ・ソロのCD欲しかったなあ。

後半は、前半よりも耳に優しい曲を中心に。休憩を挟んでも、バッハの冒頭のヴィブラートを聴いた瞬間に会場の空気がすっと変わる。バッハに続くプラネルも良かった。技巧を凝らしたカデンツ部分の緊張感を伴った大きなうねりと、それに続くサルタレロの軽妙さ…挙げていけばきりがない。

アンコールは、ランティエ「シシリエンヌ」、シューベルト「セレナーデ」。いやー、ホント良かった。服部吉之先生の招きで、少なくとも一年に一回関東圏には来日しているようだ。次回も聴きにいこう!

2006/12/05

「アトム・ハーツ」ラジオ放送

吉松隆氏の「アトム・ハーツ・クラブ」シリーズが好きだ!という方に朗報…(うーん、このページを観ていただいている方の中には、そんな嗜好の方が普通にいらっしゃるかも)。

12/24(日)18:00より、NHK-FM「現代の音楽」で「アトム・ハーツ・クラブ・カルテット」全曲が放送されるようだ。モルゴーアQの弦楽四重奏版か、トルヴェールQのサクソフォン四重奏版か、というのはさっぱり判りかねるが、そこは聴いてからのお楽しみということで。その他、放送予定のプログラムは「チェシャ猫風パルティータ(抜粋)」「星夢の舞」など。

自分自身は、吉松氏の作品をそれほど多く耳にしているわけではないが、「アトム・ハーツ・クラブ・カルテット」は氏の室内楽作品の中でも特に好きな作品&演奏だ。プログレ全開のアレグロ、官能的なバラード、いやらしいスケルツォ、ノリノリのブギウギ…と、形式だけ見ればコンセプトも何もあったもんではないが、一貫して感じられるのは吉松氏の「音楽への愛」。20世紀音楽界バンザイ!というメッセージが、華やかな曲調の裏に見え隠れしている、ような気がする。

そういえば、この日はサクソフォーン・フェスティバル2006の二日目。予約録音でもしておこうかな。

2006/12/04

カルロス・クライバー賛

カルロス・クライバー氏死去のニュースが飛び込んできたのは、いつのことだっただろうか。その頃はこの指揮者がナントカとか、このオーケストラがナントカとか、あまりこだわりなく各種演奏を聴いていたためか、カルロス・クライバーも、名前を聞いたことがあるくらいだった。

クライバー氏の死去が報道されて数日後のこと。ある日の吹奏楽団の練習後、伊藤康英先生とお話ししていたときに、なぜかクライバーの話になり…先生曰く「クライバーさん、本当に美しい指揮を振るよね。まるで踊っているみたい。指揮を振る姿があんなに絵になる人もいないんじゃないかな。」と。へえぇ、と感心していたのだが映像を目にする機会もなく、ついこの間、初めてクライバー氏の指揮姿を観た。1992年のウィーンフィル・ニュー・イヤー・コンサート。

驚き。「美しい指揮姿」って、こういうことを言うのか。「踊っているようだ」という形容も、なるほど納得。瞬間瞬間の動き(静止画ではなくて、あくまで動き)の美しいこと…!

この指揮、まさか最初から「ここは右手を振り上げて、その直後に左手をすくい上げる!」なんてプランを練ってから…なんてことはないか(笑)。そうでないとしたら、恐ろしいほどのセンスだ。シュトラウスの音楽がそのまま指揮の姿に変わってしまったように、自在に全身で音楽を表現する。あまりに自然な振り方、オーケストラと一体となった呼吸が、演奏からも映像からも感じ取れる。

「指揮」というオーケストラの中での役割の、ある種理想的な形を見た気がした。これ一つが「指揮」の形ではないけれど、クライバー氏の姿は説得力がありすぎだ…。

2006/12/03

アンドレ・ブーン氏のCD

昨日渋谷に行ったついでに、タワレコで買ってきたCDがこれ。何気なくCDを手に取った後の、思考の流れはこんな感じ。「なんか怪しいジャケットだなあ」→「ブートリーのディヴェルティメント入っているんだー」→「何これ、作曲者自身がピアノ弾いているの?」→「サックス吹いているAndre Beunってどこかで聞いたことあるような」→「あ!!もしかして…」。

良く良く思い出してみれば、ギャルド・レピュブリケーヌ四重奏団の奏者としてのクレジットを見たことがあるプレイヤーだった。がぜん興味が沸き、早速購入。アルバム名は「Saxophonie(Corelia CC 896782)」。そういえばCoreliaレーベルって、ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団のCDをたくさん出版しているじゃないか。その辺りのつながりなのかな。

・ブートリー「ディヴェルティメント」
・ドゥルルー「プリズム」
・ゴトコフスキー「悲愴的変奏曲」
・トマジ「バラード」(吹奏楽伴奏)
・ベルナール「6つの小品」
・シャヴェリエ「イリス」

早速聴いてみた。現代のサクソフォンとはかけ離れた、華やかな音色や深いヴィブラート。こういうの、結構好きです。現代にあってはなかなか耳にすることのできない演奏…かなり貴重かも。また、ほとんどの曲で作曲者自身がピアノを弾いているのだが、一曲進むごとにスタイルががらっと変わり、面白い。

ギャルド・レピュブリケーヌ四重奏団時代のブーン氏に関してはこちら。かつて東芝EMIから発売されていたLPで、「サキソフォン四重奏の魅力(東芝EMI EAA-85052)」というアルバムがある。ミシェル・ヌオー氏がソプラノを務め、アンドレ・ブーン氏はアルトパートを吹いていたのだ。左下でアルトを構えている人物が1970年代のブーン氏。上のCDジャケットの写真と比べると、ずいぶん若い(あたりまえか)。

このLPは昨年の入手以来、MDに録って聴きこんでいた。録音環境が悪いものの、時代を感じさせるフランス流の華麗な演奏で、「異教徒の踊り」中間部などの随所に聴かれるブーン氏の音が、けっこう好きだったのだ。

2006/12/02

平野公崇氏のミニ・コンサート

つくばから、高速バス往復&JR一日フリーが2000円(!)という破格の交通手段を使い、聴きに行ってきた。平野さんの生の音を聴くのは、昨年の洗足マスターズ・コンサート以来。

最近発売された「シンフォニア(Cryston OVCC-00034)」というC.P.Eバッハ作品集の発売記念コンサート、というふれこみ。それにしても、コンサートを聴いた全員にCDプレゼント!とは…これまた大胆な催しだ。急遽決まったコンサートのことで、客入りが心配されたようだが、会場はほぼ満員だった。

曲目は、「シンフォニアニ長調」と「『スペインのフォリア』変奏曲」。曲間に平野さんのトークを交えつつ、和やかに進行。アンコールは大バッハの「G線上のアリア」即興。コンサート終了後にはクリニック(自由質問タイム?)と、サイン会も行われた。

しかし、これは生で聴いて良かったなあ。平野さんのふくよかなソプラノ・サクソフォンの音と、バロックのメロディが持つどこか陰鬱な表情が、絶妙にブレンドされていたのだ。そこへさらに平野さんの発する「気」みたいなものが重なり、ちょっと異次元風サックス体験(笑)。この人は本当に、CDで聴こえない部分が多すぎる…。

「ラ・フォリア」では冒頭の主題の一音目が奏でられた瞬間に、震えた。

それから、即興的なフレーズを表現するのに、ソプラノ・サックスという楽器がこんなに適したツールだったとは!ほとんど極限的な高速フレーズを駆けずり回るサックスは、その場でフレーズを生み出しているかのようにも聴こえた。

2006/12/01

急ですが

明日(12/2)、セルマー・ジャパンのアンナホールで開かれる、平野公崇氏のミニ・コンサートに行くことになった。開演は14:00。

つくばからならば、関東鉄道のバスを使えば往復運賃+JR東京近郊乗り放題が2000円で、コンサート自体の入場料は(当日ACTUSメンバーに入会すれば)1500円か。しかもバッハの作品が入ったニュー・アルバム「シンフォニア(Cryston)」がご来場の方にプレゼント!されるらしい。ちょっとお得な感じ満載なので、行ってきます。

東京近郊の方で、まだ平野さんのアルバムを買っていないアナタ!ぜひどうぞ。どうやら予約必須のようだが。お問い合わせ&お申し込みは株式会社アクタス・セルマージャパン(→03-5458-1521)まで。噂では入場料タダ、CDプレゼントなし、というプランもあるとか…ホント?

なんだか、アクタスの宣伝みたいになってしまったぞ。まあいいか。