2007/09/12

Karlheinz Stockhausen 「Saxophon (Saxophone)」

一昨日の徹夜時に、このシュトックハウゼンのサクソフォン作品集をループして聴いていたら、頭から「Amour」最終楽章である「Four Stars Show You the Way」の音列が抜けなくなってしまった。何をやっていても頭の中では、C C# G Gb, C C# G Gb, C C# G Gb…。おまけになぜかこの音列が、伊藤康英先生の「協奏曲」とごちゃ混ぜになり、どうしようもない状態。

言わずと知れた現代音楽界の旗手、カールハインツ・シュトックハウゼンが、サクソフォンのために作曲/編曲した作品を収録したディスク「Saxophon(Stockhausen 78)」。シュトックハウゼン自身が運営するレーベルからの出版で、収録は作曲家監修の下で行われたようだ。普通にCDショップで買うと恐ろしく高価なのだが、Sternklang-Diskなるオンラインショップにて4000円で入手することができた。収録曲は以下の通り。

・Amour for saxophone solo
・Saxophon (Saxophone) for saxophone and bongo
・In Freundschaft (In Friendship) for saxophone solo
・Knabenduett (Boy's Duet) for 2 saxophones
・Entfuhrung (Abduction) for saxophone and tape

シュトックハウゼン氏が表現する、何とも人を食ったような音響世界が、とにかく私のツボにぴたりとはまった。最初に書いたように、繰り返し聴けば聴くほどに中毒度が増していくCDだ。音や響きはまったく違うけれど、ロック方面にシュトックハウゼン氏の作品が人気だということが、なんとなく分かる気がする。演奏も凄い!サックスを吹いているのは第3回アドルフ・サックス国際コンクール(ディナン)で第2位を受賞したジュリアン・プティ Julien Petit氏だが、彼の演奏は、とにかくシュトックハウゼンと聴き手を結びつけることに徹しているよう感じる。

「Amour」はクラリネットのため書かれ、サクソフォン版はプティ氏に献呈された。サクソフォンの音域を考慮してか、高音域が出現する部分にはossiaが付されているが、プティ氏は初演の時からossiaを使わず楽譜どおり吹いてしまったとか。無伴奏作品なのだが、不思議なほどに聴き手を捉えて離さない。無伴奏作品としての演奏機会が増えても良いかな、と感じた(特に最終楽章)。

「Saxophon」「Piccolo」は、パーカッションとの共演(Geisha Bellって何?)。特に「Saxophone」などは、ライナーに特記があるわけではないが、日本的なリズム様式(ぽんっ、ぽんっぽんぽんぽんぽぽぽぽぽ…という拡大縮小)や、グリッサンドが随所に出現して、聴きながらまるで尺八を聴いているような錯覚に陥ったこと数回。

「In Freundschaft」は、録音がデッドなのがもったいないなあ。せっかくならば、「Solitary Saxophone(BIS-640)」のように教会のようなところで録音して欲しかった。同一音の繰り返しは、やっぱり響きのあるところでの、ポリフォニックな効果を聴きたい。

「Knabenduett」は、ソプラノ・サクソフォンの二重奏だが、もう一人は誰かと思えばなんとアントニオ・フェリペ=ベリジャル Antonio Felipe Belijar 氏!!凄…。第3回ディナン・コンクール第2位と第3位の共演ですか、いやはや。研ぎ澄まされたテクニックに、高いアンサンブル力(相当リハーサルしたんだろうな…ヴィブラート一つ一つすらきっちり合うほど)、音色もずいぶん似て聴こえる。この作品、原氏・ララン氏のデュオでも聴いてみたいかも…。

「Entfuhrung」は、テープとサクソフォンのための作品。あの大作オペラ「Licht(光)」の「月曜日」中の曲だそうだ、へえぇ。もともとはピッコロフルートのために書かれたそうだが、テープに収録された騒音とのデュエットは、なかなか面白い。すでに知っているテープ作品の中でも、かなり面白いものだと感じた。暮れのサクソフォン・フェスティバルでやってくれないかなー、今年は、サクソフォンとライヴ・エレクトロニクスという企画があるらしいので…テープ音楽は無理か。

さて、ざっと中身を書いたが、いやはやずいぶんとシュトックハウゼン世界に毒されているなあ。それだけ独特の作品であるし、それだけ演奏が凄い、ということなのでしょう(サックスを意識せずに聴ける録音って、久々に聴いた)。

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(追記)
ジュリアン・プティ Julien Petit氏のウェブページに、シュトックハウゼン氏とのリハーサル風景を含むプロモーションムービーがある(リハーサル風景は一瞬だが)。Entrezから入って、ページ下隅にあるVideoをクリックすると観られる。

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