マルセル・ミュール Marcel Mule氏は生前、奥様のポレットさんとの間に2人の子供をもうけている。その2人ともが音楽家となり、長男のPolが指揮者、次男のJacquesがフルーティストとして活躍した。Pol Muleは、フランス各地のオーケストラと共演したり、マルセイユ音楽院の講師を務めたりと、活躍したようだ。Jacques Muleのほうも、ナンシー音楽院でフラウト・トラヴェルソの講師を務めるなどしている。
そのミュールのご子息の音は残っているのかなあなどと、実は今まで考えたこともなかったのだが、島根県のF様より、Pol Muleが指揮を振ったという盤をダビングしていただいた。なんとORTF Barclayの盤(リヴィエのダブル・コンチェルトを思い出す)で、ジャック・ランスロを独奏に迎えてジャン・フランセの傑作「クラリネット協奏曲」をやってしまったというLP。オーケストラは、ニース室内管弦楽団 Orchestre de Chambre de Niceである。
恥ずかしながらフランセの「クラリネット協奏曲」というのは初めて聴いたのだが、ああもう素晴らしいですね。エスプリを空間いっぱいに振りまきながら軽やかに進むクラリネット!ランスロの独奏の、なんと美しく身軽なことか!稀代の音楽家だったんだなあと、これは誰に対しても思わせてしまう演奏だ。オーケストラも、フランスの流麗な響きをたっぷりと湛えている。ときどき調子外れな音を出すのはこの時代のフランスの地方オケならではかな?笑。指揮者のポル・ミュール氏の働きがどうであるか、というのは、さすがに判断しかねるが…。
併録は、ジャン=ミシェル・ダマーズのピアノ作品、「二台ピアノのためのソナチネ」「小組曲」「タランテラ」「カリヨン」の4曲。ピアノ独奏はMichèle Elise Quérardという方だが、二台ピアノの作品ではダマーズ自身もピアノを弾いている。こちらもまた、素敵な作品だ!「小組曲」というのがイイですね。最初の楽章で、バッハの「ゴルトベルグ変奏曲」の第一変奏ような感じで始まるかと思えば、ミステリアスな第2楽章、技巧的なスケルツォの第3楽章、跳躍が印象的な第4楽章と、それぞれに異なった音楽のスタイルが与えられており、興味深く聴いた。
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