なんと珍しや、韓国のサクソフォン作品集。しかも普通の作品集ではなくて、サクソフォンとライヴエレクトロニクスのために書かれた曲を集めたものだというから驚きで、さらにさらに、演奏はダニエル・ケンジー Daniel Kientzy氏とレイナ・ポーテュオンド Reina Portuondo氏の"Meta Duo"だというから、これは面白そうだ。
タイトルは特にひねりもなく「KOREA-SAX」で、出版元はKEAMS(Korean Electro Acoustic Music Society)、型番ナシ。実はけっこう前から存在だけは知っていて、KEAMSにコンタクトをとって送ってもらおうとしていたのだが、2回か3回「探してみます」の返事があったきりほったらかしにされ、結局手に入れられずじまいだったのだった。ところがひと月ほど前に、たまたまVandoren Franceで見つけて、購入に至ったものだ。2001年から2002年にかけて作曲された、以下の6作品が収録されている。
Jiyoun Choi - Polylogos
Young Mee Lymn - Metamorphosis
Seong Joon Moon - Klangschatten IV
Doojin Ahn - Mu Ryung Zi Gok
Donoung Lee - Strange Dream
Jongwoo Yim - Flux I
韓国の作曲家、と一口に言っても、たとえばフランスで学んだ経験があったり、ドイツで学んだ経験があったり、まったくの純国産作曲家だったりと、その顔触れは様々。たとえば、一曲目なんて、普通にフランスのパリかボルドーかあたりの作曲家が作ってもおかしくない響きだよなあと思っていたら、Jiyoun Choi氏の経歴を読むとリヨン音楽院とIRCAM(フランスの音響研究所)で学んだ経験があったりと、単純に「韓国のサックス」という枠でくくるのは難しい。
そういうわけで、スピーカーから響いてくるのは、非常に多彩な響き。しかし、比較的どれも洗練されていて、韓国の作曲界の元気さを物語っているようだ(実際どうだかはよく知らないけど…)。いくつか興味深い作品があって、たとえば4曲目の「Mu Ryung Zi Gok」などは、伝統的な韓国の行進曲の素材を使用し、モードやフレーズにとどまらず、音素材としても人声を変調させて鳴らしてみたりと、かなり自国の音楽に根をはった音楽であることがわかる。日本の現代作品で、こういうものって意外と少ないのではないかな?中国や韓国の現代作品は、より自国の音楽に近い部分にある、ということを聞いたことがある。
1曲目の「Polylogos」は、とてもスピード感あふれる作品で、上でも述べたように、これはフランスの最新の作品と言われても違和感がない。個人的にも、かなり好きな響きだ。「Flux I」もなかなかかっこいいなあ、と思ったら、あれ、これもリヨン音楽院出身の作曲家の作品だ。
それにしても、ケンジー氏のサックスの驚異的に上手いこと!なんだか、どんどん上手くなっているんじゃないか?と錯覚するほど。このレコーディングを行った当時は、おそらく51歳か52歳くらいのはずで、まさかそのくらいの年齢の方が吹いているとは思えないほどの演奏だ。特殊奏法が連続するアグレッシヴさのなかにも、曲に対する深い共感を交えて、絶妙なバランスの演奏を繰り広げている。なるほど、ただ若いだけではできない演奏かもしれない。
興味がある方は、Vandoren Franceの通販サイトからどうぞ。
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