まだまだ日本を横断してのレクチャーコンサートなどは続くが、ドゥラングル教授に対する印象の変化のことを、ちょこっと書き留めておきたい。「変化」というのは、今までCDでしか触れたことのなかったドゥラングル教授というサクソフォニストに、今回生で触れることにより変わった、自分の中での氏の捉え方…というようなニュアンス。
・演奏に関して
今まで:とにかく正確無比に、どこまでも管理しつくされた演奏をする印象ばかりが先行していた。「Solitary Saxophone(BIS)」を聴いてみても解るとおり、すでに人間を超越したようなテクニックと、どこまでも純粋な音色、そしてフレーズの歌い方は美しいがやや希薄…といったイメージ。前衛の闘士!といった感じ(若き日のブーレーズみたいな)。
今回聴いて:昨日、間近でドゥラングル教授の音を浴びたが、意外なまでに濃厚な歌い上げをすることに驚いた。細かなアゴーギクやアーティキュレーションの変化に重点を置いた演奏、といったところは、自分にとっては意外だった(CDというメディアに記録される音の限界なのかもしれないが)。7月にジェローム・ララン氏の「PCF」の演奏を聴いて、「ドゥラングル教授門下らしからぬ濃厚でロマンティックな歌い方」と書いたのだが、実は教授自身の演奏こそがその歌い方の極値であり、手本であったのだった。「セクエンツァVIIb」の捉え方…まさか正確さと同じくらい歌の要素が重要だ、なんて言葉がドゥラングル教授の口から聞けるとは思わなかった。←どこまで固定観念に染まっているんだよ、って話もあるが。
また、静岡のあの演奏会で「Mixtion」を聴いているときに、まるで機械的に演奏をすると思われていたドゥラングル教授がみせた、一瞬のスキが忘れられない(具体的に「Mixtion」演奏中の何々によって、というのは、曲を知っている方の中にはわかった方もいらっしゃるかもしれないが、一応伏せておこう)。そんなこともあり、今までよりもドゥラングル教授の人間らしさを演奏の中に見出すことができるようになった。
・人間性
今まで:気高く、気難しいイメージ。333でのレッスンは、とにかくおっそろしいと聞くけれど…ほら、ルマリエ千春さんのレッスン描写とか。
今回聞いて:「Grab It!」で見せたひょうきんさ、そして演奏会終演後に楽屋を訪ねたときに、疲れた顔一つ見せず対応してくださったことが、忘れられない。マスタークラスでの、冗談を交えながらのレッスンも、今まで抱いていたイメージとは違うものだった。もちろん演奏に対する容赦ない姿勢はまさに求道者と言うべき気高い精神を感じるが、それと同時に人間としての暖かさも印象に残ることとなった。
その他挙げていったらきりがないが、今回の来日により、さまざまに印象が変わったのは確か。しかも、ますますドゥラングル教授のことを尊敬するようになってしまったのである。自分の中では、これから先ずっと世界最高のサクソフォニストでありつづけるのだろう。
4 件のコメント:
ども、こちらでは始めまして。
私もkuriさんと全く同じ印象を持ちました。
ドゥラングル教授の生演奏に触れるのはほぼ20年ぶりなのですが、以前とはやはり印象が違います。教授が変わったのか自分が変わったのか?
あまりにも同じ印象なのでmixiの日記に書く前にこちらにコメントしました(^_^)
ようするに同じ事書いてあってもパクリじゃないよってことで(^^ゞ
なるべく違う表現でがんばります
> もっちぃ様
コメントありがとうございます!
20年前に聴かれていたとは凄いです。
個人的には「CDで聴く印象と生で聴く印象の違いからくるものなのかな」と思っていたのですが、どうやらそれだけではなさそうですね。
>意外なまでに濃厚な歌い上げ
>細かなアゴーギクやアーティキュレーションの
変化に重点を置いた演奏
>7月にジェローム・ララン氏の「PCF」の演奏を
聴いて、「ドゥラングル教授門下らしからぬ濃厚で
ロマンティックな歌い方」と書いたのだが、
実は教授自身の演奏こそがその歌い方の
極値であり、手本であったのだった。
ホント、おっしゃる通りです!
実は、今日の公開レクチャーで1999年のCDと
発売になったばかりの2004年録音のCDを購入、今早速聴いていますが、
全く別人のようですね。
20年前、川崎のコングレスに行ってましたが、ドゥラングル氏の演奏は聴いてませんです。(^^;
今回生演奏初体験、実はCDも殆ど持って
いなかったので、今の演奏に触れられてラッキー
でした。
ジェローム・ララン氏、去年アクタスで
聴きましたが、本当に熱くてパッションの
ある演奏でした。
レクチャーのときはずいぶんと近くで聴きましたので、その辺りも関係しているのかもしれませんが、本当に"熱い"奏者だなと思いました。今までの印象をがらりと変えることとなりました。
CDを隅々まで聴いてみても、どうやら年月を経ることによる演奏の変化はあるようですね。演奏だけではなく、取り上げる作品…CDへレコーディングする作品も、最近はずいぶんとアカデミックなものになってきたような…(^^;
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