2006/12/04

カルロス・クライバー賛

カルロス・クライバー氏死去のニュースが飛び込んできたのは、いつのことだっただろうか。その頃はこの指揮者がナントカとか、このオーケストラがナントカとか、あまりこだわりなく各種演奏を聴いていたためか、カルロス・クライバーも、名前を聞いたことがあるくらいだった。

クライバー氏の死去が報道されて数日後のこと。ある日の吹奏楽団の練習後、伊藤康英先生とお話ししていたときに、なぜかクライバーの話になり…先生曰く「クライバーさん、本当に美しい指揮を振るよね。まるで踊っているみたい。指揮を振る姿があんなに絵になる人もいないんじゃないかな。」と。へえぇ、と感心していたのだが映像を目にする機会もなく、ついこの間、初めてクライバー氏の指揮姿を観た。1992年のウィーンフィル・ニュー・イヤー・コンサート。

驚き。「美しい指揮姿」って、こういうことを言うのか。「踊っているようだ」という形容も、なるほど納得。瞬間瞬間の動き(静止画ではなくて、あくまで動き)の美しいこと…!

この指揮、まさか最初から「ここは右手を振り上げて、その直後に左手をすくい上げる!」なんてプランを練ってから…なんてことはないか(笑)。そうでないとしたら、恐ろしいほどのセンスだ。シュトラウスの音楽がそのまま指揮の姿に変わってしまったように、自在に全身で音楽を表現する。あまりに自然な振り方、オーケストラと一体となった呼吸が、演奏からも映像からも感じ取れる。

「指揮」というオーケストラの中での役割の、ある種理想的な形を見た気がした。これ一つが「指揮」の形ではないけれど、クライバー氏の姿は説得力がありすぎだ…。

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