2007/09/02

Riley x ArteQ「Assassin Reverie」

新宿タワレコの現代音楽コーナーをうろうろしていたときに、たまたま発見したCD。テリー・ライリー Terry Rileyとアルテ・クヮルテット Arte Quartettの共演盤「Assassin Reverie(New World Records 80558-2)」。掘り出し物!と喜んだところまでは良かったが、ずいぶん有名なCDであるそうで、実はamazonでも簡単に安く買うことができるようだ。

テリー・ライリーと言えば、いわゆるミニマル・ミュージックというジャンルのパイオニアの一人であり代表作「In C」を含む数多くの作品は、世界中で演奏されている。私自身がライリーを知ったきっかけは、一連の「フェイズ」シリーズ…「ピアノ・フェイズ」「ヴァイオリン・フェイズ」「リード・フェイズ」を通じてのことだった。単純な素材から、今まで聴いたことのない響きを創造する手法の見事さに、一時期ハマったものだ。

そのライリーが、アルテ・クヮルテットの委嘱により作曲した作品をいくつか集めたもの。収録曲目は以下の通り。

・アンクル・ジャード Uncle Jard
・暗殺者の幻想 Assassin Reverie
・トレッド・オン・ザ・トレイル Tread on the Trail

「アンクル・ジャード」は、サックス四重奏に加え、ライリー自身の演奏によるハープシコードやピアノ、そしてヴォーカルを交えた作品。響いてくるのは、「普通の」クラシックとは一線を画した音。使用されているモードは、インド音楽に影響を受けたものであり、さらにおそらく即興パートをかなり含むであろう進行は、ジャズとして捉えることもできよう。サクソフォンという西洋の器楽アンサンブルに、ライリーの祈祷のようなヴォーカルが上乗せされる第1楽章冒頭には、はっきりとアルバム全体のコンセプトが現れているよう。

「暗殺者の夢」は、四重奏とテープのための作品。サックスのみによるサウンドは冒頭を最後に出現し、テープとフリージャズ風ソロが絡む中間部を挟む形となる。中間部に配置されたテープサウンドは、印象が強すぎる…この世の悲劇をすべて音に変換して、ミキシングしたらこんな感じなのかな。

「トレッド・オン・ザ・トレイル」は、すでにサクソフォンのためのレパートリーとしてはスタンダード化している作品であるとも言えるだろう。多重録音による、12トラック・バージョンで、平野公崇氏の「Millennium」や、デルタ四重奏団の「Minimal Tendencies」に収録された4本バージョンに比べ、実に豪勢なサウンドとなっている。

演奏を行うアルテ・クヮルテットは、1993年の結成以来、同時代の作曲家に対して作品の委嘱・初演を積極的に行っている団体。この手の初演曲は得意と見えて、予定調和な部分に落ち着かずに自己主張を伴う音も感じられて、大変楽しめた。

また、このCDを聴きながら、サクソフォンという楽器の、クラシックから外れたところにある個性の大きさを改めて感じた。本来は木管楽器と金管楽器のサウンドを融合するために作成された楽器が、進化の過程で獲得してきた能力(すなわち大音量・操作性)。これは、楽器自身が知らず知らずのうちに「民族音楽」「バロック音楽」「ジャズ」「現代音楽」という音楽ジャンルに適したメディアへと変化してきたことに他ならないのだ。

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