2007/09/16

栃尾克樹2ndCD発売記念コンサート

ドルチェ楽器管楽器アベニュー東京でのリサイタル。昨年の浜離宮でのリサイタルを聴き逃していただけに、栃尾さんのバリトンを生で聴くことができるのは大変うれしい。印象に残るのは、2003年東京文化会館でのリサイタル、どこまでも深い音楽に惚れ惚れしたのを、つい最近のように思い出すことができる(あの「アルペジョーネ」や「詩人の恋」は、まさに一流の音楽家による演奏だった)。

会場となるのは、アーティストサロンDolceなるキャパ100のホール。初めて入ったが、小さいけれどアクタスのアンナホールほどは音楽が飽和せず、管楽器とピアノのデュエットが心地よい空間だと感じた。

栃尾克樹(b.sax)、山田武彦(pf.)
・バッハ「無伴奏チェロ組曲第1番より"プレリュード""メヌエットI,II"」
・フォーレ「エレジー」
・フランク「ヴァイオリン・ソナタ」
・クライスラー「美しきロスマリン」
・クライスラー「ウィーン狂詩幻想曲」
・アルベニス/クライスラー編「タンゴ」
・グラナドス/クライスラー編「スペイン舞曲」
・アイルランド民謡/クライスラー編「ロンドンデリーの歌」
・クライスラー「シンコペーション」
・ブラディゲロフ「シャント」
・マスネ「タイスの瞑想曲」
・ウィリアムズ「シンドラーのリスト」
・モリコーネ「ニュー・シネマ・パラダイス」
~アンコール~
・リムスキー=コルサコフ「くまんばちの飛行」
・サン=サーンス「白鳥」

てっきり、1時間程度休憩なしのミニコンサートだと思っていたのだが、プログラムを見てのとおりの驚きの2時間フル・コンサート。なんだか得した気分。

しかし、ホント栃尾さんて根っからの「音楽家」なのだなあ。歌い方やフレージングのつなげ方に迷いはなく、かといって不自然に造り上げられた感じもせず、山間から自然に湧き水が湧くように、上質の音楽が奏でられるのだ。その音楽表現の手段として、あえてバリトンサクソフォンを持ってくる辺りがまた面白いところで、このコントロールしづらい楽器を、最低音からフラジオまで見事に繰ってみせるのですよ。すごいすごい!そして、ベルから飛び出す声楽家のような音色と、センスの良いヴィブラート。これ以上何を望めと言うのだ?

ピアノの山田氏も、今さらながら只者ではない。基本的に柔和で暖かい音色を持ちながら、音の線の細さを自在に変える見事なテクニック、曲が進むごとに毎にリズム処理をたちどころに変えてくる辺りなど、唖然とするほかなし。音の細さを変えて、まるでハープのような音色を出したときは、正直震えた。ほええぇ。

フォーレでのEbに到達する激情、原曲にはないフランクの魅力など、前半から圧倒されっぱなし。しかも音色を崩さないのが凄いなあ。フランクは、ぜひいつかのリサイタルで全楽章を聴いてみたいな。

休憩を挟んだ後半がまた、面白かった!栃尾さんと山田さんの、噛み合っているような噛み合っていないようなトークに、場内大爆笑。終始和やかな雰囲気で進行していった。

クライスラーは、CD「影の庭」に収録されたもの以外にも演奏。山田さんが提案した曲目だという「ウィーン狂詩幻想曲」の人を食ったお遊び、スペインの作品のヴァイオリンの扱い方など、「愛の喜び」しか知らない人はびっくりするんじゃないか?それをまたバリトンで聴けるというのが、サックス吹きとしては贅沢な状況だ。

同じく山田さん提案のブダディゲロフ「シャント」。夜のロシア正教会をバックに、細く光る糸が宙を漂い、煌くようなイメージを想起させる←何じゃそりゃ。内容としては、ブルガリア民謡辺りを題材に取ったものなのだろうが、妙に不思議な響きのする作品だ。おもしろかった。映画音楽の「シンドラーのリスト」「ニューシネマ」も良かったなあ。ニューシネマは、あの「The SAX」の編曲だったが、バリトンでやるのもなんと美しいことか。ピアノも熱演。もう、我を忘れてゾクゾクしっぱなし。

このまま終わると思いきや、アンコールでは盛大なオチをつけて終わらせるのだから、やっぱり栃尾さんも「サックス吹き」なのですね(笑)。何というマシンガン・タンギングの「くまんばちの飛行」!そして、最後の最後はしっとりと、「白鳥」。うーん、すばらしい演奏会だった。また聴きたいな。

そういえば、サインをもらうために何か変わったものはないか、と探したのだが…この「Aqua Dream」が出てきたので、これにサインを頂戴してきました(やっほーい)。栃尾さん、このCDを見るなり、「これはまたマニアックだねー」と仰っていました(笑)。

…会場では、思いがけずなめら~かの某さんとご一緒しました。なめら~かさんの定期演奏会も近いですが、楽しみです。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

 行きたかったですねー。間近であの音を聴いてみたい!

 「Aqua Dream」持っていませんが、五輪であの曲を聴いた時、あのSaxは誰なんだ?!と話題になりましたもんね。

kuri さんのコメント...

本当にステキな演奏会でした(^^)

件のMATEという曲は、2000年のシドニーオリンピックのデュエット曲?だそうです。しかし、まだサックスにハマる前で(高校1年)リアルタイムで観た記憶が全くないのです(^^;;

その2年後くらいに琴とサックスのシンクロ競技音楽がある!ということをどこかで聞いて、慌ててCDをゲットしたんですよ。