2008/04/12

最小の要素へ

ここ最近、就職活動で憂鬱なのだが(わざわざ推薦とってみた企業の志望度がここに来てガタ落ちたり、この一番忙しい時期に研究科の発表をしなければならなかったり、いろいろ)、明日は田中靖人氏のサロン演奏会ということで、久々にリフレッシュしてこようと思う。もしかしたら気が乗らなくて…体が動いてくれるかどうかは、明日になってみないとわからないが。

さて、私はサクソフォンを演奏する中で、次のようなことを夢想している。それは、「結果のみを捉えるのではなく、その事象が形成されるに至った原因を突き止めることができるのではないか」ということ。

演奏でいえば、たとえばある音色が楽器から発せられた時に、そのサウンドはどういったプロセスを経て生成されているのか。こういったことに、とても興味がある。楽器のメーカー、機種、マウスピース、リード、リガチュア…さらに、それぞれの部品には"個体差"が存在し、時間的な変化も存在するため、一つとして同じ組み合わせは存在しない。奏者起因の、生理学的要因にもよるだろう。奏者の口腔内骨格、息の圧力(presser)と温度(temperature)、アンブシュア、etc.

これらの要素を分解し、楽器から生成される音のスペクトルを多変数関数の出力として捉えることができるようになったら、なかなか面白いのではないだろうか。例えば、スペクトルのpowerはpresserを入力とした時の増加関数であるよね、というのも、この例に漏れない。続いて考えれば、temperatureは、倍音系列にどういった作用を引き起こすのだろうか?具体的には、まったく同じ条件下で、息の温度を変えた際に、サウンドにはどのような変化が起きるのか?もちろん、高温の息のほうが低温の息よりも音程が上昇することは考えられるが、円錐管という特徴から、powerの比を保ったまま、単純に対数的にスペクトルが平行移動するのか?

入力と出力の関係を突き止めることで、理想のサウンドを人工的に作り出すことが可能となるのだ。※何を"理想のサウンド"とするのかは、これまた難しいことで、生理学と脳科学の分野になってくるのだろうが、一般的に美しい音を持つと思われている奏者の、楽器起因要素と生理学的要素を解析することは、不可能ではない。

私の専門はコンピュータサイエンスなので、実際の検証をぜひ音響工学の研究者にやっていただきたいところですな(他人任せ)。まずは要素を分解するところから…といっても、生理的要因のほうは実験が難しいだろうから、まずは楽器起因の要素条件を変えながら、サウンドを解析する、という試みがそろそろスタートしても良いのではないかな。私の生きている間に、どなたかが(少なくとも楽器要因に関しては)研究を完了してくれればなと思っている。

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