スウェーデンの作曲家、エルランド・フォン=コック Erland von Koch。1910年生まれとのことで、もうそろそろ100歳になるのですなあ。現在も作曲をされているかどうかは存じないが、ぜひ長生きしていただきたい。交響曲やオペラなども作曲し、まさにスウェーデンを代表する作曲家の一人というところだが、サクソフォン界との親交も深く、独奏曲や四重奏曲などをいくつか作曲している。
そもそも、フォン=コックがサクソフォン界を見知ったのは、シガード・ラッシャー Sigurd Rashcer氏との出会いがきっかけであったのだろう。1958年にラッシャーに捧げられたこの「Concerto」の後、四重奏のための重要なレパートリーの一つである「Miniatyrer」を始めとし、1987年に作曲された「Birthday Music for Sigurd M. Rascher」に至るまで10を超える作品を、ラッシャーに献呈している。フォン=コックの筆による作品は、おそらく世界的に見れば重要なレパートリーではあろうが、残念ながら日本ではあまり知られていない。
とうわかで、ラッシャーに捧げられた弦楽オーケストラとサクソフォンのための「Concerto」。3楽章形式で、「Allegro moderato」「Andante sostenuto」「Allegro vivace」。演奏時間はおよそ17分。曲中・カデンツァ問わず、ラッシャーお得意のフラジオ音域が各所に使用されている。曲全体の雰囲気や音形は、ラーションの協奏曲に似てなくもないなあ(同郷であるし、もしかしたら意識したのかもしれない)。
第1楽章は、あからさまなソナタ形式で、この第1主題がなかなか良い。あなたの近くにピアノがあったら、試しにハ長調で「ミドレー」と弾いていただきたい。妙に魅力的な音素材ではないか?第1楽章の第1主題は、この素材を主題へと拡張しているのだが、弦楽合奏の荒涼たる響きとあいまって、前半において不思議な世界観を作り出しているのだ。第2主題は、四分音符の動きを中心にしたカンタービレの主題。こちらは、ちょっと不思議な雰囲気だが、このためか再現部では第1主題がことさら印象的に響く。
第2楽章はチェロとコントラバスの怪しげなユニゾンから始まるが、サクソフォンはそんな中でも光を保ち続けているかのように聴こえる。やや東洋的な音階も交えながら、徐々に頂点へと向けて盛り上がっていく様子はなかなか感動的。第3楽章は3/4の舞曲。途中、フラッターやスラップも挟みながら進行し、第2楽章と第1楽章の主題が、別の調で再現されるのは素敵ですねえ。
ちなみに、ドイツのEdition Marbotから出版されているオケスコア持ってます。たしか6ドルで買ったと記憶している。ずいぶんと安いな。
演奏は、シガード・ラッシャーとミュンヘン・フィルの演奏がPhono Sueciaから出ていた。amazonでも取り扱っていたようだが、現在では在庫切れのようだ。なかなか良い演奏だと思うのだが、もったいないなあ。ラッシャー以外の演奏では、Lawrence Gwozdzの演奏が付属した楽譜付マイナスワンCDがSheet Music Plusなどで買える。グラズノフのマイナスワンも入っており、おトクかも(笑)。
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