昨日はファブリス・モレティ Fabrice Moretti氏のコンサートを聴きに、上野まで。徹夜明けだったため、お昼ごはんを食べた後にうっかり眠ってしまい、行きのバスに乗るのが遅れた。しかも、まさかの常磐道大渋滞(泣)!間に合うかどうか、しかし気持ちばかりが焦ってどうしようもない。幸いなことに、18:42に上野の東側へと到着。奏楽堂へと向かって暗闇の上野公園をダッシュする姿は、さぞかし滑稽だったことだろう。
受付には服部先生の姿が。ご挨拶。けこぅさんとばったり。ご挨拶。階段を上がって会場に入ると、えぇっ、昨年の2倍ほどのお客さんが!すごい。いったい一年の間に何が起こったんだろう?見たところ、音大生と思しき方が多かったかな。
・マルチェッロ「オーボエ協奏曲」
・ヴィラ=ロボス「ファンタジア」
・港大尋「遠みから遠ざかってみても」
~休憩~
・リュエフ「シャンソンとパスピエ」
・ボザ「アリア」
・ビッチ「村娘」
・アブシル「5つの易しい小品」
・ワイル「ユーカリ(ピアノソロ)」
・トマジ「バラード」
前半は全てソプラノサクソフォンを使用してのプログラム。マルチェッロの「オーボエ協奏曲」から。やや金属的、しかし決して耳障りでない音色と、全音域に渡る完璧なコントロール。モレティ氏はジャン・ルデュー・カルテットのソプラノ奏者としてもおなじみだが、2003年にレコーディングされたCDで楽しんだ演奏そのままの音楽を振りまいていた。続く「ファンタジア」は、予想はしていたけれど超速。第1楽章の2オクターブ近くの跳躍から切り出されるアルペジオを、滑らかに吹ききってしまうのだ。
プログラムリストを見れば港氏の作品がやや浮くが、聴いてみればぜんぜんそんなことはない。うーん、言葉では伝えられないけれど、近藤譲氏の作品とグラハム・フィトキンの作品を足して2で割った感じ(謎)。リズム的にはかなりにスリリングな印象を受けた。かなり難儀と思われるピアノパートを、ばったばったと切り裂いていくような服部真理子氏の弾きっぷりにも圧倒された。
後半はアルトへと持ち替えて、リュエフの「シャンソンとパスピエ」。シャンソンの2音目が、すぅっと会場全体に拡がりをみせたあの瞬間を、いまでもはっきりと思い出すことができる。右手レ~ファにかけての、どこまでも豊かな音色と、趣味の良いヴィブラート。ステキだ。「アリア」「村娘」まではほぼアタッカで演奏されたが、まるで組曲のように聴けたのが面白かった。続いて、予定ではピアノソロの「オブリヴィオン」だったが、モレティ氏と服部真理子さんのデュオでアブシルの「5つの易しい小品」。プログラムに曲目解説がないとの事で、モレティ氏が解説をし、服部真理子さんが通訳。サックスを吹いているときはそんな風に見えないのに、モレティ氏、実にお茶目な方だなと思った。
ピアノソロで演奏されたワイル作品は、ハバネラのリズムを基底としたリズムに、物悲しいメロディが付随する珠玉のコンサート・ピース。指先から生み出されるキラキラした音色は、時に陰り、時に明るく前向きに。音色と共に減衰速度をもコントロールしているかのように聴こえたのは、錯覚ではないだろう。
トマジ。速っ!!マーフィ氏の演奏よりも速かった…実演でも録音でも、ここまで速くて美しく、完璧に近い演奏は聴いたことがない。どうもトマジの「バラード」というとあの12/8のダンスメロディが苦手だったのだが、その場所をこれだけ高速に切り抜けていってしまうとは、まさに爽快。そうか、きっと、これだけ速くないといけないんだ!かといってモレティ氏、間奏では体をゆらゆらと揺らしながらピアノを楽しんでいるように見える。デファイエのように、取り付く島のないほどの天才を聴く気分とは、また違った感情が湧き出た。親しみやすく、しかしいったんサックスを吹き始めれば最上級の演奏を披露してくれるサクソフォニスト。ますますモレティ氏のファンになってしまったのであった。
最後に、パンフレットに載っていたモレティ氏自身の言葉をご紹介しよう。「全ての音楽家が他者を傾聴すれば、世の中で反目したり争ったりすることもなくなるのではないか。」…すごい。「全ての音楽家が他者を傾聴」なんて、思いつきもしないし、思いついたとしてもめったに言える言葉ではないだろう。この言葉から推察されるのは、モレティ氏の音楽への愛情、人に対しての愛情だ。その愛情が、演奏となって、音となって表れているのだろうな、と思った。
2 件のコメント:
はじめまして!いつも楽しみにブログを読んで勉強させてもらっています。
私も素人ですがサックスを吹く者です。
つい先日、私もモレティ氏のコンサートに行ってきました。今年で3回目ですが、本当に毎回毎回、その音色に酔いしれています。
そしてkuriさんの解説を読んで理解を深めているところです。
CDも偶然ですが、ヴェローヌ 作品集を購入しました。わけもわからず、もってないCDだったのですが、kuriさんの解説を読んで、買ってよかった!!と思っているとことろです。これからも、ブログ楽しみにしています!!
> もも様
初めまして。コメントありがとうございます。ブログ読んで下さっているとの事で、まずは感謝申し上げます。
モレティ氏のコンサートはすばらしかったですね!ブログの記事は、なんとかそのすばらしさを表現しようと悪あがきした結果なのですが、ご覧の通りの駄文になってしまいました(^^;…と、駄文はいつものことですが。モレティ氏の演奏に関しては、言葉など必要ない、とも思えてしまいますね。
ヴェローヌ作品集は、掘り出し物だと思いました。サックス作品以外の歌曲もステキで、最近良く聴いています。
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