2010/04/09

Eric Marienthalのためのコンチェルト

サックスのマリエンサルと、ネバダ州立大学ラスベガス校ウィンドオーケストラの共演盤をご紹介する。

エリック・マリエンサル Eric Marienthalと言えば、アメリカを代表するフュージョン分野のサクソフォン奏者の一人。一世を風靡したチック・コリア・エレクトリックバンドのサクソフォン奏者として、素晴らしい演奏を披露している姿が印象深い。かたや、ネバダ州立大学ラスベガス校ウィンドオーケストラ(UNLVWO)といえば、トーマス・レスリー指揮のもの、吹奏楽界にスパイスの効いたレパートリーを提供してくれるバンドの一つである。エリック・ウィッテカーの「ゴースト・トレイン三部作」などは、ウィッテカーとUNLVWOのコラボレーションにより生まれた作品である。

どういうキッカケから始まったかは知らないが、マリエンサル氏とUNLVWOの両者は頻繁に共演しているようで、フュージョン・サクソフォンと吹奏楽のための作品が、数多く生まれている。

「Concert for Marienthal(kcd-11178)」。マイケル・ケイメン Michael Kamenの「サクソフォン協奏曲」の、サックスと吹奏楽のバージョン…ということは、あのディヴィッド・サンボーンのために書かれた「コンチェルト・フォー・サクソフォン」と同一曲、なのかな!?きちんと調べがついていないが…。内容としては、至極まっとうな"クラシックの協奏曲"で、アドリブっぽい箇所は、第3楽章のカデンツァを除いて皆無。第2楽章は、なんだかヴィラ=ロボスの「ブラジル風バッハ第5番」のアリアみたいだ。うーん、正直、わざわざマリエンサル氏を呼んだ意味が解らない…。

「3 Steps Forward(kcd-11146)」。ネイサン・タノウエ Nathan Tanouye「3 Steps Forward」収録。吹奏楽と、ソロ・ソプラノサクソフォン、キーボード、バス、ドラムスのための作品。「Light Years from Here」「Quite Stride」「Fate of the Gait」の3つの楽章に分かれている。

最初聴いていると、わりと普通のクラシックな感じだなあと思うのだが、第1楽章中間部で"豹変"。突如としてジャズ・カルテットが音楽の流れをリードし、吹奏楽はビッグバンド風にノリノリで絡む。中間部から始まる長大なソロは、これぞマリエンサル氏の独壇場!バックの吹奏楽も、負けないくらいにカッコいい。第2楽章は、なんか普通のフュージョンのバラード聴いているみたいだ(笑)。ベースのソロまであるし…(ジョン・パティトゥッチの演奏で聴いてみたかった)。第3楽章は、ミステリアスな雰囲気から始まり、徐々にフィナーレへと突き進む感動巨篇。キーボード(チック・コリアの演奏で聴いてみたかった)、ベース、サックス、ドラムス(ディヴ・ウェックルの演…以下略)に長大なソロが。というわけで、最終楽章に限って言えばあまり吹奏楽っぽくないです(^^;

「4 Flew Over the Hornet's Nest(kcd-11163)」。これも、「3 Steps~」と同じネイサン・タノウエ氏の作品。ジャズ・カルテットと、吹奏楽のクァッド・コンチェルト、というコンセプトからはもう少し離れ、個々の雰囲気が目立つような作り方になっている。最終部の炸裂っぷりはスゴイな。

2 件のコメント:

DONAX さんのコメント...

面白いものがあるんですね!

>ヴィラ・ロボス

あのセンチメンタルな感じはハリウッドのサントラそのものです。Kamenはリーサル・ウェポンのサントラでSanbornを起用したのですが、協奏曲もその時期です。根っからの映画音楽家が、もうお亡くなりとはしりませんでした。

Kamen/Sanborn版は録音も演奏も超一流で大変素晴らしいですよ。

kuri さんのコメント...

情報ありがとうございます。マイケル・ケイメン氏は、映画音楽の方面の方でしたか。なるほど。
ドラマチックな構成といい、様々な場面を想起させるメロディやリズムといい、言われてみれば確かに映画音楽ですね!サンボーンの盤も探して聴いてみようと思います。