詳しい経緯は省略するが、最近、シガード・ラッシャー Sigurd Raschèrの娘、カリーナ・ラッシャー Carina Raschèrの最後の弟子である、Anna-Nora zur Niedenさんとお話しする機会を持つことが出来た。ドイツでサクソフォンを学ばれ、9歳頃からおよそ10年間に渡ってカリーナの下でサクソフォンを学んでいたそうだ。
最初はヤマハの楽器にラッシャーのマウスピースを取り付けて吹いていたこと、そのマウスピースの形状のこと、カリーナに勧められて買ったブッシャー Buescherのサクソフォンのこと、Buescherのレクチャーフィルムのこと、バッハなどのレパートリー、オーバートーンの練習、カリーナの四重奏での活動など、現在まで私自身が得たラッシャー派に関する知識を裏付ける内容だった。
しかしなにより、「Is she a good teacher?」という質問に、「Yes, yes!」と大きく頷いていたのが印象深い。素晴らしい先生であり、レッスンのたびに大きなインスピレーションを受けたそうだ。
私が今まで疑問に思っていたことの一つに、ラッシャー派の生徒たちは、いわゆる「クラシック・サクソフォンのメインストリーム」から外れた自分たちのことをどう思っているのか、ということがある。だって、まわりは皆ピカピカのセルマーを持っているのに、Buescherなどの古楽器を使うことに抵抗を感じないほうがおかしくないか?
しかし、Annaさんの話を聞くにつれ、その疑問が氷解した気がした。ラッシャー派のサクソフォン演奏に対する確固たる信念が、教え子たちに脈々と受け継がれているのを感じたのだ。楽器の良し悪しやレパートリーなんて関係ない、彼らがラッシャーの教えを存続させている理由は、もっともっとメンタル的な部分にありそうだ。
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