ピエール・ジョドロフスキ Pierre Jodlowski「Mixtion(混合)」は、パリ国立高等音楽院(パリ・コンセルヴァトワール)の2003年度卒業試験のために書かれた、テナーサクソフォンとライヴ・エレクトロニクスのための作品。2006年7月に世界初演を手がけたジェローム・ララン氏が日本初演、その後、2007年11月にクロード・ドゥラングル教授がAOIにて演奏した。ごく最近では、2007年12月には井上麻子氏がパルテノン多摩で素晴らしい演奏を聴かせてくれたことは、記憶に新しい。
この作品では、テープとアコースティック楽器をアンサンブルしていくような、広義のライヴ・エレクトロニクスではなく、リアルタイムの音響合成や奏者の任意のタイミングでのプログレッションなど、「新しい」形態での演奏が求められている。具体的には、もともと用意されたテープの断片を、MIDIキーボード制御用のペダルを使用し、練習番号ごとに進めながらアンサンブルをしていくという風である。また最終部近くには、マイクから取得したサクソフォンの音にエフェクトをかけて、スピーカーからミキシングして出力する、といった部分もある。
楽譜はEditions JobertもしくはUnited Music Publishingから出版されており、楽譜に付随して「Patcher」と呼ばれるMAX上で動作するライブラリが付属してくる(このライブラリが付属していない版もあるので、要注意のこと!)。「Mixtion」のPatcherは、プログラミング~サウンドデバイスコントロールをサポートしたMAX/MSP上で作成され、同ソフトウェアを使用しての動作が可能なほか、フリーのMAX/MSP Runtimeを使うことによる動作も可能だ。
演奏時には、MAX/MSPもしくはMAX/MSP Runtimeを起動し、File→Openをクリックし、Mixtion-Max-4.1を選択してオープン。DAC ON/OFFとMIDI ON/OFFのスイッチをクリックして準備完了。ここでTEST NOISEのスライダーを上下させれば、最大音量のチェックを行うことができる。ペダルを接続してある場合はペダルを踏めば、もしくはスペースバーを押すことでテープパートがスタートする。さらに練習番号ごとに、ペダルを踏む or スペースバーを押すことで、自動的にテープパートが進行するが、これは楽譜上の演奏長が奏者の裁量に任されている部分がいくつかあるためだ。
練習番号[26][27]ではそれぞれ、「Temps-reel: phaser: 0 OFF/sine: 1 doubler」「Temps-reel: phaser: 4 random high/sine: 3 high freqs」というエフェクタのアサートが自動的に行われる。[28]に突入すると同時に、エフェクタが自動的にネゲートされる。
ちなみにPatcherが収録されたディスクの中には、「Mixtion-Light」というのもあったが、これはエフェクタなしのバージョンなのだろうか。そのほか三種あるテストプログラム「Test1>AUDIO-OUT」「Test2>MIDI-PEDAL」「Test3>FOLLOWING」は、ファイル名のパスが通らず(何だってファイル名に">"が入っているんじゃー)開くことができなかった。もしかしたらMacOSでは大丈夫なのかもしれない。
…えっと、自分で演奏する、ってことではないですよ(^^;しかし、このくらい軽々と演奏できたら楽しいだろうなあ。ララン氏のCD「Paysages lointains(CREC)」に収録されている演奏は、お見事!のひとこと。
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