言わずと知れた吉松隆氏のサクソフォン協奏曲で、3つの楽章から成る作品。1994年(もう15年も前なのか)に作曲され、須川展也氏に献呈されている。サクソフォンとともに、ピアノ、パーカッションを副ソリストに立てたトリプル・コンチェルトで、各楽器に比較的自由なフレーズ・解釈を歌い上げるセクションが多く含まれている。そのためか、一般的なクラシックの協奏曲と比較して、とても「柔らかい」印象を受ける。
さまざまな音楽のエッセンス…プログレッシヴ・ロック、ジャズ、クラシック…などが融合し、第1楽章の疾走や第2楽章の悲哀感と天上世界のような美しさ、そして最終楽章での大爆発に至るまでを、見事に描き出す。日本初のサクソフォン作品としては、間違いなく最高の作品の一つに数えられるだろう。
初めてEMIの録音を聴いたときは、衝撃だったなあ。それまでクラシックのサクソフォン作品というと、クレストンやモーリスのような、フランスのサクソフォン+ピアノの作品や、同系統の四重奏作品しか聴いたことがなかったものだから、こういう他ジャンルの音楽を積極的に取り込み、しかも完成された作品ということで、並大抵のインスピレーションではなかった。本当に、大音量で何度も聴いていたっけな。
初めてライヴで聴いたとき(@東京オペラシティ)も、本当に感動した。やはりこの曲の真価は、ライヴで聴くときにあると思う。最終部に向かってオーケストラの音がどこまでも拡がりながら、その上でソリストが自由に歌い上げてゆくあの感覚は、一度経験したら忘れられるものではない。
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