Quatuor de Saxophones Emphasisというフランスのサクソフォン四重奏団をご存知だろうか。1987年に結成され、FNAPECコンクールの室内楽部門ほか、数々のコンクールでグランプリを獲得して地位を築いた。ドゥラングル・クラスを、1994年から1995年にかけて卒業したプレイヤーで構成され、日本でもおなじみのニコラ・プロスト氏を始めとするプレイヤーが在籍していた。ハバネラ四重奏団の世代とほぼ共通、ディアステマ四重奏団よりは2、3年ほど年下となる。
Gilles MARTIN (saxophone soprano)
Nicolas PROST (saxophone alto)
Jean-Yves CHEVALIER (saxophone ténor)
Nicolas WOILLARD (saxophone baryton)
現在は、次のメンバーで活動を継続しているそうだ。MySpace上に、公式のページを見つけることができた(→こちら)
Bertrand PEIGNE (saxophone soprano)
Laurent BLANCHARD (saxophone alto)
Jean-Yves CHEVALIER (saxophone ténor)
Nicolas WOILLARD (saxophone baryton)
そのQuatuor Emphasisの「Trois Grands Quatuor pour Saxophones(Quantum dQM6961)」というアルバムが存在する。おそらく、FNAPECコンクールの入賞記念に制作されたCDであり、本四重奏団の実質的なデビューアルバムと捉えても良さそうだ。特筆すべきはその収録曲!なんと、グラズノフ、シュミット、デザンクロ、である。大曲ばかり3曲の真っ向勝負!著名なレコード誌のひとつであるDiapason誌も、5つ星をつけたそうな。
存在自体は、mckenさんのサイトで比較的早くから知っており、入手したいとは思っていたのだが、実際に聴くことができたのは比較的最近のことだったと思う。レーベル元からはとっくに廃盤で(このQuantumというレーベルも、活動実態が非常に怪しい)探せど探せど見つからず、最終的にeBayか何かのオークションサイトで発見して新品を落札したのだった。
例えばQuatuor DiastemaがデファイエQとハバネラQをつなぐミッシング・リングだとするならば、このQuatuor EmphasisはQuatuor Diastemaをさらに現代的にし、ハバネラQ世代を予感させる演奏を展開している。だから、技術的に完成され、難関部も軽々と吹いてしまう凄み、そして抑制されたヴィブラートを適所に使い分けながらの表現などが特徴として挙げられる。
ただし、いわゆる「現代フランス風」とされる羽のような軽い音色や、繊細な音楽表現については、まだ過渡期であったのだろう。ところどころ「?」というような表現が聴かれることもある。こういった表現の試行錯誤の上に、現代のフランスのサクソフォン界が成立していると考えると、軽い気持ちでは聴けない。ミュール~デファイエと続いた伝統からの脱却と、新たな世界の構築は、一筋縄ではいかなかったはずだ。10年かけてそれを成功させ、さらに10年かけて進化させているドゥラングル教授とその一派の活動には、恐れ入るばかり。
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