これも、神奈川県のT様より送っていただいた録音である。1978年5月6日、兵庫県西宮市でキャトル・ロゾーが公演した時のライヴ録音(冨岡和男氏所蔵)を、ダビングさせてもらったものなのだそうだ。プログラムは、以下。
A.K.グラズノフ - カンツォーナ・ヴァリエ
M&F.ジャンジャン - 四重奏曲
G.ピエルネ - 民謡風ロンドの主題による序奏と変奏
I.アルベニス - セヴィリャ
M.デ=ファリャ - スペイン舞曲第2番
J.S.バッハ - G線上のアリア、バディネリ
C.ドビュッシー - リトル・ネグロ、ゴリウォーグのケークウォーク
J.リヴィエ - グラーヴェとプレスト
~アンコール~
N.リムスキー=コルサコフ - 熊ん蜂の飛行
L.ボッケリーニ - メヌエット
W.A.モーツァルト - アヴェ・ヴェルム・コルプス
プログラムのリストだけ眺めてみると、小品に混ざってグラズノフ(第2楽章だけだが)、ジャンジャン、ピエルネ、リヴィエといった大曲が並んでいることに驚く。録音は、おそらくホールの吊りマイクからのものだろう。およそ30年前の録音ということになるが、意外なほどに良い音質に驚いた。アナログソースは、保存状態さえしっかりしていれば長期にわたって保存することが可能なのだ。
冒頭からじっくり聴いてみる。そして美しい音色&ヴィブラートと均整の取れた楽器間バランスに、頬が緩んでしまう。グラズノフでは、おなじみ「シューマン風飛ばし」をやられていきなり面食らうが、それでも残りの変奏を淡々と演奏する。上手い。今でこそ、中学生でも演奏してしまうような曲だが、30年前にこういった音が響いていたのか。
ジャンジャンの第1楽章では、あのアルトとテナーがアルペジォを奏でる中間部で、冨岡氏のソプラノサックスがしなやかに歌う。この懐かしいヴィブラート!時に、冨岡氏32歳。"中堅どころ"と呼ばれていたであろう30代前半のプレイヤーが、こんな音を奏でる時代があったのだなあ。それは、ファリャの「スペイン舞曲」やバッハの「G線上のアリア」でも聴くことができる。たった一音の伸ばしが、聴き手を30年前のホールへと連れ去ってしまうかのようだ。
ピエルネやリヴィエは、テクニックの高さとアンサンブル力の高さに驚いた。ライヴ録音であることが信じられないほどにキズが少ない。同じキャトル・ロゾーのCDの録音よりも、こちらの方がずっと聴きごたえがあるのではないかな?というわけで、ちょっといろいろと「驚き!」な録音であった。
これにて、T様からお譲りいただいた録音をすべて紹介し終えたことになる。貴重な録音の数々をお譲りいただいたT様に、改めて御礼申し上げたい。
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