2008/08/06

ラリー・ティールの録音

アメリカにおける、クラシカル・サクソフォンのパイオニア的存在であるラリー・ティール Larry Teal(1905 - 1984)。初期の頃は、ジャズバンドにおける奏者としてキャリアをスタートさせたそうだが、後にクラシックの語法を習得。さらにアメリカ国内で初めてサクソフォン科の教授に就任し(ミシガン大学)、多くの後進を育成した。演奏者としても、グラズノフとイベールの協奏曲を国内初演するなどしたということだ。有名なバーナード・ハイデン Bernard Heidenの「ソナタ」は、ティールのために作曲されている。

ここまで読んで「ラリー・ティール?なぜか知らないけれど名前だけは聞いたことあるぞ」と思った方もいらっしゃるだろう。おそらく、この本が原因ではないだろうか。大室勇一氏が翻訳した「The Art of Saxophone Playing(邦題:サクソフォーン演奏技法)」の原著者こそが、ラリー・ティールなのである。中学・高校・大学時代に、この本がサックス棚に置かれていた、という方も、多いのではないだろうか。かく言う私も、高校時代にはかなりお世話になった教本だ。

さて、そのラリー・ティールだが、残念なことに際立ったレコーディングが残されていない。理由は良く分からないが、後年はレッスンやエチュード、教本の執筆に多くの時間を割いていたためではないかと思われる。

しかし最近、ラリー・ティールの録音がインターネット上にアップされているとの情報を得た。「ホラ・スタッカート」と名前がわからないもう一曲。ぜひ聴いてみていただきたい。ダウンロードするには、右下の「Save file to your PC: click here」をクリックすれば良い。

「ホラ・スタッカート」
http://www.2shared.com/file/3704522/52944310/Hora_Staccato_Larry_Teal.html

「不明」
http://www.2shared.com/file/3704525/ccf0d6b3/Unknown_LarryTeal.html

オーケストラとの共演、実に見事な演奏だ。高音まで無理のない伸びやかな音色と、等速にかかるヴィブラート、高速なフィンガリングやスタッカート、自然なフレージング。二曲目は、途中で針飛びが起こるが、まあご愛敬。ラリー・ティールの、当時の一級の演奏家としての顔を現代に伝える、貴重な資料である。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

僕もラリー・ティールのサクソフォーンの演奏技法持っています!!!

昔、師匠に頂いてそれから、熟読してます★
もちろんフランスにも持ってきました★

喉の開き具合などはフランスとアメリカではずいぶん違いますが。

迷ったら本を開いています!

古い時代にあんなに細かくて、ほんとに凄いなと思いますよ~ 上の歯はマウスピースの先端から約1.3cmとか。

僕は管楽器なら何でも吹くのでダブリングの項目は凄く納得できました。

kuri さんのコメント...

> chaa3104さん

「演奏技法」、確かに凄いですね。サクソフォンの演奏を解剖学・生理学的見地から捉えているものは、この本の他にちょっと思い当たりません。訳者の大室勇一氏にとっては、洋書のなかでもいちばん翻訳する義務を感じていた本ではないでしょうか。訳にも気合が感じられます。

chaaさんは持ち替えもなさるのですね~。手元の資料[Gee,1985]には、ティール自身も、ジャズバンドでの演奏経験からフルート、クラリネット、バスクラを持ち替えたとの記述がありました。